魔法少女リリカルなのはEXCEEDS 危険管理外世界調査記録 作:ヒアデス
『
発起人である御神健斗主監を中心に、様々な国や世界からの依頼を受け、時には力を合わせて、災害救助と事件解決を行なっています。
設立間もないためこの上ないほどアットホーム! 就労サポートと福利厚生も充実。未経験者も経験者も大歓迎。先輩や仲間が優しく丁寧に教えてくれます。
興味があればぜひ本部に連絡か近くの職員にお声がけを。EXCEEDSはあなたの入隊を待っています!』
『私たちと一緒に世界と誰かの笑顔を守りましょう!!』
広報官ノーティカ・リンのアナウンスとともに、華形四人が笑顔と敬礼を向ける映像で締め括る。
黒髪の男、ゼオは気難しそうな顔で腕組みしながらそれを眺めるのみだった。
『我々の活動に関してはこんなところです。いかがでしょう? まだお若いようですし、村長は前任に返して、我々とともにこの国の住民や世界のために働いてみる気は? お嬢さんともども歓迎しますが――』
「断る」
言い終らぬ間にゼオはばっさり切り捨てる。
「悪いが、国や世界とやらの救済に手を貸せる器じゃない。村と一人娘を守るだけで手いっぱいだ。勧誘なら他をあたってくれ」
『調査員たちの報告を聞く限りそうは思えませんが……まあ、それは後回しにしましょう』
肩を竦めつつ居住まいを正し、再びゼオに向かって口を開いた。
『昨今起きている『ロボット暴走事件』、それと15年前まで起きていた不思議な能力を使う少数種族《魔女》が迫害され内乱にまで発展した“ダルナザの闇”……その二つの解明が国連から依頼された、この国における我々の役目です。しかもその二つは《魔女》を通じて深く繋がっている可能性が高い。
そこで大戦時に活躍した《機神
「そんな大それた存在は知らん!」
ゼオは体ごとそっぽを向きながら言い捨てる。
だが……。
『ですが、あなたが兵士として“
そう言った瞬間、ゼオはぎろりと擬音が付きそうな目を向けてくる。その剣幕になのははわずかに身を構える。
対して、俺はあえて挑発的な笑みを向けたまま続けた。
『二人が村の方からお聞きしまして。15年前、
なのは達が得た証言と推測を突きつけると、ゼオはちっと舌打ちを鳴らした。
「確かに村に来る前、機械兵として“魔女狩り”に参加していたのは事実だ。だが、《機神》などといった存在ではない。戦友も守れず《最後の魔女》に敗北を喫し、“魔女の呪い”で動いてるだけのスクラップには過ぎた名だ」
『呪い……?』
訊き返そうとした瞬間、ゼオの周りからサイレンが、俺の端末からもビィィィッと耳障りな警告音が響いた。
なのはとゼオもはっとしながら村の方に顔を向ける。
『動き出してきたか! ――八神副首監、部隊を率いて急ぎ現場に急行!』
『了解! もう第一陣が村に到着してます!!』
◇
「ちょ、ちょっとなにこの音!?」
「いいから急げ!」
耳障りなサイレンが響く中、長い桃色髪の少女フィリーは上着も羽織らずチンクに引っ張られながら家から飛び出す。
周りの家からも、
「フィリー、チンクちゃんも起きてきたか」
「この音って、君たちがこの前言ってた……」
その一言にフィリーはハッとする。
そう言えばチンクとなのはが村の外で何かの作業をした後、村の周りで大きな音が鳴ったら急いで家から出ろ。って言ってた気が。
「――えっ、なんだあれ?」
ふいに視界が黒くなり、フィリーを含む村人たちは真上を見上げる。
星月の光を遮りながら飛んできた飛行機はひらけた広場に降り、中から防護服で身を固めた男女十数人が駆け下りてきた。
そこでチンクは飛行機の傍に駆け寄り、周りを振り返りながら声高に叫んだ。
「この船は私と高町さんが所属する国連調査機関EXCEEDSの輸送船です! この村に武器を持つ集団が近づいている可能性がありますので、皆さん早く船に乗って下さい!!」
「国連の……?」
「武器を持つ集団って、一体どこのどいつが?」
ざわめく村人たちにEXCEEDSの隊員たちが駆け寄り、チンクに似た言葉や「すぐここに帰れますから」と説得しながら船に入れていく。
反対に銃や杖らしきものを持つ隊員たちは村人たちの横をすり抜け、村の外へ駆けて行った。
唖然と眺めているフィリーの手が掴まれる。はっと振り返ると、いつもより硬い表情で見上げるチンクの顔が映った。
「フィリー、君も早く乗れ。この前の例からして敵は君を狙っている可能性が高い」
「この前って、ナノハたちが倒した
フィリーの問いにチンクは頷く。
一週間前フィリーを『最優先対象』として襲ったロボットと、今なのはとゼオの留守を狙って村に近付いている集団――無関係と思う方がおかしい。
パアンッ!
二人――否、村にまで響くほど甲高い発砲音が村外れから響く。異変の証たるその音に隊員も村人も身を竦ませる中、チンクの耳元に通信が届いた。
『敵襲! 機械兵らしき敵を発見!』
『北側の三人が手強い――応援を願う!!』
その報告を聞き、チンクは懐に手を入れながら再度フィリーに向けて言った。
「フィリー、君は早く村の人とともに船に乗れ」
「でもチンクは!? ナノハと父さんもまだ来てないし――」
フィリーがそう言うとチンクはふっと笑みを作り。
「あの人たちなら問題ない。君の父親は大戦の英雄だそうだし、私の上司は世界を何度も救ってきた“魔法使い”だからな。それに私もこの程度の修羅場は何度もくぐってきた――《グルカスティンガー》、セットアップ!」
『Standby,ready』
チンクが懐から取り出した装飾物が聞き慣れぬ言葉を発した瞬間、彼女の体が黄色の光に包まれる。
次の瞬間、彼女の服はEXCEEDSの短いジャンバーとスーツから、灰色の長コートと群青色のボディスーツのような服に変わり、装飾物も数本の
「ではな――この子をお願いします」
「はい。ナカジマ調査員もお気をつけて」
フィリーと傍にいる隊員に声をかけ、チンクはナイフを指に挟みながら加速魔法で村はずれに向かって駆ける。
フィリーは唖然とそれを眺めたまま隊員に背中を押され、船の中へ押し込まれていった。
◇
「報告します。敵らしき集団は検知器にかかった後、しばらく動きを止めていましたが当隊と接敵後すぐに進行を再開。特に北側の三人組が手強く、ナカジマ調査員が応援に向かっています。高町調査員とゼオ村長はともに帰村している最中です」
「そうか。索敵と検知魔法は?」
そう訊くと、
「魔法の方からは反応がありませんでした。地球から持ち込んだ探知機がなかったら、村が襲撃されるまで気付かなかったかもしれません」
やはり魔導対策をしていやがったか。しかし、ゼオと俺たちが揉めている隙をついたとはいえ、わざわざ俺たちを村に誘い込んで襲撃を仕掛けるとは……ここで俺たちごとZEDと魔女を葬る気でいるのか?
「テスタロッサ執務官、時間が惜しい。取れた分だけ情報をくれ。残りは事が終わってから回収するか向こうから直接聞きだす」
そう告げると違法施設のデータベースの前に立つフェイトが『はい』と頷いて続けた。
『《機械化歩兵部隊》……内戦末期、《魔女》の反撃が激しくなった頃、軍が研究開発した、名前の通り
執務官の仕事で関わった
俺の脳裏にも二年前に戦ったマッドサイエンティストが浮かんだ。
自身の記憶と人格を
それに軍範囲でロボット化とは。そこまでしなければ鎮圧できないほどの力を持っていたのか? こっちの《魔女》は。
「元の肉体の方は?」
『すみません、それはデータになくて。でもほとんどが死亡扱いになってるところを見ると、たぶん……』
フェイトは苦虫を噛み潰したような声で止める。
たぶんその想像通りだろう。しかし、極東で起きている事と瑞穂からやってきた女も絡んでるあたり、
「機械化兵器を含めた違法兵器の研究記録と兵役記録、《魔女》に関する秘匿データ、これだけあれば十分大元を抑えられます。首監、そろそろこちらも行動するべきかと」
リインの言葉に頷き、フェイトに顔を戻す。
「執務官、そこはもういい。君も応援に来てくれ。ダルナザ軍と《掃除屋》を相手にするのに、俺とアインスだけじゃ手が足りん。飛行許可も出す」
『了解。急いで合流します――《バルディッシュ・ホーネット》、セットアップ!』
『Yes,sir!』
無機質な返事とともにフェイトの体が金色に包まれ、白いマントと黒衣のバリアジャケットに身を包み。バルディッシュも大柄な斧に
それを見ながら俺も椅子から立ち上がった。
「よし、俺たちも行くぞ。軍用車と部隊の用意は?」
「すでに終えています。入り口の前で待機しているはずです」
その言葉に首肯しながら、彼女とともに部屋を出る。
目指すは軍本部だ。この前と違って歓迎してくれなさそうだが。
◇
その頃、メルク村近郊にて国連の隊員を片付けながらも、白色肌の女は小首をかしげた。
「おかしいねぇ。向こうは《魔女》と同じ術に頼り切ってるから、私らのステルスには気付かないって話だったけど」
「金属に反応する機械式の
褐色肌の女は探知機をつまみ、呪詛を吐きながら握り潰す。
その横で隊員を殴り飛ばしてから黒衣の男が吐き捨てた。
「んなもんどうでもいい。あの村にいる《魔女》と《ZED》をとっ捕まえりゃいいだけだ。あの船からぶち壊して――」
言いかけたところで黄色い
するとナイフが発光し、まさかと思って男が投げ捨てた瞬間、彼の眼前でナイフが
「――そこまでだ!」
声と同時、長コートを着た銀髪の少女が飛び出してきた。
「私は国連調査機関EXCEEDSの調査員、チンク・ナカジマ。国連の名のもとに貴軍の軍事行動の停止を命令する!」
彼女を見て三人は目をすがめ、褐色肌の女は不可解そうに呟いた。
「半分生身で