いっぱい食べてね、もちづきさん   作:万年赤字一般傭兵

2 / 2


単行本2冊目記念も兼ねて…
すんごい好評なので続き書きました


まずは、もちづきさん視点です




天使の誘う「ドカ食い」

 

 皆さんは何に幸せを感じますか? 

 私は「ドカ食い」で生きる喜びを実感します

 

 実感、するのですが……

 

 

「あら〜、美琴ちゃんも、すっかり大きくなったわねぇ……」

 

「ほらもっと食べなさい。その年頃じゃ、女の子でも沢山食べたいだろう?」

 

「い、いえ……大丈夫ですっ。私そんなに食べませんので!」

(親戚の前でいつものように食べるのは不味い!)

 

 今日は親戚同士の集まりに来ているので、流石に控える様にしています。

 しかし、遠い場所にある集まりのため朝早くから出発したせいで、満足な量を食べてこられず頭に浮かぶのは食べる事だけ。

 目の前に広がる大人数に対応した大量の料理の数々、今すぐにでも大皿に盛ってがっつきたいが……そんな事はできない。

 

 

 

(耐えろ耐えろ耐えろたえろたえろタエロタエロタエロ!!)

 

(私は、キラキラしたお姉さん! キラキラしたお姉さん! キラキラ……キラキラ、アブラ、ジュージュー、ギトギト、オニク……)

 

 少しづつ盛って、少しづつ食べていく

 そんな生き地獄を耐え続けても終わりが来るのは親戚の食事会だけ、握り締めた箸の悲鳴がドンドン大きくなる

 

 

 

「それでは、お気をつけて」

 

「はい。それじゃあまた今度!」

 

 

 

モウゲンカイ タエラレナイ

 

 

「ち、ちょっとお手洗い、お借りしますね……」

 

 

 この集まりがあるのは都会から遠く離れた、辺り一面田んぼの田舎。歩いて行ける範囲には、家系ラーメンやSoCo日番どころか飲食店がほぼ無い。

 

 だが、店はなくとも直ぐ近くに食べ物はある。

 お手洗いに行くと見せかけてキッチンへ行き、冷蔵庫の扉を掴む。

 

 私の本能が、食欲がそこへと導いた

 

 

(ふ、ふふふ。する、するんだ……ドカ食い)

 

(要は誰かに見られなければいい!! みんな帰り始めているから……多分、見られない!! 大丈夫! 大丈夫!)

 

(あんな、あんな量で足りる訳ない……そう、だからこれは正当! 正当な行い!!)

 

 しかし、待ったをかける私の理性

 

(残り物でも、流石にバレる……?)

(もしバレたら……私の尊厳は、体裁は……)

 

 目の前の冷蔵庫は、川の様な水色

 

 賽を投げるべきか、否か

 

 ここを越えれば、待つのは私の社会的評価の破滅

 しかし、越えねば「ドカ食い」には至れない

 

 賽は、頭の中で踊っていた

 そんな時

 

 

オナカスイタオナカスイタオナカスイタオナカスイタオナカスイタ…………」

 

『お姉さん、お腹空いたの?』

 

 唐突な他人の声、しかし優しげな

 

 

(ダ……ダレダ……!?)

 

『ちょっと待ってね! 何か作るから!』

 

 破滅を悟ったが、その声は料理を作ってくれる様だ! 

 ならば、今は投げるべき時では無い。

 本能と理性の意見が、腕を組んで合致した

 

『タリナイ……タリナイ、ガマンガマンガマン』

 

 もはや永遠とさえ思えた時間、しかし耐え切り

 

『お姉さん! これ、どうぞ!』

 

 目の前に出てきた山盛りの炒飯

 食前の儀式すら今は惜しい

 

 

 パンッ いただきます

 

 この間僅か0.1秒、脳内で終わらせ

 

 

ガッ ガッ

 

うん…!!美味しい!!

うまい 油っぽくて うまい

 

 

(ソーセージとキャベツの確かな歯応えが…そしてこれらに良く絡んだ油が、塩がとにかく合う!!)

(シンプルだけど、これでも十分!!)

(油があるのに…お米はとってもパラパラでとても食べやすい、幾らでも入っちゃう!!)

 

 食べても食べても底を尽かさない炒飯

 米は分解されて糖となり、消化器官に過負荷をかけ

 

 

「……ごちそうさまでした」

 

 血糖値スパイク

 

 天使の羽に包まれた様な、安心感に酩酊感

 それらが身体中に巡っていき「至り」に達する

 

 薄れ行く意識の中、最後に見えたのは

 

 小さくて可愛らしい、微笑みをうかべた少年

 

 


 

 

 

「あ、危なかった…」

 あの後、何故かキッチンでは無く廊下の椅子で寝ていた私は妹に起こされ、そのまま帰った。幸いにも「ドカ食い」はバレなかったようだ。

 

(夢、幻…?)

 あの少年は、炒飯は何だったのだろう。満たされた腹は極限の空腹状態で見た幻でない事を確かに証明しているのだが…

 

「でも…美味しかったなぁ…」

 あの日から何度も自分で同じ炒飯を作ろうとするが…何かが足りない、何かが足りないのだ。もう一度食べたいのに。

 

 そんな何処か満たされない心と胃の穴を埋める様に「ドカ食い」へ励んでいた時、

 

 

 

 

 


 

 

「〜〜〜ごちそうさまでした…ふぁ」

 

 忙しい毎日、だからこそ身も心も溶かす様な快楽は必要だ。今日は休日、いつもの様に家系ラーメンを食べてちょっとした「至り」を感じながら家に戻り、心地よい眠りを計画していたところで…

 

 

 テンッ テレ テンテレテンテレテンテレテン テンッ テレ テンテレテンテレテンテレテン

「はい、もちづきです」

 

 唐突な着信、知り合いに悪印象を持たれては不味い。満腹感も至りも放って電話に集中するが

 

 [もしもし、若月だけど…美琴ちゃん、今ちょっといい?]

 

「大丈夫ですっ!」

 

 幸いにも仕事に関する電話では無く、親戚からの電話であった。しかし、一体何の用なのだろう?

 

 [アナタ、今一人暮らし…よね?]

 

「はい、そうですけど…」

 

 [なら良かった。実はね、ウチの息子が行きたいと言っている高校が実家からは遠いのだけれど…貴女の家からなら近いのよ]

 

 [そういう訳でね…美琴ちゃん、来年から貴女の家に泊まらせて欲しいのよ。勿論、家賃とかその他諸々のお金は出すわ]

 

(私の、家に……)

 

 親戚付き合いは大事だが…正直言って、断りたい。年頃の男子高校生という事もある。しかしそれ以上に、家でのドカ食いを控える必要が出て来たのだ。

 

 […あぁ、そういえば息子のことは知らなかったわね。今写真送ったからちょっと見てくれる?]

 

 

 色々悩んでいると、急に写真が送られてきた。

 

「か、可愛いっ…!!」

 

 そこにいたのは、何故か見覚えのある子供。

 背は自分よりも少し低い程だろうか、目はパッチリしており整った小さい顔に優しげな笑みを浮かべている、とても可愛らしい。

 脛が発光していると錯覚するほどに綺麗な足で、全体的に細いが決して細すぎない健康的な体つき。

 髪は少し短めで確かな艶があり、制服の着こなしと焼けすぎていない肌も相まって育ちの良さを感じる。

 総じて、可愛らしさを残したやんごとなき美少年といった所だ。何かを思い出せそうだが…何も思い浮かばない。

 

 [でしょう?ウチの自慢の息子よ…それに、この子家事全般を卒なくこなすのよ。美琴ちゃん、一人暮らしで忙しいでしょう?家におけば殆どの事をやってくれるわよ?]

 

「…………一度、対面で直接話をさせて頂いても良いですか?」

 

 [勿論!それなら、日程とか後で色々と調整しましょうか!ありがとう、あの子はとっても良い子だから…今までの分、親として何かしてあげたくて。]

 

 

 

 この時、ドカ食いが出来なくなるかもしれない問題は残っていたのに、何故か承諾していた。それだけ、この子が可愛いのか。

 

 或いは、食欲が導いていたのか

 

 

 その答えが分かったのは、もっと後

 

 


 

 

 

「ふぅ…」

 駅近くの喫茶店で、西からの日光に照らされた外を望みながらコーヒーを一杯。

 

(…今、私は都会暮らしのクールなお姉さん!

 僅か数時間とて…このイメージを保つ!!)

 

 今日は、私の家に泊める事になる例のあの子と初の対面をする日。ここで下手な真似をすれば…

 

…みことさんって…大人っぽくない…

 

 それだけは、それだけは避けなくては!!

 

 幸いにも電車の遅延で少しの余裕ができていた

 喫茶店で、ある程度食べることができた為今の所は大丈夫。そんな思考を頭の中で回していると

 

 

 

 あの少年が、窓の外に見えた。

 

(見た通りだ…でも、何だろう?)

 

 急いでいるのか、僅かな汗が浮かんでいたが写真で見た通りの姿。しかし喉元に引っかかった違和感は取り除けない。やがて入店し、この席まで来た彼は私を見るなり硬直した。

 

「…あの、大丈夫ですか?」

(大丈夫…だよね、何かやらかした訳じゃ…)

 

「はっ、あ…遅れてしまい申し訳ありません!」

 

 一瞬、全て見透かされてしまったかと冷や汗が出かけたが、大丈夫そうだ。そう、そうだ。私はどこから見てもオシャレなお姉さんなのだ…何も恐れる必要などない!

 

「電車の遅延は仕方ありませんから…大丈夫ですよ」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「じゃあ、改めて…初めまして、私、望月美琴といいますっ。今日は、色々と話しましょうね!」

 

「あ…初めまして、僕は"若月 太郎"と申します。

 よろしくお願いします」

 

 こうして、話し合いが始まっていった。

 

 

 

 

「えーと、太郎君でいいかな?」

 

「はい、何とでもどうぞ」

 

「じゃあそう呼びますね、太郎君。

 まずは、君のお部屋について何だけど…」

 

 

 

 

「…はい。炊事洗濯掃除買い物などの家事全般、そちらの家に泊めて頂く以上僕がやりましょう」

 

「いえ、流石にそこまでは…」

 

「もちづきさん、忙しいでしょう?僕の分までさせる訳にはいきません。…大丈夫です、こんな見た目ですが親だけじゃなく他の人からもお墨付きをもらってますよ」

 

「しかし、家賃分も含めて太郎君のお母さんから色々と貰っています。何もかもさせる訳には…」

 

「それなら…僕の食費、と言う形ならどうでしょうか?」

 

「"食費"ですか…?」

 

「はい、お恥ずかしながら…成長期でして、結構食べるのです。母からの仕送り金では少し不安でして。そこで、家事の代行をする代わりに…その分の代金を補填していただければ、と」

 

(私もドカ食いで食費厳しいから何となく分かるな)

「…あまり気は進みせんが…良いでしょう。下着などは私がやりますが、それ以外はお願いしますね。ただし、無理はしないように!」

 

「では、そういう感じで…大丈夫です!こう見えても僕、意外と力持ちですから!!」

 

 

 長くなった家事の話や、持ち込む荷物、通学時間に…様々な事務的な話こそあったが不思議な程に上手くいき、余った時間は雑談となった。

 墓穴を掘る事を恐れ、頼りになるお姉さんとして

 聞き に徹する。しかし、彼は子供とは思えないほど見た目に反して大人びており、危機感の中でも何処か楽しくなっている私がいた。

 

 しかし、時間が掛かれば

 

(不味い…!!お腹が!)

 

 当然、お腹が空く。体裁を保てる残り時間は30分あるか無いか…そんな時、橙色の光に照らされた机を見て気がついた。

 

(もう、十分に時間に経ってるじゃん!!)

 

「…そろそろ時間ですね」

 

「あっ、本当だ…」

 

「話すのも初めてでしたが…良い子ですねっ

 太郎君、是非とも私の家にいらしてください!」

 

 空腹感で頭が上手く働かないが…それでも、今回の対話でかなりの好人物である事がよく分かった。

 家事の殆どをしてくれる事は実際、とても助かる…ドカ食いも見ていない隙にすれば良いだろう。 

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

「受験、頑張ってね!」

 

「精進します!」

 

 駅へと向かう彼の姿を見ながら徐々に後退り、やがて見えなくなった所で反転してダッシュ。この辺には美味しいラーメン屋があるのだ。

 

 

 

 [高校受かりました!]

 

「おめでとうございますっ、太郎君!」

 

 [そちらに伺う日は以前話した通りで大丈夫ですか?]

 

「はいっ、大丈夫ですよ!」

 

 [そちらに伺ったら、早速家事などをやりますので。色々と説明が欲しいのですが…何を食べたいかだけ先に聞いても良いですか?]

 

「もちろん!食べたいものですか。うーん最初はどんな物を作るか見たいので、おまかせ という形でも…良いですか?」

 

 [おまかせ、ですか。分かりました、少し簡単に作れるものになりますが…それでも良いなら]

 

「全然大丈夫ですよ!」

 

 

 

 あっという間に半年ほど過ぎ去り…

 今日は太郎君が泊まりに来る日

 

 

「なんなんだよ…なんなんだよ!!!」

 

 目の前にある空のタッパーを見て絶叫

 健康的な食事の作り置きをして、いかにもできる大人を見せたかったのに…

 

「今日、今日だけは!"クールな大人のお姉さんになろう"と言ったのに!何にも変わってないじゃん!!」

 

「昨日控えめにしたせいで、昼にはラーメン食べちゃったし!!それでも、まだ足りないし!!!何もかも、中途半端じゃないか!!!どこがクールだ、計画的だ!?」

 

 本能と理性のせめぎ合い、それがもたらしたのは

 "至る"訳でもない、本当に中途半端な食事

 

 

 そんなことをしていると着信

 

 [今、買い物終わりました!後10分くらいでそちらに着きます!]

 

「 事故には、気をつけてね…」

 

 

 

「あ“あ"あ"あ"…………」

 以前に体裁を保てていたのはお腹に余裕があったからだ、今この状況では

 

 

 ピンポーン

(き、来てしまった…こうなったらぁ!!)

 

 タッパーを適当に水で流してしまい込み、キッチンに備蓄していた菓子類をポッケに突っ込んで玄関へと向かう。

 

 

「お、お邪魔します!」

 

「どうぞ!上がって〜」

 

 時刻は17:30

 太郎君は両手にパンパンになったビニール袋を持っていた。

 

「え〜っと…荷物置いたら早速夕飯作りますね」

 

「ゆっくりで大丈夫だよ!」

(オナカスイタ、オナカスイタオナカ…)

 

 

 太郎君を彼の部屋まで案内して、ある程度の説明を行う。その後、キッチンの場所を教えると早速料理に取り掛かってくれた。少しは手伝おうとしたが、やんわりと断られたのでリビングに戻る…よし、想定通り

 

 

(彼は今、キッチンにいる!私は、リビング…何かを食べてもバレはしない!!)

 

 

 ポッケの中の菓子を急いで頬張り噛み砕く、飴だろうが何だろうが気にせず顎に力を入れれば、しょっぱさと甘さが混ざり合う砂漠が構成されていき、唾液と混じった濁流で胃へと流し込まれる。

 

「ふーっ、ふーっ、満足満足…」

 

 それでも料理の待ち時間は途轍もなく長く感じられ、今からでもキッチンに行ってしまおう…そう思っていると

 

「もちづきさーん!出来ました〜」

 

「わ、わぁ…!ありがとうございますっ」

(来たっ…来たっ…!!!)

 

 遂に夜ご飯が、やって来た。

 野菜炒め、味噌汁、白米

 いつも自分が作る様なジャンク感は無く…家庭料理の様な素朴さこそあったものの

 

 

「「いただきます!!」」

 

 

「あっ…丁度いいしょっぱさ…」

 

「油感と香味ペーストの風味にしょっぱさが、いい…」

 

 しょっぱい味付けは自分好みであり、香ばしい匂いを放つ野菜炒めと味噌汁はご飯にとても合っていた。

 肉の油、そして柔らか過ぎず歯応えを残す野菜に、味噌汁のボリュームを構成するジャガイモ、米もふっくらしておりとても美味しい…このまま幾らでも食べたいが…目の前の太郎君が理性にブレーキをかけている

 

 

「ごちそうさまでした!」

 

「えっ…」

 

 

 故に、ここは控えた。

 

 

「も、もちづきさん…足りました?」

 

「はいっ。大丈夫ですよ?私、そんなに食べませんから!」

(本当は、もっと食べるけど…みっともないよね)

 

 

 大嘘だ、しかしここを耐え抜けば明日には適当な理由をつけて外食におけるドカ食いができる。

 

(今はたえろ、たえろ、たえろ………)

 

 

 

「…ごちそうさまでした…」

 

「残ってしまいましたね…明日に回しましょうか!」

(よし、よし!!このまま、このまま…!!)

 

 足りなかったとは言え、多少の余裕はできた。他の家電の説明も手早く終わり…

 

 

「それでは、お休みなさい…」

 

「慣れない場所だと思うけど…しっかり寝てね」

 

 ようやく、就寝時刻になった。

 自室の布団で横になり、今日一日を振り返る。

 

(色々あったけど…終わり良ければ全てよし!!よく耐えた、よく耐えた私!!後は寝さえすれば……)

 

 "至り"がない為、少し寝づらいが無理やり寝ようと試みて…

 

 

 

 

 

ヴ…ヴヴッヴヴヴ…オナカスイタ

オナカスイタオナカスイタオナカスイタオナカ

 

 おかしい、外はまだ暗い。朝になったら急いでラーメン屋に行こうと思ったのに早すぎないか?あれ何でキッチンへと向かっているのだろう。いやいやそこは冷蔵庫、何を、何をするつもり…!!

 

ア"ア"ア……オイシソウ…!!

 

 ダメだダメだダメだ…!開けるな開けるな開けるなぁ!!!

 

スコシ…スコシダケ…アサカラ…ガマンシテ、ゴホウビ…ノコシタラ、ワルイ…

 

 誰か、誰か私を止めてぇ!!こんなこと、こんな事あの子にバレたら…!!!

 

 

「もちづきさん。もしかして、お腹が空きましたか?」

 

 あっ

 

 

 

「…はっ!!いい、いえいえいえ、そそ、そんな事は…た、ただ喉が渇いただけですよっ…ははは」 

(行けるか……!!!!)

 

「ふふふ…それなら、お茶でも淹れますよ」

 

「え、え〜、それではお願いします…」

 

 彼の呼びかけで何とか食欲から主導権を取り戻せたが…終わったか?

 

 

 

(見られた、絶対に見られた…)

 明かりがついたリビングで頭を抱える

 

(あああ…報告、されるんだ…!親戚に言いふらされるんだ!!)

 

 今の私は、かつて妹が見ていた映画のスパイよりも追い詰められていた。もはやどうしようもないのに…絶望的な状況への打開策を練ろうとして

 

 

 

「もちづきさ〜ん、お待たせしました!」

 

「え"っ!!い、いやお腹は別に…!!」

 

 やって来たのは、体が欲してやまないあの野菜炒め

 

 

 駄目だ、もちづき。それは違う、してはいけない。

 それは彼にとって"確信"になる

 

 

「ふふ…へたですねぇ、もちづきさん。欲望の解放のさせ方が下手…!へたっぴですよ…貴方が欲しいのは、お茶なんかじゃあ無い。本当に欲しいのは…食事(コレ)!」

 

「グッ…!!ギィ!!ギィッ…!」

 

 ああ…別に良いのかな、彼はこんなにも…

 

「………………」

 

「…あぁ…アァ……!!!」

 

 太郎君、後は頼みます

 

 

 

ズァッ ガァッ ガッガッガッ…

 

うまい うまい 満足しない腹にキタ!!!

 

 具材の肉が、油のギトギト感が胃を満たしていく

 素朴な料理ではあるが…安心感たっぷりな量と、再度の温めによりしんなりした野菜が、更に濃い味付けを強調する事で確実に好みを直撃してくる。

 

 そして…気づけば、別皿に焼肉があった

 

 

でも 足りない しょっぱさが 足りない!!

 

マヨネーズ!どんどんかけろ!!!

 

でも足りない、たりない……コレだ!!

 

そおぉぉい!!!!

 

 別皿にある焼き肉をタレごと野菜炒めに投入

 

 

 

あ"あ"っ!!コレェ!!!

 

 

 しょっぱさと油は、合わさる事で天元突破

 もはや身体中の液体を塩と油の混合物で置き換えられて行くような、罪深い、しかし心地よい感覚が迸っていく

 

ズッ…ズズズズッッ……

 

 

しょっぺえぇ〜〜〜う ま い

 

 

 そんな中、鼻腔を貫く懐かしい匂い

 

 チャーハン だ

 

 

ゴォッ ゴッ ガッガッガッ

 

! この配分は…!!!

 

 キャベツやソーセージは少し大きめで確かな食べ応えをやくそくしていて…一口一口噛み締めるたびに米から、具から染み出してくる油が口内をコーティングしていく。

 だが、ただ脂っこいわけでは無かった。過剰なしょっぱさと混じり合い、油と塩の黄金比を形成。

 シンプルな材料でありながら…更なる美味しさを脳へダイレクトに伝えてきて、食べる度にあらゆる飢えが満たされていく様で

 

ああ、分かって来た。この味を確かに私は知っているんだ!どこだ!どこに!?

 

 もうすぐ、もうすぐだ

 このまま至れば…何かを掴めそうだ

 

 

 

 いくら食べても食べても無くならない。その幸せにただ浸りながら、かつての様にひたすらに食べ続け

 

 

 血糖値スパイク

 

 

 

 至った末に、思いだした

 

 目の前にある、天使の様な微笑みを

 

 

 

 

 





ここまで読んで頂きありがとうございました

主人公の描写が細かいのは、年頃の男子高校生との同居、という難しい問題への理由づけです。例のもちづきさんの様な展開にはなりません。

もちづきさん視点書くならこんな感じ…?いかんせん、原作のような食レポが出来ている気がしないです。


おまけ

元々、ショタ君は他のキャラと絡ませる予定だった。

桐本さん(糖尿病の人)となら、死神を隠し激甘な物を作り続けて寿命を砂糖の様に溶かしていく。
坂崎さん(アルコール中毒の人)となら、常に供給されるおつまみに飲みやすいけど度が高いカクテルを作って肝臓に悲鳴をあげさせる。

倉橋さん(過労の人)となら、毎日栄養バランスがしっかり取れたお弁当を作る事で不健康な食べ物事情が解決し、可愛い笑顔でお迎えも家事もして日々の癒しとなる事で生きる意欲を引き出し、毎日を素晴らしいものにしてくれる。

結局、ボツになったので誰か書いてください…幾らでもネタパクっていいので!!もっと、もちづきさんの二次創作を!!!私の様な拙い文才でもここまで評価されたので、どうか!

もちづきさん視点、あったほうがいいですか?

  • あった方がいい
  • 無い方がいい
  • どちらでもいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。