ルドガーinD×D (改)   作:トマトルテ

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第四章:現在と過去 交わらない選択の果てに
三十一話:俺の願いは一つ


あれからみんなで黒歌の話を聞いた。その内容は黒歌が何故、前の主を殺したのかだ。聞いて分かった事は無実とは言わないでも十分減刑が望める内容だったことだ。妹である小猫を守るために主を殺したというのを聞いたとき思わず兄さんの事を思い出した。兄さんも俺のためなら何でもするからな……ずっと俺のために傷ついていたよな。

 

俺の知らないところで身も心も削ってさ……。だから、黒歌と小猫には別れて欲しくない。

姉妹なんだから、家族なんだからずっと一緒に居ないとダメだよな。その為に俺に出来ることはしていくつもりだ。だからこそ、俺達は今ある人と会っているんだ。誰かって?

それは―――

 

 

「話は聞かせてもらったよ。ルドガー君」

 

「わざわざ足を運んで下さってありがとうございます。サーゼクス様、グレイフィアさん」

 

 

俺は立ち上がってサーゼクス様とグレイフィアさんにお辞儀をする。隣で役目を取られた部長が少し不貞腐れているけど気にしない。エゴだけど、この話に関しては俺が話したい。

俺の大切な人に関わることだからな。……俺が黒歌の願いを叶えてあげたい。

また、姉妹で幸せに暮らさせてあげたい。……俺達、兄弟みたいに手遅れになる前に。

 

 

「さて、早速話に入ろうか。黒歌君の件に関しては相手側にも非があるのは間違いないだろう。

 こちらでも黒歌君の元主について調べてみたが幾つかの不正の証拠も見つかった」

 

 

俺は黙ってサーゼクス様の話を聞く。今のところはこっちに有利に運びそうな内容だけど……まだ安心は出来ない。政治っていうのは善悪だけで成り立っている訳じゃないからな。

見栄や体裁を整えたりしないといけないし、悪だとわかっていても切り離せない人物だっている。

 

綺麗事ばかりではやっていけない。サーゼクス様はまだ甘い方だろうけど、ビズリーみたいな全体の為に一を犠牲にすることを戸惑わない奴だっている。……多分、ビズリーの方が俺よりも正しいことをしていたんだろうな。あいつは使命の為に自分の願いは後回しにしていたわけだし……クルスニク一族の中でもかなり異質な奴だよ。そう自己完結をしてサーゼクス様の方に意識を集中させる。

 

 

「さて……始めにルドガー君に聞いておきたい。もし黒歌君の指名手配が解かれない場合、君はどうする?」

 

 

そう聞かれて俺はチラリと黒歌の方を振り返る。少し不安げな目をした黒歌が俺を見つめ返して来る。俺は彼女に安心させるように優しく笑いかけ手招きする。そんな俺に若干戸惑いながらも黒歌が俺の隣に来てくれる。本来ならあんまり自由に動いたらいけない身だけど他のみんなも空気を読んでか何も言わないでくれる。俺は黒歌が並んだのを確認してからサーゼクス様の方に向き直る。

 

 

「今、有るもの全てを捨てて、黒歌と一緒に逃亡します」

 

「ルドガー……」

 

 

俺は黒歌の手をギュッと握りながら宣言する。そんな俺を黒歌が顔を赤らめながら見てくる。そんな黒歌が堪らなく可愛くて直ぐにでも抱きしめたい衝動にかられるがそこをグッと我慢してサーゼクス様の反応を見る。サーゼクス様は俺の方を爽やかな笑顔を浮かべながら見ているが、その目は俺を見定めるように鋭いものになっている。

 

 

「もし、私達がそれを止めようとしたら?」

 

「邪魔するものは全て壊します」

 

 

そう言うと、一気に空気が冷たくなり、睨み合うように見つめ合う俺とサーゼクス様。

サーゼクス様の雰囲気は普段の柔らかな物とはうってかわり魔王と呼ぶにふさわしい威圧感を放っている。

 

その様子に目の前にいる黒歌だけでなく後ろにいる部長達も震えている。

この場で威圧されていないのは俺とグレイフィアさんだけだ。

正直言って俺も怖いと思うぐらいだけどな……でも、引く気はない。

 

 

「私達を殺すのもいとわないと?」

 

「……それしか黒歌を守る方法が無いのなら、後悔はしない」

 

 

そう言うと、隣の黒歌に心配そうな目で見つめられる。

俺の事を心配してくれているのかもしれないけどそんなに心配することは無い。

守るためにそれしか方法が無いのであれば俺は迷わずその方法を選ぶ。

 

……みんなだって出来れば失いたくない。

でも……何に代えてでも守らないといけないんだ。

決して失ってはいけない者の為に全てを捨てる覚悟なんてとうの昔に出来ている。

 

 

「世界を敵に回してでもかね?」

 

 

 

「黒歌を守る為なら―――世界も絆も幾らだって壊してみせる」

 

 

 

俺の目からドロリとした黒いものが溢れてくるように感じられる。

黒歌が俺の生きる意味だから……俺の全てだから。

黒歌が笑っていてくれさえすれば、俺は他には何もいらない。

 

 

「そうかい……そこまでの覚悟なのだね。なら―――何も心配はいらないようだね」

 

 

そう言ってフッと微笑みかけてくるサーゼクス様に思わず呆気にとられる。

今の流れだと悪い知らせがあるのかと思っていたからな。

俺は体から力が抜けていくのを感じる。なんだかんだ言って力が入っていたんだな、俺も。

そんな俺にサーゼクス様が詳しく説明をしてくる。

 

 

「完全な無罪とは言わないでも、十分に情緒酌量の余地はあると判断してね。黒歌君のはぐれ悪魔としての指名手配は取り外させてもらった」

 

 

そう言うサーゼクス様に黒歌だけでなく小猫やみんなも嬉しそうな顔を浮かべる。みんな黒歌の事情を聞いたときは黒歌への理不尽な仕打ちに怒っていたからな。小猫は真実を知って、泣いて黒歌に抱きついていたし……ちょっと羨ましかったな、俺だってずっと守ってくれていた兄さんにああして抱きつきたかった…泣きつきたかった。

 

でも……俺にはそんなこと出来ないよな。俺が殺したんだから……。そこまで考えて思考をもとに戻す、今は黒歌のことが先だ。完全な無罪じゃないってことは何かしらの罰はあるってことだ。

そう考えてサーゼクス様を見ると案の定、意味ありげに頷いてきた。

 

 

「正し、黒歌君にはしばらくの間、監視がつくことなる。黒歌君に危険性がないと証明するためには必要なことなんだ、分かってくれ」

 

 

そう言って頭を下げるサーゼクス様。

まあ……サーゼクス様にとっても結構苦渋の決断だったんだろうな。

俺もこれ以上高望みはしない。黒歌も納得するだろ。

 

 

「……分かったにゃ。それで自由になれるなら我慢するにゃ」

 

「ありがとう。それでは―――ルドガー君は黒歌君の監視を頼むよ」

 

「…………は?」

 

 

サーゼクス様に言われた意味が分からず変な顔をして掠れた声を出してしまう。

俺が黒歌の監視……どういうことだ? サーゼクス様の言っている意味が分からずに説明を求めるように見つめると何やら、してやったりといった感じの顔で笑われた。

グレイフィアさんが何やら隣でため息をついているのが印象的だ。

 

 

「監視者は私自ら選んでね。君、以上の適任はいないと思うのだがね」

 

「……俺でいいんですか?」

 

「君はルシファーが後見人の人間だ。さらに監視場所はそのルシファーの用意した君の家だ。

 これ以上信頼出来て監視しやすい条件もないだろう?」

 

 

そう言ってさらに笑うサーゼクス様。そんなサーゼクス様の顔を見て俺も笑いがこぼれる。

俺が監視する以上は監視なんて言葉はお飾りに過ぎない。黒歌は特に不自由もなく暮らせる。なんだ……無罪も同然の扱いじゃないか。そう思って黒歌の方を見るとあっちも、そう思っていたらしく笑いながらこっちを見て来る。そしてお互いに笑い合う。さてと……これで全部終わったんだ、だから―――

 

 

「帰ろうか、黒歌。俺達の家に」

 

「うん……」

 

 

 

 

 

二階のベランダから月を眺めながら証の歌を口ずさむ。これからはごくありふれた幸せな日常が戻って来るのかと思うと胸が弾む。ミラ、俺はやっと幸せを掴めそうだよ。

でも……その前にはっきりさせておきたいことがあるよな。

 

 

「こんな所で何しているのにゃ? ルドガー」

 

「ん、月が綺麗だなって思ってな」

 

 

俺がそう言うと何故か顔を赤らめる黒歌。あれ、俺なんか変なこと言ったかな?

うーん……まあ、分からないけどいいか。黒歌の可愛い顔が見れたと思えば何も問題ないよな。

俺は黒歌が隣に来れるように少し横に移動して場所を譲る。そして、また月を眺めながら証の歌を口ずさみ始める。

 

そんな俺の横に並んで顔を赤らめてチラチラと横目でこちらを見てくる黒歌が余りにも可愛いので気づかないふりをして歌い続ける。しばらくして歌い終わると流石に何か喋った方が良いと思ったのか黒歌が話しかけて来る。

 

 

「ねえ、ルドガー。いつも歌っている、その歌って何の歌にゃ?」

 

「我が家に伝わる古い歌で、会いたくて仕方のない相手への想いが込められた『証の歌』って言うんだ」

 

「ふーん、何だか恋歌みたいにゃ」

 

「そうだな……」

 

 

恋歌か……実際の所はそんな感じだよな。歌声の巫女と呼ばれた始祖クルスニクがマクスウェルを召喚するさいに使った歌で会いたいという想いが込められたものだ。まあ、歌詞自体は髭を引っこ抜くとかの童歌みたいなものらしいけどな。それでも……マクスウェルにとっても始祖クルスニクにとっても大切な歌なんだよな。……きっと始祖クルスニクはマクスウェルと別れた後もずっとこの歌を歌い続けていたんだろうな。本当に大切な歌だ。

 

もちろん俺にとってもだけどな。兄さんから受け継いで最後にエルに託したからな。

エル……俺の歌ちゃんと覚えてくれているかな? まあ、エルなら心配いらないか。

なんたって、俺の『アイボー』だからな。

 

 

「それで、ルドガーは誰を想って歌っていたのかにゃ?」

 

「君、以外に誰がいるんだ?」

 

「にゃっ!? ……うう、ナチュラルに口説いてくるのは卑怯にゃ」

 

 

黒歌が何やら面白そうに質問してきたので、真顔で返してやると顔を真っ赤にして俯いてしまった。だが、嬉しそうに耳がピコピコと動いているので全く顔を隠している意味がない。この姿、永久保存できないだろうか? 今すぐにでも携帯のカメラで撮影するべきか?

でも、それだとこの姿が俺以外の誰かに見られる可能性が出てくるのか……仕方ない。

ここは涙を飲んで撮影しないことにしよう。それに……今は伝えたいことがあるしな。

 

 

「なあ、黒歌。俺、君に伝えたいことがあるって言ったよな。……今さらかもしれないけど伝えさせて欲しいんだ」

 

「え…う、うん。わかったにゃ」

 

 

俺は顔を上げた黒歌の目を真っ直ぐに見つめる。黒歌はそれに対して恥ずかしそうに目を逸らそうとするが俺はそれを止めさせて目を見る様に促す。……約束は目を見て行うものだからな。エルから教わった大切な約束の結び方を思い出しながら俺は深呼吸をして口を開く。

 

 

 

「君に尽くしたい、君が望む全てを叶えることを約束するよ。

 君を守りたい、君を傷つけるもの全てを撃ち滅ぼすことを約束するよ

 君を支えたい、苦しんでいるときも悩んでいるときも傍に居続けることを約束するよ。

 君を愛したい、この血肉も、意思も、魂の一欠片に至る全てを使って愛すことを約束するよ。

 だから―――俺の“生きる意味”になってくれないか?」

 

 

 

それだけ言い終わって、後はじっと黒歌を見つめる。黒歌の瞳にジワリと涙が溜まっていき、直ぐに溢れ出て来る。俺はその涙を優しく指で拭ってあげる。君の為なら何も惜しい物は無い、

俺の全てを使って君を幸せにしてあげたい。それが俺の幸せだから。

 

 

「……私なんかでいいの?」

 

 

「今ここに居る君じゃないとダメなんだ」

 

 

見た目も、心も、全く同じ君が居たとしても俺が愛しているのは今ここに居る君だけなんだ。

俺は君しか愛さないし、愛せない。だから、そんな事を言わないでくれよ。

俺はそんな気持ちを込めて黒歌を強く抱き寄せる。甘い香りと女性特有の柔らかさが伝わって来る。この温もりを守りたい……例え、どんな犠牲を払う事になったとしても。

 

 

「……嬉しい、凄く嬉しいにゃ…っ! 大好き、私もルドガーの事が大好きにゃ!」

 

「俺も大好きだよ、黒歌……愛している」

 

 

お互いが見つめあい、愛の言葉をささやき合い、自然と顔が近くなっていく。

そして俺達の距離がゼロになるのにはそう時間がかからなかった。

お互いの存在を確かめ合うように、深く、長い、口づけを交わす。

そしてどれ程、経ったかも分からないほど後に名残を惜しむように離れていく。

少し恥ずかしそうに目を背ける俺と黒歌。しかし、直ぐに顔を見合して笑い始める。

 

 

「これからは恋人としてよろしくにゃ、ルドガー」

 

「ああ、こっちこそ、よろしくな、黒歌」

 

 

そう、はにかむ様に言って、俺達は再び口づけを交わすのだった。

 

 




二人は幸せなキスをして終了(´・ω・`)

次回、持ってくる物のお知らせをします。

①ブラックコーヒー
②殴るべき壁

皆さん忘れないようにしてくださいねーww
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