時は数時間前まで遡る
エイナから地図を貰った少女、リリルカは地図と道を見比べながら道を進んでいた
彼女はベルに胸部を貫かれた後【ディアンケヒト・ファミリア】に運ばれ治療を受けギルドや【ガネーシャ・ファミリア】からの尋問を受け日常に戻った所までは良かったのだが
「……………………何ですかこれ?」
【ソーマ・ファミリア】から解放されたリリルカを待っていたのは今までの嘲りとは違い同情の視線
世間では『【喰種】に操られた憐れな小人族の女の子』と言う事になっておりリリルカの知る事実は何一つとして無かったが彼女はそれすらも利用し【喰種】の情報を集めて回りとうとう有力な情報を掴んだ、それこそ【喰種】は元【ヘスティア・ファミリア】所属のベル・クラネルでは無いかと言うものだった
「……………………ここがベル様の」
日も傾き空が赤くなり始めた頃、リリルカは【ヘスティア・ファミリア】の本拠地に辿り着きボロボロの廃教会の扉に手を掛け押すとキィと小さな音を立て開かれる。扉が何かを押し出しコロコロと転がりカランとガラスがぶつかる音が響く
「す、すみません」
薄暗い部屋にリリルカの声が響き辺りを見回せば古い椅子とテーブルに突っ伏す人物を見付ける。地面に付きそうな程長いツインテールを垂らし辺りには多少片付けたのだろうがまだまだ酒瓶が転がっておりツーンと酒の臭いが充満している
「ウッ。あ、あの~、すみません」
酒の臭いに嫌な記憶が脳裏をチラつくが振り払いツインテールの人物を揺すり起こす
「う、う~ん………………ベル君?」
出てきた名前に確信を持ち更に強く揺する
「起きて下さい!!ヘスティア様!!」
「うん?………………君は?」
ポヤポヤとした思考をゆっくり働かせているのか瞳に力が入り始めそう訪ねられる
「元【ソーマ・ファミリア】所属、リリルカ・アーデです。『【喰種】に利用された憐れな小人族』です」
「……………………そうか、君がベル君の…………良く来たね。今日はどうして来たんだい?」
「あの、ベル・クラネル様について聞きたいのですが」
「……………………話すことは何もないよ。あの子は何時も通りダンジョンに向かい何時も通りモンスターを倒していた。英雄になるために」
「……………………英雄」
「そして。ロキの所の子供達が逃がしたミノタウロスに殺された」
「…………………………」
「僕は悲しくてお酒に逃げた。酔いから覚めるとベル君が居ない現実に向き合わないと行けなくなるからまた飲んで毎日ベル君が帰ってくる夢を見続けた。でもベル君は帰ってきた。それを僕は………………そして再会した時も。僕は結局駄目な主神だ」
「ッ!!」
リリルカはヘスティアの腕を掴み無理矢理立たせるとドタドタと外に出る
「い、痛い!!リリルカ君何を!!話してくれ!!」
「うるさい!!良いから足を動かしなさい!!このヘタレ駄目神!!」
ズルズルと引き摺る様にヘスティアが連れてこられたのはタルタロス通りのど真ん中、辺りはすっかり暗くなりなぜか物々しい音が響いている。不意にリリルカが立ち止まりヘスティアを突き飛ばす、いきなりの事でヘスティアは受け身を取れず転ぶ
「痛いじゃないか!!何するんだ!!」
「見なさい!!」
そう言ってリリルカの指を追うとその向こうでベルが悲痛な叫びを上げていた
「ベル様は今もああして戦っています!!冒険者とじゃない、【喰種】としての自分と今もああして戦ってるんです!!」
「ベル君……………………」
「あああああああああああああああああ!!」
その叫びを聞いてられなくなったヘスティアは飛び出しベルと振り下ろされるオッタルの大剣の前に飛び出した