「あああああああああああああああ!!!!」
5本の尻尾を振るいベルは冒険者達を圧倒する。迷いが無くなり憂いも無くなり罪悪感からすら解き放たれた怪物は自分の後ろにいる女神を守るためにその力を弱者に振りかざす
「こいつさっきより強くなってるぞ!!」
「気を付けろ!!尻尾が鑢みたいになってやがる!!受けたら防具も肉も抉り取られる!!絶対に回避しろ!!」
「回避しろって…………」
冒険者は飛ばされる情報を目の前の光景と照らし合わせる。尻尾の速度はどう見ても下層や深層のモンスターの移動速度並み。それが【喰種】を逃がさないためにタルタロス通りギリギリまで展開された冒険者に襲い掛かってくる
避けようにも隣と背後は自分以外の冒険者か壁が塞ぎ攻撃は前から来る逃走させない為に展開した陣が今度は自分達の逃げ場を失う最悪の戦略として機能していた
「この状況でどうやって避けりゃ良いんだよ!!!!」
尻尾に触れた盾を捨てそう叫ぶ冒険者にベルの凶歯が襲い掛かる
「盾を失った者と左列から2列にいる者は各々の隣の列に入りローテーションで盾を維持し続けろ!!魔法隊は詠唱が完了した者から放て!!」
フィンの的確な指示で持ち直した冒険者達は攻勢に出ようとした時
楔の様な物が飛び冒険者達を襲う。見るとベルの背中から生えた燃える翼から羽の様に飛んできていた
「鎧に剣の様な尻尾が5本に矢を飛ばす翼………………また厄介な」
「何か策はあるのか?」
考え込むフィンにオッタルは訪ねる
「ああ、攻め方は変わらない。彼は消耗戦に弱い。此方は派手に動かず粘ればいずれ有利になる筈だ」
「…………………………」
オッタルはフィンの作戦に耳を傾けつつベルの方を見る
「………………奴が疲弊するまで此方の戦力が持つとも思えんが?」
「良いや確実に消耗してるよ。例えばほら、奴はさっきまであの尻尾や翼を展開しながら動き回っていたのに今は1歩も動かず尻尾を振り回し近付けまいとしている。動きを最小限に抑え体力の回復を計っているんだ。それに若干肩で息をしている。後はこのまま奴を休ませず決定的な隙を突くだけだ」
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ」
ベルは自身の体の状況を理解出来ないでいた
(激しく動いてる訳じゃないのに凄く疲れてる。この尻尾とかのせいか?)
5本の尻尾で敵を凪払い翼から出る楔で敵を撃ち殺す
最早敵の死体の数は数十では聞かず血の川が流れているがベルはそれを思考する事すら億劫になっている
大量の汗を流しながら敵を殺していくが次第に尻尾を振るう速度が落ちだんだんと敵が前進してくる
(そろそろ潮時だ)
ベルはジリジリとヘスティアとリリルカに近付き砂埃を巻き上げ建物の壁を超える
「ベル君⁉」
「ベル様⁉」
「ッ!!」
壁を超え屋根を伝い逃げようとした時。屋根の上に魔法使いが待ち構えており撃墜される
「グッ!!」
尻尾でヘスティアとリリルカを包み衝撃を逃す
「残念だけど、君の逃亡手段は熟知してるよ。見通しの悪い道より屋根を伝って逃げる。分かっていれば屋根の上に人を置く位するさ」
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ」
「オッタル、今度こそ君の出番だよ」
オッタルは大剣を大上段に構えベルに向かって振り下ろし鮮血がダイダロス通りを赤く染めた