ウマ娘を抱きしめたり抱きしめられたりする話   作:最後までHEATたっぷり

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5月10日はメイドの日
だから、朧気ながら浮かんだんです
『メイドシーザリオ』という単語が


メイドシーザリオ【シーザリオ】

トレーナー室の扉を開けると、メイドシーザリオがいた。

自分でも何を言っているか分からないが、とにかく目の前の光景はそうだった。

 

「シーザリオ、一体何を?」

「本日はご主人様のお世話を、させていただきます」

「その服は……」

「本日は折よくメイドの日と聞き及びましたので」

 

そうか、そうきたか。

このところシーザリオの耳がちょくちょくイカ耳になっていたので、何かしら甘やかし不足だろうとは思っていた。

そのエネルギーは同室のラインクラフトや敬愛するスペシャルウィークに向くものだろうとてっきり考えていたが。

今日が何の日かは不勉強で知らなかったが、彼女は気合が入っていることが分かる。

とにかく、自分の疲れ目がおかしい領域に達したわけでは無いらしい。

 

「お部屋の方も整えさせて頂きました……さっ、ご主人様。こちらへどうぞ♪」

「わかった。それとご主人様はその……」

「ふふっ。わかりました。トレーナー、これでいいですか?」

 

流れるようにソファーへ案内される。座った時にじっとりとした重力から半分開放される感覚が心地いい。

シーザリオはいつも通りの調子だしこちらも変におかしくなった訳ではない……のかもしれない。

それにしても流石、飾り気のないクラシカルなメイド服もよく似合っている。

 

「オムライス……はまだちょっと早いので紅茶とお菓子、お出ししますね」

「うん……助かる」

 

いつ用意していたのか、紅茶とマフィンが出される。まだこの時間だとオムライスは少し重たい。

代わりなのか、マフィンにはチョコペンか何かでハートマークが書いてあった。シーザリオらしい心遣いだ。

紅茶の熱さとフレーバー、マフィンのほんのりとした甘さが身体の芯の冷たさを溶かしていく。

その間、シーザリオは何も言わなかった。

 

「召し上がりましたか?……次はこちらを。お顔、失礼します」

「……?」

 

今度は何かと思ったらホットアイマスクを乗せられる。そんなに、顔に出ていただろうか。気をつけていたつもりだが。

紅茶とはまた違う暖かさが目元から神経を解す。すると肩にも同じようにホットパックが乗せられた。

随分、用意がいい。

 

「なんか、心配させちゃったかな……」

「このところ調子が優れない様子でしたので。今日も少しぼんやりとしておられました」

「そっか……」

「ですから、今日はゆっくりされてくださいね。こういう日も、大事ですよ」

 

そう言う事らしい。また力みすぎたのかもしれない。

それにしても、ピシッと折り目正しい魅力のオン状態と溶かしこむような甘さのオフ状態をメイド状態でやられると、なんだか頭がどうにかなりそうだ。

視界もなく与えられる熱も相まって、ふらふらとする感じがする。

 

ふと、身体が抱きとめられた。いつの間に隣に座っていたんだろう。

しなやかな張りと女性的な柔らかさが重なって存在する彼女のすらりとした長身に包まれる。

包み込む暖かさと、どこからか伝わってくる鼓動のリズムがひどく心地いい。

 

「寝不足ですか?このまま、お休みになってくださいね」

「…………ああ……」

 

香りがする。夏の海の爽やかさと、深海のように深く安寧のある香り。

シーザリオの声が子守歌のように聞こえる。

 

目がさらに重くなって、意識がどこかに落ちていきそうだ。

そうなったら、この暖かさも優しさもどこかに消えてしまうような気がした。

ボロボロと崩れて朦朧とする意識の中、微かに残った部分が逃がさないよう抱きとめ返す。

 

「トレーナー、もう……甘えんぼさんですね」

 

この手で熱をしっかりと捉えている感触がする。無上の安心感だった。

それが最後の残った意識を、暗く暖かい底へと招いていく。

抱きしめられる力が少し強くなったような気がした。

大丈夫だ。根拠はないが、包み包まれる安心感には委ねてよい。

 

沈み込むように、頭が垂れてシーザリオの肩口に沈む。

香りが強くなる。最後まで頭の中に残っていたものが溶けて消えていく。

呼吸が寝息になるまでそう時間はかからなかった。

 

「私はここにいますよ……トレーナー」

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