堕天せし明けの明星   作:ばりるべい

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酒のつまみ

 

結局、金を渡して好きなだけ買って来ていいと言う事で話がまとまったので、何とかその場に置いていかれる事は回避した。財布が薄くなる事は回避できなかったが。

暫くおぶられている内に見知った道に出た。

その頃には、かなり体力も回復していたので絶世の美女におんぶされるボロスーツの男と言う光景を他人に見られる事は無かった。酒を回収する為に午前中に通った道を経由する帰り道になったので、家に着く頃にはもうすっかり月が出ていた。

晩飯を食おうにも家の冷蔵庫の中には殆ど何も無いので、道中のチェーンの牛丼屋に立ち寄ってから帰宅した。戦闘の疲れからか普段の倍以上の量を食べ、ルシファーもその細身のどこに入るのかと思う程食べたので財布の中身が殆どすっからかんになってしまった。

 

家に帰って直ぐに今日受けた傷の確認をしたが、ネフィリムに変身すると回復力が段違いに上がるらしく殆ど傷跡も残っていなかった。

リビングに戻るといつの間にか風呂を沸かしていたルシファーがタオルが無いとボヤきながらうろうろしていた。

風呂に入る前で良かった、もし風呂上がりの状態で出会してこいつに欲情したら何か途轍もなく敗北した感じがすると思い、その直後、こいつが人の心を簡単に読む奴だった事を思い出して戦慄した。幸い、何か反応を示した様子も無くタオルの在処を探していたのでほっと一息ついた。

 

「お前、風呂上がりの女が趣味なのか?」

 

いっそ殺せ。

 

 

 

 

風呂から上がってご機嫌な様子のルシファーは冷蔵庫で冷やした缶ビール片手にテレビのチャンネル表を一通り見た後、つまらなさそうに電源を切った。

 

「酒のつまみにもならんな。…所でお前、ミカエルにどうやって攫われたんだ?」

 

「あんまり思い出したく無いんだが。」

 

「良いから聞かせろ。」

 

「お前じゃなくてこっちが良く無いんだよ…どうもあの大鷲がネフィリムの血を引いてる女の子を狙った所を俺が通りかかったらしくてな。」

 

「馬鹿か?最初から囮でお前を狙ってたんだろう?」

 

言われてみればミカエルもそんな事を言っていた様な気がする。

 

「なぁ、何で神様とやらはそんなにネフィリムを憎むんだ?」

 

「別に憎んでいる訳では無いだろうよ。」

 

「だったら何故殺す?」

 

「実際に殺しているのはミカエルやその手下だろ。」

 

「そういう意味じゃなくってだな。」

 

「あまり深入りするな。」

 

ルシファーはそう言うと急に黙り込んでしまった。

何か気に障る様なことを言っただろうか。

 

…こいつが神の命令に背いてまでネフィリムを守ろうとしている理由が関係しているかもしれない。

だがまだ俺はそれを知る権利、あるいはそれを伝えるだけの関係性が無いのだろう。

ここまで人に迷惑を掛けておいてそれは無いだろうと思うが、今のこいつはいつになく傷心した様な表情をしている。

 

「…これからどうするかね。」

 

沈黙に居た堪れなくなった俺は話題を変えようとした。

 

「…」

 

ルシファーは答えない。黙り込んだまま酒をちびちび飲んでいる。

 

「…外に出たら狙われるだろ?」

 

「…出なくたって狙われるさ。」

 

「だから、どうしようかって。」

 

「さぁな。自分で考えろ。」

 

いつに無く冷たいと言うか距離をとっている様に感じる。

一体何が気に障ったんだ…

 

結局、この後一言も交わさずに俺たちは眠りについた。

 

 

 

 

翌朝になって起きてるとルシファーは散歩に行くなどと書き置きをして外出していた。

時計を見ると8時半を指している。

俺は朝食を取ろうかと思ったが、家の中に食品が何も無いことを思い出して外に出るかどうか丸一時間程悩み続けた。

ルシファーは兎も角、俺が外出するとまず間違いなく狙われるだろう。

しかし、俺の腹の虫は駄々を捏ね続けている。

ネフィリムになってから前よりよく食べる様になった気がする。最もその“前”の記憶はないが。

延々と頭を捻り続けた挙句、ルシファーが帰ってきてから出れば良い事に気がついて変な笑いが出てしまった。

だが、昨日の今日で一緒に外出すると言ってもOKしてくれるか分からないと思い直して少し憂鬱になった。

 

そんなこんなで考え事をしたり携帯を見ながら暇を潰していると、11時を下回る頃になってようやく帰ってきた。

朝食と言うには微妙な時間だと思いながらルシファーに提案してみた。

 

「不味い所に連れて行ったら承知しないぞ。」

 

思いの外あっさり了承を得る事が出来たので拍子抜けした。

何はともあれ、機嫌が治っているならそれで良い。

俺達はきちんと鍵を閉めてから少し遠くの定食屋に歩いて行ってみる事にした。

さっきこいつを待っている間に携帯で調べて、良さげな場所だったので誘ってみようと思っていたのだ。

 

自宅の庭先を出て広い道に出ようとした矢先、直ぐ近くの畦道に長身の男女が立っているのが見えた。

男女はこちらに気づくと軽く手を上げてから近づいてきた。

背後のルシファーの機嫌がどんどん悪くなっていくのが分かる。

 

「やぁ、おはよう。天気の良い朝だね、今から何処かへ出かけるのかい?」

 

屈託の無い笑顔でミカエルはそう言った。

 

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