転生特典を原作を良くするために使った結果 作:パンダ三十六か条
追記
少し改変しました。
「はいはい、あんたは死にましたー。ハイスクールD×Dの世界に転生させてあげるから願い事言ってねー」
「……はい?」
眼を開けたらそこに居たのはヤンキー風の男でした。
*****
「つまり、貴方は転生神ってことですか?」
「その通り」
現在、あらゆる小説の二次創作や異世界ファンタジー小説などで描かれる神様、転生神。今の自分を変えたい。ファンタジーな世に行きたい、アニメやラノベのキャラに会いたい。そんな願いを元に人々が創り出した、転生を司る神。
思いとは力だ。誰かの事を思う気持ちは積もり積もれば世界を変える。人々の願いが集まれば奇跡が起こるし、人々の恨みが集まれば誰かを殺せる。
そのように、人々の転生神への信仰心が積もり積もった結果生まれた存在。それが目の前にいる男の人らしい。
ちなみにこの神様は死んだ男子高校生や引きこもりの魂を適当に集めて転生させているだけらしく、ミスで殺したとかでは無いらしい。
「とりあえず、願いを一つだけ叶えてやる。言っておくが願いを増やせ、とかは無しだ。あと世界のバランスを崩すような能力も駄目。」
神様はこちらを太々しい顔で見ながらそんな事を口にした。どうやら青だぬきの持ち物の能力のように簡単に世界を破壊してしまうような物は駄目らしい。
「あと、俺がするのは願いを叶えることのみで転生先の環境がどうなるかはランダムだから、下手したら紛争地帯に生まれてすぐ死ぬ可能性もある。だから、転生先をどうするかに願いを使った方がいいかもな」
「なるほど、以外と厳しいですね……」
せっかく強い力を貰っても、赤ん坊の間に死ぬとかもあり得るのか。以外と厳しいな、転生って。
一応願いも思いついたのに、これだと結構厳しいぞ。そっちに願いを使ったせいで、俺が生まれてすぐ死ぬとか笑えねえよ。
「あの、神様。願いを増やせたりできませんか?」
「うーん、それなら何かしらのペナルティを背負わないと駄目だな。一生童貞とか味覚消失とか。まあ、よっぽど酷いペナルティを掛けなきゃ大規模な願いを叶えられないけどな」
なるほど、二つ目の願いからは等価交換、という訳か。リスクなしでホイホイ願いを叶えるのもできないからな。
うーん、酷いペナルティか……。魂を渡すわけにはいかないし、寿命も将来困るかもしれないし……。
「それじゃあ……、今の俺の記憶とかどうですか?」
「え? それだと、お前の記憶が消えるから実質死ぬのと一緒なんだけど良いのか?」
確かに、それだと今の俺は死ぬ。転生するのは俺とは別人の奴になってしまう。実質、他人のために命を捧げるのと同じだ。
……だけど、別にそれでもいい。
「構いませんよ。俺、どうせ自殺した人間ですから」
そう、俺は自殺者だ。
俺は昔からいじられっ子だった。小学校ではトイレの個室でリンチに遭い、中学では年下連中にボコボコにされ、高校では学校中の笑い者にされ、俺は人生が嫌になって死んだ。
なのに、なんでまた人生を歩まなければならないのだ。そんなのは絶対に嫌だ。
「そうか……。それじゃあ、お前は何を願うんだ?」
「まず、一つ目の願いですが、俺を日本の中流家庭の男子に転生させてください」
多分、これで新しい俺は転生しても安全な生活を送れるはずだ。日本ではテロもないし紛争もない。比較的安全に暮らすことはできるだろう。
「それじゃあ、二つ目は?」
そう、二つ目。俺は何を願うのかはもう決めた。
ハイスクールD×Dの世界はかなり人が死ぬ世界だ。
原作に登場する主要キャラは生きているが、モブは何人も死んでいる。渦の団の神器使い達、グシャラボスの正式な跡継ぎだった人、旧魔王派の悪魔、などの何人もの人が物語の影では命を落としている。
それに、原作キャラの人々も殆どは暗い過去を背負っている。
木場は実験台にされた挙句友人を殺され自分も死にかけ、朱乃さんは母親を目の前で殺され、小猫ちゃんは姉が殺人犯になり周囲から迫害されている。
主人公のイッセーだってレイナーレに殺されかけているし、実際に身体を一度失ってすらいる。おっぱいおっぱい言っているこの世界は、実は命の価値がかなり軽い世界なのだ。
「神様。原作を変えてアーシアや木場、小猫ちゃん達を救う。という願いは駄目ですか?」
俺は戦いたくはないが原作キャラに傷ついてほしくない。
だからこれを願った。チート能力を持っていても人は死ぬ。それは紛れもない事実なのだから、俺以外の誰かの介入で原作キャラが助かったって事にしてほしいのだ。
「……叶えられる願いは一つだけ、それがルールだ。だから救えるのは1人までだ」
「そうですか……」
救えるのは1人。それじゃあ駄目だ。俺は皆を救いたい。原作のような不幸な目に合わせるのはごめんだ。
だから、願いを変えよう。できる限り多くの人が救えるような願いへ。
「神様、二つ目の願いを決めました」
「何だ? 誰を救うか決めたのか? それとも能力にするのか?」
「過去の3大勢力の大戦の時に、3つの勢力が和平を結んだことにしてください」
「は?」
神様はあんぐりと口を開けていた。
この願いなら、全員では無いが何人かを救うことが出来る。
天使と悪魔がいがみ合っていなければ、アーシアが悪魔であるディオドラを治したところで罪には問われない。
聖剣計画は、悪魔が仲間になれば、それに対抗するための武器である聖剣を研究する必要性が無くなるので行われない。
駒王町で昔起こった悲劇も発生しなくなるし、それに早いうちから和平を結んでおけば、3大勢力の小競り合いで死ぬ人も少なくなる。
「……本当にそれでいいのか?」
「はい、これでお願いします」
神様はため息を吐くと、俺に向けて手をかざした。
「お前の願いは聞き取った。お前を今からハイスクールD×Dの世界へと転生させよう。次の世界を精一杯強く生きてくれよ」
すると、俺の足元に深い穴が出現し、俺の体は下に重力に従ってひっばられていく。
周りは全部真っ暗で、何も見えない。さっきまでいた部屋の景色はぐんぐん遠くなっていく。
その中で、少しずつ俺の意識が遠くなっていく。身体が何かへ吸い込まれるような変な感じがした。これが生まれ変わるっていう感覚なのだろうか。
「神様、ありがとうございました! 原作キャラによろしくーっ!」
最後に残りの力を振り絞って髪へと叫び、俺の視界はブラックアウトした。
*****
さて、困ったことになった。
少しの変化はあるかもしれないが、大まかな流れは変わらない。世界の修正力というものは存在しているのだ。
あいつの願いははっきり言って
それを可能にする方法はただ一つ。世界のルールにとらわれない存在を使うことのみ。
「異世界から侵略者でもつれてくるか」
自分の管轄の世界はたくさんある。なんせ自分は転生神。あらゆるラノベも漫画も自分の好き勝手に出来る。
原作では、ドライグとアルビオンが戦場で暴れたので、3大勢力が休戦し、戦争が終わった。だから、今回はそこにさらに異世界からの侵略者達を導入しよう。
侵略者達のあまりの強さを前にして、3大勢力が手を組んだことにすればいいではないか。
ただ、それでも世界の修正力は強い。おそらく何人かの原作キャラは原作どおりになるだろう。だけど、出来る限りクライアントの願いを尊重しなければならない。
「にしても、困ったな。あいつ、てっきり何かしらの強い能力を願うと思ったのに」
そう言って、神様は書類を見る。それには、転生者たちにどのような願いを叶えてやり、どんな風に転生させたかが書かれている。
そして、今回の転生者の転生先。それには「兵藤一誠」と書かれていた。
「よし、仕方がない。この力を渡しておきますか」
今回投入した侵略者達。それと戦った少年の力を兵藤一誠に授けるとしよう。
そうして、神は世界の改変に取り掛かった。