「………うん?隣の大人の方は?」
リンの隣にいたせいだろう、側にいた俺に気づいた彼女は首を傾げた。答えようとしたがサブマシンガンを持ってるのを見て、言葉に詰まってしまう。
「主席行政官。お待ちしておりました」
黒髪で俺に迫るほど背の高く翼の生えた少女の手にはスナイパーライフルが、「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています」ブロンドの髪をした眼鏡をかけた少女の手にも拳銃があった。「…何でこんなに銃を持っているんだ?」思わずそんな疑問が口に出る。「キヴォトスでは銃を持つのは当たり前のことですよ?」サブマシンガンを持った少女が答える。「先生は、キヴォトスの外から来たので知らないのでしょう。ここではこれが、日常なんです」どうやらかなり物騒なところに来てしまったようだ。「先生?それより連邦生徒会長はどこにいるの!」「……連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」その言葉に場が凍りつく。「…それは本当か?」「はい。つまり「サンクトゥムタワー」の最終管理者である生徒会長がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。先ほどまで認証を迂回する方法は存在しませんでした」…俺を連れてきた連邦生徒会長とやらは行方不明、結局俺は何をすればいいんだ?「では今は、方法があるということですか、首席行政官?」「はい。この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです」「…え?」驚いてリンの方を見る。「ちょっと待って。そういえばさっきから気になってたけど、この先生はいったいどなた?どうしてここにいるの?」「キヴォトスではないところから来た方のようですが……先生だったのですね」「はい。こちらの鶴城先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」「…人選ミスでは無いといいけど」「割とネガティブですけど大丈夫ですか?」「行方不明になった連邦生徒会長が指名……? ますますこんがらがってきたじゃないの……」「鶴城史之舞だ。さっき言われた通り連邦生徒会長に言われて君たちの先生として赴任した…はず」「こ、こんにちは、先生。私はミレニアムサイエンススクールの……い、いや挨拶なんて今はどうでもよくて……!」「そのうるさい方は気にしなくていいです。続けますと……」「誰がうるさいって!? わ、私は早瀬ユウカ。覚えておいてください、先生!」ユウカと言う子が話し終わったタイミングで再びリンが喋り出す。「……先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました」
そういって手元のタブレットを操作して俺に画面を見せる。
そこには『S.C.H.A.L.E』という文字と、その地点を指し示す地図が表示されている。
「…シャーレ?」「はい、連邦捜査部『シャーレ』。単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを、制限なく加入させることも可能で、各学園の自治区で、制約なしに戦闘活動を行うことも可能です」「かなり強い権力だな」「なぜこれだけの権限を持つ機関を、連邦生徒会長が作ったのかは分かりませんが……シャーレの部室はここから約30㎞離れた外郭地区にあります。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に「とある物」を持ち込んでいます」それを話したのちに、手元の端末を操作し、誰かと通信を行う。「モモカ。シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど……」
『シャーレの部室? ……ああ、外郭地区の? そこ、今大騒ぎだけど?』
「大騒ぎ……?」
『矯正局を脱出した生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ』
「……うん?」どうやら大変な事態らしい。『連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしてるみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?』「…巡航戦車?」そんなものまであるとは、どうやら思っていたよりも物騒な所のようだ。『それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに何か大事なものがあるみたいな動きだけど?』
「……」
『まぁでも、とっくにめちゃくちゃな場所なんだから、別に大した事な……あっ、先輩、お昼ごはんのデリバリー来たから、また連絡するね!』そういって一方的にぶつりと通信を終了させられたリンの顔には青筋が浮かび、今にも爆発しそうな様子である。
「大丈夫かい?リン」
「……だ、大丈夫です。……少々問題が発生しましたが、大したことではありません」そして、何かに気付いたように。何か妙案を思いついたかのように。非常に悪い顔をしたリンは、先ほどまでの面々を見つめた。「……?」
「な、何? どうして私たちを見つめてるの?」
「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです」
「……えっ?」
「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう」
「ちょ、ちょっと待って!? どこに行くのよ!?」
そして俺は連邦生徒会長に会いに来た生徒たちと自己紹介しながらシャーレに向かったのだが…
「な、なにこれ!?」
そう叫んだユウカの声は爆音と共に搔き消される。
眼前には銃声が響き渡る戦場が目の前に広がっていた。
「どうして私たちが不良たちと戦わなきゃいけないの!」
その時1発の銃弾がユウカの胸に当たり、吹き飛ばされた。だがすぐさま起き上がるのを見て更に驚く。
「痛ったいわね!あいつら違法JHP弾使ってるじゃない!!!」
「…どういう事だ?」俺が戸惑っていると【羽川ハスミ】が俺の疑問に答えた。どうやらここでは頭の上にある【ヘイロー】の効果で通常火器程度では死なないらしい。
「今は先生が一緒なので、その点に気を付けましょう。先生を守ることが最優先。あの建物の奪還はその次です」
「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトスではないところから来た方ですので……、私たちとは違って、弾丸一つでも生命の危機にさらされる可能性があります。その点ご注意を!」
「分かってるわ。先生、先生は戦場に出ないでください! 私たちが戦っている間は、この安全な場所にいてくださいね!」
「分かった。大人しくしてるよ」
しばらく彼女たちが銃撃戦を続けると、轟音と共に巡航戦車がやって来た。操作は素人のようだがそれでも彼女達は攻めあぐねていた。「…手を貸すとしよう」
俺はそう言うと生徒に指示を飛ばす。
「ユウカ、戦車の注意を引き付けてくれ。俺に作戦がある」
「はい!?…分かりました!」
そう言うとユウカはシールドを張りながら戦車の注意を引き付け始めた。
「ハスミは狙撃で他の生徒を、チナツはユウカを回復してくれ」「「分かりました!」」彼女たちも俺の命令に答える。
「先生?私は何を…」その時、未だに俺から指示を受けてない【守月スズミ】が連絡してきた。
「ちょうど良かった。スズミ、君には…」
~ユウカside~
何時まですれば良い?私は戦車の注意を引き付けながら考えた。あの先生は作戦があると言っていたがあれ以降何も連絡が無く不安が高まる。まさか、逃げた?そんな考えが頭に過ぎった時、目の前の戦車に違和感を感じた。厳密には戦車の上、そこに二人程の人影がいた。一人はトリニティの自警団だと言う守月スズミ、もう一人は…「え、先生!?」後方に居るはずの先生が戦車の上に立っていた。
~sideout~
「さて、行くぞスズミ」「分かりました先生!」
俺がスズミに出した指示は【俺と一緒に戦車に回り込む】と言う物だ。そして、戦車に乗り上げた俺はハッチを強引に開けた。同時にスズミがスタングレネードを戦車内に投げ入れる。そして起爆後、戦車の中に飛び込み格闘戦で操縦士たちを制圧した。
「これで終わりかな」そう考えリンに連絡を取る。
『はい、今の戦闘でほぼ壊滅。残りも逃げ出しています』
「なるほど。皆、お疲れさま。俺は地下に向かうから、リンが来るまで護衛していてくれ」
「先生、それは危険では?万が一ワカモが侵入していたら危険ではないでしょうか?」
「大丈夫、室内なら遅れは取らない」
そう言って俺はシャーレの地下に向かった。