遊戯王OS   作:ペント

10 / 21
第9話「偽りのタイゲーム」

遊幾とカルロは叫び声の聞こえた方角――東の森へと、息を弾ませながら駆けた。

 

「誰かが……やられたのか?」

「クアドラウォッチに通知が来てる。……また脱落者だ」

カルロの問いに遊幾が答えた。画面には、二人目の脱落者を知らせる表示が浮かんでいた。

 

「さすがにこんなに早く、立て続けに脱落者が出るのはおかしい……」

遊幾はずっと疑問に思っていたことを口にした。

 

「たしかにな……。オレとは違って、真面目な面したやつが多かったからな。救済措置を使わねぇのは不自然か……」

 

やがて木々の切れ間に、小さな広場のような場所が現れる。そこにいたのは、地面に膝をつき、うなだれる一人の青年だった。

 

「……おい、大丈夫か!」

カルロが駆け寄り、青年の肩に手を置く。青年は顔を上げると、悔しさと怒りが入り混じった目で二人を見た。

 

「……君は、チームレドックスの……」

遊幾の言葉に、青年は頷いた。

「……山吹隼人だ。お前もレドックスだったな。悪い、こんな姿で」

その表情には、ただの敗北以上のものがにじんでいた。

「何があったんだ? どうしてこんなことに……」

明らかに意図しないであろう脱落に遊幾が尋ねると、隼人は唇を噛みしめ、やがて事の一部始終を語り始めた。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

事の始まりは、チーム・タイダルの受験生、サイモン・ルーリエとの遭遇だった。

 

「……君、デュエルしようぜ?」

短い問いかけに、隼人が頷こうとした、そのとき。

 

「おーっと、そこの君たち! そのデュエル、ちょっと待ってもらえるかな?」

――現れたのが、チーム・テンペストのエリオット・ヴェインだった。

ブロンズヘアーのオールバックで、グレーのジャケットにチェック柄のスラックス。優雅な立ち振る舞いと穏やかな口調の男である。

 

エリオットが軽快な足取りで二人の前まで来ると、余裕のある表情で喋り出した。

「君たち、まじめにデュエルしてコツコツメダルを集めるつもりかい?」

 

思いもしない言葉に固まる二人に、エリオットがさらに続けた。

「この1次ラウンドで三種類のメダルを集めるのは大変だよ? 三勝すればいいわけじゃない。同じチームの相手とばっかり出会うこともあるんだ。……そこでだ、こんな方法、どうだろう? 三人で協力して、メダルをうまく分配するんだ。デュエルの結果を一勝一敗ずつにして、それぞれが別チームのメダルを一枚ずつ持つ。そして、失った分は救済措置で補充。そうすればあとは残り時間をたっぷり使ってチーム・ブラスターの人間を探すだけでいい。……合理的だと思わないか?」

最初は戸惑ったが、エリオットの説得は巧みだった。

 

「競い合うばかりが試験じゃない。時には、賢く立ち回るのも大事だよ」

隼人もサイモンも、その提案を受け入れた。

 

まずは隼人とサイモンがデュエルし、サイモンが勝利。次に、サイモンとエリオットがデュエルし、エリオットが勝利した。

 

そして隼人とエリオットのデュエルが始まる。このデュエルでは隼人が勝つことになっている取り決めだった。

 

「デュエル!」

 

エリオット・ヴェイン【C級】

チーム・テンペスト

LP : 4000

 

VS

山吹隼人【C級】

チーム・レドックス

LP : 4000

 

 

【ターン1】――エリオットのターン

→[ドローフェイズ]

「ボクのターン」

 手札:5→6

 

→[スタンバイフェイズ]→[メインフェイズ1]→[エンドフェイズ]

「さっさと済ませよう。ボクはターンエンドだ」

 

エリオット LP:4000、手札:6

 
34
 
 
 
 
 
 
0

 
0
 
 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
0

 
0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
35

隼人 LP:4000、手札:5

 

【ターン2】――隼人のターン

→[ドローフェイズ]

「俺のターン」

隼人 手札:5→6

 

→[スタンバイフェイズ]→[メインフェイズ1]

「俺は《混沌の呪術師》を召喚」

 

混沌の呪術師

闇属性 レベル2 ATK/500 DEF/500

【魔法使い族/リバース/効果】

①:このカードがリバースした場合、自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動する。そのモンスターをゲームから除外する。

(※テキストエラッタ)

 

フィールドに闇の魔術師が現れる。だが、それを見たエリオットは鼻で笑った。

「おいおい、そんな攻撃力のモンスターじゃ時間がかかっちゃうよ〜」

 

「分かってるさ、だからこいつも出す――手札から《ジゴバイト》を特殊召喚」

 

「いいねいいね。そうこなくっちゃ」

 

ジゴバイト

水属性 レベル4 ATK/1500 DEF/200

【爬虫類族/効果】

①:「ジゴバイト」は自分フィールドに1枚しか表側表示で存在できない。

②:自分フィールドに魔法使い族モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

③:このカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「ジゴバイト」以外の攻撃力1500/守備力200のモンスター1体を特殊召喚する。

 

→[バトルフェイズ]

「《混沌の呪術師》で直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

エリオット LP:4000→3500

 

「《ジゴバイト》で直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

エリオット LP:3500→2000

 

その瞬間、エリオットの表情が変わった。

「この瞬間――手札の《冥府の使者ゴーズ》の効果を発動!」

 

「なっ……!?」

 

「ボクは《冥府の使者ゴーズ》を特殊召喚し、さらにこのターンに受けた1500の戦闘ダメージと同じ攻撃力・守備力を持つ《冥府の使者カイエントークン》を特殊召喚するよ」

 

冥府の使者ゴーズ

闇属性 レベル7 ATK/2700 DEF/2500

【悪魔族/効果】

①:自分フィールド上にカードが存在しない場合、相手がコントロールするカードによってダメージを受けた時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。

②:このカードの①の方法で特殊召喚した時、受けたダメージの種類により以下の効果を発動する。

●戦闘ダメージ:自分フィールド上に「冥府の使者カイエントークン」(天使族・光・星7・攻/守?)を1体特殊召喚する。このトークンの攻撃力・守備力は、この時受けた戦闘ダメージと同じ数値になる。

●カードの効果によるダメージ:受けたダメージと同じダメージを相手ライフに与える。

(※テキストエラッタ)

 

突如現れた2体の大型モンスターに、隼人は目を見張った。

「お、おい……何だよ……そのモンスターは!」

 

「こいつか? レベル7の悪魔族モンスターさ。さあ、次の手は?」

 

→[メインフェイズ2]→[エンドフェイズ]

エリオットが不敵に笑う中、隼人は言葉を失いながら呟いた。

「……ターンエンド」

 

エリオット LP:2000、手札:5

③冥府の使者ゴーズ(ATK:2700)、④冥府の使者カイエントークン(ATK:1500)

 
34
 
 
 
 
 
 
0

 
0
 
 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
0

 
0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
34

①混沌の呪術師(ATK:500)、②ジゴバイト(ATK:1500)

隼人 LP:4000、手札:4

 

【ターン3】――エリオットのターン

→[ドローフェイズ]

「じゃあボクのターンだ」

エリオット 手札: 6→7

 

→[スタンバイフェイズ]→[メインフェイズ1]

「そういうことを聞いてるんじゃない! どうしてそのモンスターを出したのかを聞いてるんだ……!」

動揺した声で問い詰める隼人に、エリオットは目を見開いてこう答えた。

「ああ、それはね――”気が変わった”んだよ、このカードのようにね! 魔法カード《心変わり》! 君の《ジゴバイト》をいただくよ」

 

心変わり

通常魔法

①:相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る。

制限(リミット)グレード3)

 

「……そんな、話が違うじゃないか!」

 

→[バトルフェイズ]

「《ジゴバイト》で《混沌の呪術師》に攻撃!」

ジゴバイト ATK:1500 VS DEF:500 混沌の呪術師

「ぐあぁ……」

隼人 LP:4000→3000

混沌の呪術師→戦闘破壊

 

「《冥府の使者カイエントークン》と《冥府の使者ゴーズ》で直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

「ぐわぁぁぁぁーーーっ!!」

隼人 LP:3000→1500→0

 

デュエル終了 勝者:エリオット・ヴェイン

 

膝をつき、隼人は地面に崩れ落ちた。その横に、エリオットがゆっくりと近づく。

「いやいや悪いねぇ……でもルールはルールだからね」

そう言って、隼人の胸元からチームバッジを奪い取り、スタスタとその場を立ち去った。

 

「お、俺は関係ないからな……」

一部始終を見ていたサイモンが、目を逸らしながら小声でそう言い、慌ただしく背を向けて歩き出す。

 

結果、メダルを全て失った隼人は即脱落となった。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

――隼人の語った出来事に、重い沈黙が流れた。

「つまり、お前は……そのエリオットってやつにハメられたってわけか」

低く唸るようにカルロが言った。

 

「……ああ、俺も馬鹿だったよ。ルールの穴を突いて、一歩リードできると思ったけど、うまい話には裏があったのさ……」

隼人は唇を噛みながら、地面を睨みつけた。

 

「最初の脱落者、あれもエリオットの仕業だろうな……」

遊幾の脳裏に、クアドラウォッチに表示された最初の脱落通知がよぎる。

 

「きたねぇ……きたねぇぜ! エリオットの特徴を教えてくれ。オレが見つけて、燃やし尽くしてやる!」

カルロが拳を強く握り、隼人の前に膝をつく。

 

「……ああ、忘れるもんか。細身で、ブロンズヘアーのオールバック。グレーのジャケットにチェック柄のスラックスのやつさ」

「グレーのジャケットにブロンズヘアーのオールバック……ああ、いたな。確かにひときわ目立ってた」

カルロの表情に怒りが宿る。

 

「オレは行く。あんな卑怯なやつを、野放しにしとくわけにはいかねぇ。次の犠牲者を出す前にな」

「ありがとう……俺は、試験からは脱落したけど、このままじゃ帰れない。できるだけ多くの受験生に、エリオットのことを伝えてから帰るつもりだ」

「俺たちも、できる範囲で警戒を呼びかけてみる」

遊幾も強く頷く。

 

それぞれの覚悟を胸に、三人は再び静かな森の中へと足を踏み出した。今度は、それぞれ別の方向へと。

 

 

その頃、ヴェルデ大自然公園・北西部――

 

朝の陽が木々の隙間から差し込む中、チーム・タイダルのアレン・クロフォードと、チーム・ブラスターの竜見 陸央(たつみ・りくお)が、静かに対峙していた。

 

アレンのフィールドには、鋼鉄に身を包んだ巨人のモンスター。陸央のフィールドには、《竜王キング・レックス》。両者は睨み合うように向かい合っていた。

 

????

?属性 レベル? ATK/???? DEF/????

【機械族/効果】

??????

 

竜王キング・レックス

地属性 レベル9 ATK/3200 DEF/1200

【恐竜族/効果】

①:このカードの攻撃で相手モンスターを破壊した時に発動できる。このバトルフェイズ中、このカードはもう1度だけ攻撃できる。

②:このカードがこのターンに召喚・反転召喚・特殊召喚されていない場合、1ターンに1度、相手フィールドのモンスターを2体まで対象として発動できる。そのモンスターを破壊する。

 

「最後の攻撃だ。《竜王キング・レックス》に攻撃!」

アレンが腕を振り下ろした瞬間、鋼鉄の巨人が重々しい足音とともに駆け出し、陸央の《竜王キング・レックス》に襲いかかる。

 

<<ダメージステップ>>

???? ATK:3900→7800

 

「攻撃力7800だとぉ⁉」

陸央の顔色がみるみる青ざめた。

 

???? ATK:7800 VS DEF:3200 竜王キング・レックス

 

猛々しい竜が咆哮を上げて立ちはだかるも、あっけなく弾き飛ばされた。

激突の衝撃に地面が震え、爆風が巻き起こる。

「ぐわああああーーー!」

陸央 LP:3000→0

 

デュエル終了 勝者:アレン・クロフォード

 

フィールドから立ち上る煙の中、陸央は膝をついて敗北を認めた。そして、胸元からチームバッジを外し、静かに差し出す。

「完敗だ……あんた、強えな」

 

アレンはそれを受け取りながら、ふと視線を伏せた。

「礼を言う。悪いが、先を急いでいる。ここで失礼させてもらう」

冷ややかな口調でそう言い残すと、アレンは踵を返し、再び森の奥へと消えていった。

 

 

それから少し時間が経過し、ヴェルデ大自然公園・北東部。針葉樹の隙間から差し込む陽光を浴びながら、チーム・レドックスの大源寺健斗は焦燥を滲ませながら森を歩いていた。

 

「くそっ……もう10時過ぎか。試験開始から2時間も経ってんのに、まだ一回もデュエルできてねぇ! 悠長に森林浴してる場合じゃなかったぜ……」

クアドラウォッチを何度も確認しながら、額の汗を拭う。道なき道を進んでいくと、やがて開けた空間に出た。

 

そこには一人の受験生が座り込んでいた。が、腕のクアドラウォッチは緑色に光っている。セーフモードだ。

 

「なあ、あんた。デュエルしないのか?」

健斗が尋ねると、

「悪いな。救済措置を使ったから、今はデュエルできないんだ」

と、申し訳なさそうに返された。

 

「そうなのか……そいつは悪かったな」

(……ってことはもうデュエルした後ってことじゃんか)

 

健斗は肩を落とした。そして再び歩き出した彼の背後に、軽い足音とともに声がかけられる。

「ねえ君、スタンバイモードだよね?」

 

「……え?」

 

振り返った先に立っていたのは、落ち着いた笑みをたたえた青年だった。涼しげな目元に、整った黒髪。チーム・テンペストのバッジを左腕に着けている。

 

「僕はチーム・テンペストの日向(ひゅうが)ヒロ。君、まだデュエルしてないんでしょ?」

 

「チーム・レドックスの大源寺健斗だ。ああ、まだだよ。何で分かったんだ?」

 

「だって君、どう見ても弱そうなのに、まだスタンバイモードだったからさ」

 

「なにぃ‼︎ なら俺が弱いかどうか、デュエルではっきりさせようじゃないか?」

挑発に憤りながらも、健斗は拳を握りしめ、ぐっとこらえる。

 

「ああ、いいとも。始めようか、どっちが弱いかを証明するデュエルを」

 

その言葉を聞き、健斗がデュエルを申し込もうとするが、日向のクアドラウォッチはセーフモードだった。

「デュエルするんなら、スタンバイモードに切り替えろよな」

 

「おぉ……そうだった。悪い悪い」

そう言って、日向はクアドラウォッチをセーフモードからスタンバイモードに切り替えた。

 

日向が挑発的に微笑み、健斗は目を細める。互いにデュエルディスクを構え、レギュレーションカードを発動する。

 

「レギュレーションカード、モダン・レギュレーション発動!」

「レギュレーションカード、モダン・レギュレーション発動!」

 

「……デュエル承認……デュエル承認……」

「デュエルタイプ、スタンダード・ゲームモード。READY」

 

「デュエル!」

 

大源寺健斗【C級】

チーム・レドックス

LP : 4000

 

VS

日向ヒロ【C級】

チーム・テンペスト

LP : 4000

 

──各所で様々な思惑とデュエルが交錯する中、健斗の初デュエルが幕を開ける──

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。