遊戯王OS   作:ペント

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第11話「真昼の星空」

大自然公園の南東部。

 

カルロに声をかけられたエリオットが口を開く。

「へぇ、ボクの名前を知ってるとは光栄だね」
エリオットは肩をすくめ、いつもの柔らかな笑みを浮かべる。さらにエリオットは顎に手をやり言葉を続けた。

「……君はたしか、チーム・ブラスターのカルロ・ジマーマン君。デュエルが大好きなんだよね?」


「お前こそ、オレのことよく知ってんじゃねぇか。なら話が早い。ここでデュエルだ!」

カルロの迫力に周囲の空気が張りつめる。だがエリオットは首を振って、手首のクアドラウォッチを示した。

「悪いけど、ボクは今休憩中なんだよね。他を当たってくれる?」

 

(こいつのデッキは確かバーンデッキ。……今のボクのデッキとは相性が悪い。よく見積もっても勝率5割はないだろう。そんなリスキーなデュエル誰がするものか。デュエルするならデッキの内容を自由に入れ替えられる2次ラウンドでだ。そこなら十分に対策を取って勝負してあげるよ)

エリオットは分の悪い勝負を避けることをあらかじめ決めていた。

 

カルロは断られたものの引き下がらない。

「ほう……インチキな勝負ならできるけど、正々堂々の勝負はイヤってか」

 

「なんかボクのこと色々知ってるみたいだけど、”インチキ”とは人聞きが悪いな……。サバイバルを勝ち抜くための戦術さ」

 

「まあなんとでも言えばいい。ただオレはお前と正々堂々の勝負をしたい。休憩中って言うのなら、休憩が終わるまで待つぜ」

カルロは一歩下がり、黙って付き従う構えを見せる。

 

「……やれやれ、頑固だなぁ」

エリオットは小さく苦笑しながら、森の小道を歩き出した。カルロもエリオットとの距離を保ちながら後を追う。

 

(さすがに、もうあの手は使えないか……。しかし面倒なことになったなぁ、どこかでうまく撒けるといいんだけど。ボクはこの後チームのメンバーに会って情報共有の時間があるというのに……。この後は、デュエルした受験生の情報をチームで共有し、自分の勝てそうな相手に狙いを絞る、という素晴らしいプランがあるというのに、ついてないねぇ……)

エリオットがこの後どうするかを考えながら歩いていると、木立の合間に別の受験生が見えてくる。チーム・タイダルの香月ソウタだ。

 

(ククク……これはいいところに)

地図を広げて立ち止まっていた彼に、エリオットは軽い調子で声をかける。

 

「やぁ、そこの君。デュエル相手を探してるんじゃない?」

「え? あ、まぁ……そうっすけど」

 

エリオットは笑みを崩さず、背後を親指で指した。

「それは良かった! ちょうどそこにデュエルしたがってるのがいるんだ。相手してあげてくれないかな?」

 

「おい、オレはお前とデュエルするって――」

カルロがエリオットの言葉に反応し話し始めた時にはソウタがカルロに駆け寄ってカルロの言葉を遮った。

「本当ですか⁉︎ お願いします。僕とデュエルしてください!」

 

「カルロ君、今、デュエルを申し込まれたよね? クックック、これは断れない」

エリオットがカルロの方に振り返り、にやついた顔で喋った。

 

(やられた……! エリオットめ、最初からこのつもりで)

「くっ……!」

カルロは悔しげに歯を食いしばり、顔をしかめた。

「わかった……仕方ない。デュエルしよう」

 

「それじゃお二人さん、デュエルがんばってね〜」

エリオットは満面のニヤケ顔でそう言うと、歩き出し、森の奥へと姿を消した。

 

 

その頃、エルダ島では──

 

星見の丘では、子供たちと忠雄が居間に集まり、結のC級ライセンス試験のネット配信を見守っていた。

 

C級ライセンス試験会場、結のデュエルフィールドには濃紺のローブを身に纏い、月の紋章が刻まれた杖を持った少女のモンスターが立っている。

 

「《秘月の民(ミスティックルナリアン) シャドウ・メイデン》でプレイヤーに直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 

秘月の民ミスティックルナリアン シャドウ・メイデン

闇属性 レベル? ATK/???? DEF/????

【魔法使い族/効果】

??????

(オリカ)

 

結の掛け声ともに、魔法使いのモンスターが杖を振って試験管に攻撃する。

 

「くぁーーーー」

試験管 LP:1200→0

 

デュエル終了 勝者:七元 結

 

テレビモニターの中で結が勝利を収めると、部屋の空気は一気に弾ける。

「やったー! 結姉ちゃん、すごい!」

「最後の攻撃、めっちゃキマってたな!」

「これで、結姉ちゃんも正式にC級デュエリストだね!」

メイもゲンもタケルも、飛び跳ねたり拳を握ったりして大喜びだ。

 

「ふむ……さすが結じゃのう」

腕を組んでいた忠雄も目を細め、満足げにうなずいた。

 

しかし、興奮冷めやらぬ子供たちの口から、すぐに別の不満が飛び出す。

「でもさー、なんで遊幾兄ちゃんの試験は配信ないの?」

タケルが率直な疑問をぶつけると、ゲンとメイも続いた。

「そうだよ! オレも見たいのに!」

「結姉ちゃんは見られて、なんで遊幾兄ちゃんは見られないの?」

 

三人の抗議の声に、忠雄は軽く咳払いをして答える。

「遊幾が受けとるのはクアドラ・サバイバルっていう試験じゃ。マックスが話しておっただろ? 今日は1次ラウンドで、森の中で行われるサバイバル形式の予選じゃからの。カメラや機材を入れるのは難しいのじゃよ」

 

「うーん……」

「そっかー……」

肩を落とす子供たちに、忠雄は口元に笑みを浮かべる。

「安心せい。遊幾が1次ラウンドを勝ち抜けば、2次ラウンドからは配信がある。お前たちもそこで、存分に応援できるじゃろう」

 

「ほんとに!?」

「よっしゃー! 絶対勝ち上がってほしい!」

「遊幾兄ちゃんならできるよ!」

再び子供たちの顔が明るくなる。

 

テレビモニターに映る勝利の余韻を残したまま、部屋は遊幾の健闘を願う声でいっぱいになっていた。

 

 

 

 

──時刻は12時30分、ヴェルデ大自然公園

 

公園の西部は、昼の日差しに照らされて木々の影が濃く落ちていた。

 

遊幾が落ち葉を踏みしめながら進んでいると、正面の小道から一人の少女が歩いてくる。

ダークブラウンの髪を高い位置で結んだポニーテール。軽やかなデニムジャケットに紺のスカートという出で立ちで、目に自信を宿していた。

 

「こんにちは。あなた……八上遊幾ね?」

互いに近づいたところで、少女が先に口を開いた。遊幾はその言葉に立ち止まる。

 

「そうだけど……君は?」

「私は霧島ミオ。チーム・タイダル所属よ」

彼女は口角を上げ、明るく名乗った。

 

「ミオ……。初めまして」

遊幾が応じると、彼女は腰に手を当て、にやりと笑う。

 

「ふふっ、やっぱり。私に出会うってことは、あなた、結構な腕前を持ってるってことね」

「え? どうしてそう思うんだ?」

不思議そうに首を傾げる遊幾。

 

「占いよ。私、占い師やってるの。まだ見習いだけど」

ミオは胸ポケットから小さな星図カードを取り出し、日の光にかざしてひらひらと振ってみせる。

 

「私は星座占いが得意なの。夜空の星の並びを読むことで、人の運命や未来がわかるのよ」

「星座占い……?」

遊幾は思わず見入る。

 

「そう。B級試験を受ける前に、自分の未来を占ったの。そしたら“強いデュエリストにたくさん出会える大会”が映ったのよ。それがこのクアドラ・サバイバルだったわけ」

彼女は自信たっぷりに笑い、星図カードを胸に戻した。

 

「なるほど……強い相手とデュエルしたいっていう、すごい向上心だな」

遊幾が感心すると、ミオはいたずらっぽく首を振る。

 

「違うの。私が好きなのは――“デュエルを通して相手の未来を視ること”よ。強い人の未来って、どんな展開が待ってるかワクワクするでしょ?」

 

「相手の……未来を?」

遊幾はその言葉を心の中で反芻した。未来を占いで決めつけるなんて、自分には想像もつかない。けれど、そんな力を信じて突き進む彼女の姿勢には、不思議と惹きつけられるものがあった。
(デュエルで相手の未来を視る……一体、どう映るんだろう?)

 

「そう。だから、あなたの未来も見せてもらうわ」

ミオは挑戦的に指をさす。

 

「……つまり、俺とデュエルってことだな!」

遊幾も自然と笑みを浮かべる。

 

「もちろん!」

明るく言い切ると同時に、ミオはデュエルディスクを展開した。

 

「さあ、見せてもらうわ。八上遊幾――あなたの未来を!」

「ああ、いいだろう。俺の全力で応えてやる!」

遊幾もまたディスクを起動させ、二人の間にソリッドビジョンが立ち上がる。

 

「レギュレーションカード、モダン・レギュレーション発動!」

「レギュレーションカード、モダン・レギュレーション発動!」

 

「……デュエル承認……デュエル承認……」

「デュエルタイプ、スタンダード・ゲームモード。READY」

 

「デュエル!」

 

霧島ミオ【C級】

チーム・タイダル

LP : 4000

 

VS

八上遊幾【C級】

チーム・レドックス

LP : 4000

 

【ターン1】――ミオのターン

→[ドローフェイズ]

「私の先攻ね、ドロー」

ミオ 手札:5→6

 

→[スタンバイフェイズ]→[メインフェイズ1]

「私はモンスターをセット」

 

→[エンドフェイズ]

「これでターンエンドよ」

 

ミオ LP:4000、手札:5

 
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遊幾 LP:4000、手札:5

 

【ターン2】――遊幾のターン

→[ドローフェイズ]

「俺のターン」

遊幾 手札:5→6

 

→[スタンバイフェイズ]→[メインフェイズ1]

「このデュエルで俺のこの試験の結果でも占ってくれるのか?」

遊幾が挑発気味にミオ尋ねる。

 

「残念だけど、そんな直近の未来は視えないわ。私が占うのは数ヶ月から数年先の未来。それもあなたにとって重大なターニングポイントとなるような場面よ」

 

「ターニングポイント?」

 

「そう。未来を知ることによって今後選択すべき決断をより迅速かつ確実に行うことができる。未来視こそ人類が豊かにできる手段よ。……ま、私のチームには過去ばかりにこだわろうとする変な人もいるんだけど」

 

「過去?」

 

「あ、ごめんなさい。関係ない話だったわね。デュエル続けてちょうだい」

 

「ああ。俺は《ホーリー・ドール》を召喚」

 

ホーリー・ドール

光属性 レベル4 ATK/1600 DEF/1000

【魔法使い族/通常】

聖なる力を操る人形。闇での攻撃は強力だ。

 

→[バトルフェイズ]

「《ホーリー・ドール》で裏守備モンスターに攻撃」

裏守備モンスター▶︎星環の従者

ホーリー・ドール ATK:1600 VS DEF:500 星環の従者

星環の従者→戦闘破壊

 

「この瞬間、《星環の従者(ステラアーク・サーヴァント)》の効果を発動するわ。デッキからレベル4以下の『星環(ステラアーク)』モンスター1体を特殊召喚する。私は《星環の巫女(ステラアーク・プリーステス)》を守備表示で特殊召喚」

 

星環の従者ステラアーク・サーヴァント

闇属性 レベル2 ATK/0 DEF/500

【悪魔族/効果】

①:このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから闇属性以外のレベル4以下の「星環(ステラアーク)」モンスター1体を特殊召喚する。

(オリカ)

 

星環の巫女ステラアーク・プリーステス

光属性 レベル1 ATK/100 DEF/100

【魔法使い族/効果】

このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。

①:このカードをリリースして発動できる。デッキから「星環(ステラアーク)」魔法カード1枚を手札に加える。

(オリカ)

 

「ステラアーク? 初めて見るモンスターだ」

遊幾が目を丸くしてミオのモンスターを見る。

 

「当然ね。『星環(ステラアーク)』は、この世界で私しか持ってないカードだから」

 

「そんなレアカードなのか?」

 

「このデッキはね、私のおばあちゃんから譲り受けた物なの。おばあちゃん言ってたわ、『星環(ステラアーク)』は神様が作ったカードだって。だから世界に一つしかないんだって」

 

「神様が作った? なんでそんなこと分かるんだ?」

 

「神様の存在は疑わないのね。面白いわ、あなたって」

ミオはそういうと、一呼吸入れて少し顔を赤らめながら喋り出した。

「実はね、私のおばちゃんは、デュエルモンスターズの精霊とお話ができるのよ。それでその精霊から聞いたらしいの、『星環(ステラアーク)』の成り立ちを。……まあ、信じるかどうかはあなた次第だけど」

 

「精霊と会話できるのか……すごいな、それ!」

遊幾は驚いたように反応はしたものの、内心どこかでホッとした気持ちになっていた。

 

「ちょ、ちょっと! あなたってほんと素直すぎ……いや……その……信じては欲しいんだけど、その調子だと、そのうち人から騙されて痛い目見ることになるわよ!」

 

「そっか。じゃあ半信半疑にしておくよ」

顔を赤らめるミオに対して遊幾は笑顔で言葉を返した。

 

→[メインフェイズ2]

「俺はカードを1枚セット」

 

→[エンドフェイズ]

「ターンエンドだ」

 

ミオ LP:4000、手札:5

②星環の巫女(DEF:100)

 
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①ホーリー・ドール(ATK:1600)

遊幾 LP:4000、手札:4

 

【ターン3】――ミオのターン

→[ドローフェイズ]

「私のターンね、ドロー」

ミオ 手札:5→6

 

→[スタンバイフェイズ]→[メインフェイズ1]

「ちょっと調子が狂っちゃったわね。でもここから私のデッキの本領発揮よ。私はフィールド魔法《星環の天穹(ステラアーク・ファーマメント)》を発動!」

ミオがフィールド魔法を発動すると、真昼の光が一瞬でかき消され、フィールド全体を仮想の夜空が覆った。星々は瞬きながら立体映像として浮かび上がり、まるで銀河の只中に立っているような錯覚を覚える。

 

星環の天穹ステラアーク・ファーマメント

フィールド魔法

このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。

①:お互いのプレイヤーは、自分メインフェイズに発動できる。手札からレベル1の光属性モンスターを特殊召喚する。

②:フィールドに表側表示で存在する「星環(ステラアーク)」モンスターは、自身と同じ属性のモンスターの効果を受けない。

(オリカ)

 

「…………すごい、こんな魔法カード、初めてだ」

 

「まだこれからよ。あなたの未来を占うっていったでしょ。私は《星環の巫女(ステラアーク・プリーステス)》の効果を発動。このカードをリリースすることで、デッキから『星環(ステラアーク)』魔法カードを手札に加える。私が加えるのは《星環の神託(ステラアーク・オラクル)》!」

ミオは魔法カードを手札に加えると、それを直接遊幾に見せ、さらに話を続ける。

「このカードによって今からあなたの未来を視てあげる」

 

そしてミオは一度深呼吸をし、精神を集中させてからカードを発動した。

「永続魔法《星環の神託(ステラアーク・オラクル)》、発動」

 

すると、遊幾とミオの間の空間が歪み、そこに淡く光る小さな球体が出現した。かと思えばその球体は徐々に大きくなり、空気が震える。

 

そして、球体が遊幾とミオを包み込んだ次の瞬間、映し出されたのは──見知らぬ巨大植物、ピンクに染まる池、緑色の空。そして異様な光景の中で、デュエルディスクを身に付け、不安げに歩く“未来の遊幾”の姿だった。

 

「……これが、俺の未来……?」

衝撃的なビジョンにただ茫然と見つめるしかない遊幾。

 

しかし、一番驚いていたのは、他ならぬカードを発動したミオ自身だった。

「ちょ……ちょっと。何よ……何なのよ、これ?」

 

──永続魔法によって映し出された未来のビジョン、そしてミオが驚愕した理由とは──

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