──遊幾と類がデュエルを開始した頃。
深い藍色の闇に溶けたヴェルデ大自然公園。その遊歩道の脇に立つ大木の幹に、健斗は背中を預け、空を見上げていた。
枝葉の隙間から覗く月が淡い光を地面に落とし、夜風が木々を揺らす。遠くで虫の音が優しく森を包む中、乾いた枯れ葉を踏む音が、遊歩道の奥から近づいてくる。
健斗が視線を向けると、街灯の光に照らされて一人の青年が姿を現した。短めの髪に、鋭すぎないが油断のない目つき。どこにでもいそうで、しかしどこか張り付いた緊張感を漂わせている。
青年は数メートル手前で足を止め、健斗に話しかける。
「……あんた、確か……チーム・レドックスのゲンダイだよな」
「ゲンダイじゃねぇ、大源寺だ」
(こいつ、日向から俺のこと聞いてるな……)
健斗はその言葉から、青年がチーム・テンペスト所属である事を悟った。
「大源寺? 悪いな、名前間違えてしまって。俺はカイル・モートン。チーム・テンペストだ」
カイルは自己紹介をすると、健斗の右腕のクアドラウォッチに視線を落とす。
「スタンバイモードってことは、今戦える状態ってことだ」
健斗は肩を壁から離し、ゆっくりと姿勢を正した。
「ん?」
「ちょうど相手を探してた。せっかくだ、俺と勝負しないか?」
その言葉に、健斗は一瞬だけ考える素振りを見せ、すぐに首を横に振った。
「悪いな。今は気分じゃないんだ」
「え?」
拍子抜けしたように、カイルが眉をひそめる。
「このサバイバルで、気分じゃないって理由で断る奴がいるのか?」
「いるさ。俺がそうだからな」
健斗は軽く笑い、視線を逸らす。
その態度が、逆にカイルの闘争心に火をつけた。
「……なら、こっちから正式に挑ませてもらう」
カイルはクアドラウォッチをセーフモードからスタンバイモードへと切り替えた。
「これで断れないぜ。俺とデュエルを――」
「まあ待てって」
健斗はそれを遮るように、左手をポケットへと差し入れた。ゆっくりと取り出したのは、もう一つのクアドラウォッチ。表示はセーフモードだ。
「俺は今、休憩中だ」
「……は⁉︎」
カイルは困惑し、視線が健斗の左右の腕を行き来する。
「クアドラウォッチが二つ? ど……どうなってるんだ、これ?」
すると健斗はわざとらしく右腕を持ち上げた。
「ああ、これか?」
その瞬間。健斗の背後、大木の陰から、もう一人の男が姿を現した。
「それは――俺のウォッチだ」
低く落ち着いた声。月明かりを背に受けて現れたその人物を見た瞬間、カイルの顔色がはっきりと変わった。
「……ア、アレン・クロフォード‼︎」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
──約1時間前
「あっ、そうだ、アレン! 悪い。一つ聞きたいことがあったんだ」
「ん? なんだ……?」
振り向いたアレンに、健斗は探るような視線を向ける。
「お前、もしかして、チーム・テンペストのメダル、持ってないんじゃないか?」
その問いに、アレンの眉がわずかに動いた。
「ああ、持ってない。そもそもテンペストのプレイヤーを見てないからな。だが……なぜそれを知っている。」
「あいつらは、動きが不自然だった。確証はないが……あいつらは誰かを避けている」
一拍置いて、健斗はアレンを見た。
「それがアレン、お前なんじゃないかって思ったのさ」
両者の間にしばしの沈黙が流れた後、再び健斗が口を開く。
「……俺にちょっと考えがある。聞いてくれないか?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
健斗の右腕のクアドラウォッチは、すでにアレンの腕へと戻っている。
健斗は肩をすくめる。
「俺のはこっち。ちゃんと休憩中だろ?」
カイルは反射的に自分のクアドラウォッチを操作し始めた。
「くそ……! だったら今すぐセーフモードに戻せば――」
しかし、表示は変わらない。
アレンが一歩前に出る。
「スタンバイモードに切り替えた後、1分間は変更できない。このサバイバルの基本ルールだ」
淡々とした声で告げた後、アレンはカイルを真っ直ぐに見据えた。
「カイルと言ったな、お前にデュエルを申し込む」
「くそっ!」
そう言い捨てると、カイルは唇を噛みしめ、語気を荒げて健斗に言い放つ。
「大源寺‼︎ ハメはがったな!」
「ハメた? 俺はデュエルをしたがってる奴に相手をマッチングさせてやっただけだぜ。むしろ感謝してくれよな」
健斗は得意気な表情でカイルに言葉を返すと、歩いてその場から離れていった。
健斗の背中が闇に溶ける。取り残されたのは、逃げ場を失った男と、揺るがぬ強者。
夜の森に、再び起動音が響き始める。
──遊幾と類のデュエル
「おいらは、さらにカードを1枚伏せる」
→[エンドフェイズ]
「ターンエンドだなぁ」
類 LP:4000、手札:3
②シールド・ワーム(DEF:2000)、③ニードルワーム(ATK:750)
①マジシャンズ・ヴァルキリア(ATK:1600)
遊幾 LP:4000、手札:4
【ターン4】――遊幾のターン
→[ドローフェイズ]
「俺のターン」
手札:4→5 デッキ:22→21
→[スタンバイフェイズ]→[メインフェイズ1]
「俺は《連弾の魔術師》を召喚。そして魔法カード《右手に盾を左手に剣を》を発動。全てのモンスターの攻撃力と守備力を入れ替える」
連弾の魔術師
【魔法使い族/効果】
①:このカードがフィールドに表側表示で存在する限り、自分が通常魔法を発動する度に、相手に400ダメージを与える。
(※テキストエラッタ)
右手に盾を左手に剣を
①:このカードの発動時にフィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターの元々の攻撃力と元々の守備力を、ターン終了時まで入れ替える。
(※テキストエラッタ)
マジシャンズ・ヴァルキリア ATK:1600→1800 DEF:1800→1600
連弾の魔術師 ATK:1600→1200 DEF:1200→1600
ニードルワーム ATK:750→600 DEF:600→750
シールド・ワーム ATK:800→2000 DEF:2000→800
「さらに《連弾の魔術師》の効果により相手に400のダメージだ!」
類 LP:4000→3600
→[バトルフェイズ]
「《連弾の魔術師》、《シールド・ワーム》に攻撃!」
連弾の魔術師 ATK:1200 VS DEF:800 シールド・ワーム
シールド・ワーム→戦闘破壊
「《マジシャンズ・ヴァルキリア》で《ニードルワーム》に攻撃!」
マジシャンズ・ヴァルキリア ATK:1800 VS ATK:600 ニードルワーム
ニードルワーム→戦闘破壊
「キーーーッ」
類 LP:3600→2400
→[メインフェイズ2]
「これで俺のデッキも残り半分だが、お前のライフも半分近く削ったぜ」
類は両手を腰に置き、肩を小さく揺らした。
「しっしっし、どうかなぁ? 一つ言っておくけど、おいらのデッキはここからなんだなぁ」
類の余裕の表情に遊幾は、わずかに息を詰める。
→[エンドフェイズ]
「俺は、これでターンエンドだ」
マジシャンズ・ヴァルキリア ATK:1800→1600 DEF:1600→1800
連弾の魔術師 ATK:1200→1600 DEF:1600→1200
類 LP:2400、手札:3
①連弾の魔術師(ATK:1600)、②マジシャンズ・ヴァルキリア(ATK:1600)
遊幾 LP:4000、手札:3
【ターン5】――類のターン
→[ドローフェイズ]
「おいらのターン、ドロー」
手札:3→4
→[スタンバイフェイズ]→[メインフェイズ1]
「しっしっし。5ターン目を迎えた事で、おいらはこのカードを発動できるんだなぁ。魔法カード《天使の施し》! デッキから3枚ドローして、2枚捨てる!」
天使の施し
①:自分のデッキからカードを3枚ドローし、その後手札を2枚選択して捨てる。
(
手札:3→6→4
蜘蛛男→墓地
ゴキボール→墓地
「モンスターを裏守備で出して、カードを1枚伏せるんだなぁ」
→[エンドフェイズ]
「ターンエンドだぁ」
類 LP:2400、手札:2
①連弾の魔術師(ATK:1600)、②マジシャンズ・ヴァルキリア(ATK:1600)
遊幾 LP:4000、手札:3
【ターン6】――遊幾のターン
→[ドローフェイズ]
「俺のターン」
手札:3→4 デッキ:21→20
→[スタンバイフェイズ]→[メインフェイズ1]
(あの裏守備モンスター……壁モンスターの可能性もあるが、おそらくはリバースモンスター)
遊幾は相手の戦術から類のカードを読みながら手札に目を配る。
(だけど、俺の手札にその効果を封じるカードはない。ならば攻撃あるのみ……)
「俺は《マジシャンズ・ヴァルキリア》をリリースして《サイバネティック・マジシャン》をアドバンス召喚。そして効果発動、手札をを1枚捨て、《連弾の魔術師》の攻撃力を2000にする」
洞窟に潜む竜→墓地
連弾の魔術師 ATK:1600→2000
サイバネティック・マジシャン
【魔法使い族/効果】
①:手札を1枚捨て、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。ターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力は2000になる。
(※テキストエラッタ)
→[バトルフェイズ]
「《連弾の魔術師》で裏守備モンスターに攻撃!」
裏守備モンスター▶︎メタモルポット
連弾の魔術師 ATK:2000 VS DEF:600 メタモルポット
「《メタモルポット》の効果発動。お互いに手札を全て捨て、デッキからカードを5枚ドローだぁ」
メタモルポット
【岩石族/リバース/効果】
①:このカードがリバースした場合に発動する。手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨てる。お互いにデッキから5枚ドローする。
(
類
虫だけエリアー→墓地
悪魔の偵察者→墓地
手札:0→5
遊幾
明鏡止水の心→墓地
プリズマン・リフレクト→墓地
手札:0→5 デッキ:20→15
メタモルポット→戦闘破壊
遊幾のデッキは、目に見えて薄くなっていく。
「しっしっし。これでまたデッキが5枚減ったなぁ」
「でもこれで、お前のフィールドはガラ空きだぜ。《サイバネティック・マジシャン》で
「そうはいかないんだなぁ。罠発動、《スパイダー・エッグ》!」
類のフィールドに卵が出現し、《サイバネティック・マジシャン》の攻撃を受け止める。
「《スパイダー・エッグ》は自分の墓地に昆虫族モンスターが3体以上いる時、相手モンスターの攻撃を無効にし、『スパイダートークン』3体を特殊召喚するんだなぁ」
卵が割れ、そこから3体の蜘蛛型のモンスターが現れた。
「おいらに攻撃は届かないんだなぁ」
スパイダー・エッグ
①:相手が直接攻撃を宣言した時、自分の墓地に昆虫族モンスターが3体以上存在する場合に発動する事ができる。そのモンスターの攻撃を無効にし、自分フィールド上に「スパイダー・トークン」(昆虫族・地・星1・攻/守100)3体を攻撃表示で特殊召喚する。
→[メインフェイズ2]
「だが、《メタモルポット》の効果で俺の手札も一新された。俺は魔法カード《パラレル・ツイスター》を発動。俺のセットカードを墓地へ送り、お前のセットカードを破壊する」
セットカード(ガード・ブロック)→墓地
「ならば罠発動、《強制脱出装置》。モンスター1体を手札に戻すんだなぁ。そうだなぁ……《連弾の魔術師》に帰ってもらうんだなぁ」
連弾の魔術師→手札
強制脱出装置→破壊
パラレル・ツイスター
①:このカード以外の自分フィールドの魔法・罠カード1枚を墓地へ送り、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。
強制脱出装置
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に戻す。
→[エンドフェイズ]
「エンドフェイズに、墓地の《虫だけエリアー》の効果発動。このカードを表側でおいらのフィールドに置くんだなぁ」
虫だけエリアー
①:このターンに召喚・反転召喚・特殊召喚されていない相手フィールドの表側表示モンスターは昆虫族になる。
①:自分の除外状態の昆虫族モンスター3体を対象として発動できる。そのモンスターをデッキに戻す。その後、自分は1枚ドローする。
①:このカードが手札から墓地へ送られたターンのエンドフェイズに発動できる。このカードを自分フィールドに表側表示で置く。
(くっ、隙がない。それに魔法や罠の発動を自分と相手のターンに分散させている。……クラシックの弱点をうまく潰しているな)
「俺はターンエンドだ」
類 LP:2400、手札:5
②〜④スパイダートークン(ATK:100)、⑤虫だけエリアー
①サイバネティック・マジシャン(ATK:2400)
遊幾 LP:4000、手札:5
【ターン7】――類のターン
→[ドローフェイズ]
サイバネティック・マジシャン 魔法使い族→昆虫族
「おいらのターン、ドロー」
手札:5→6
→[スタンバイフェイズ]→[メインフェイズ1]
「しっしっし。いいカードを引いたんだなぁ」
「まずおいらは《寄生体ダニー》を召喚」
白色のダニのモンスターが出現する。
寄生体ダニー ATK:0→1500
寄生体ダニー
【昆虫族/リバース/効果】
①:このカードの攻撃力・守備力は、フィールドのトークンの数×500になる。
(※テキストエラッタ)
「そして――これがおいらのデッキの切り札なんだなぁ。魔法カード、《一族の騒乱》発動!」
類の声が、わずかに弾む。
「このカードは、おいらのフィールドのモンスターと同じ種族1体につき、相手のデッキを2枚除外するカードなんだなぁ」
「何だって⁉︎」
類はゆっくりとフィールドを見渡す。
「フィールドの昆虫族モンスターは5体……つまり10枚のカードを除外だぁ!」
《寄生体ダニー》、《スパイダートークン》、そして遊幾の《サイバネティック・マジシャン》の目が赤く光り、遊幾のデッキに攻撃を放った。
一族の騒乱
①:自分フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの種族と同じ種族のフィールドのモンスター1体につき2枚を相手のデッキの上からカードを裏側で除外する。
(オリカ、
遊幾 デッキ:15→5
「これで終わりではないんだなぁ。このカードでトドメなんだなぁ」
類は勝ち誇った笑みを浮かべる。
「魔法カード《手札抹殺》! 手札を全て捨て、捨てた枚数分カードをドローする! お前の手札は5枚。デッキも5枚。これでお前はデッキが0になり、次のターン、ドローするカードが無くなる。つまりおいらの勝ちだぁ!」
類はカードを発動すると、ゆっくりと遊幾のデッキに目を向ける。
空になるはずのデッキ。
その瞬間を、疑いもなく待った。
しかし――デッキにカードは残っていた!
「なにーー! どういうことだ、これは?」
「残念だったな。お前が《手札抹殺》を発動した時、俺は手札から《トゥインクリボー》の効果を俺の《サイバネティック・マジシャン》を対象に発動していたのさ!」
「《トゥインクリボー》だぁ?」
「《トゥインクリボー》は手札から捨てる事で、フィールドのカード1枚を魔法・罠・モンスター効果以外の効果から守ることができる。これによって俺の手札は4枚になっていたのさ!」
手札抹殺
①:手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨てる。その後、そのプレイヤーは自身が捨てた枚数分ドローする。
(
トゥインクリボー
【悪魔族/効果】
①:自分・相手ターンに、このカードを手札から捨て、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードはターン終了時まで魔法・罠・モンスター効果以外の効果を受けない。
(オリカ)
類
ニードルワーム→墓地
ツンドラの大蠍→墓地
ゴキポン→墓地
手札:0→3
遊幾
強制転移→墓地
バオバブーン→墓地
ニトロユニット→墓地
連弾の魔術師→墓地
手札:0→4 デッキ:5→1
デュエルディスクから、小さな光が跳ねた。
「クリリ~」
トゥインクリボーが得意げに胸を張る。
「ありがとう。お前のおかげで助かったぜ!」
「クリッ!」
トゥインクリボーは返事をすると、またデュエルディスクの中に戻っていった。
「くぅーー! 変なモンスターに邪魔されたかぁ。《スパイダートークン》3体を守備表示に変更だぁ」
類は悔しそうにデュエルディスクを操作する。
「だけど、デッキは1枚。次のターンが最後、おいらの勝ちは揺るがないんだなぁ。魔法カード《浅すぎた墓穴》。お互いに墓地からモンスターを裏守備で特殊召喚する。おいらは《メタモルポット》を裏守備でセットだぁ」
「俺は《連弾の魔術師》をセットする」
浅すぎた墓穴
①:お互いのプレイヤーはそれぞれの墓地のモンスター1体を選択し、それぞれのフィールド上に裏側守備表示でセットする。
「さらにカードを1枚伏せて」
→[エンドフェイズ]
「ターンエンドだぁ」
類 LP:2400、手札:1
②〜④スパイダートークン(DEF:100)、⑤寄生体ダニー(ATK:1500)、⑥虫だけエリアー
①サイバネティック・マジシャン(ATK:2400)
遊幾 LP:4000、手札:4 除外:10
【ターン8】――遊幾のターン
→[ドローフェイズ]
「俺のターン、ドロー!」
遊幾の腕に力がこもる。引き抜かれた最後のカード。
手札:4→5 デッキ:1→0
(このカードは!)
ドローしたカードを見て、遊幾の目がやや見開いた。
→[スタンバイフェイズ]→[メインフェイズ1]
「俺はセットモンスターと《サイバネティック・マジシャン》をリリースして――」
一瞬、フィールドの空気が沈む。
「《
八芒星の魔法陣が展開される。その中心で空間が歪み、光が一点へ収束していく。
やがて――深い紫と黒のローブを纏った魔導士が姿を現した。
八芒星はそのまま魔導士の背後へ移り、回転を始める。胸元には黒い宝玉。その内部で、光が脈動している。
特異点の魔術師 ATK:2800
「キーー! なんかヤバそうなのがでてきたんだなぁ。でもこの瞬間、罠発動だぁ。《挑発》」
遊幾のモンスターに顔を引きつりながらも類はデュエルディスクを操作する。
「このカードはこのターン、自分のモンスター1体に攻撃を向けさせるカードだぁ。お前はおいらの選んだモンスターを最初に攻撃しなければいけないんだなぁ」
挑発
①:相手ターンのメインフェイズ1に自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。対象のモンスターがフィールドに存在する限り、このターン相手がモンスターで攻撃を行う場合、対象のモンスターを攻撃対象に選択しなければならない。
(※テキストエラッタ)
「そうか! さっき発動した《浅すぎた墓穴》は……」
「そう、これが狙いだったんだなぁ。おいらが選ぶのは裏守備モンスター、つまり《メタモルポット》だぁ! さあ、この状況を覆せるかなぁ?」
類の問いに、遊幾は手札に目をやり、少し間を置いた後に答えた。
「俺の手札にこの状況を打破するカードはない……」
「なら、やっぱりおいらの勝ちなんだなぁ」
「手札にはない」
遊幾は静かに続ける。
「だが……あった。――俺はその逆転の切り札を、デッキに組み込んでいた」
「デッキに入れていた⁉︎ 例えそうだとしても、お前のデッキにカードはもうないんだなぁ。やっぱりやっぱりおいらの勝ちだなぁ」
勝利を確信する類に対して、遊幾は不敵な笑みを浮かべる。
「それがそうでもないのさ。《
特異点の魔術師
【魔法使い族/効果】
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが魔法使い族モンスターの効果または「マジック」魔法カードの効果で特殊召喚した時、自分の墓地の魔法カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。
②:自分メインフェイズに発動できる。自分の除外状態のカードを1枚デッキに戻す。このカードがA召喚されている場合、さらにデッキから1枚ドローできる。
③:このカードが相手のカードの効果で破壊された場合に発動できる。自分の墓地・EXデッキ(表側)から攻撃力2800以下の通常モンスターまたは上位モンスタ1体を特殊召喚する。
(オリカ、
「キーー! それってつまり……」
類の表情が固まる。
「そうさ、俺のデッキは0枚。ならば戻したカードが、そのまま次の1枚になる。”ディメンショナル・パラドックス”!」
八芒星が逆回転を始める。そして宝玉の中心に、光が一点へ収束する。
遊幾は除外状態のカードを1枚デッキに戻し、ドローした。
手札:4→5
「俺が選んだカードはこれだ! 魔法カード《拡散する波動》! このカードはライフを1000払い、レベル7以上の魔法使いに相手モンスター全てへ攻撃させる!」
遊幾 LP:4000→3000
「だとしても、お前はまず《メタモルポット》を攻撃しなければならない。おいらの勝ちに変わりはないんだなぁ」
「いや、《拡散する波動》の効果を受けたモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、破壊したモンスターの効果を無効化する!」
拡散する波動
①:相手フィールドにモンスターが存在する場合、1000LPを払い、自分フィールドのレベル7以上の魔法使い族モンスター1体を対象として発動できる。このターン、そのモンスター以外のモンスターは攻撃できず、対象のモンスターは可能な限り相手モンスター全てに1回ずつ攻撃しなければならない。その攻撃で破壊されたモンスターの効果は発動できず、無効化される。
類の笑みが凍りつく。
「なにーーーー!」
→[バトルフェイズ]
「バトルだ! 《
魔導士の杖の先端の光球が歪み、空間が一点へ引き裂かれるように収縮する。
次の瞬間、圧縮された光が一直線に解き放たれた。
裏守備モンスター▶︎メタモルポット
特異点の魔術師 ATK:2800 VS DEF:600 メタモルポット
メタモルポット→戦闘破壊確定→効果無効
メタモルポット→戦闘破壊
「続けて、『スパイダートークン』3体に攻撃! “
特異点の魔術師 ATK:2800 VS DEF:100 スパイダートークン
スパイダートークン→戦闘破壊
寄生体ダニー ATK:1500→1000
特異点の魔術師 ATK:2800 VS DEF:100 スパイダートークン
スパイダートークン→戦闘破壊
寄生体ダニー ATK:1000→500
特異点の魔術師 ATK:2800 VS DEF:100 スパイダートークン
スパイダートークン→戦闘破壊
寄生体ダニー ATK:500→0
類のフィールドに残ったのは、力を失った《寄生体ダニー》のみとなった。
「最後の攻撃だ。《
特異点の魔術師 ATK:2800 VS ATK:0 寄生体ダニー
「キアーーーー!」
類 LP:2400→0
デュエル終了 勝者:八上遊幾
光が霧散し、八芒星が静かに消える。
「おいらの負けだぁ。お前、強いなぁ」
「お前もな。クラシックレギュレーションとのデュエル、楽しかったぜ」
類は肩を揺らしながら笑った。
「しっしっし。それは良かったんだなぁ。――おっと、夜の戦いは隠密が基本なんだなぁ。それじゃ、またなぁ」
その言葉を残し、類は闇の森へと溶けるように姿を消す。
夜のヴェルデ大自然公園での戦いは、受験生同士が互いに警戒し合う静かな消耗戦となった。所々でデュエルディスクの起動音は聞こえたものの、大きな動きはなく、1日目が終了しようとしていた。
まさに1日目が終わろうとしている23時45分頃、大自然公園のとある場所に3人の受験生が集まっていた。チーム・テンペストの巻島連次、カイル・モートン、そしてエリオット・ヴェインの3人だ。
「何すか? エリオットさん、こんな時間に集合予定追加するなんて」
連次が尋ねる。
「いやいや、悪いね。実は僕に熱狂的なファンができちゃってさ。僕、そいつに追いかけ回されてるんだよね……」
「ファン……ですか?」
カイルが首を傾げる
「なんとか巻いてはいるんだけど、しつこくてさ。スタンバイモードを維持するのがなかなかしんどくてね」
「はぁ……でもそれとこの時間の集合にどんな関係があるんですか?」
連次が再び尋ねる。
「くっくっく。関係は大ありさ」
エリオットの瞳が、夜の闇よりも深く沈む。
「ファンサービスは大切だからねぇ……君たちにはちょっと協力してほしいんだよ」
──策略と謀略がうごめく大自然公園。1次ラウンドの行末は──
クアドラサバイバル編ですが、10話程度で収まるだろうという目算で書き始めたのですが、余裕で超えてしまいました。
申し訳ないですが、当初のストーリーから内容を割愛して進めさせていただきます。
(念の為、後から挿入しやすい形になるように次話は書こうと思ってます)