遊戯王OS   作:ペント

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第19話「The Game Was Over」

動かない盤面の中で、カルロの思考だけが止まることなく巡り続けていた。

(一体何を考えていやがる……? だがオレの場には《スピリットバリア》とモンスターがある。戦闘ダメージは通らねぇ。つまり――オレがダメージを受ける状況なら、その時は盤面が動いているってことだ。……なら、今は様子見だ)

 

「オレはターンエンドだ」

 

プラズマ・ボール ATK:1900→900

 

カルロ  LP:3000、手札:1、除外:1

⑥ヴォルカニック・トルーパー(ATK:1000)、⑦ヴォルカニック・ハンマー(ATK:2400)、⑧スピリットバリア、⑨ブレイズ・キャノン-トライデント、⑩アストラルバリア

 
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①プラズマ・ボール(ATK:900)、②グラヴィティ・バインド-超重力の網-、③生贄封じの仮面、④ソウルドレイン、⑤宇宙の収縮

エリオット LP:1800、手札:1、除外:1

 

【ターン11】――エリオットのターン

→[ドローフェイズ]

「ボクのターン」

エリオット 手札:1→2

 

→[スタンバイフェイズ]→[メインフェイズ1]

エリオットのターンだが、カルロが先に口を開く。

「ふざけたフィールドを作ってくれたもんだな。……お前、この状況を打開する手があるっていうのか?」

 

エリオットは少し間を置き、キョトンとした顔で答える。

「……ないよ?」

 

「は?」

 

「さっき言ったじゃないか。デュエルは終わったって。……僕のデッキにこの状況を変えるカードはない。あるとしたら君のデッキだけど、君も持ってないだろ? それくらいの調べはついているさ。お互い何もすることがない――”終わった”っていうのはそういう意味さ」

 

エリオットは続ける。

「もうどうしようもないけど、さっきのターン、打開するチャンスはあったんだけどねぇ」

 

「チャンスだと?」

 

「そうさ。――ボクの《プラズマ・ボール》は攻撃することはできないけど、攻撃対象にすることはできる。つまり、さっきのターン、君がバトルフェイズに移行して、《ヴォルカニック・トルーパー》で《プラズマ・ボール》を攻撃していれば、君のフィールドのカードは4枚になっていた。それが唯一のチャンスだったのさ」

 

「……」

カルロは黙ってエリオットの言葉をを聞き入れる。反論は出なかった。否定したいはずの言葉が、すべて事実だったからだ。

 

「まあでも終わった話。お互いもう何もすることがないから、ゆっくりお話でもしようじゃないか?」

そう言うと、エリオットは天を仰ぎ、アイデアを考えながら話を続ける。

「うーん。君はどんなジャンルが好きなのかな? 芸能、スポーツ、グルメ、旅行、時事ネタ……あっ、それとも童話に隠された意味とか都市伝説とか、そっち系の話の方がいいかな?」

 

「ふざけやがって……やることがねぇんだったら、ターンエンド宣言すればいいじゃねぇか」

 

「いやいや。エンド宣言しようがしまいが、ボクたちはやることないんだから一緒じゃないか。せっかくこんな美しい大自然の真ん中にいるんだ。ここでの楽しいトークはいい思い出になると思わないかい?」

エリオットは周りを見渡しながらカルロにプレゼンをするかのように話しかける。

 

「そうだな……じゃあ次のボクのターンまでに、いい話題を考えておいてよ。――時間はたっぷりあるんだからさ」

 

→[エンドフェイズ]

「ターンエンドだ」

 

カルロ  LP:3000、手札:1、除外:1

⑥ヴォルカニック・トルーパー(ATK:1000)、⑦ヴォルカニック・ハンマー(ATK:2400)、⑧スピリットバリア、⑨ブレイズ・キャノン-トライデント、⑩アストラルバリア

 
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①プラズマ・ボール(ATK:900)、②グラヴィティ・バインド-超重力の網-、③生贄封じの仮面、④ソウルドレイン、⑤宇宙の収縮

エリオット LP:1800、手札:2、除外:1

 

【ターン12】――カルロのターン

→[ドローフェイズ]

「オレのターン」

カルロ 手札:1→2

 

→[スタンバイフェイズ]→[メインフェイズ1]

「エリオット。さっきお前、お互いやることが何もないって言ったよな」

 

「ああ。言ったね」

 

「一つだけあるぜ。この状況でできることが」

(これが奴の真の狙いかどうかは分からねぇが、こうなったら行くしかねぇ)

 

→[バトルフェイズ]

「《ヴォルカニック・トルーパー》で《プラズマ・ボール》を攻撃」

ヴォルカニック・トルーパー ATK:1000 VS ATK:900 プラズマ・ボール

「く……」

エリオット LP:1800→1700

 

「くっくっく。そうだったね。攻撃宣言は確かに可能だ。だけどボクの《プラズマ・ボール》は《実力伯仲》の効果で戦闘では破壊されないよ」

戦闘ダメージを受けたものの、エリオットは余裕の表情で言葉を返した。

 

→[メインフェイズ2]

(攻撃は普通に通るのか……ダメージに対して手札で発動するカードがあると思っていたが……いや、まだ手札にないだけか?)

 

エリオットに対して警戒心を持ち続けながら、カルロはエンドフェイズに移行しようとする。――が、移行されなかった。エリオットが優先権を放棄しなかったのだ。

 

「どういうつもりだ?」

カルロがこの行動を問いただす。

 

「だってさ。あまりに早くターン終わらせようとするから。ちゃんと考えてくれた? 話題の内容」

エリオットは不敵な笑みを浮かべながら答える。

「時間はたっぷりある、とは言ったものの、限られてもいる」

 

「考慮時間のことか?」

 

「そうそう――」

そう言ってエリオットは淡々と、デュエルの持ち時間のルールをなぞりはじめた。

 

優先権を持つプレーヤーには限られた思考時間が与えられており、各々のデュエルディスクによって管理されている。

 

自分のターンであれば80秒、相手ターンでは40秒。さらにC級では、12ターンごとに180秒のエクストラタイムが与えられる。

 

思考時間を使い切れば、エクストラタイムを消費する。これが0になった時点で、時間切れによる敗北となる。

 

また、デュエルディスクのAIは会話による時間消費も判定しており、優先権を持たない側の発言が影響した場合、その分はエクストラタイムに補填される。

 

「――ちょうど次から、新たな12ターンがやって来る。まあ、今回みたいに君のターンで時間を止めるのは、歯切れが悪いしやめておこうか」

 

「長話をして、オレを集中力を削ごうっていう狙いか? そうはいかないぜ」

 

「ふっふっふ。好きにとらえるといいよ」

 

そしてエリオットは優先権を放棄した。

 

→[エンドフェイズ]

「ターンエンド」

 

カルロ  LP:3000、手札:2、除外:1

⑥ヴォルカニック・トルーパー(ATK:1000)、⑦ヴォルカニック・ハンマー(ATK:2400)、⑧スピリットバリア、⑨ブレイズ・キャノン-トライデント、⑩アストラルバリア

 
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①プラズマ・ボール(ATK:900)、②グラヴィティ・バインド-超重力の網-、③生贄封じの仮面、④ソウルドレイン、⑤宇宙の収縮

エリオット LP:1700、手札:2、除外:1

 

 

 

──その頃、エルダ島の星見の丘では
食堂の窓から明るい日差しが差し込む中、子供たちはどこか落ち着かない様子でざわついていた。

「ねえ、まだかなぁ……」

メイが椅子の上で足をぶらぶらさせながら呟く。

 

「1次ラウンドの結果発表だろ? サバイバルだし、時間ぴったりに発表してくれるのかな?」

タケルが腕を組んで答えるが、その視線は何度も壁の時計へと向けられていた。

 

「でもさでもさ! 遊幾兄ちゃん、絶対勝ってるよな!」

ゲンが身を乗り出して声を出す。


 

そんな落ち着かない空気の中――

――ピンポーン。

玄関の呼び鈴が、場の空気を軽く揺らした。

 

「はーい!」

メイが勢いよく立ち上がり、ぱたぱたと駆けていく。

 

やがて扉が開かれ、次の瞬間――

 

「おっ、元気そうじゃねえか」

低く太い声とともに、大柄な男の姿が現れた。

 

「マックスさん!」

子供たちの声が一斉に上がる。

 

その隣には、軽く手を振る少女の姿もあった。

「おじゃましまーす」

「結姉ちゃん⁉︎」

タケルが驚いたように目を見開く。

 

「どうして二人で……?」

とゲンが首を傾げると、結はくすっと笑った。

 

「いやいや、別に一緒に来たわけじゃないよ? たまたま正門のところでばったり会っただけ」

肩をすくめながらそう言う結に、


「ま、結果的には一緒みてえなもんだがな」

とマックスが豪快に笑う。

 

その言葉をきっかけに、子供たちが一斉に結の方へ駆け寄った。

「ねえねえ、結姉ちゃん! C級合格したんでしょ!? おめでとう!」

メイがぴょんと跳ねながら、目を輝かせる。

 

タケルは少し落ち着いた様子で一歩前に出る。

「おめでとうございます。今度、ぜひデュエルを見せてください」

 

「ずーっと見てたけど、結姉ちゃんのモンスター、かっこ良かった!」

ゲンも興奮気味に声を上げた。

 

次々と向けられる祝福の言葉に、結は一瞬きょとんとしたあと、ふっと柔らかく笑った。

「ありがとう。そんな大したものじゃないけど……ふふ、みんなにそう言ってもらえると嬉しいな」

 

そのやり取りを見ていた忠雄は、ふっと穏やかに目を細めた。

「まあまあ。ここで話すのもなんだし、とりあえず上がりなさい」

 

二人を迎え入れ、温かい茶が配られる。

 

結は、C級試験のことに関して矢継ぎ早に質問され、少し困ったように肩をすくめる。

「はいはい、順番ね順番。そんな一気に聞かれても答えきれないよ?」

その様子を見て、マックスはニヤリと笑う。

 

結は軽く息をついてから、言葉を継いだ。

「それに今日は遊幾の結果を見るために集まったんでしょ?」

 

「でも、結果発表までまだ時間あるし……」

ゲンが忠雄の顔を覗きながら答えた。

 

「うむ。1次ラウンドがもうすぐ終わるところだから、あと少しかかりそうじゃな」

忠雄が頷いた。

 

少しの沈黙のあと――結がふと、何かを思い出したかのように顔を上げる。

「ねえ、忠雄さん」

 

「なんじゃ?」

 

「遊幾のこと、ちょっと聞いてもいい?」

その一言に、子供たちの視線が一斉に集まる。

 

「遊幾ってさ、もともとエルダの人じゃないよね?」

 

「え、そうなの⁉︎」

メイが目を丸くする。

 

忠雄は湯のみをそっと置き、ゆっくりと口を開いた。

「……うむ。確かに、遊幾は元々この島の生まれではない」

室内の空気が、わずかに引き締まる。

「だがな――遊幾の父、遊真は、このエルダの出身じゃ」

 

「遊幾兄ちゃんのお父さんが?」

ゲンが少し驚いたように反応する。

 

「ああ。遊真はのう、大学進学を機に島を出て、そのまま世界を旅しておったそうじゃ。卒業後はアストラリス島に渡り、精霊魔法の研究者になった」

 

「研究者……」

タケルが興味深そうに呟く。

 

「その後、結婚し、子を授かる。それが遊幾じゃ」

子供たちは息を呑んで聞き入っている。

「しかもな……研究者になってから、わずか五年で研究所の所長を任されたそうじゃ。わしもその話を聞いたときは、さすがに驚いたわい」

 

忠雄は少し間を置いた後、ゆっくりと続ける。

「そして――今から12年前のことじゃ。遊真は幼い遊幾を連れて、ここへやってきた」

 

「忠雄さんのところに……?」

結が小さく呟く。

 

「ああ。生活環境を変えようと考えていたらしい。だが、研究があまりに忙しくてのう……どうしても身動きが取れなかった」

忠雄の声が、少しだけ重みを帯びる。

「だからわしに頼んできたのじゃ。――“しばらくの間、この子を預かってほしい”とな」

 

結は黙って、その言葉を受け止めている。

 

「わしはそれを承諾した。……ほんの、短い間のつもりじゃった」

そこまで語り、忠雄は一度言葉を切る。

 

そして、静かに続けた。

「――だが、その約1ヶ月後じゃ」

 

部屋の空気が、すっと冷える。

 

「スピリットバースト事件が起こったのは」

 

誰も言葉を発さない。ただ、遠くで風の音だけが微かに聞こえていた。

 

しばしの沈黙のあと――

忠雄は、ゆっくりと目を細める。

「……あやつは、もしかすると気づいておったのかもしれんな」

 

「え……?」

メイが小さく声を漏らす。

 

「これから、何か良からぬことが起こると――」

 

皆口を閉ざし、しんみりとした空気が食堂を包み込んでいた。

 

最初に口を開いたのは、結だった。

「……そっか」

小さく呟いたその声は、どこか遠くを見ているようだった。

「まだ子供だったんだよね、遊幾……。そんな中で、急に環境が変わって……しかも、そのすぐ後に、あんな事件が起きて……」

 

言葉を選ぶように、ゆっくりと続ける。

「きっと……つらかったよね」

結は視線を落とし、静かにそう言った。

 

子供たちも、いつもの明るさを少しだけ潜め、黙ってその言葉を受け止めている。

 

そんな空気を、ふっと崩すように――

「……だがよ」

マックスが腕を組みながら口を開いた。

「今の遊幾をみてみろよ。あいつが下向いて生きてるか? 違ぇだろ。オレが見た限りじゃ、あいつはちゃんと前向いてる」

 

マックスはふっと口の端を上げる。

「だったら、オレたちも前向いて、あいつを応援してやればいいんじゃないか?」

 

その言葉に、結はゆっくりと顔を上げた。

「……うん」

小さく、しかしはっきりと頷く。

 

重く沈んでいた空気が、マックスの言葉でわずかに和らぐ。

 

その変化を感じ取ったのか、タケルが小さく息をつき、顔を上げた。

「……そういえば、マックスさんって、その体つき、何かスポーツやってたんですか?」

タケルの視線は、マックスの分厚い腕や広い肩に向けられていた。

 

「たしかに! めっちゃ強そうだよな!」

ゲンもすぐに乗っかる。

 

「ラグビーとか? それとも格闘技?」

メイも興味津々だ。

 

三人の期待の視線を受けて、マックスは一瞬だけ考える素振りを見せ――

「……”魔界研究部"だな」

さらりと言い放った。

 

「「「え?」」」

見事に声が重なる。

 

タケルは瞬きを繰り返し、ゲンは口をぽかんと開け、メイは首をかしげた。

 

「ま、まかい……?」

「研究部って……なにそれ……」

「え、スポーツじゃないの?」

困惑がそのまま言葉になって漏れる。

 

その様子を見て、マックスは肩をすくめた。

「オカルトって言いてえなら、まあそれでもいい。だがオレにとっちゃ、そんなもんじゃねぇのさ」

そう言うと、少しだけ視線を遠くへやる。

 

「今から……そうだな、28年前か。オレがお前らと同じくらいの年だった頃――“人魔戦争”って事件があった」

その言葉に、場の空気が再び引き締まる。

「世界が、いきなりおかしくなった。空が歪んで暗くなり、あちこちに“裂け目”みてえなのができてな……そこから、モンスターが現れた」

 

「モンスター……?」

メイが小さく呟く。

 

「ああ。街を襲って、人を襲って――世界は大混乱だ。だが、屈強なデュエリストたちがそれを退けた。わずか一月足らずの間にな……人間の勝ちってわけだ」

 

「そんなことが……」

ゲンが息を呑む。

 

そのとき、忠雄が静かに口を挟んだ。

「当時はな、精霊界の存在は、人々のなかでは半信半疑なものだった。じゃがあの事件をきっかけに、それが確信に近いものへと変わったのは間違いないじゃろうな」

 

「まあ、世間じゃそういう扱いだな」

マックスは軽く頷くが、すぐに口元を歪めた。

「だがオレは、少し違う見方をしてる」

 

「違う見方?」

タケルが問い返す。

 

「あのとき現れた連中は、“精霊界”なんかじゃねえ。もっと別の――“魔界”から来たんじゃねえかってな」

 

「えー? でもさ、それって同じじゃないの?」

ゲンが首を傾げる。

「どっちも異世界ってことでしょ?」

 

「いや、違うな」

マックスは即座に言い切った。

 

「あのときのモンスターをオレは実際にこの目で見てる」

その言葉に、子供たちの背筋がわずかに伸びる。

「だがな、デュエルモンスターズのカードの中に、あいつらと同じ姿のモンスターは一体もいねえ」

 

「え……?」

タケルが目を見開く。

 

「だからオレは思ったんだ。あれは精霊界じゃない。もっと別の世界――“魔界”だってな」

 

話を聞く子供たちの目は、いつの間にか好奇心で輝いていた。

メイは身を乗り出し、ゲンは前のめりになり、タケルも真剣な表情で耳を傾けている。

 

だがそのとき――

「……あれ?」

タケルがふと、首をかしげた。

「今の話……28年前って言いましたよね?」

 

「ああそうだ。28年前だな」

 

「そのとき、マックスさんが僕たちと同じくらいの年ってことは……今、何歳なんですか?」

タケルの視線が、じっとマックスに向けられる。

 

一瞬の間を置き、マックスが答える。

「オレは36だ」

 

「「「えええええええっ⁉︎」」」

食堂に大きな驚愕の声が響いた。

 

「うそでしょ!? 絶対もっと上かと思ってた!」

「少なくとも45は超えてると思ってたぞ!」

「うん、貫禄たっぷりだし‼︎」

 

口々に飛び交うツッコミに、マックスは眉をひそめる。

「おいコラ。どういう意味だそれは」

だがその口元は、わずかに緩んでいた。

 

一方、忠雄だけは湯のみを傾けながら、くすりと小さく笑っていた。

 

ひとしきりのざわつきが落ち着いたあと――

マックスは壁の時計に目をやり、ぽつりと呟いた。

「……結果発表まで、もう1時間切ってるな」

 

結も時計を確認し、小さく息をついた。

「ほんとだ……。ドキドキするね」

 

マックスは腕を組み、ふっと口元を緩めた。

「まあ、あいつなら大丈夫だろうが……万が一にも突破できなかった場合は――オレが考えた“魔界と交信するための儀式”、特別に伝授してやる」

 

「「「えーーーー⁉︎」」」

子供たちの動きが、ぴたりと止まる。

 

そしてゲンがマックスから顔を背け、つぶやいた。

「遊幾兄ちゃん、絶対に勝って……!」

 

 

──エリオットとカルロのデュエル

 

カルロ LP:3000

エリオット LP:100

 

【ターン45】――エリオットのターン

 

→[メインフェイズ1]

「……以上、『誰も触れてはいけない十三番目の扉』でした。――どうかな、面白かった?」

エリオットは都市伝説を一つ語り終えると、カルロに感想を求める。

 

「デュエルのこと考えてたから、半分くらいしか頭に入ってねぇよ」

関心のないカルロは適当に言葉を返す。

(こいつ……この状況でもまだ余裕とは、一体どういうことだ?)

 

「何も考えることなんかないのに……変な人だなぁ、君は」

やれやれという表情でエリオットは言葉を返した。

(くっくっく。いい頃合いだ)

 

→[エンドフェイズ]

「僕はこれでターンエンド」

 

エリオットは手札が7枚だったので《冥府の使者ゴーズ》を墓地へ送った。

カルロ 手札:7→6

 

冥府の使者ゴーズ

闇属性 レベル7 ATK/2700 DEF/2500

【悪魔族/効果】

①:自分フィールド上にカードが存在しない場合、相手がコントロールするカードによってダメージを受けた時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。

②:このカードの①の方法で特殊召喚した時、受けたダメージの種類により以下の効果を発動する。

●戦闘ダメージ:自分フィールド上に「冥府の使者カイエントークン」(天使族・光・星7・攻/守?)を1体特殊召喚する。このトークンの攻撃力・守備力は、この時受けた戦闘ダメージと同じ数値になる。

●カードの効果によるダメージ:受けたダメージと同じダメージを相手ライフに与える。

(※テキストエラッタ)

 

カルロ  LP:3000、手札:6、除外:1

⑥ヴォルカニック・トルーパー(ATK:1000)、⑦ヴォルカニック・ハンマー(ATK:2400)、⑧スピリットバリア、⑨ブレイズ・キャノン-トライデント、⑩アストラルバリア

 
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0

 
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6

①プラズマ・ボール(ATK:900)、②グラヴィティ・バインド-超重力の網-、③生贄封じの仮面、④ソウルドレイン、⑤宇宙の収縮

エリオット LP:100、手札:6、除外:1

 

 

【ターン46】――カルロのターン

→[ドローフェイズ]

「オレのターン」

カルロ 手札:6→7

 

→[スタンバイフェイズ]→[メインフェイズ1] →[バトルフェイズ]

(これで奴の狙いがハッキリするはずだ……)

「《ヴォルカニック・トルーパー》、《プラズマ・ボール》を攻撃!」

《ヴォルカニック・トルーパー》が動き出したその瞬間――大自然公園に、サイレンが鳴り響いた。

 

ヴォルカニック・トルーパー ATK:1000 VS ATK:900 プラズマ・ボール

「ぐっ……」

エリオット LP:100→0

 

デュエル終了 勝者:カルロ・ジマーマン

 

ソリッドビジョンが光の粒子となって霧散する。

 

そこに呆然と立ち尽くしていたのは勝利したカルロの方だった。

(なっ……なんだこの茶番は⁉︎)

 

「いやぁ、お見事お見事。……ボク負けちゃったよ。強いね、君」

エリオットはそう言うと、クアドラウォッチを覗き込む。

「だけど残念。どうやらタイムオーバーみたいだね。メダルは渡せないね、これは。でもデュエルしたからアクティブの時間はお互い稼げてるけどね」

 

この言葉を聞き、カルロはエリオットの真の狙いを理解する。

(そういうことかよ……)

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

──昨日の夜

 

風が木々を揺らし、葉擦れの音だけが静かに響く中、ぽつりと漏れたカイルの声だけが、わずかに強く響く。

「え⁉︎ 同じチーム同士でデュエルを? そんなこと……」

 

「できないって、そんなルールにあったかい?」

間髪入れずに返したのはエリオットだった。


それを聞いた連次がクアドラウォッチを操作する。そして、

「ホントだ! チームメイトを対戦相手に選択できる!」

思わず声を上げた連次に、エリオットは満足げに口元を緩める。

「でしょ? だったら利用できるものは利用しないと」

 

その言葉に、カイルの表情がわずかに強張る。

「でも、どうして俺が負ける側なんですか? 0時過ぎたらもう救済効かないんですよ!」

食い下がるような声。


だがエリオットは、まるでその反応すら予想していたかのように目を細めた。

「大事な大事なチーム・テンペストのメダルを、アレンに渡しちゃったのは誰だい?」

 

「その分はリスクとして負ってもらわないとねぇ」

逃げ場を塞ぐような言い方だった。

 

カイルは言葉を詰まらせ、視線を逸らす。

 

――そして。

巻島連次とカイル・モートンのデュエルが行われた。

 

日付が変わり――勝敗が決した。

「……」

結果を確認したエリオットは、ゆっくりとクアドラウォッチから視線を上げる。

 

その口元には、はっきりとした笑みが浮かんでいた。

「良かったじゃないか、カイル。メダルを失わずに済んで」

(くっくっく……これなら問題ない)

(勝てるならそれでいい。勝てなくても、負ける可能性を潰せる……)

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

カルロはうつむいて、静かに言葉を漏らす。

「今回は、オレの力不足だった……認めるしかねぇ」

 

少し間を置いた後、目線をエリオットに向け、今度は力強く話す。

「だが、次にデュエルする時は、必ずお前とケリをつけてやる!」

 

デュエルディスクからデッキを引き抜いたエリオットは肩をすくめる。

「何を言ってるんだい? ケリならついた。君の勝ちだったじゃないか」

 

そしてカルロとすれ違い、背を向け歩いていく。

 

「結果発表があるから、メダルが揃ってるなら急いだほうがいいよ」

そう言い残し、エリオットは振り返ることなく歩き去っていった。

 

その足音が遠ざかる中、カルロは無言のまま、その背中を見据えていた。

 

 

 

──16時30分過ぎ、試験会場・大広間

 

かつて試験の説明が行われたその場所に、再び受験生たちが集められていた。

長いサバイバルを終え、ここに立っているのは――わずか7名。

 

チーム・テンペストのエリオット・ヴェイン、日向ヒロ、巻島連次。
チーム・タイダルのアレン・クロフォード。
チーム・ブラスターのカルロ・ジマーマン。
そして、チーム・レドックスの八上遊幾と大源寺健斗。

 

いずれも、4種すべてのメダルを揃えた者たちだった。

 

それぞれが無言のまま、あるいは静かに周囲を見渡しながら、その場に立っている。
疲労の色は隠せない。だが同時に、誰の目にもまだ闘志は宿っていた。

 

 

――その様子は、ネット配信を通じて、星見の丘にも届けられていた。

「いた……! 遊幾兄ちゃんだ!」

メイが弾けるように声を上げる。

 

「遊幾だけじゃない……健斗もいる。二人とも残ってるなんて、すごい……」

その隣で、結が小驚いた顔で声を出す。

 

「え? 健斗って?」

ゲンが結の顔を覗き込むように質問した。

 

「私の高校の同級生なの」

 

「じゃあ、エルダから二人も残ったんだ……すごいな」

タケルは、じっと画面を見つめながら言葉をこぼす。

 

星見の丘の面々は、それぞれの想いを胸に、画面の中の七人を見つめていた。

 

 

やがて――大広間の扉が静かに開く。

 

規則正しい足音とともに、試験委員の男が姿を現した。その場の空気が、わずかに引き締まる。

 

「みなさん」

低く、通る声が響いた。

「まずは、1次ラウンド突破の条件クリア、おめでとうございます」

 

男は一拍置き、続ける。

「4種すべてのメダルを揃えたことを証し、ここに“クアドラバッジ”を授与します」

 

合図とともに、係員たちが動き出す。

受験生一人ひとりのもとへと歩み寄り、小さな徽章を手渡していく。

 

それは、このサバイバルを生き残った者にのみ与えられる証。

遊幾はそれを受け取り、静かに手の中で握りしめた。

 

だが――次の瞬間、試験委員の声が再び響く。

「……ただし」

その一言で、場の空気が変わる。

「2次ラウンドへ進めるのは4名のみ。これより――獲得ポイント上位4名を発表します」

 

張り詰めた空気の中、七人の視線が前方へと集まる。

 

──1次ラウンド終了。2次ラウンドに進むことのできる4名とは──

 

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