自前剣技のフロンティア〜スキル無しの最強剣士、神ゲーにて挑戦を聴く〜 作:山瀬 鳴
「見てなよセッちゃん。勝つか負けるかの大博打、私の全部をベットしてでも勝ってやる」
アーサー・ペンシルゴン。シャングリラ・フロンティアにて阿修羅会No.2並びに
「…成る程、墓守のウェザエモン…クカカッ、こりゃあ利用ぜざるを得んな…」
黒に藤柄の羽織、白の着物、藍色のたっつけ袴を着て、黒の脛当までした出で立ちは、まさに侍。
強いて言うなら、後ろで雑にまとめられた長い白髪に燃えるような赫目であるその顔立ちが、真の侍と思えない要素となっている。
彼の名は
シャングリラ・フロンティアを愛すプレイヤーである。
俺はサードマレとある路地にてとある人を尾行していた。
最近お騒がせの例の半裸…の前に現れて関わりありげに話していたという彼女、アーサー・ペンシルゴン。
割と彼女とは因縁があるのだが…まぁそこはどうでもいい。
手を伸ばせば届きそうな…わずか1.5メートルの距離にいても気づかれないのは、決して彼女のせいではない。
相手の
「もし。そこのお人。少し時間を貰っても良いか?」
少し古風な感じな言い方をしてしまうのは、ゲーム内での癖だ。剣客としてロールプレイしながら振るう刀は心地よい。
「!?」
彼女はすぐさま槍を抜き、斬りかかる…まぁどうせ脅しだろう。いくらPKerとしても街中襲撃は危うい。
「おっと、驚かせたかの?」
―仮想炎天流 【無刀術 無刀取り】
「済まんが、少しばかりこうしてくれないかね?廃人狩り?」
槍の一突きをすぐさま身体を落とし、槍の持ち手を掴み、そのままペンシルゴンが手首を痛めるはずである向きに捻らせ、槍の自由を奪取して壁と槍で挟み込んだ。
「っ…!アンタは!『流浪の剣鬼』!烏頭目!」
「ほぉう…その名はやはり広く知られてるのか…そいつは上々」
掲示板で話題をかっさらった時期に名付けられた名がまだ残るとは…アレ何ヶ月前だ?
「…何が目的?」
「…貴様の命、と言ったらどうする?」
「アンタそう言うタイプじゃないでしょ」
「おや、手厳しいなぁ…流石人を駒としか見ておらん女」
「褒めてないでしょ」
「いいや褒めてる。だから俺は君と取引を持ちかけたのだよ…」
「…取引?」
「ウェザエモンとの一戦、俺にも一枚噛ませろ」
「!?」
「おっと、逃げようとしても無駄だぜ…阿修羅会まで潰してユニークと殺り逢おうなんざ…俺とて見逃せんよ」
「は…?」
…流石に手札切り過ぎたな。交渉で興奮すると手札切りすぎるのは反省しないと…
「そんな簡単に決めれる話では…」
「俺にとってもウェザエモンは狙ってた相手だ。先に取られるってのはちといい気がしない。それに、俺の実力はお前さんもよく知っとるだろ?」
「…そんな生易しい相手じゃ…」
「はっ、上等上等。お前さんが思っとるより俺は強い。まぁ、最悪…今持ってる情報を阿修羅会の奴らに売ればいいだけだしの?」
「っ…」
「んまぁ話は早くなくていい…タイミングが来たら連絡してくれ。フレンド申請はするからの」
そう言って私は素早く立ち去った。
「ハァ〜〜〜…」
「なんだよ。お前がそこまで頭抱えるなんて珍しいな」
「いや…めちゃくちゃ嫌な邪魔が入って…」
「あの鉛筆戦士が頭抱えるレベルの邪魔ぶち込むなんてどんなヤツだよ」
サードマレ、「蛇の林檎」。
アーサー・ペンシルゴンとオイカッツォなる人物は、今ネットで噂の鳥頭半裸である(らしい)サンラクなる人物を待って早3時間。
「悪い、遅くなった。一応謝意は無くはない」
「三時間近く待ち合わせをすっぽ抜かした事について何か言い残すことは?」
「こっちのユニークでウェザエモンについての言及が」
「よし許す」
「え!?許すの!?」
許すんだ…
「というかまたあざとい姿で来たな…え〜っと…オイカッツォ?」
「ん? あー、シャンフロの垢はこれだよ」
「追い鰹かよ」
「ハイハイ。とりあえずサンラク君、情報を言ってもらう前に…重大報告をしなきゃいけないんだよね…」
「は?重大報告?」
「ウェザエモン戦に追加メンバーが決まったんだよねぇ…どこからか挑戦する事を聞きつけてきたからしょうがなく…」
「「………ハァ!?」」
「ウッソだろ!あのペンシルゴンの裏かいて脅した奴が居たのか!?」
「マジか…あのペンシルゴンが情報戦で負けるなんて…これは向こう3ヶ月はネタに出来るね」
「あ〜もうだから嫌だったんだよ…」
談笑が此処まで聞こえる…
うん。
「で?その追加戦士はどこに?」
「最初っからここにいるよ…ホラ」
「ほぉう…君があのサンラク君か…」
「!?」
おおう良い反応。後ろから不意打ち声掛けで此処までビビるとは、さてはゲームによってはトップランカーだな?
それと…
「後は…
「…は?」
「…え、カッツォ君知り合いなの?この『
「うっわ何その物騒な二つ名」
「…もしかして
「クカカ…覚えていたか」
俺の本名は
「え、カッツォマジでこんなヤバそうな侍と知り合いなのかよ!しかもリアルで!?」
「まぁ…俺の高校の先輩だな…」
「んじゃ、自己紹介といこう。俺は烏頭目。巷では『流浪の剣鬼』なんて呼ばれとる。ちと荒っぽい手段を使ってこの戦いにねじ込ませてもらった。すまんの」
「まぁこの人ならバレるのしょうがない気がする」
「え?」
「この人異常なレベルで耳がいいんだよ。」
「耳?」
「ざっくり言うと放課後の喧しい学校の廊下端にいる人の話を反対側の端から聞き取れるレベル。本人曰く『針が落ちたとしても聞き分けれた』とか言ってるけど、おそらく比喩でもなんでもない。ついでに絶対音感に近いものまで持ってるから一度聞いたら大体その声の主がわかる」
「…ヤバくね?」
「しかもPSも高いから、ほんの少しの、誰も聞いたことないようなSE聞き分けて攻撃避けるとかいう荒業で当時格ゲーで勝率6割超えれなかった」
「クカカ…流石に今の魚…いやオイカッツォににゃあ勝てんけどな。格ゲーは自由が利かなくて好かん」
「ゲーセンでフルボッコにした後にVRでもボコしに来た戦闘狂が何言ってんだか…」
「カッツォ、貴様言うようになったな?タメ口なのは当時からだからええとして」
「というかその喋り方どうしたんだよ。ロールプレイ?」
「おう。初期からやっとったら抜けんくなった」
「あの〜カッツォ君?そこだけで話すの辞めてくれない?」
「そうだぞカッツォ。いい加減本題に戻れ」
「正論だけどイラつく言い草だなぁ…」
「一先ずおさらいを兼ねてウェザエモンについての情報を共有しようか」
◆◆◆
「…端的に言ってアホだな」
ウェザエモンの能力を聞いて出た感想はその一言だった。なんだよ1フレ即死斬撃って。しかも強制50レベ?しかも他の攻撃もほぼ即死のオワタ式…
「おやぁ?意気揚々に助太刀宣言したクセにビビってらっしゃる?」
「アホ言え。あくまで一般論として言ってる。俺にとっては…ちとヌルいかもな…?」
即死?怖くありません。神速の一撃?んなもん慣れてる。
そこに至り、超えるために…俺は今も剣を振るうのだから。
「というか、私としてはなんで君みたいな人間ががウェザエモン討伐しようとしてるかが謎なんだけど」
「あ〜、まぁ言うしかないか。コレで信用稼げるならそれでいいからな」
そう言いながら俺は刀を抜く。抜くと言っても、鞘からではない。腰から、鞘を見せるように抜いた。
「それは?」
「ユニーク武器
「世界に一本…!?」
「そんなもんもあるのかよ!?」
「初めて聞いた…その刀…」
「この刀は少々じゃじゃ馬な性能での…ハイリスクハイリターン武器なんだよ」
「まずこの剣を装備…というよりもこの剣に関するクエストを受けている間といえばいいか。その間武器の変更が不可になる」
「そしてコレが一番のデメリットなんじゃが…攻撃スキルが全て使用不可となる。勿論魔法も使えん。あと回避系や防御系のスキルもパッシブスキル以外機能しなくなる。イグニッションやアクセルすら使えん。使えるのは移動系スキルとパッシブスキルだけ。魔法も同様やの」
「は!?スキル使用不可!?」
「それは…中々重いデメリットだと思うけど…」
「まぁコレだけ聞けばの。ここからメリットの話だ。先ずは耐久無限…というより破壊不能がついておる。どれだけ使おうとも破壊されないというこのゲームにおいては喉から手が出るほど欲しがるものがこの刀にはある」
「更に戦闘中全ステータスが2倍になる効果。コレは装備上昇分も加算されるという素晴らしい使用をしとる」
「最後に『スーパークリティカル判定』の存在。コレは通常のクリティカルより判定が厳しいが、決まれば大打撃+一定期間バフを獲得する…というものだ。まぁ狙って出すのは厳しいがの」
「いや…それにしても…」
「話聞く限り、完全にPSオンリーで戦うんだろ?バフ爆盛で戦うにしても、限界はあるんじゃねぇか?」
「あ〜、それに関しては大丈夫かも」
「うむ。俺には『
「かそう…えんてんりゅう?なんかの流派?」
「五月雨s…えっと、烏頭目の爺さんが作ったゲーム専用武術流派らしい」
「そうじゃ。俺の祖父、五月雨
「いや…強いのか?それは…」
「舐めるでないぞ?俺はこれでも様々なゲームで伝説を打ち立てての…」
本当に様々なゲームをプレイしたものだ。名作もクソゲーも問題作も皆等しく、人斬りとして暴れたのだ。
「この人に関してはスキルが足枷になるタイプの人だし、大丈夫だよ。今の実力がどれくらいかは知らないけど、少なくともプロ並みかそれ以上の実力がある」
「それならいいんだけど…」
「そう言えば、サンラクよ。お前さん何かつかんだらしいな?」
「あぁ、忘れるところだった」
◆◆◆
「……と、まぁ直接攻略に役立ちそうなもんでもないが、「死に損ない」と形容されるってことは生きてたけど死んでるような状態、アンデット系のモンスターなんじゃないかってだけだ」
「…………そうだね、確かに思い返してみれば戦闘開始時は動きが硬かった。そうか、てっきりサイボーグ系とばかり思っていたけどアンデットなら納得できる点が……」
「何か掴んだか」
言うのが早いか、ペンシルゴンが立ち上がった。
「私ちょっと用事ができたから夜まで別行動かも」
「まぁそれは構わないけど、じゃあ今日はどうするわけ?」
「とりあえずこれを渡しておくから、夜まで「神代の鐵遺跡」でレベリングしてて」
そう言って二人に地図と釣り竿を手渡した。
「行けば分かるから! じゃあまた夜にここで!」
そう言い残してペンシルゴンはどこかに行ってしまった。
「俺はどうするかな…」
「じゃあコッチについてくればいいんじゃねぇか?」
「そうだな」
「ふむ、そうするか」
「にしても、釣りでレベリングってどういう事だ?」
「今アイテム説明見たけど普通に釣竿だねこれ」
「俺にも心当たりはないの…」
「お魚はお肉赤いのより白い方が美味いってお、カシラが言ってたですわ」
「サーモンって白身魚らしいな」
「マジ? 今度チームメイトに教えてや……誰今喋ったの」
「おお、いつ喋るかと思ってはいたが」
「エムル、「毛皮由来のマフラーのフリ」とかいう宴会芸はやめていいぞ。てか一人バレてたみたいだし」
「え、宴会芸じゃないですわ!れっきとしたヴォーパルバニーに伝わる緊急隠密の……」
「うおおマフラーが喋った!?」
「あぁ、お主が噂の…」
喋るウサギを眺めながら、次の標的に思いを馳せた。
主人公のステータス。オリジナルスキルに本家様と内容があるかもしれないですが、その時は優しく教えてください。
PN.烏頭目
LV:80
JOB(メイン):???
JOB(サブ):???
出身:剣客
HP(体力):75
MP(魔力):10
STM(スタミナ):100
STR(筋力):100(+100)
DEX(器用):40
AGI(敏捷):100(+50)
TEC(技量):30
VIT(耐久力):40(+20)
LUC(幸運):50
スキル
・遮那王憑き
・フリットフロート
・軽業(武器、移動を使用しない回避行動に補正)
・ヒートアップ(戦闘時間が長引くほどSTRに補正)
・反逆(攻撃を回避した後の攻撃に補正)
・無刀の構え(剣以外での攻撃や、剣を使わない行動に補正)
・心眼(回避によるスタミナ消費量減少)
・
装備
武器:霊刀 無窮常世藤
頭:幽冥の元結(STR+40)
胴:宵藤の羽織(STR+30 AGI+20)
腰:朧月の晒(STR+20 VIT+20)
足:亡魂の袴(AGI+30)
アクセサリー:魂結びの組紐(STR+10 スタミナ回復速度上昇)
とあるユニークシナリオを攻略している流浪の侍。フラリと何処かに現れてはPKKを繰り返したり、ボス狩りに勤しんだりしている。阿修羅会の天敵。繰り出す剣技は全ての動きがPSによるもの。亡くなった祖父から受け継いだ剣術『仮想炎天流』を使う。どこか古風な感じの口調で喋る癖がある。
ユニークシナリオの攻略の為にウェザエモン討伐に名乗りを上げた。
リアルでは魚臣 慧の高校時代の先輩。
このあともう1話投稿します。