自前剣技のフロンティア〜スキル無しの最強剣士、神ゲーにて挑戦を聴く〜   作:山瀬 鳴

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藤花の幽霊と流浪の剣客

―アーサー・ペンシルゴンと出会う数ヶ月以上前。

俺の名前は五月雨 流庵。PNは烏頭目。リアルではそこそこ名のしれたシンガーソングライター兼ボカロP。ここシャンフロでは流浪の剣士として日夜研鑽を積む武者修行の身として活動している。そんな俺は今、ちょっとした問題にぶち当たっている。

「ふむ…迷っているなこれは…」

奥古来魂の渓谷に来た俺は帰り道を忘れてしまっていた。転送魔法を使う手段もない俺にとっては、道に迷うというのは結構辛い問題なのだ。いやまぁ対策してなかった俺の自業自得ではあるんだが。

というか普通に来た道を引き返して来たはずなのに途中から全く違う道になってるんだよなぁ…ここって定期的に地形が変わったりするんだろうか…

「いや、流石におかしくないか?ここまで様変わりするのはおかしいはずだが…」

ふと周囲を見渡せば、そこは藤の花が咲き乱れる空間だった。奥古来魂の渓谷特有の瘴気も感じない。違和感を覚えて引き返そうにも、道がない。

「…どうやら、進むしかないようだな」

警戒しながら香り高い藤の花の下を歩いていくと、少し開けた空間に出た。

「にしても凄い空間よの…花見するにはうってつけよ」

こういう場所で一杯引っかけるってのも乙だと思うんだが…シャンフロだと酔えないしなぁ…

「それよりも早く出る方法を考えねばなぁ…ん?これは…」

そこにあったのは、一本の刀。

「…刀か…先の戦いで普段使いの物が折れてしまっていたからな…ふむ、2尺3寸…いや4寸か?重みもいい。藤柄の鞘も似合うとる…握り心地もいい…」

なんとなくその剣を手に取って眺めていれば、次第に刀身が気になってくるものだ。

俺は鍔に指をかけ、静かに力を入れた。

 

―キン

 

「っ!?」

静かに抜いた刀から突如物凄い圧を感じる。禍々しいオーラを放つその剣を見て、俺は察した。

(コイツぁ、確実に妖刀の類の剣だな…!)

納めようとしても、びくともしない。オーラが濁流のように噴き出しては、俺の力を押し返す。そうして疲労の汗と冷や汗が混ざったものが顎から雫となって零れ落ちかけたその時。

 

―『霊刀 無窮常世藤を装備しました』

 

「…は?」

アナウンスと同時に急激に圧が消えていった刀。抜き身にしてみても何も感じない。普通の刀だ。

光の当たり方で少し紫というか桃色に見える感じはあるが、普通の刀だ。

「…なんなんだ今のは…」

 

「ほぉう?お主が儂を抜いたのか」

 

目の前に、女神がいた。

本物の女神とかそういうのではなく、あくまで比喩だが、その佇まいは紛れもなく女神のようだった。

月夜に照らされた藤の花の中に、黒い地に藤の花の柄があしらわれた着物と袴。藤の花飾りが長い黒髪に映える。腰には刀が差されていて、まさに女剣士という言葉が似合うだろう。そして何より、透き通るような白い肌…いやまて。透き通るようなどころか手足の先は透けてないか?

「…何者だ」

「中々腕の立つ剣士のようじゃな?儂の元に辿り着ける剣士は中々おらんからな」

「…此方の質問には答えんのか?」

「おっと。すまんすまん。儂としたことが。だが…まぁ、そうじゃの」

そう言うと彼女は剣を抜き

「剣士なら、これで話すほうが早いじゃろう?」

「…同感」

手に入れたばかりの刀を手に取り、戦闘準備に取り掛かる。

「イグニッション」

 

―装備効果により発動できません

 

「…は?」

スキルが…発動出来ない?

「おっと。小手先の技術で儂に勝とうなぞ、百年早いわ。スキルなんぞに頼らずかかってくるがいい」

「…」

そう聞いた俺は、少し嬉(・)し(・)く(・)思(・)っ(・)た(・)。

「はっ。元より邪魔と思っとったわ」

刀を下段脇構えに構える。刀の位置は左側。これが俺の仮想炎天流の構えである。

『仮想炎天流の剣は【相手を撃たせて隙を裂く】…即ち後の先の剣だ。相手を誘い、最低限の回避で避け、出来た隙を切り捨てる…それこそ仮想炎天流の剣なり。だがその事に囚われることなかれ。この武の真髄は…』

 

「世界の全てに気を張り、微かな勝ち筋を見いだす…だよな?爺さん」

 

情報を整理しよう。相手は霞の構え。突きや切り、返しも強い構え…眼光も鋭い。隙を見せたら即死と捉えるべきだろう。

気配は目の前の剣士のみ。鼻は藤の花のせいで利かないが、耳は逆だ…

(気を抜くんでない…相手は達人のはず…勝負は初撃…!)

 

―サッ

 

足音がした。

「っ!!!仮想炎天流!」

 

 

「影千鳥(かげちどり)!!!!」

「そらっ!!!!!」

 

―ガキィィィン!!!!

 

「っぶないのぉ!!!!」

「ほう?今のを避けるどころか合わせるか。やるのぉ?」

突きと読んで俺が打ち放った技は影千鳥。体重を思いっきり移動させ、ふらつく勢いを利用して放つ返し技(カウンター)の剣。千鳥足の如き動きから放たれる剣は、殺気を気取られにくく、撃った後の姿勢が低くなるため、相手からは影を突いたように見える。故に影千鳥。

だが相手は右から左…こちらから見れば左から右に袈裟に切ってきた。影千鳥は切り上げるように放つ剣。見事に嚙み合ったというわけだ。

「っ…そらッ!」

「ぬおっ…やるの!」

反撃の足払いも躱され、状況は再び数歩歩けばお互いの間合いの範囲。

(最速で放たにゃ遅れて即お陀仏…ならやることは一つ)

 

「殺られる前に殺る!」

「その心意気、素晴らしいの!」

 

「仮想炎天流!八咫燕(やたつばめ)!」

斬り上げからの斬り下ろし、そこから更に斬り上げに移行する三連撃。カウンター潰しの連撃…対(・)応(・)し(・)て(・)く(・)る(・)は(・)ず(・)。ほら、やっぱり下がって回避した!そして来るのは…

(横への一文字切り!読み通り!)

「仮想炎天流…」

俺は思いっきり体を反らし、後ろへ倒れ込む。その勢いのまま顎へ向けての蹴り(サマーソルトキック)を放つ。通常のサマーソルトキックとは違い、手をついてブリッジの体勢から爪先で相手を蹴り上げる攻防一体の体技。

「日輪蹴(にちりんしゅう)!!!」

「!?」

「ハッ!やっと怯みやがったか!水面月(みなもづき)!」

日輪蹴の派生技である、しゃがんだ体勢から飛び出す飛び込み斬り、水面月を放つが、此方は刀で止められる。

「やるのぉ!この時代にここまでの剣客がおるとは思いもよらんかったわ!」

「結構攻めてるはずなんだけどなぁ…!」

3度、4度と刀がぶつかり合う。裏の裏の裏を読み合うせいか、相手の攻撃とかち合い続ける。

そうして数分が過ぎた頃。

「…のう、お前さん。これを長々と続けるきかの?」

「ほう?俺も同じ事を思っとったところだ。次で終わらせる」

刀を構え、呼吸の音だけが響く。動けば全てが終わる。そう予感した。

 

―目の前に花弁が落ちる

 

「「ハァァァァァッ!!!」」

 

双方最速の一閃。だが、しかし。

「ぐはっ…」

避けきれなかった。あと少し、速度差で。左腹を切られていた。

「…ぐっ…お前さん、やるの」

「…届いては、いたか」

「そうじゃの。だが、お前さんも中々のものよな」

「あぁ…こういう時に食(・)い(・)し(・)ば(・)り(・)を発動出来るのが、俺の強さか」

「どうする?続けるか?」

「俺としてはここで終わってええと思うが…」

「同感じゃの」

そう言った俺達は剣を収める

「烏頭目だ。今は流れの剣士をしておる」

「儂は武姫(たけひめ)。今は昔…こ(・)の(・)世(・)界(・)が(・)始(・)ま(・)る(・)前(・)の(・)世(・)界(・)の(・)剣(・)士(・)じゃ」

…え?

「…少し待って欲しい。つまり神代の剣士ということか?」

「いんや、儂は江(・)戸(・)の(・)時(・)代(・)の(・)剣(・)士(・)じゃが…」

「…マジ…?」

「マジじゃ。今はその刀に取り憑いておる。長い間眠っていたんじゃが、気がついたら魑魅魍魎が跋扈する世界になっとったからの。今はこの藤の花の下に身を隠しておるんじゃ」

「…成程」

どうやらこの世界は地球と何かしら関係性があるらしい…いや、俺がよく理解してないだけでとっくに解明されてる情報なのか?そこはどうでもいいか。考察は他に任せる。

「んで、なんなんだ武姫殿は。幽霊…ということかの?」

「その認識でいいじゃろう。昔剣にだけ没頭しておったが、満足する前に死んでしもうての。して、その無窮常世藤は儂の愛刀じゃ」

「ほう?そうか。なら返そうか?」

「いんや、その刀はやろう。その代わりじゃ」

 

「お前さん、剣の果てを見たいか?」

 

「果て?」

「あぁ。今の時代は摩訶不思議な術に頼る者しかおらん。そのようなものに頼っとるようじゃ、真の剣士にはなれん。お前さんは、真の剣士になれる。儂にも見れなかった剣の道のその先も…ずっと焦がれていた儂より先の景色も、お前さんなら見れるはずじゃ」

「…成程。俺と武姫殿は同類か」

「?」

 

「ただ愚直に、剣に全力を尽くして道を切り開く剣に取り憑かれた馬鹿だと言うことだ」

「ハハハ!違いないのぉ!」

「クカカ、そういうことだ」

そう言いながら、俺は握った刀を前に出す。

 

「いいだろう。承った。俺が、お前さんと共に駆け上がってやろう!その剣の果てとやらに!」

「それでこそ儂の刀を持つに相応しい剣士じゃ!」

 

―ユニークシナリオ 『悠久の果ての藤の花』を開始します。

 

「よろしく頼むぞ!武姫殿!」

「よろしゅうなぁ!烏頭目!」

 


 

「んで、具体的に何か変わったことはあるか…ん?」

なんだコレ。メインジョブとサブジョブが変わってる?えっと…『神霊憑き』と『無窮の剣』?

えっと、ざっくり言うと無窮の剣が剣士系ジョブで刀を使ったアクションに補正が入ってその上スタミナ消費軽減+回復速度上昇するジョブ。神霊憑きが…

「神代の霊と心を通わせ、さらなる神化へ進む者…?」

「ん?何の話じゃ?」

「いや、こちらの話だ」

どうやら武姫殿は心当たりがない様子…というかそれ以上の話がないのかよ。なんの技能があるとかそういうの…メインジョブだろこれ…

「そうじゃ!お前さんにはコレを渡さんと!」

そう言って武姫殿は俺に何か差し出した。コレは…

「服?」

「そうじゃ。儂の流派、藤月流(とうげつりゅう)の剣士に贈られる服…を模したものでの。お前さんは別の流派の剣士らしいが、その剣を使う以上、コレを受け取ったほうがいいと思うての」

「どうやって用意を…?」

「儂の霊質を利用してチョチョイとの。手先は器用なんじゃ」

「ほお…これは中々」

綺麗な服だな。と、素人ながら思った。袖を通してみればぴったり。性能も俺好みだ。

「ありがたくいただいておこう。武姫殿」

「では、これから頼むぞ?烏頭目?」

ここから俺達の物語が始まったのだ。




Q.仮想炎天流と龍宮院流の違いってなんですか?
A.カウンター系の剣術なのは同じだが、ゲーム特化なので武器奪取や蹴り技、投げ技など何でもありだし、同士討ち狙いなどの多対1想定の技や燕返しなどカッコよさに重きを置いた技など剣道で考えたら実用性低めの技も存在する。しかし一番の違いは龍宮院流の本質が自身中心の行動最適化なのに対して、仮想炎天流の真髄は五感全てを使ってありとあらゆ物に気を巡らせて隙を見いだし、そこに最速で攻撃を叩き込むという剣技である。本質は真逆。
因みに仮想炎天流の弱点は読みを外すと大きく隙を晒すこと。

キャラクタープロフィール
名前:五月雨 流庵
年齢:21歳
誕生日:10月4日(天秤座)
家族構成:父、母
通称:流浪の剣鬼、Ryu-UN(シンガーソングライターでの名義)、『仮想炎天流』2代目師範代
好きなもの:剣、音楽
嫌いなもの:大声、モスキート音
趣味:剣の武者修行、剣客ロールプレイ
特技:絶対音感、遠くの音を聞き分ける、パソコンの組み立て
好みのタイプ:音楽とゲームの趣味が合う人
嫌いなタイプ:有名人だからとすり寄ってくる人
日課:素振り
好きなゲームカテゴリ:音ゲー、スキルを使わなくても戦えるゲーム
嫌いなゲームカテゴリ:レースゲー、スキルを使わないと戦えないゲーム
好きなゲーム:シャングリラ・フロンティア、他多数
嫌いなゲーム:ベルセルク・オンライン・パッション(やりたい事をやれるようなバグ技がなかった為)
特徴:シンガーソングライター、現代の侍、神の聴覚
座右の銘:道は歩くものではなく作るもの

本作主人公。リアルではシンガーソングライター兼ボカロP。実家は個人経営のちょっと大きめの電気屋。高校時代は魚臣 慧と同じ高校に通っていた。ゲームでは様々な作品で有名エピソードがある剣士。一つのゲームをやり続けるタイプではないのと、作品事に名前を変えているため、同一人物であると気がついている人は少ない。去年亡くなった祖父から教えられた剣術『仮想炎天流』を使い、ゲームを楽しむゲーマー。とある修羅の国や伝説となった孤島にも彼の名前が刻まれている。
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