手を縛られた彫りの深い男が、俺の前でうめき声と共に身じろぎをした。
スマホをいじる手を止めてそちらを見ると、目を覚ました男は状況を理解できていないようで困惑している様子である。俺の横にいたダンテは立ち上がり、男の顎を掴んで持っていたスマホの顔認証を解除すると、入り口を塞ぐように動いた。
曖昧にダンテのことを目で追う男に話しかける。
「おはよ、いい夢見れたか?」
火のついていないタバコを口に咥え、手の中でジッポを弄びながら黒ずくめの男──豪乱河と白石曰く、チャーリーなる人物に話しかける。
まるで度胸の無い未成年のイキリみたいで恥ずかしく思えなくもないが、俺からすれば銃の引き金に指をかけているに等しい。何か怪しい行動を取れば、即座に変身して制圧できる。
「ユ…ユーは……」
「俺はお前が戦った高校生の知り合いというか……協力者だ。で、ここは俺んち」
メインの交渉役はダンテではなく俺が務めることにした。諸々を聞くにあたって、現代文化に明るくないダンテでは漏れや誤解が生じる可能性があるし、この時間でスマホから情報を集めるのもダンテの方が都合がいい。
それに……俺よりダンテばかり矢面に立たせていると、後々俺が見た目も相まってナメられることになる。
チャーリーはボーっとした様子で理解しているのかしてないのかは定かではないが、反応を無視して言葉を続ける。
「まずは、お互い自己紹介だな。俺は
俺は名乗った後、ちらりと入り口付近にいるダンテを見やった。
「……私はダンテ。しがなくはない、少々特殊な無職だ」
ダンテはふざけているのか、俺の自己紹介を受けて変な言い方をする。
先ほどこの男が目を話す前にした相談で言っていたが、
信用を勝ち取りたいわけでも信用できる相手でもないから当たり前ではあるか……。
黙って男の目を見つめてやると、沈黙に耐えかねたのか数十秒ほどして観念したように口を開いた。
「……ミーは、遠山チャーリー」
「年齢と職業は?」
俺が質問すると逡巡していたようだったが、状況からして自分が大きく不利であることを改めて察し、答える。
「……20歳。大学生だ」
「おおむね間違って無いようだ」
ダンテがそう言うと、チャーリーは顔をひくつかせる。口を何度か開閉させた後、意を決したように言葉を絞り出した。話さなくてもスマホから掘られ続けるだけだと思ったのかもしれない。
「……拘束して家に連れ込んで、ミーをどうするつもりだ……?」
「そうだな、そこが一番気になる所だよな」
口の端でタバコを転がしながら余裕があるように大仰に答える。
「色々あるっちゃあるが……結局のところ、この町で起こってる異常事態に関するお前の持っている情報を全て話してもらいたい」
「……それは、こちらに答えるメリットはあるのか?」
「ハハハ、冗談きついぜ」
揶揄うようにコン、と額を叩くと同時に距離を詰める。
一瞬面食らった隙に髪を掴んで無理やり目を合わせた。
「身内を害そうとした人間に、質問に答えるだけで終わらせてやるっつってんだよ。端的に状況を言ってやる。最後にお前を襲った光線は覚えてるな?あれを出したのは俺だ。怪しい動きをしたら殺す。この町の全域が俺の射程だ、逃げ切れると思うなよ」
これはもちろんハッタリだ。人を殺すなんて、あらゆる面からできやしない。
そのため正直言って大声を出されたりして外に助けを呼ばれたら、身元の特定手段を持たない俺たちの方が遥かに危険である。だからと言って防音のプライベートルームなんてないのだから仕方ない。
ここで大切なのは、こっちが実際にやる可能性があると相手に思わせることである。喧嘩と同じで、ビビったやつが負ける。
気絶している間に身分証などが無いか体を調べたが、スマホと鍵と財布、そしてアクセサリー以外碌な所持品は持っていなかった。全て没収して検分したが、財布にも身分証の類は無い。
つまり非常に面倒なことに、具体的な脅しも難しい状態で尋問で色々聞きださなければならないということだ。なら万人に対して普遍的に有効な交渉道具といえば恐怖しかない。
ニッコリと笑顔を作って掴んでいた髪から手を放し、乱雑に頭を撫でる。
「まっ、安心しろ。全部ちゃんと素直に話してくれたら、五体満足で家に帰してやるよ。攻撃に正当な理由があったら、謝ってもいい」
俺の言葉にチャーリーは怯えているように見える。
そこまで堂に入っていない脅迫に対するこの様子を見るに、多分こいつは荒事慣れしていない。プロとかそういう次元ではなく、喧嘩とかもそんなにやったことないのだろう。
もし何かしらの組織が背後にいた場合面倒なことになるとも話していたが、この感じだとそんなこともなさそうだ。
チャーリーはどこかに助けを求めるように周囲に視線を彷徨わせると、震えながら絞り出すように声を出した。
「あの二人はいないのか……?」
「そりゃあな。残酷なことになるかもしれない現場なんてガキに見せられねぇだろ」
これもほぼ嘘で、実際には元々二人は家で昼食を済ませる予定だったため、時間からして帰さないと親に怪しまれる可能性があるからである。
「ミス・アズマ……ユーは……」
「おい、俺はミスじゃねぇ。ミスターだ」
「ワット?……あぁ、そういう……失礼、ミスター」
「なんだ?」
事情は元々話すつもりはないが、勝手に納得してくれたようだ。手間が省けていい。
「えぇと、ユーは子どもじゃないのか」
「お前が質問できる立場か?」
気を緩ませるためにも付き合ってやるつもりだったのに、質問があまりにもくだらなすぎて雑に切り捨ててしまった。
腹立たしいが、元の俺につながる情報は与えたくない。だからこんなくだらない疑問を解決することもできないのは歯がゆいが、そもそもこっちが付き合ってやることはない。
質問を無視して要求を述べる。
「じゃ、順繰りに聞いていくぜ。まず、お前の目的は?なぜあの高校生二人に危害を加えようとした」
「それは……彼らがジェラルドから能力を与えられているプレイヤーだと思ったからだ。結局それは間違いだった……ということか……?」
気になるワードはあるが……話をスムーズにするためにとりあえず開示するか。
こちらの情報アドバンテージを晒しても、状況の有利は変わらない。
「ああ。何も知らん。ジェラルドもプレイヤーも。目が覚めたら超能力者になってた」
「……ミーはゲームに参加しているのだ。マナを一定以上まで集めると優勝となる。参加した時点で自身の望みにある程度沿う形で力が得られ、優勝した場合にはそれがより願望を叶えられる形に発展する」
色々言いたいことはあるが、"そういうもの"だとして飲み込むことにする。
これでも少年漫画はある程度読んでいるのだ。耐性はある。
「そんで、その"プレイヤー"とやらなら攻撃してもいいと?元々一般人だろお前、中々の精神してんな」
「いっ、いやっそれは……ええと……知らなかった!ジェラルドが言っていたんだ!マナを持っているのは希望した参加者しかいないと……!それに特別感が……敵がいる状態で力を使うのが初めてだったし……デビュー戦で気が大きくなったというか」
「敵に自分が躊躇の無い人間だと思わせることにメリットがあんのは、ガキの喧嘩までだぜ」
小物だな。かく言う俺も相手に自分がネジの外れた人間だと思わせて喧嘩を切り上げさせてやり過ごしたことはあるけど……。
それはそれとして。嫌味を言ってても話は進まない。
「ずいぶんと確信があったんだな。相手がただの学生だったらどうしてたんだ?」
ずっと黙っていたダンテが口を挟んでくる。
「それについては、元よりここ周辺を嗅ぎまわっていて、彼らの見た目は早々に察したようだな。我々が関与していない時の戦った後の痕跡などの写真がある」
チャーリーは、小さく頷く。
「後は単純に、近づいた時マナの反応もあった。それに、ユーは今週マモノを倒し回っていただろう。ほぼ確実にマナを集めているプレイヤーだと思ったのだが……」
「魔物?単純だな。あの怪物のことだろうが、あれもお前らのせい……まあそりゃそうか」
チャーリーは"お前ら"と一括りにされたことに反応する。
「ミーは……詳しいことは知らない!ジェラルドにマナを集めろと言われただけで……そもそもミーもあれらは退治する立場だ!」
「ふぅん、どうでもいいけど……マナね、それは単にゲームにおける目標なのか?」
「……マナについて知らないとは、本当にユーはどうやって……」
話の途中で机をたたいて遮る。
「こっちが聞く立場だ。とりあえず、マナっていうのは?」
「ミ……ミーもあまり詳しくは無い。受け売りそのままになってしまうが……」
そう前置きをした後に、チャーリーは話す。
「マナは感情に反応する物質で、強い感情によって活性化し、その感情に応じた様々な作用をもたらす。
感情に反応する物質とは……どうにもファンタジーだ。まぁ起こっていること全部ファンタジーなんだが……。
「こちらに来た……つまりジェラルドは異世界人だと」
「イエス。本人曰く、マナも彼が元の世界から持ってきたらしい。それで……」
……つまり俺をこの姿にした主犯ってことか?
いや、まだそう言い切るには早いか。他の何者かの関与の可能性もあるし、そいつの影響がどこまでのものなのか断定するのは……。
「急に顔を伏せてどうしたのだ?ま……まさか殺……」
「殺さねぇよ。……
咄嗟に適当に返してしまったが、脅迫中だった。
まだ言いたいことがありそうだったため、顎で続きを促す。
「マナについてはまだある。マナは感情に反応すると言ったが、普通人一人程度のそれではあまり変化は無い。大気中のマナが数多の人間の何かを思う感情に触れ続けると、やがてそれは思われたものを象る。そしてそれは感情と結びつきたがり、発生源である知的生物を取り込もうとする。それがマモノだ」
確かに、怪物は基本的に何かしら既存の生物や神話や民話にモチーフがあると見受けられることがほとんどだった。理屈は通っている……までは言わないが、疑う必要も無いか。そもそもあいつらの正体とか重要じゃない。
「そして、マナを人間が使うには……あれ、腰にあった
「あぁ、これ?」
俺が脇から赤い宝石を出す。
こいつの腰のポケットに、チェーンで固定された状態の赤い宝石のようなものが入っていることは把握していた。似合わないアクセサリーだと思っていたが、カラクリがあったとは。
チャーリーはこの宝石が俺の手にあるのを見て一瞬慌てた様子だったが、すぐに諦めたように息を吐いてから話し出した。
「
「宝石なんか無くても俺たちは力を使えてるけど?」
「それは分からない……嘘なんじゃないかと思っているくらいだ」
「ふぅん……」
強いて言うなら、俺たちも"何か"を起点にしていることはある。
だが、白石は特にそんなことは無いようだし、十把一絡げにどうとは言えない。
結局のところサンプルが少なくてどうにもってところか……。
「力……そういえば、お前が使ってる異能力は?」
「異能力?」
「あぁ、俺たちが使ってる力の俗称」
豪乱河から話は聞いているが、あくまであいつの分析だ。
合点がいったように頷き、チャーリーは話す。
「ミーの力は、ミーが素材だと解釈できる物質に呪文を書いたらそれが人型のゴーレムになって操作できる、というものだ。それらの視界を見ることなどもでき、人手は簡単に用意できて小回りが利く。説明書などが無いから確証は無いが、少なくとも試した限りではそうだった。当然宝石を肌身離さず持っていなければまともに行使することはできない」
より具体的な内容についてはあいつらも交えつつ嘘をついていないことも確認する必要はあるだろう。
「俺はお前の能力を最後ちょっとだけ遠くからしか見てなかったけど、結構派手なこともできんじゃん。器用万能ってか」
それを聞いた時、チャーリーが体を大きく振るわせた。
それと同時に、早口になって捲し立ててくる。
「いや、できない。……そう、そこだ。あの状態に陥った時、意識はあったが異常な苦痛が体を支配していたし、自由も効かなかった。そうだ、ミーはそれでジェラルドへの不信感を抱えている。でなければここまで話すことは無かった」
「えっ、お、おう……」
少し様子が変わったチャーリーに驚いたが、スムーズに一番聞きたかったところを聞けそうで都合はいい。
「じゃあ、次は話にずっと出てるそのジェラルドについてだな」
そう聞くと、眉根を寄せて何かを強く思い出そうとしながら、チャーリーは答えていく。
「……奴とは、今週の月曜日の夕方ごろに出会った。奴はミーに望む力を与えると言い、それと引き換えにそれを用いるゲームに
「ゲームの内容は……敵を倒して宝石でマナを集めよう、ってだけ?」
チャーリーが頷く。
それを見て俺はどうも拍子抜けする気分になった。
「何で参加した?危険だし胡散臭すぎだろ。詐欺には気を付けろよ?」
俺が嫌味がてら飛ばした疑問に、チャーリーは意外にも真面目腐った顔で考え込む。
「……今整理して話して思えばそうなのだが……なんというか、ジェラルドと相対していると妙に信じられるような気分になってくるのだ。ミーは清廉潔白で闇バイトなどに引っかかったことなど無いのだが……」
何か仕掛けがあるのか、それともこいつがチョロいのか。
自分の力でそういう闇を回避してきたと思い込んでるだけの恵まれてるだけの人間は多いから、何とも言えない。ジェラルドってやつの話術がただ上手いだけの可能性だってある。
「まぁつまりお前を纏めているのはそいつってことね。そのジェラルドって奴に会わせろ。話がしたい」
「……呼ぶことはできない。奴は神出鬼没で、ミーによってコントロールなど……」
「めんどくせ、探さんといけないのかよ」
俺が呆れたように頭を書くと、チャーリーがビクッと震えた。
それに少しばかりの気まずさを覚えながらも、高圧的な態度は崩さずに質問を続ける。
「とりあえず、ジェラルドっていうのは人間でいいんだよな?」
「イエス。人間……人間のはずだ。どこかミステリアスな
「月曜の夕方って言ってたが、会ったっていうのは、どこで?」
「帰宅中の……家の近所の
「カフェはフランス語だろ……入店したということは、店員にも認識されていた。確実に存在している人間っつうことか」
チャーリーが頷く。
「
これは少し都合がいい。超自然的な現象であることに違いは無いが、人為的な原因があるということなら希望はある。それに人間であるなら食事や排泄が必要であり、それには拠点が必要だし痕跡も残る。金銭の移動があるならそこから辿る手段だってなくはない。
……ジェラルドなる人物は、自分が力を与えていない俺らの存在を認知していてけしかけようとしているのか、本当にそうだと思っていて俺たちの存在の方がイレギュラーなのか……。
後者なら向こうから接触して来そうなものではあるが、受け身ではなくどうにかしてアクセスする手段は見つけたい。
俺が考え込んでいると、チャーリーが不安げな顔をしつつも周囲の観察を始めそうな雰囲気があった。
思考時間を与えるという意味で、こいつを長時間拘束することはリスクだ。もう終わりにした方がいいだろう。
「最後に聞きたいことがある。えーっと地図は……」
適当に片付けた時に色々詰め込んだ棚から、例の書き込んだ町の地図を取り出し、チャーリーの前に広げる。
例の向かうことにしていた場所を指し示した。
「ここらへん、何か心当たりはあるか?」
「いや……ゴーレムは一度に操作できる数や範囲等に限りがある。そんな人が少なく遠いところはわざわざ探そうとはしない」
「そうか。いや、一応聞いてみただけだ。俺たちもよく分からん」
期待していたより得られる情報が少なすぎるが、本当にほとんど知らないのか。
隠しているとしたら、ジェラルドという人間かそれに準ずる上の存在に対する忠誠心か恐怖心?しかし、俺が脅し付ける前の態度とそこからの変化は演技臭くなかったし、助けが来ることを期待しているような様子も無い。どちらも薄そうに見える。それに情報を伏せたいにしては俺たちの知らない情報まで言っている。嘘を混ぜてるのか?
ダンテの方をちらりと見ると、軽く首を横に振ってきた。考えすぎか。
……もうそこまで警戒しなくてもいいか。何より、我慢の限界だ。
咥えていたハイライトに火を付ける。チャーリーが嫌そうな顔をしたが、配慮をするわけはない。
ゆっくり吸うと、さっき急いで変身したときは違ってラムの豊かな芳香の中にほのかに甘い味わいがある。一気に吸ったときに走る喉を貫く辛みとは違う姿で、こっちも味わい深い。
穏やかな気分を取り戻し、笑みを作った時とは違う本心からのにこやかな気持ちでチャーリーに語り掛ける。
「よし、もういいぞ。これ吸い切ったら送ってやる」
「えっ……いや、遠慮する……ミーだけで十分だ……」
「おいおい遠慮すんなよ〜」
肩を馴れ馴れしく組むと、チャーリーは嫌そうな顔をして俺から顔を背ける。タバコの匂いだけが原因ではないだろう。
当然、これは親切などではない。相手も恐らく気づいているが、住所を把握するから家まで案内しろということだ。
「一生ここで人生過ごすって訳にもいかねぇだろ?な?」
「シット……せめてスマホを返してほしいのだが……」
「家に着いたらな。あぁ、もう連絡先は入れといたしメモッといたから、安心しろ」
その後、左右を俺とダンテで固めて1時間半ほど歩かせると、アパートの一室にたどり着いた。
遠山という表札があるし、鍵もあっている。チャーリーの居住で間違いは無さそうだった。どこかに誘導して罠に嵌めようとはしなかったようだ。
玄関の入り口の写真を撮っておき、高校生二人にも共有したところでチャーリーに声を掛ける。本人はダンテがスマホをあっさり返して拍子抜けしている様子だった。
「何も無かったし、お別れだな」
「……家の中は入らないのか?」
「しねぇ~よ、賊かなんかだと思ってんのか。これから俺たちに協力して償ってもらえやいいさ。とりあえず宝石は預かっておくから、妙な真似はできないだろうしな」
流石に部屋の中までは上がり込むまではしない。こいつとはこちらが主導権を握りつつも協力関係を築きたいからだ。もう色々やったし好感を抱かれようなんて思っちゃいないが、正当に見えなくもない反撃を超えてプライバシーの侵害まで行くと反発が強くなりすぎる。
「これは雑談なんだけど、一人暮らしか。親は?」
「……進学を期に親元から離れている」
「一人暮らしの大学生か……いい身分してんなぁ」
「そうか?家賃が高いわけでは無いが……」
……世間一般からすればまあ普通か。
「そうだな、間違った。お前がいい身分じゃなくて俺が悪い身分だった」
チャーリーは、気力無く小さく笑った。冗談と捉えられたらしい。
「ミスターアズマ、殺意を覚えるほど怒るとは、改めて考えると悪いことをした。なんと謝れば……」
意外にも、チャーリーはこっちに罪悪感を抱えているようだった。恨まれるまで考えていたが、いい方向に当てが外れた。
利用されているだけで、ゲーム感覚でやっていたなら自分が無辜の民を巻き込んでしまったことを悔いているなら、上手いことこっちが正義側につければ戦力にも数えられるかもしれない。
脅しつけたこちらも若干悪いことをしたような気になってきたが、下手に出てナメられちゃいけない。こいつの罪悪感を軽減しつつも、上手い感じの落としどころ……。
「許してもらいたいなら高校生に後で直接会った時誠心誠意詫び入れろ。んで」
ついでに、ちょっとくらいいい思いはさせてもらおう。
「俺に対しては次会う時にハイライト奢れ。最低1カートンな」
◆
改めて家に帰る道中、ダンテに向かって愚痴をこぼす。
「はぁ……もうネットニュースになってたわ……『謎の巨人に天使様』だってよ」
巨人の方は遠くからでも観測できたため、大々的に取り上げられていた。そして俺の姿も、不鮮明ではあるが出回ってしまっている。
「少なくともあの自然公園周辺には近づけないだろうな。人の目が多い。リョウは髪色などから直接結びつけられる可能性は低いが、チャーリーのような輩が近づいてくる危険性は非常に高い」
ダンテの言葉に頷く。これからはよりコソコソすべきだろう。昨日までやっていたような戦闘も控えた方がいいということは俺でも分かる。
ネガティブなことばかり考えても仕方ない。スマホをポケットにしまい、話題を転換する。
「ジェラルド……話を聞くにどうも胡散臭いよな。とりあえず会って話をしないと何とも言えないけど……」
「ああ。力を与えて他人同士で戦わせようとする存在が碌なものであるわけがない。会う方法は、今のところ無いが……」
「何言ってんだ。あっただろ」
懐から、チャーリーから預かった宝石を取り出して掲げる。夕焼けを反射して赤く輝いていた。
「ジェラルドに力を与えられたって奴を全員ぶちのめして、俺たちがその優勝者とやらになりゃいい。仮に参加者と認められなかったとしても、代理で参加者の中から俺たちが手綱を握れる奴を立てる」
自分で言っておいてなんだが、少し落胆する。
俺はどうも、暴力の螺旋からは逃れられないらしい。
「……色々言いたいことはあるが……そんな良い顔をしながら話すことか?」
ダンテにそう言われて、自分が笑っていることに気がついた。呆れたような言葉のダンテだが、心なしか微笑んでいるように見えなくもない。多分、考えてることは同じだ。
「へへっ、話が単純になったからな」
俺は余裕ぶって自分の笑みも最初から把握済みのような態度で歩を進める。
まぁ、これが俺か。