街談巷語のがらくた達よ!!   作:ふつ

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十話もしくは余話

十話

最近の異能もしくは異種存在管理登録兼国家異常事態対処局――本部は騒がしいし忙しい。

 大体最近現れた宮田(ぐうだ)の家の居候のせいだ、あの家はいつだって特別を持ってきて世界を滅茶苦茶にする。

 

 最初は世界の危機を救った少女と少女を見染めた男が三人、そいつらが家族になり特別な子供をバカスカ産み、育て、その特別性によりまた別の特別を見つけ、世界を少しずつ滅茶苦茶にする、そのような家なのだ。

 数年前の真の『美』女を持ってきたのも大概に大問題だが、今回は問題の桁が違う、なんていったって魂の完全であり無制限の蘇生ができる存在だ!!!

 

「やっっってられっか!!!! もしも外に漏れ出てみろ! 全世界から依頼が舞い込んでパニックになるぞ!!」

「ふふ、完全なる予知能力者よりマシ、落ち着こう、相棒」

 陰気な助手を横に叫ぶ俺は本部所属の魂研究科の平社員、仮に名前をAとしておく。

 ――こっちの世界(異能者側)において本名を迂闊に名乗れるのはある程度の強者の特権だ、名前だけで呪殺できる存在がわんさかいるから。

 

「完全な予知? 俺にも出来るぞ、世界はそのうち滅ぶ」

「その滅びがいつかを知るために血尿出してる予知科の奴らに殺される戯言だな。相棒、ヤケになるな、ワタシ達が考えるべきは蘇生異能者、幸のこれから、でしょ?」

 投げやりに言った俺に真面目に現実を叩きつける、本当にこの相棒は頼りになるなぁ?

 

「……と言ってもなぁ、宮田の保護下の人間に手出しできることあるか?」

 ただでさえあの家は戦力過剰なうえに、本部はとても大きな借りがある。

 あの家はいつだって世界を滅茶苦茶にするが、滅茶苦茶にすることで世界を救ってきた家でもある。

 ……しかも大事な長男が()()善だ。

 冷静に考えてくれ、毎日毎日人を殺して殺してそれでもヘラヘラし、どんな死地に突っ込ませても生きて帰ってくる人殺しの大天才、しかも魂破壊能力付き。

 ……………………そんな奴に敵対するには、ただの研究所の権力程度では無理だ、無理なのだ。

 よくて元殺し屋が大暴れする映画における、犬を殺したマフィアになる。

 

「あのクソボケデミゴッドの方に泣きつけばワンチャンある、あのデミゴッドはクソボケだけど、神の血を引いてて秩序寄りだから幸のストッパーになりうる」

「そう思って連絡を出したが、『スリーアウトまでは様子見です』だとよ? ――3回もポカしたら世界が終わりだと思わないのかあいつら?」

「……ふふ、仕事が早い、そして本当クソボケ……」

 相棒が甘引きしている。

 あの家の父親達が完全に人間の味方ならばこの胃痛も三割は減るのだが、あの家は自己中心的な優先順位を持っているから頼りにならない、頼りにしてはダメなのだ。

 

「……はぁ、まぁいい、最近の様子はどうなんだ? 妙高のレポートがあるだろ?」

「ん、『精神的に安定している、肉体的にも好調、そして善に恋をしている』が要約した内容。――恋だって、遺書を作ろう、相棒。異能者の恋、世界が終わるか救われるかだよね?」

 恋、その一文字に心底俺は渋い顔になる。

 恋、それは異能者どもが正常を保つための大事な理由であり、同時にトチ狂う大体の理由。

 凪のような平穏を望む場合、世界一唾棄すべき不確定要素……っ!

 それを完全なる即死と蘇生能力者が持っている?

 良い想像が一切浮かばない、考えろ、その場合一番優先されるべきは……

 

「……恋してる相手、異能者、善の危険任務の取りやめが急務か?」

「恋をしている相手の死亡や負傷で壊れた異能者、数えられないほどいるからね……」

「いや、しかし、それは……」

 そう、それはそれで問題がある。端的に言えば、上層部が善を便利に使いすぎているので、仕事に穴を開けられると、今度は善の存在ありきで予知していた世界が崩壊するのだ。

 具体的に言うと死傷者が世間にバレるレベルで増える、ので無理な話である。

 

「予知科の奴らはなんて言っている?」

「――予知がズレている、ピンポイントに幸が殺し、蘇生した存在の影響が10%しか当たらない、しかし――」

 相棒が眉を顰める

「――逆に言うと、幸の殺戮と蘇生を事前にコントロール出来るのならば、その10%の予知を採用すればよい、なんとかしてくれ蘇生科、やくめでしょ。……と、血で書かれてる」

「…………………………追い詰められているなぁ」

 目頭を押さえて絞り出すように言う。

 やくめ、なんだが……それが出来たら苦労はしないんだよ……。

 

「よし、相棒、とりあえず幸に対して大人しくして欲しいと土下座するのはどうだろう? 宮田の家で平々凡々に過ごしてもらうの」

「無理なことは知ってるだろ相棒」

 俺は死んだ目で蘇生待ちのリストに目をやる。

 ……蘇生は世界を乱す行為、だがしかし、どうしても、死んだ人間が持つ情報が必要になることがある。

 

「主語がデカくなるが、本部に所属してる異能者達を大人しく出来るならそれが世界一正しい、それはこの世から異能が消え去ることに近しい。けど、世界はそうじゃない。まるで世界が望んでいるかのように異常は生まれ続ける」

 世界は幸をただの少女でいさせるだけの平穏と余裕がない。

 

 それは、純粋に俺たち大人の未熟さ故だと俺は思う。

 

「また余計な責任に苛まれてる。――分かってたことだけど、これはもう現状維持しかないね?」

「――――そうなってしまうなぁ」

 大きなため息を吐く。

 この結論は上層部も同じだ、クソがよ。

 

「……失恋してくれねぇかなぁ」

 せめて少しでも世界が平穏になれという祈りが口から出た。

「善だよ、あの人いい子だよ、少ししか話したことないけど。幸ちゃんもいい子だよ、少ししか話したことないけど」

「いやそれでも恋なら醒めることあるだろ、なんか些細なことでさ、……これ妙高に掛け合う価値があるんじゃないか?」

「失恋させることで世界の安定化を図る? ……バレたらジョンウィックらない?」

「あー……まぁ…………手詰まりにも程がないか?」

 

「手詰まり。でも幸いなことに今のところ世界の終りは予知の先にある。――薄氷の上の平和を飲み込むしか、出来ないと纏めるべきだと思うけどいかが?」

「そうだな、……予知科にこう返してくれ、『幸の蘇生は厳重に管理するよう努力する、が、予知科から雇いの異能者達がいつでも幸を止められるよう空きを作れと上層部にかけあってくれ。こっちには戦力とのパイプがない』と」

「了解。……これは独り言なんだけどさ、相棒」

 カチャカチャとキーボードを打ち込みメッセージを送った相棒が、ポツリと言う。

 

「この世界はあのクソボケ宮田家の恋と愛で救われた先の世界、ならば、世界が救われた報いとして、異能者の恋や愛もなるべく報われたらいい、と祈った方が筋が通ってない?」

「……案外ロマンチストだな?」

「ふふ、まぁ、ね。」

 




なんとか二桁話
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