街談巷語のがらくた達よ!!   作:ふつ

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やっぱ一話前の話前提かもしれん


十四話

十四話

 幸ちゃんを連れて仕事場の最寄りの警察署へ行き、そこから本部に飛び報告をした後、ばったりと出くわした知り合いを連れて個室焼肉屋へ行く。

 仕事の打ち上げである。

 

「はいということでかんぱーい!!!」

「人殺した後に焼肉はどうかと思う……っ! 流石に……っ!!」

 そういう幸ちゃんも手にジュースを持って乾杯はしてくれる。空気を読んでくれてありがとう。

 

「この子まだグロになれてない感じなの? んなこと言ったら俺なんて毎日肉食えないんすよねー」

「おにーさん、この絶妙に口調が被ってる男の人はだれ??」

「さっきも言った通りそこそこ親しい知り合いっすよ、この前音の魔女ちゃんがもくまとか言ってたでしょ? その人その人」

 

 大盛りご飯にカルビを乗っけてモリモリ食べているもくま――さっきも言った通り音の魔女関係で知り合った男だ――を胡乱な眼差しで見ている幸ちゃんに店員さんが持ってきた冷麺を渡す。

 流石に実戦の直後でまだ緊張が抜けてないみたいだ、軽いものから行くのは正解だと思う。

 

「あー、あの人の……。……おにーさんに焼肉誘われるくらい仲良いんだぁ」

「ん? 嫉妬? いやーこの前仕事押し付けられた代わりに焼肉奢れって約束しててねー? ちょうど良かったから着いてきたんすよ、お気遣いなく?」

「お気遣いするよね? 初対面だよ???」

「いやおねーさん、マジでコレは無視でいいっすよ、ちゃんと反省会もしなきゃだし」

 

 モリモリと肉を食べるもくまの後頭部を一回叩き、幸ちゃんにちゃんと向き直る。

 

「ま、反省会っつってもねー、しょうがないっすよ、魅了能力者を殺せねーのは。なぁもくま?」

「オマエ俺を話に入れたいのか入れたくないのかハッキリしろ。え、つうかオマエ仕事帰り? しかもこの子を連れて? 魅了クズがターゲットで?」

 

 信じられねぇ……ともくまは呟く。

 いやまぁおれもそこそこ初手で無茶振りした自覚がある。が、肝心の幸ちゃんはピンと来てないようだ。

「そんなに魅了の人ってアレなお仕事なの?」

「おい善、これ部外者の俺が説明した方がいいよな? ――いいな? あーと、お嬢ちゃんは魂見える感じ?」

「見える感じ」

 今度はもくまがおれの頭をドつく。しょうがないと甘んじよう。

 

「じゃー見たな? 魂が腐ってんのとか、殺せなかったとか。まず第一に魅了能力者のことをお嬢ちゃんは殺せないと思ったんだろ? それが目の前で死んでなんと思った?」

「え、いや……特別には何も……わたしにとって生と死は同じだから……」

「おおっともしかしてこの子クソ厄物???」

 

 まぁ幸ちゃんは宮田案件っすからねぇ、と呟いたら悟ったのか視線が遠くなった。

 こいつ本部勤務のくせに情報に疎いっすねぇ……。

 

「もしかしてこの子って生殺自在の……。話を戻すとな、普通は好感を抱いた相手が目の前で死ぬってかなりストレスなの、だからまず初手では選ばないし、そもそもお嬢ちゃんみたいな子供が殺しの依頼? 本部は何を考えてんだ?」

「殺しの依頼を受けたのは私の意思です! 善おにーさんを愛してるので!!」

「………………………………おい」

 結構な勢いで絶句した後、マジの半眼でおれを睨む。

「ロリコンじゃねぇっす、断じてロリコンじゃねえっす、一方的に惚れられた上に幸ちゃんが暴走した結果っす、現実叩きつけたら1発で嫌がるかなって思ったらかなりケロッとしてて大誤算なだけっす」

 早口で弁明する、幸ちゃんの独特の価値観を甘く見ていたおれのミス……っ!!!

 

「つまり大惨事じゃねぇかよ!!! どうすんだ魅了クズの依頼を受けてケロッとしてるとかどんな依頼も大概イケるじゃねぇか!!!」

「そもそも死ぬのが嫌なら生き返らせれば……3回までならセーフなんだよね?」

「うわぁ幸ちゃんその考えはダメ!! アウト!! 外で言っちゃダメ!!!」

「わたしに無限に蘇生の依頼を投げてくるくせに勝手なことでは……!!」

 

 閑話休題。

 

 幸ちゃんが焼いた肉を食べ始めた頃、やっとわちゃわちゃした空気が落ち着いた。

「で、善のヤローはこの子とまだ一緒に仕事する気? 縛りとかは今聞いたけど、どんどん歪むぞ間違いなくよぉ」

 あまりの大惨事っぷりに現実逃避でハイボールを流し込んだもくまが言う言葉に、幸ちゃんが首を傾げた。

「歪む……?」

「そ、歪む歪む、人の命とかどうとも思わなくなるの、そうなったら1発アウトなんだよ本部的には、俺の仕事が増えるのだけは勘弁して欲しいっすねー」

 

 む、と幸ちゃんが不機嫌になる。

「わたしはちゃんと人が死ぬのとか嫌ですけど……ただ善おにーさんが何よりも大事なだけなんですけど……」

「じゃあ善がいなくなったら?」

 ピシ、と空気が凍った気配がした。善がスッと瞼を細める。

「おいもくま、お前がそれを言うわけ?」

「俺だからこそだろ。――お嬢ちゃん、マジでそこは考えとかないとダメだよ、お嬢ちゃんの理論展開だと善が死んだ途端に全ての嫌なやったことが無意味になる、その時に何を選択するかが世界で一番大事なんだよ、俺たちみたいな奴らにとっては」

「……もくまさんも誰か大事な人がいるの? その人のために嫌なことしてるの?」

「うん、してる。――だからお嬢ちゃん見てると他人事じゃねぇっつうか……マジで仕事で会いたくないんすよねぇ、ねぇ、お嬢ちゃん、自殺って出来る?」

「おい」

 かなり低い声が出た、が幸ちゃんは気にせず少し考えたあと、口を開いた。

「……多分、できます」

 その答えにもくまが苦笑する。おれは気が気がじゃないんだが?

「……ならいいや、なぁお嬢ちゃん、もしも一番大事なものが壊れて、()()が終わった時に幕を引けるのは幸福なんだぜ、それは覚えといてくれよ?」

 

 ――――――――――――――――――――――――

 

 そのあと、なんとなく仕事の話をする空気ではなくなり、普通に焼肉を食べ雑談し、お会計して店の前でもくまと別れ、家に帰る。

 

「……大概反省会出来なかったっすねぇ、まぁいいや、問題点は分かった。やっぱ幸ちゃん、どうも死が軽いっすねぇ」

 特に気になったのが『自殺を選べる』との一言だ。

 そんなに命が軽いとは思っていなかった、いや、おれのことが好きすぎるだけ? ……これが自惚れじゃ無いと言えないのが嫌すぎる。

 

「どうしよっかなー、おれが一回死んで人が死ぬのが嫌すぎると理解させたかったんすけど、そんなことしたら凄くヤベーことになる気がする……」

 しばらく頭を掻いたあと、ふ、と忘れていたことを思い出した。

 

「……そうか、そもそもおれらって異常者なんすよね、異常者に普通を求めるのは不幸なんすよ、あれ、基本的なことなのに、なんで忘れて……」

 例えばおれだって殺しを止めろと言われたら嫌な気持ちになる、おれよりももっと生死に近しい幸ちゃんなら、多分尚更理不尽に感じるだろう。

 

 おれのポリシーは異常のまま幸福になろう、だ。

 なのに、なんでおれは幸ちゃんに普通のことを望もうとした?

「……うわ、なんとなくもくまの気持ちが分かったかも」

 もしも、その理由が愛ならば、おれは本当に人を愛する資格がないのかもしれない。

 だって、異常者に普通になれと言うのは、ダンゴムシに鳥になれと言うのと同じ残酷なのだから。

 

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