街談巷語のがらくた達よ!!   作:ふつ

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十七話

十七話

わたしの力は命を操る力、だから実験のために命が必要、なんだけど――

 

 ――――――――――――――――――――――――――

 

「命の実験をどのようにしてるか? お、お前一気に踏み込んでくるな……?」

 やけに広いのに人が私含めて三人しかいない本部の魂研究所?で、わたしは紹介してもらった人に疑問をぶつけている。

「ふふ、相棒、この子の将来を考えるに、魂の講義をするのはアドの塊じゃない、かな?」

 片方は疲れが滲んでるおじさん、もう片方は前髪が長くて独特の喋り方をする女性だ。

 どうも隣の部屋にたくさん魂があるんだけど、狭くないかな、こっちくればいいのに。

 

「あー……まぁ無知が一番怖い、か? よし、異能者幸、いいか、魂の講義を本業の俺がしてやる」

「おねがいします!!!」

「礼儀正しいね、じゃあ幸ちゃん、まずは魂が何かの定義から始めようか」

「はい! なんかあるのとないのがあって結構自由になるものです!!」

 

「……うわっ」

 ぼそっとおじさんが言って甘引きされた。なんだよわたしの感覚だとかなり適当で自由なものだぞ魂とか。

 なんか壊れても戻せるし。

 この意識になってから最初の頃は死ぬとか生きるとかに怯えてたけど、最近は愛の力なのか少し雑に扱えるようになったんだぞ。

 それがいいか悪いかは別として、そうなったのは本部の人たちが仕事をたくさんさせるからだからなんだけど。

 ――なので本部の人に甘引きされると少し嫌だな!

 

「こら相棒、顔に出てる」

 ぱしん、とおじさんが頭を叩かれた。

 すこしばつの悪そうな顔をした後、また私に向き直る。

「――そうだな、いいか、世間一般的には魂っていうのは『あるかも分からない』ものなんだ。いやあるよ? って顔されてもな? 魂を見れるのは圧倒的に少数派で見えるだけで異能(こっち)側なんだぞ?」

「でもおにーさん……善も普通に魂見えてるし……それが普通なんじゃないの?」

「普通じゃない普通じゃない、現に俺と助手は魂が見えない中で研究してんだよ」

 

 ……驚いた、こんな当たり前に見えるものを見えないまま研究する?

 じゃあもしかして……もしかして……私にとって当たり前のことを研究しているのでは?

「……あの、何を研究してるか聞いても?」

「あぁ、基本的に一丸となって研究してるのは『魂の実在証明』だ。――おい、一気に興味を失った顔をするな。確かにお前ら異能者にとっては実在は自明なのだろうが、俺たち大多数にとって『在る』と証明するのは至難の業なんだよ!!」

 例えばだなぁ!と頭を掻きむしりながらおじさんは話を続ける。

「例えばだな、愛とか神とかそういうものの実在と同じなんだよ魂ってものの扱いは、それらがお前の頭の中だけの幻じゃないとどうやって証明するかを考えると難しさが分かるんじゃないか?」

 ふむ、愛とか神の実在……?

 

「愛はありますし善おにーさんのお父さんの一人は半分神様ですが……?」

 あるじゃないか! ヨシ!!

 

「ふふふふふ、ダメだこの子常識が何一つ通じない……っ!! あのね、幸ちゃん、とりあえず『物体的にあると人に見せること』が最終目的で、それは私たちに難しい、ここまでは前提として飲み込んで?」

「……話が終わっちゃうんですね! わかりました!」

 わたしは察しがよく話が通じる女ですので!

 

「よし、その上で魂の実在証明のために何をしてるかというと――ちょっとまて、まずなんでこんな事を聞きたいんだ? 話がとっ散らかるがまずそこをハッキリさせたいんだが」

「おにーさんにわたしのが人殺しが上手いとか分からせるためにわたしはわたしのことを知らなければいけないからです。だからまず魂のことを調べて私の見てるものはなんなのか、を知りたいのです」

「なるほど、わからん!! そして多分それは俺たちには手伝えん!! なぜなら俺たちがお前の視界を知りたいからな!??」

「えええ今までのトーク無駄じゃん!!!!」

「そうなっちゃうねぇ……ごめんねぇ……でも幸ちゃん、このまま返すのは悪いから、ちょっと私たちが普段何をしてるかの話を聞いてもらってもいいかな?」

 ……確かにそのくらいは聞いていい気がする、何か持ち帰らないと無駄足もいいところだ。

 私は頷いた。

 

「ふふ、ありがとう。最近はね、これまた宮田が見つけた人間なんだけど、……魂が『美』の人を研究しているの」

「たましいがび?」

 急に分からない話が出てきたぞ、魂が美しい? そんな人見たことがないな……

「おや、幸ちゃんはピンと来ない? 参ったな、じゃあ魂由来じゃない……?」

「私の視界だと魂って……その、みんな同じ、です。ただそれがないと生きられないだけの塊? です。」

「ふんふんなるほどね? みんな同じ、……善も似たようなこと言っていたね? ……よし分かった、ちょっとこの子を呼ぶから待ってて、一つ謎が解明するかもしれないから」

 

 ――――――――――――――――――――――――――

 

 数十分後、確かにその『美』は研究所に訪れた。

「はぁい、ツィアさんだよ、その子があたしの美しさの正体を見つけられるかもしれない子?」

 ――その人はまるで光り輝いてるように見える、顔の造形はもちろん最高なのだけど、それだけじゃ何も説明が出来ない。

 少し意識して魂を見る。魂の形は同じだ、ただ、なんだろう、魂が行き来する道の奥が何か違う……?

 

「ふふ、相変わらず説明がしようがないね、貴方の美は。――幸ちゃん、何か見えた?」

「……魂、は何も変わりません、同じです、でも、なんだろう、……わたしが蘇生するときって、なんか道? から引きずり出す感じなんです、その道? が繋がってる先が……おバグり散らかし……?」

「待て待て待て初めて聞く概念なんだがなんだその道って三途の川にでも繋がってんのか?」

 おい助手! 記録してるのか!? と喚くおじさんを尻目に、わたしの視線はこのツィアとかいう美しさに釘付けだ。

 ある意味好奇の視線と同じものに慣れきってるのか、ツィアさんは平然とした顔をしている。

 それどころか少し面白そうだ。

「へぇ、善よりも深いところが見えるんだ? 善は魂が見えるだけだったもんね、まぁあたし、そんなの全く自覚してないんだけど」

 カラカラとツィアさんは笑う。

 ううう一挙一動にドキドキする!!! 明らかに異常なのに魂がみんなと一緒なの頭がおかしくなりそう!!

 

「……相棒、幸ちゃんの話を統合すると根源理論が適用されない?」

「根源? あぁあの全ては1から始まり全てに派生して行ったとかいう理論か?」

「そう、これは仮説なんだけど、その根源の先から魂が発生して行ってて、幸ちゃんはその根源から命をサーチできるし、ツィアはその根源の中の『美』と繋がってる。そんな話なら筋が通らない?」

「なるほど、ならば――」

 じ、助手さんとおじさんが難しい話をしている……っ!!

 

 ぽん、と肩に誰かが手を置く感触。振り返るとツィアさんの顔が至近距離にあった。

 うわぁ綺麗! 綺麗! 心臓止まるかと思った!!

「あの二人は本業の話をすると没頭しちゃうんだよね、お姉さんと話さない? 魂の支配者さん?」

「しはいしゃ…… そ、そこまででは……あるけど……」

「あるんだ、面白いね。ねぇ貴方はそのチカラで何をしたいの? あたしはね、この美しさでやりたいことがないの。だからちょっと聞いてみたくてね?」

「はいはいはい!!! わたしはこの能力で善おにーさんのひとごろしを分かち合いたいです!!!!愛してますので!!!!」

 即答!!です!!! だってやりたいことなんてそれしかないから!!!

 一瞬だけ動きが止まったツィアさんが大声で笑い出す。

 そんなに面白いこと言った覚えはないんですけど!

 

「――愛だね!!! 気に入った!! 愛! それは大事!!!」

「ですよね!!! 愛! 大事ですよね!!」

 きゃっきゃと手を繋いで盛り上がる。

 も、もしかしてこの美の人はわたしと同類なのかもしれない……!

「ふふ、そうか善にもこの世の春が訪れたんだ……お姉さん感無量だよ……よぅ君に報告しなきゃ……」

「あの、ツィアさんは善おにーさんと知り合いなんですか?」

「うん? 知り合いどころか善の殺しの師匠の妻があたしなの! 本当に色々あってね、いつか話してあげるよ」

 

 そう言ってツィアさんがにっこり笑ったのと同時、おじさんと助手さんがぐるりとこっちを見た。

 

「――幸、確かにこれは俺たちには手に余る、他のところを当たって欲しい。というかだな、前提として――お前のことを一番分かってるのはお前だ、だからよく考えろ、殺すことと生かすこと、両方をだ」

 ……? それが分からなくて困ってるのに分かってると言われても……

 

 私が本気で困ってると、ぽつりとツィアさんが言う。

「あ、生き返らせることも出来るんだっけ? じゃあもう一度死なないとだね、その生き返った人」

 その言葉は、確かにその通りで、でもわたしが考えたことのない話で。

「じゃあすごく怖いね、その人。死ぬのは怖いことなのに2回も怖い思いをさせるなんて、ね」

 でもわたしはその言葉の本当の意味を理解出来ないのも、その時には分かっていた。

 だって私は死んだことがないから、死を怖いと思ったこともないから、だから一回死ぬ怖さも分からないから。

 もしかして、おにーさんが殺す罪を背負いたいのが分からないのもそのせいなのかな?

 

 誰かを怖がらせるのは悪いことだ、だから、死ぬ怖さを味合わせるのも悪いことで、だからおにーさんはその悪いことを全部、背負いたいと思ってるなら、私にも理屈がわかる。

 

 でも、わたしの何か――多分良心だ――が言っている、その罪を理屈じゃなく、本心で分からないと、お前(わたし)は命を操る資格が本当にはない、と。

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