悪役令嬢、耐久力999で破滅フラグを物理的に叩き折る! ~頼れるのは鉄バットとクソゲー知識でした~   作:星灯ゆらり

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【第5話】コネと足と悪女の算段

さて、借金という当面のクソ面倒な問題は片付いた。

 

手元に残った金は雀の涙にも満たない有様だが、気分は悪くない。

 

むしろ、ようやく反撃のスタートラインに立てたという高揚感すらある。

 

だが、感傷に浸っている暇はない。

 

あたしの武器はなけなしの中古の長剣一本。

 

防具は新調した頑丈なブーツだけ。

 

この貧弱な装備では、銀札ランクを維持するどころか、チンピラ相手にも後れを取りかねない。

 

そして、あのマグマスパイダーの魔法攻撃。

 

思い出すだけで背筋が凍る。

 

耐久力があっても、あれをまともに喰らえば即死だ。

 

魔法対策は急務。

 

武器、防具、魔法対策……どれもこれも金がかかる。

 

今のあたしに必要なのは、まず金策だ。

 

それも、できるだけ安全かつ効率的な。

 

(となると、やはり……)

 

あたしの脳裏に浮かんだのは、あの鍛冶親方の顔。

 

そして、そのバカ息子の顔だ。

 

手下A――あたしが銀札に引き上げてやった(ということにしている)、あの気の弱い男。

 

あいつが、まさか鍛冶工房の跡取りだったとは。

 

しかも、都市の正規住民という、喉から手が出るほど欲しい身分持ち。

 

(これをコネとして使わない手はない)

 

(あいつを冒険者から足を洗わせて、鍛冶屋に戻るように仕向けるのが一番手っ取り早くて、将来的には実入りも大きいだろうね)

 

あのガンコ親父も、息子が戻れば恩義を感じるだろう。

 

武器や防具の融通、あるいは、表に出せないような「おいしい仕事」の紹介。

 

利用価値は計り知れない。

 

よし、決めた。

 

今日の目標は、手下Aの確保と説得だ。

 

あたしは新調した安全靴の感触を確かめながら、意気揚々と冒険者ギルドへ向かった。

 

ギルドの扉を蹴破らんばかりの勢いで開けると、相変わらずの冷ややかな視線と、値踏みするような好奇の目が向けられる。

 

ふん、ハエどもが。

 

ギルド内を見渡し、手下Aの姿を探す。

 

だが、どこにも見当たらない。

 

いつもなら、この時間帯なら酒場で他の冒険者とダベっているか、依頼掲示板の前でウロウロしているはずなのに。

 

「ねえ、ちょっとあんた」

 

近くにいた、比較的あたしに敵意を向けてこない中堅どころの冒険者に声をかける。

 

「うちの手下A、見なかったかい?」

 

「セレスティア様の手下……ああ、あのひょろっとした戦士の? いや、今日は見てないですね」

 

「そういえば、最近あまり姿を見ませんよ。何かデカい依頼でも失敗して、落ち込んでるって噂ですけど」

 

(チッ、使えない奴だね、まったく)

 

手がかりなしか。まあいい。

 

ギルドにいれば、そのうち顔を出すだろう。

 

それまでの間、何か割の良い依頼でも探すか。

 

あるいは、この『足』を武器に、商人ギルドにでも行って輸送の仕事を売り込むか……? いや、下手に能力をひけらかすのはまだ早いか。

 

あたしが依頼掲示板の前で思案に暮れていると、不意にギルド職員があたしの名を呼んだ。

 

「セレスティア・フォン・ヴァイス様! いらっしゃいますか!」

 

「……あたしがセレスティアだけど、何か用かい?」

 

面倒くさそうに振り返ると、職員は少し緊張した面持ちで告げた。

 

「セレスティア様宛に、指名依頼が届いております!」

 

「「「はぁ!?」」」

 

その場にいた冒険者たちが、一斉に驚きの声を上げた。

 

無理もない。

 

悪評まみれのこのあたしに、指名依頼だと? 普通ならあり得ない。

 

「あのトラブルメーカーに?」

 

「どこの物好きだよ……」

 

「また何か企んでるんじゃねえのか?」

 

ヒソヒソと聞こえてくる声に、あたしの額に青筋が浮かぶ。

 

(うるさいね、この外野どもは……!)

 

だが、それ以上に、あたしはこの状況を警戒していた。

 

なぜ、今、あたしに指名依頼? 誰が? 何の目的で?

 

「……で? 依頼主はどこのどいつだい?」

 

「は、はい! えっと……北西方面、国境守備隊のダグラス砦からです!」

 

「ダグラス砦……? 前に行った砦とは別だね。で、内容は?」

 

「はい、機密書類を含む物資の輸送を、至急お願いしたいとのことです」

 

「先日、セレスティア様が獣の森を突破して辺境の砦へ薬品を届けた実績を聞き及び、その『速さ』を見込んでの依頼だそうで……」

 

なるほどね。

 

あの時の無理が、こんな形で返ってきたか。

 

「機密書類を含む」ねぇ……。

 

ふん、どうせ大した中身じゃないんだろうけど、わざわざそう書くってことは、あたしが中身を盗み見たりしないか試してるって魂胆も見え見えだね。

 

まあ、どっちでもいいけど。

 

あたしが興味あるのは報酬だけさ。

 

相手は国境守備隊。

 

下手に断る方が面倒そうだ。

 

(まあ、いいだろう。利用できるものは利用するさ。それに、この依頼でさらに『足』の実績を作れば、今後の交渉にも有利になる)

 

「分かった。その依頼、受けたよ」

 

「ありがとうございます! 詳細はこちらに……物資は大型の鞄一つ分程度です。期限は明日の日没までですが……」

 

「問題ないね。最短ルートで行かせてもらうよ」

 

あたしは周囲の冒険者たちに聞こえよがしにそう宣言し、依頼書と物資の入った鞄を受け取った。

 

最短ルート、ね。

 

馬鹿正直に行くわけないだろう。

 

あたしはギルドを出ると、街の北西門から、あえて少し遠回りになる街道を選んだ。

 

そして、新たに手に入れた『耐久力比例の走力』を解放する。

 

風になる。

 

景色が猛烈な勢いで後ろへ飛んでいく。

 

昨日までの疲労など微塵も感じさせない、圧倒的な疾走感。

 

街道沿いの森の中に、いくつか怪しい気配を感じる。

 

おそらく、輸送部隊を狙う盗賊か、あるいは同業者――あたしのような単独の運び屋を狙う、悪質な冒険者だろう。

 

(読み通りだね、馬鹿どもが。あたしが最短の獣道を選ぶとでも思ったか?)

 

最短ルートは危険が多い。

 

だが、この速度があれば、多少の迂回など問題にならない。

 

安全なルートを、誰にも追いつけない速度で駆け抜ける。

 

これがあたしのやり方だ。

 

(戦わずして勝つ、なんて言うけど、単に面倒なだけさ。こいつらを叩きのめしたところで、経験値は雀の涙)

 

(それに、これ以上『伝令士』や『戦士』系の経験値を積んでも、今のあたしには無駄だ)

 

(欲しいのは魔法対策と、まともな武器だからね……)

 

ふと、あのマグマスパイダーの灼熱の溶岩弾が脳裏をよぎる。

 

(しかし、魔法への抵抗能力はどうすれば手に入るんだったか……あのクソゲーの知識も、断片的すぎて当てにならないことが多い)

 

(特にマイナービルドの情報は少ないんだよな。前世も今も、記憶力には自信がないんだよなぁ)

 

(こっちの世界にもスマホみたいなチートアイテムがあればいいのに)

 

(自分のステータスすら確認できないんじゃ、効率的な強化も難しいじゃないか!)

 

そんなことを考えているうちに、目的地のダグラス砦が見えてきた。

 

街道を全力疾走してきたにもかかわらず、息一つ乱れていない。

 

これがあたしの新しい力。

 

砦の門で身分と依頼内容を告げると、衛兵は驚いた顔をしながらも、すぐさま担当官の元へ案内してくれた。

 

依頼主の担当官は、あたしの予想外の到着時間に目を見張りながらも、書類と物資を確認すると満足げに頷いた。

 

(鞄の封印が無事なのを、やけに念入りに確認してるね。やっぱりそういうことか)

 

「セレスティア銀札、ご苦労だった。噂に違わぬ速さだな。おかげで非常に助かった」

 

「ふん、これくらい当然さ」

 

「実は……貴殿の実力と、その信頼性を見込んで、もう一つ、お願いしたい輸送任務があるのだが」

 

担当官は、新たな依頼書を差し出してきた。

 

今度は、ここからさらに北東にある別の駐屯地への、これもまた緊急の物資輸送だという。

 

報酬はさらに上乗せされている。

 

(なるほど、最初の依頼はテストだったわけか。で、合格したから次の仕事、と。悪くない流れだね)

 

「いいだろう。その依頼も受けた」

 

あたしは二つ返事で承諾し、新たな物資を受け取って砦を後にした。

 

次の目的地へ向かう街道を、再び疾走する。

 

日はまだ高い。

 

この調子なら、今日中に全ての依頼を終えて街に戻れそうだ。

 

しばらく走ったところで、前方に二つの人影が見えた。

 

見覚えのある姿……あれは!

 

「おい、あんたら!」

 

あたしが声をかけると、しょぼくれた様子でとぼとぼと歩いていた二人が、驚いたように振り返った。

 

やっぱり、手下Aと、その連れの女――手下Bだ。

 

二人とも、装備はボロボロで、ひどく落ち込んでいるように見える。

 

「あ、姐御!? なんでこんなところに……」

 

「依頼の帰りかい? 見るからに失敗したって顔だね」

 

「う……面目ないっす……」

 

手下Aが、ばつが悪そうに俯く。

 

「まあ、いいさ。それより、今晩、いつもの酒場に来な。あんたら二人に、大事な話がある」

 

「え? 話って……」

 

「来れば分かる。じゃあな!」

 

あたしはそれだけ言うと、呆気に取られている二人を置き去りにして、再び風のように駆け出した。

 

感傷に付き合っている暇はない。

 

まずは目の前の依頼を片付けなければ。

 

目的地の駐屯地は、先ほどのダグラス砦とはずいぶんと雰囲気が違った。

 

砦というよりは、官僚的な役所のような、陰気で堅苦しい空気が漂っている。

 

門番の衛兵も、受付の担当官も、あたしの姿――特に、安物の剣と、実用一点張りの安全靴 ――を見ると、あからさまに侮蔑の色を目に浮かべた。

 

(チッ、なんだこの感じ悪い連中……)

 

(装備が悪いのは仕方ないとして……なんでこんなジロジロ見られなきゃいけないんだ? 前世よりはマシな肌の手入れしてるつもりなのに……)

 

(舐められないためにも美容にもっと金を使うしかないのか。また金がかかる、畜生めっ!)

 

その時、あたしはハッとした。

 

(――あ、ああッ!? そうか! こっちの世界のお高い化粧品や美容液より、前世の安物の方がよっぽど高性能に決まってるじゃないか!)

 

(なんでこんな簡単なことを見落としてたんだ、あたしは! クソッ、金ができたら、前世知識で美容品開発でもしてやるか……!)

 

まあ、今はそんなことを考えている場合じゃない。

 

あたしは内心の怒りを押し殺し、依頼の品を突き出す。

 

担当官は、いかにも面倒くさそうに受け取ると、確認もそこそこに報酬を放り投げて寄越した。

 

その態度が、あたしの神経を逆撫でする。

 

(このクソ役人……覚えてなよ)

 

いつか、こいつにも「ざまぁ」させてやる。リストに入れておこう。

 

あたしは憎々しげに担当官を一瞥すると、背を向けて駐屯地を後にした。

 

全ての依頼を終え、懐にはいくらかの金貨と銀貨。

 

今日の稼ぎとしては上々だ。

 

あたしは街へと戻り、まっすぐ例の酒場へと向かった。

 

酒場の隅のテーブルには、すでに手下AとBが神妙な顔つきで座っていた。

 

あたしが向かいの席にどかりと腰を下ろすと、二人はびくりと肩を震わせる。

 

「さて、と」

 

あたしはテーブルに肘をつき、二人を交互に見据えた。

 

「大事な話ってのは他でもない。A、あんた、冒険者を辞めな」

 

「はぁ!? 冒険者を止めろだぁ!?」

 

先に声を上げたのは、手下Bだった。

 

気の強そうな、それでいてどこか品のない顔立ちの女だ。

 

「姐御、いったいどうしちまったんです。俺たち、ようやく銀札になれたってのに!」

 

手下Aも、困惑した表情で訴えかけてくる。

 

「その銀札で、いつまで食っていけると思ってる?」

 

あたしは冷ややかに言い放つ。

 

「あんたのその腕(冒険者としての実力)じゃ、頭打ちは見えてるだろう。あたし? あたしは特別さ。だが、あんたたちは違う」

 

「そんなことっ……分かってるよ! だから行けるとこまで行くって……!」

 

手下Bが食って掛かってくる。

 

「……」

 

手下Aは押し黙ったままだ。

 

自分の限界を、うすうす感じてはいるのだろう。

 

「お前は親のコネを使わず一応は独力で」

 

あたしは手下Aに視線を固定する。

 

(……まあ、あたしのおこぼれもあったけどね)

 

内心のツッコミは口には出さない。

 

「銀札冒険者になった。それは立派なことさ」

 

「だがな、冒険者の『上がり』としては、もっといい道があるだろう?」

 

「あんたの親父さんは実力と地位の両方を持っている鍛冶親方だ」

 

「頭下げて跡を継がせてもらえば、お前は都市の正規住民、しかも尊敬される職人だ」

 

「剣も振れなくなって物乞いするより、よっぽどマシな人生だと思わないかい?」

 

ほとんど建前だが本音も少しは混じってるさ。

 

「……実家に戻れ、ってことっすか」

 

手下Aの声は、まだ迷いを帯びている。

 

「ふざけんなよ! あんたがそんな臆病になってたなんて!」

 

手下Bが、今度はあたしに向かって吠えた。

 

「ふざけてるのはどっちだい? あんたら、デキてるんだろ?」

 

あたしは二人の間に漂う、妙に馴れ合った空気を指摘する。

 

「もし腹に子でもできたらどうするつもりだ? それでも危険な冒険に出て稼ぐなんて言うなら、あたしがあんたを再起不能にしてやるよ」

 

「……っ!」

 

手下Bの顔が、カッと赤くなったかと思うと、サッと青ざめた。

 

羞恥と恐怖がないまぜになったような、奇妙な表情だ。図星か。

 

「姐御、一つだけ……なんで、急にそんなことを……? いや、姐御は……貴族になるって夢、諦めちまったんですか?」

 

手下Aが、震える声で尋ねてきた。

 

「諦めるもんか。だが、やり方を変えるのさ。成り上がるには、まっとうな市民との強力なコネがいる」

 

「……それに、あたしとて鬼じゃない。元手下が路頭に迷うよりは、まっとうな暮らしを手に入れる方が後腐れなくていいだろう?」

 

「ついでに、あんたたちが所帯を持つなら、それもいい機会じゃないか」

 

(その前に「主人公」と「ヒロイン」にざまぁされないようしなきゃならないんだがね)

 

(余所の街へ移ったら「主人公」や「ヒロイン」と顔をあわさなくて済むかもしれないが、1から実績を積み直してたら生活が安定する前にババァになっちまうよ)

 

あたしの言葉に、手下Aはしばらく逡巡していたが、やがて意を決したように深く頭を下げた。

 

「……分かりました、姐御。俺、親父に頭下げてみます」

 

「……あたいは、まだ納得してないからね」

 

手下Bはそう言いながらも、手下Aの隣に寄り添い、その腕を掴んでいる。

 

反論する気力は、もう残っていないようだ。

 

「よし、話は決まりだね。なら、善は急げだ。今から行くよ」

 

「え? い、今から!?」

 

「当たり前だろ? 熱い鉄は熱いうちに打て、ってね。親方だって、あんたが帰ってくりゃ喜ぶだろうさ」

 

あたしは有無を言わさず二人を席から立たせ、酒場を出て鍛冶工房へと向かった。

 

工房に着くと、親方は突然現れた息子と、その隣に立つ女、そしてあたしの姿を見て、目を丸くしていた。

 

手下Aが、覚悟を決めた面持ちで親方の前に進み出て、深く頭を下げた。

 

「親父……俺、間違ってた。冒険者なんて辞めて、ここで一から修行させてほしい!」

 

そこから先は、まあ、予想通りの展開だった。

 

驚き、戸惑い、そして涙ながらの和解。

 

やれやれ、お涙頂戴劇だね。

 

あたしは少し離れた場所で腕を組み、その様子を冷めた目で見守っていた。

 

手下Bも、不安げながらも息子の隣に寄り添っている。

 

下手に茶々を入れて、この場の空気を壊すほど野暮じゃない。

 

今は黙って、結果を待つのが得策だ。

 

やがて、親子の話し合いも一段落したらしい。

 

親方は、感極まった様子で何度もあたしに頭を下げてきた。

 

「セレスティア殿……いや、セレスティア様。この度は、本当に……なんとお礼を申し上げてよいか……」

 

「礼なんていいよ。それより、仕事で返してほしいね、親方」

 

あたしはにやりと笑い、本題を切り出した。

 

「見ての通り、あたしには『足』はあるが、装備はこのザマだ。この移動能力が広く知られる前に、まともな武器防具を揃えたい」

 

「そのためには金がいる。だが、下手に目立つ依頼は、厄介事を呼び込みかねない」

 

あたしは自分のボロボロの剣を示しながら言う。

 

「あんたほどの顔なら、表沙汰にならない、だが腕の立つ冒険者を必要とするような『仕事』の心当たりがあるんじゃないか?」

 

「もちろん、法に触れない、まっとうな依頼が前提だけどね。どうだい?」

 

あたしの直接的で、しかし現実的な要求を聞いて、親方のあたしを見る目が変わった。

 

単なる悪評高い冒険者でも、息子を利用した悪女でも、ましてや息子の恩人というだけの存在でもない。

 

実力を持ち、それを交渉材料にする、「話のできる仕事相手」として。

 

「……ふむ」

 

親方は顎に手を当て、しばし考え込むような表情を見せた。

 

「……心当たりが、ないわけではないが……。かなり、骨が折れる仕事になるぞ。それに、危険も伴う」

 

「危険? 上等じゃないか。内容によるけどね」

 

あたしはふてぶてしく笑ってみせる。

 

親方はあたしの様子をじっと見定めると、意を決したように口を開いた。

 

「……とある筋から、極秘裏に希少鉱石を運んでほしいという依頼がある」

 

「通常の輸送ルートでは危険すぎる代物でな」

 

「貴殿の『足』があれば、あるいは……。どうだ、希少鉱石の輸送、受けるつもりはあるか?」

 

(……希少鉱石!?)

 

その言葉を聞いた瞬間、あたしの脳裏に、前世のクソゲー『エターナル・ファンタジア』の記憶が閃光のように蘇った!

 

あった! 間違いない! 原作のサブイベント! 誰も見向きもしなかった、手間ばかりかかって報酬も微妙な、あの鉱石輸送クエスト!

 

だが、あのクエストは……確か、特定の条件を満たすことで、ゲーム後半で手に入る強力な武器の素材、あるいはその武器自体に繋がる隠しフラグだったはずだ!

 

(これだ! これだよ! 金策どころじゃない! あたしが喉から手が出るほど欲しかった、まともな武器を手に入れるチャンスじゃないか!)

 

興奮と期待で、心臓が早鐘を打つ。

 

思わず前のめりになりそうになるのを、必死で抑える。

 

だが、隠しきれない期待の色が、あたしの目に浮かんでしまったかもしれない。

 

「……へえ、希少鉱石ねぇ。面白そうだね、その話」

 

声が、わずかに上ずった気がする。

 

親方は、あたしの食いつきの良さに少し驚いたような顔をしたが、すぐに真剣な表情に戻った。

 

「そうか。なら、詳細は後日改めて……」

 

(よし、食いついた! これで武器の問題も解決するかもしれない!)

 

あたしは内心で勝利の雄叫びを上げた。

 

新たなコネクション、金策への道筋、そして、強力な武器への手がかり! 反撃の狼煙は、思った以上の勢いで上がり始めた!

 

ここからだ。このクソみたいな運命を、あたしの手で根こそぎひっくり返してやる!




手下Aさんも手下Bさんも、セレスティアが忘れているだけで名前はあります……
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