これはある日の虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の朝
「むふふ、今日は、みんなより先に早く朝練についてこっそりレベルアップしちゃおう作戦です!いやあ我ながら完璧な作戦これによってかすみんの部長としての威厳をみんなに思い知らせてやります!」
朝6時、誰よりも早く虹ヶ咲学園の校門をくぐろうとする少女、中須かすみ
しかしそんな意気揚々とした彼女の視線の先に人影が映る
「むむ、誰か先にいますねぇ」
怪訝な表情で人影の正体を暴こうと歩を進めると、彼女が愛する先輩が足音に気づき後ろを向く
「あれ?かすみちゃんだ!おはよう〜」
手を振りながら返事をする高咲侑、それを見た彼女はすぐさま笑顔で近づいていく
「侑先輩〜♡えへへ〜おはようございま〜す」
彼にしか見せない、惚気た表情で挨拶を返す
「侑先輩はぁ、朝からかわいいかわいいかすみんに出会えて、幸せものですね〜♡」
「うん!とってもかわいい、かすみちゃんに朝から会えて幸せだよ!」
「もう〜!侑先輩好き好き~♡」
あまりの嬉しさに抱きついてしまうくらい彼の事信頼しているかすみ
「あはは、僕も大好きだよかすみちゃん!」
抱きつかれても特段照れたりせず、笑顔で返す侑
「本当ですか!?かすみんこと大好きですか!?」
突然のラブコールに狼狽えてしまったがしかし
彼女の期待とはかけ離れた答えが返ってくる
「もちろん!同好会のみんなのこと大大大好き!」
「…はぁ、そうですよね、にぶにぶだってこと忘れてました…」
露骨にテンションがさがって落ち込む、毎度のことながら侑の鈍感さはとんでもないと実感した
(でもいつか絶対…!)
遠い咲の未来になっても、必ず自分にだけ振り向かせることを決心する
「今思ったんですけど、侑先輩はなんでこんな朝早くに?」
本来ならこんなに朝早く登校してもいいはずの侑がここにいることに疑問を感じる
「あー、実はね昨日歩夢ちゃんが次のステージのために、すごく張り切ってることを知ってね
今日も朝早く学校に来て自主練をするって、メッセージ送ってきたんだ」
「…それを応援したくて来ちゃったんですか?」
「ご明察!」
「侑先輩らしい理由ですね〜」
「よく言われる」
とりとめのない朝の会話を二人で次々としていると
「侑先輩!あの…部室に着くまで、その…て、手繋いでてもいいですか?」
少しでも意識をしてもらうため、勇気を出してアピールをする
「?、もちろん!」
一瞬不思議そうな顔したあと、笑顔で差し出された手を握り返す
(これで少しでも侑先輩が気づいてくれれば…うぅ…ちょっと恥ずかしいかも)
ルンルン気分で歩を進める片方でもじもじしながら歩を進める
奇妙な二人組、そのまま部室まで歩いてる最中
「あー!かすみんだけずるいずるい!愛さんとも手繋いで〜!!」
「うぇ!その声は…愛先輩!?」
「あ!愛ちゃんだおはよう〜!」
背後から二人にとって聞き覚えしかない声とともに振り向いた瞬間
予想外のスピードで近寄って隣に着き、すぐさま彼の片腕を手に取る
「ゆうゆ、かすみんおっはよー!今日とっても早いじゃん!どしたの?」
手を繋ぐというよりかは、自身の腕と彼の腕を絡ませて、腕を組む形になってしまう
がそんなことも特に気にせず、侑は彼女の問いに答える
「うん!今日は早くからみんなのこと応援したいと思って早起きしちゃったんだ!」
「ほんと〜!?すっごい嬉しい!!じゃあさ、これから朝練行くんだけど、ゆうゆも一緒に来てくれる?」
「任せて愛ちゃん、記録に補助なんでもござれだよ!」
要望を快く承諾する侑だが、愛の反対側で頬を膨らませ不満げな様子を浮かべるものが一人
「愛先輩!かすみんだって侑先輩に練習見てもらいたいんですけど!」
「わかってるよ!かすみん!もちろん3人一緒だよ、じゃあ私達着替えてくるから、部室で待っててね!」
そう言ってかすみの手を掴み、駆け足で更衣室に向かっているなか
「も〜!本当は二人っきりが良かったに〜!!」
という彼女の叫び声が校内に響き渡る
「…行っちゃった。」
唖然としながら見送ったあと、愛に言われたとおり部室に行き、空いた時間でスクールアイドルの情報を
追っていると、部室のドアが開く、さっき行ったばかりなのに早いなぁと思いながら視線を向けた先には
ピンク色の髪をなびかせる同好会のメンバーが立っていた
「あ、侑さん。おはよう」
「璃奈ちゃんだ!おはようー、今日は早いんだね」
今日はいろんなメンバーが朝早くに集まってきて、なんだか嬉しく感じてくる侑
そのまま彼女は部室へ入り、すぐさま彼の隣に座る
「うん、ミアちゃんに完成したミニゲームのことを話したら、いち早くやりたいって言われちゃって
それで朝の時間に集まって試遊してもらうことにしたんだ」
「すごい!後で僕にも遊ばせて!」
褒めた勢いで璃奈の手を両手でつかみ、そのまま顔を近づけて目を輝かせて目を見つめる
なにかにときめいたら急接近してくる彼のいいところでもあり、悪い癖でもある
「ゆ、侑さん…近いよ〜」
自前のボードで顔を隠そうにも手がふさがって取り出せない
表情は変えずともほんのり頬が赤くなっていく
「あ!ごめんね、わくわくしてる璃奈ちゃんがかわいくてつい」
その言葉を聞いて反射的に手を離し、元の位置にもどる
「急にそういうことするから心臓が持たない、璃奈ちゃんボード「ドキドキ」」
(でもそういうところが好き…)
照れ隠しするようにボードで顔を隠す
「はい、反省します…」
軽く注意されただけなのに、萎縮した子犬のようにしょぼくれる
「…別に怒ってるわけじゃないから、顔上げて」
「ほんとに?」
「うん、むしろいっぱい触れてほしい。だから…うんしょ」
掛け声とともに立ち上がり、侑の前に移動し、膝の上に跨り
「璃奈ちゃんボード「ぎゅ〜〜〜」」
目一杯抱きしめ始めた
「璃奈ちゃん!?どうしたの?」
「さっきのお返しだよ、次は侑さんが私に触れて」
「触れるって何すれば?」
「じゃあ、いっぱいヨシヨシして欲しい」
「う、うん…こうかな?」
不慣れな手付きで、頭を撫でる
「侑さんの手おっきくて、すごい落ち着く…璃奈ちゃんボード「ぽわわん」」
「ぽわぽわしてる璃奈ちゃんかわいい…」
「本当?嬉しい」
「うん、可愛すぎて、璃奈ちゃんが欲しくなっちゃう」
「…じゃあ今日から私は侑さんのモノだね。璃奈ちゃんボード「テレテレ」ずっと一緒にいようね」
「うん、いる〜」
なにやらとんでもない契が朝の部室で交わされてしまったが、その2人だけの空間は壊されることになる
「朝から何やってるんだいベイビーちゃん?」
いつの間にか部室に入ってきた、ご立腹なミアが二人の間に割って入る
「あ、ミアちゃんいたんだ〜」
璃奈の魅力にやられて、頭がぽわぽわしながら返事を返す
「今日璃奈に用事があるのはボクのほうなんだけど、なんで侑が一緒にいるのさ」
「だって〜璃奈ちゃんが可愛すぎちゃって〜」
「だからってそんなに密着してなくたっていいだろ!離れてよ〜!」
無理やり引き剥がそうとしても、一人じゃ侑の腕力には勝てず
ただただ腕を引っ張ることしかできなかった
「shit!こうなったら!」
そう捨て台詞を吐くと、ミアは2人の間に無理やり割り込む形で侵入する
「これで璃奈を独り占めにはさせないぞ!勝負アリだねベイビーちゃん」
「何が勝負かわかんないけど、ミアちゃんも癒やされる〜」
「あれ?ミアちゃんも侑さんとぎゅってしたかったの?」
たった今ミアの存在に気づく璃奈、今の今まで侑に酔いしれていたので致し方ない
「え〜!?なんでそうなるの〜!?」
本当は二人のことを引き離したかっただけなのに、璃奈に勘違いをされてしまう
「ミアちゃん本当?嬉しい〜」
「ちょっとベイビーちゃんも真に受けないでよ〜!!」
あっさり信じた侑に二人まとめてハグされてしまったミア
本当に嫌なら無理にでも引き剥がす事もできるが、そうしないということは彼女も満更でもないのだろう
「ああ〜!!りな子にミア子、なんで侑先輩とハグしてるの〜!!」
「ゆうゆお待たせ〜、って…やば!何してるの!?」
着替えに行ってた二人が、最悪のタイミングで到来
「二人ともずるい〜!!先輩の一番はかすみんのなのに〜!!」
「なんだか分からないけど、愛さんもぎゅってして〜!」
これで朝早く来た4人が侑のもとに集結し、さらに騒がしくなる
「なんで朝からこんな目に合うんだよー!」
刹那、ミアの叫び声が部室に木霊するが、みんな聞く耳持たず
さらに侑に引っ付くのであった。