私はあなたの為ならば、たとえ死んでもかまわない 作:りゅぱん
駄文失礼します。
ここはどこだろう。
一瞬だけ感じた首の痛み。
そうだ、私は。
《初めましてですね》
誰だろう。
誰かが私に話しかけてくる。
目を開けるが何も見えない。
いや、私は本当に目を開けているのだろうか。
真っ暗で、しかし恐怖を何一つ感じさせない感覚。
《あなたのすべてを見させていただきました》
この声、いや脳に直接響いてくる言葉。
生きていた時は感じることのなかった感覚に戸惑う。
《おや、何か勘違いをしているようですね》
勘違い?
何を勘違いしているというのか。
《あなたは生きています。正確には私があなたの死を認めていないだけですが》
死を認めていない。
それならばこの声の主が認めれば私は死ぬということだろうか。
まって。
私は死んでいない?
確かに自ら首を掻き切ったはず。
《確かにあなたは自らの命を絶とうとしました》
《しかし、あなたは命を絶つ前に願い事をしましたね?》
願い事。
確かに私は願った。
私の命の代わりに義妹を助けてほしいと。
《本当はその願い、叶えたかったのですが》
この口ぶり、私の願いは叶わないということだろうか。
そう思うと何ともやるせない気持ちになってくる。
私は無力だった。いや、私が義妹の言うことにきちんと耳を傾ければこんな事態にはならなかったのかもしれない。
本当に無様だ。
《そう悲観なさらずに、あなたの願いがまだ糸一本つないでいるのですから》
《私にはあなたの妹を助けることはできません》
《ですが、あなたが助けることはできます》
私が助ける?
それは私が息を吹き返し、義妹を助けるということだろうか。
だが、私が生き返ったところであの魔族には勝てないだろうし、義妹も私が突き刺した剣で…。
《まだほかに可能性があると思いませんか?》
他の可能性…?
あるのだろうか。
ぼやけている思考をフルに回転させる。
助ける、救う。
ダメだ。考えがまとまらない。
と、ここで脳に電流が走った。
《お気づきになられましたか》
確かに思いついたことはある。
しかし、この考えは決してあり得ないこと。
こんなことができるのは神かあるいは…。
そこで私に再び電流が走った。
まさか、いやしかしこんな状況に立たされているのだ、ありえないことはない。
《たどり着きましたか?》
昔、何かの書物で見たことはある。
ソレはあらゆる時を操れる伝説をもつ一人の女神。
まさか本当に実在したとは思いもしなかった。
《ソレとか信じてもらえてなかったことは置いておいて》
《おおむねあなたの想像しているとおりです》
《しかしながらあなたが思っているほどではありません》
そこで私の考えはほぼ確定した。
義妹を唯一救う方法。
それは、
その瞬間真っ暗だった視界は晴れ、ぼやけた思考もすっきりしていた。
そして、目の前には神々しい光を放つ女性が立っていた。
書物に乗っていた肖像画より美しい顔だった。
《あら、私のことを口説いているのかしら》
口説くなんてもってのほか、私は事実も述べただけ。
《まぁ、良いでしょう》
《しかし、私は時を戻すだけ。そしてこれには条件があります》
義妹を救えるのならばなんだってする。
この気持ちは揺るがない。
《そうですか》
《私はあなたに特別な力は与えられません》
《今後私はあなたを助けることができまでん。そして次が最後の条件です》
《あなたの命はあなたが自ら命を絶ったあの日まで》
一瞬思考が停止したがすぐに動き出す。
それはそうだ。これだけの奇跡を与えてもらって私まで助けてなどおこがましいにもほどがある。
覚悟は決まった。
「ありがとうございます」
《あなたは強いのですね》
「いえ、強くなんてありません」
深く深呼吸をする。
自分でもびっくりするくらい冷静だった。
あんな思いをするくらいならば、こんな条件安いものだ。
「わたしはただ、あの子にずっと笑っていてほしいだけです」
感覚が戻った右手の拳を強く強く握りしめ、胸の前に置く。
これは覚悟だ。決意だ。信念だ。
握りこぶしを女性に突き出しこう言い放つ。
「私はあの子の為ならば、たとえ死んでもかまわない」
登場人物
・女性
ある書物に記してあった時の女神