あの、うちのヴェールなんか違うんですけど……。 作:クレナイハルハ
仕事帰り、次の日が休日と言うことでたまにはと中古品ショップにやって来た。夜だが、カードコーナーにはまだ沢山の人がおり、テーブルのおかれたコーナーでは多種多様なカードを広げて対戦しているカードゲームプレイヤー達の姿が見える。
「やってるやってる……いやカードゲームの種類増えすぎだろ」
そんなことを呟きながら、俺……
すげぇ、ブラマジってこんなに種類あったのか。それにブルーアイズホワイトドラゴンもある、こっちも種類多い上にどれも高額だな。
こういうカードを買う人一回でいいから見てみたいよな…社長とかアラブの石油王みたいな奴しか買えねぇだろ、これ。
「やっぱり、時代はリアルよりデータか」
最近配信された遊戯王マスターデュエルと呼ばれるゲームでは、現実とほぼ同じようにゲームが出来るのだ。最新のカードはリアルよりかは遅くなるが、実装はされるため待てばいいし。
実際、俺は遊戯王はリアルのカードを持たずゲームのみで楽しんでいるプレイヤーだ。
ショーケースを眺めていると、傷ありと表記された一枚のカードが目に留まった。
遊戯王とよばれるカードゲームには多種多様な種族のカードが存在するが、その中でもテーマと呼ばれ一括りにされるものがある。
例をあげるならアニメで登場する海馬瀬人の使うブルーアイズホワイトドラゴンをテーマとした青眼、武藤遊戯とアテムの使用することが多かったブラックマジシャン。遊城十代のE・HEROやE・HEROネオスといったHERO、不動遊星のジャンクシンクロンやジャンクウォーリアにスターダスト。九十九遊馬の使う
最近だと他にも大量にテーマがある、俺たちのトラウマことスプライトやふわんだりぃずに烙印、ティアラメンツにヴァルモニカ、ラビュリンスにそしてマスターデュエル初期なら
そんなテーマの中で俺は【ウィッチクラフト】と呼ばれるテーマのカード達を愛用していた。選んだ理由はもちろん可愛いカードだからと言うのもあるが、マスターデュエルの最初のパックを開けたときに出てきたウィッチクラフトの魔法カードが切っ掛けだ。ランクもフリーマッチも全てウィッチクラフトで戦ってきた、そんなウィッチクラフトの中でも特に愛用していたカード。
「お、ヴェール売ってるのか……紙では初めて見たな」
【ウィッチクラフトマスター・ヴェール】、水色の髪と杖を持ったドレス姿の少女が描かれたレアカードが傷付きとはいえ、かなり安価で売られていた。
「この値段、傷付きとはいえ……ありだな。買うか」
別にリアルの遊戯王カードは買わないと決めていた訳じゃないし、見た限りではヴェールのカードには酷い傷は見あたらないし観賞用……というか財布に挟んで御守り代わりにするような感じにする予定だから問題ないだろう。
近くの店員さんを探すと、たまたま此方へと歩いてくる店員さんが見えて呼び止める。ショーケースのカードが欲しい事を伝えると店員さんはすぐにショーケースの鍵を取り出してショーケースを開けた。
「此方のカードであってますか?傷ありなのですが確認しますか?」
「あ、大丈夫です」
「それじゃあ、こほん。ラッキーカードだ、このカードが君の元へ行きたがっている」
「えっと……?」
突如として遊戯王の台詞を再現するように話す店員さんに困惑していると、店員さんは嬉しそうにニコニコしながら話し出した。
「いやぁ!一度は言ってみたかったんですよねぇいまの台詞!!やっぱりカードを渡すシーンならこの台詞で間違いなし!!あ、此方のカードをもって会計に並んで下さいね!」
そう言って案内する店員さんについていき、会計を済ませてヴェールの入った封筒を着ているスーツのポケットに入れる。そのタイミングで店に閉店を知らせる例のBGMが流れ出したので早足で店の出入口へ向かう。本当なら財布にいれるからスリーブも選びたかったけど、仕方ない。暫くはショーケースに置くために入れられていたスリーブで我慢だな、それに一枚のカードのために60枚も入ったスリーブを買うのは少し可笑しいからな。
そう思いながら店の自動ドアを通り抜けた、次の瞬間だった。
「トドメよ!閃刀姫ロゼでダイレクトアタック!!閃刀一閃!」
「グボァァァァア!?」
店の外に出た瞬間、目の前に信じられない光景が飛び込んできて思わず体が固まる。
目の前では黒い軍服?らしきデザインの服装をした少女が手に持った赤い刃が特徴的な刀を横薙ぎに振るっていて、黒い外套を羽織った男性らしき人が吹き飛ばされた。
「は?」
口から間抜けた声が漏れる、状況が理解できない。えっと、この場合は警察か!?それとも救急!?
「あんた、アイツらの仲間?おんなじ黒い服着ちゃってさ……」
スマホを片手にそんなことを考えていると、目の前に三つ編みにメガネをかけた茶髪の少女がおり此方を疑いの眼差しで見つめてきていた。
「いやこれ仕事帰りだから……てか俺は関係ない。いまも後ろの店から出てきたばっかで状況が何も───」
「は?うしろに店なんて無いわよ」
そんなことをない、後ろにはさっきまでいた中古品ショップがあったはず。そう思いながら振り返るがそこにあったのは、見覚えのない研究所のような建物だった。
「嘘だろ、だって俺はさっきまで……」
確かに俺は先程まで中古品ショップにいたはずだ。なのに目の前には理解しがたい光景が広がり、背後には先程までいたはずの中古品ショップは存在せずに研究所のような建物があるだけだ。
「そうだ!」
さっき中古品ショップで買った一枚のカードの事を思いだし、即座にスーツのポケットへと手を入れれば確かに先程買ったカードの入った封筒の感触がある。
間違いなく、俺は先程まで中古品ショップにいた。なのに店の外に出た瞬間、まるでラノベでよくある異世界へ来たみたいな……。
「それで!アンタは結局なんな訳?」
「あ、あぁ。たぶん通りすがりだ、じゃあ俺はこれで……」
そう言いながら彼女の横を通りすぎた瞬間、彼女の左手に装着されたそれ、デュエルディスクを見て目の前の世界について1つの予測が浮かび上がった。
だが、確証はない……とにかく今は自分が今何処にいるのかを理解しないと。
暗い個室、目の前のパソコンに映し出された内容を読み俺は深く溜め息をついた。
「なるほどねぇ……間違いなく遊戯王の世界だわこれ」
パソコンに映し出されたのは、遊戯王のアニメのような世界情勢だった。
人々の殆どは遊戯王デュエルモンスターズをしており、デッキを所有している。子供のなりたい職業にはプロデュエリストがランクインしていて、会社の仕事から夕飯のおかずまでが遊戯王デュエルモンスターズというカードゲームに委ねられる世界、どうやらそれが今俺がいる場所らしい。
「全く、財布の金はそのまま使えたから助かったけど……この後どうすっか」
たまたま近くにあったネットカフェで俺はそう呟きながら、座る椅子の背凭れに体を預ける。
仕事も家も貯金も、全部が一気に無くなるとか本当にありえない。
いやそれだけじゃない、友人や知り合いも全てがいない。
この世界でたった一人、別世界から迷い込んでしまったひとりぼっち。
もし警察や市役所といった場所で、別世界からきたのだと言っても信じて貰えないのが現実だろうし、そもそも身分を証明出来るものすらないのだ。
「くそ、どうすりゃあいいんだよ……」
そんな事を呟きながら背凭れを倒して横になる。仕事帰りに色々な事があって疲れた、不安や孤独感、悲しみも凄いがとにかく眠い。
取りあえず、少し眠ってから考えるか。どうせ、今を打開する方法なんてすぐに思い付かないだろうしな。
目の前で、一人の男性が眠っている。せっかく共有スペースの棚からもってきた毛布も掛けず、眠っている。
すると、男性の隣にゆっくりと人影が現れる。
水色の髪の少女は近くにおかれた毛布を持つと恐る恐るといった様子で男性にかける。
その後、彼女は彼から少し離れた位置に移動すると体育座りをして膝に顔を埋め眠り始めた。
とある組織に所属している閃刀姫つかいの少女、組織の施設に先入するため髪型を弄りメガネをかけていた。
主人公を見かけ怪しむが、関係ないと判断しその場を離れた。
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