マネモブだからと追放されました~俺は500億稼いで灘・真・神影流使えるけど元チーム大丈夫?今更戻ってこいと言われても遅すぎを超えた遅すぎ。いくらなんでも戻るわけねぇだろゴッゴッ   作:マネモブァ

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Battle.11悪いな…俺はほら、タイトルが思いつかないから 思いついたら変えとくから

 朝日のやわらかな光が、瞼の裏にじんわりと差し込んでくる。

 わずかに目を開けて見ると、眩しくて思わず顔をしかめる。天井は見慣れた白い漆喰、傍らにはすでに誰かの気配がある。木製の椅子に腰かけていたズヴェーリが、こちらに気づいて身を乗り出した。

 

「おはよう、ミヤザワ。……目が覚めたのね」

 

 声には安堵がにじんでいた。あの険しいダンジョンの中で見せた鋭さは、今は影を潜めている。

 

「……ここ、ギルドか?」

「ええ、医務室。無事よ、ふたりとも。あなたは、あれから三日眠ってたけど」

「えーっ三日も!?」

 

 喉がやけに乾いている。呼吸はまだ浅く、肋骨にひびく鈍い痛みが残っていた。だが、それでも──生きている。それだけで、今は十分だった。

 

「おいっ。水を持ってきてくれ」

「ちょっと待ってよ」

 

 ズヴェーリは立ち上がり、机の上から水差しとコップを手に取る。ぎこちない動作だったが、こぼすことなく水を注いで差し出してくれた。冷たい水が喉を潤すたびに、身体の奥から現実に引き戻されていく。

 

「うまい、うまい」

 

 喉を通る水が、ちゃんと冷たい。それだけのことで、どうしようもなく安心した。ズヴェーリが、少し呆れたように笑った。

 

「あなたって結構図太いよね。……まあいいけど。私はギルドの人にあなたの目が覚めたって、報告してくる」

 

 そう言ってズヴェーリが立ち上がる。足取りはまだ少しぎこちない。俺と同じで、全快とはいかないようだ。

 

「戻ってくるまでおとなしくしててね。変なとこいじらないでよ」

「寝たきりの状態で何ができるのか教えてくれよ」

 

 ズヴェーリがふっと笑って、部屋を出ていった。扉が静かに閉まると、辺りは途端に静かになった。

 ───手持ち無沙汰だ。

 

 ズヴェーリがいなくなったとたん、急に部屋の空気が重く感じられる。寝返りを打つのも面倒で、ただ視線だけを動かして天井のひび割れを数え始めた。

 

 ……三日も、寝ていたのか。

 

 ナーガとの闘い。……あれは楽しかったな。

 

 今こうしてベッドに寝かされてる身で言うことじゃないのはわかってる。でも、あの刹那のやり取り、呼吸を合わせて突き抜けるあの感覚、命の淵を滑るような緊張──正直、あんなに鮮明な時間は久しくなかった。

 もちろん、怖くなかったわけじゃない。足が震えるほどの恐怖も、吐きそうになるほどの焦燥も、ちゃんと味わった。ただ、それでも──

 

 「楽しかった」と思ってしまった。

 ……それが、ちょっと怖い。

 

 命をかけて戦って、やっとの思いで生き延びて、それでもまだ「もっと先へ行けたんじゃないか」なんて考えてる自分がいる。

 誰かにに話したら、間違いなく呆れられる。

 でも、それでも───

 

"次は、もっと上手くやれる"

 そんな確信だけが、なぜか胸の奥に静かに残っていた。

 

 コツ、コツ、と控えめなノック音がした。

 ズヴェーリにしてはやけにおとなしい。ギルドの人間か。いや、扉の向こうにもう一人。背後に気配。あれはズヴェーリか? だとしたら、前に立ってるのは───

 

「入っていいかな?」

 

 低く、しゃがれた声。けれどどこか飄々としている。

 扉がゆっくりと開き、現れたのは予想どおりだった。

 

 職

 員

 !

 

 ───ではあるのだろうが、知らない顔だった。

 

 男は黒ずくめの服に身を包み、どこか場違いなほど上等な革靴を履いていた。長身で痩せぎす、肩まで伸びた黒髪を後ろでひとつに束ねている。年齢は……三十代後半か、あるいはもっと上か。つかみどころのない笑みを浮かべながら、静かに部屋へと足を踏み入れた。

 

「初めまして。ギルド本部から来た調査員だ。名前は……まあ、君が覚える必要はないよ。職員、とでも呼んでくれれば十分さ」

「俺は初対面の人に名乗らない奴は無条件で軽蔑する。 名乗りは円滑にコミュニケーションを進める上で大事なものだからな」

 

 職員の口元がわずかに歪んだ。

 

「なるほど、君は随分と真っ当な教育を受けたらしい」

 

 そう言って、こいつは俺のベッドの脇に置かれた椅子を引いて腰を下ろした。遠慮もなく、図々しいって言葉が似合う男だ。座り方ひとつとっても、まるでここが自分の居場所だとでも言いたげな落ち着きっぷりだった。

 

「じゃあ、敬意を表して名乗ろう。……『フェルナンデス』それが私の名前だよ。……フェルって呼んでね 偽名かどうかは、好きに想像してくれて構わない」

 

 俺はこいつの目をじっと見た。掴みどころのない笑顔の奥、目だけが妙に冷たかった。じっとこちらを測るような目つき。こいつはずっと、誰かを見極める仕事でもしてきたんだろう。

 

「で、調査員さんが何の用なんです?」

 

 フェルは脚を組み替え、肘を椅子の肘掛けに預けると、わざとらしくため息をついた。

 

「あれ、君知らなかったのかい?君の死亡届が数週間前に提出されてたんだよ」

「えっ」

 

 喉の奥がひゅっと鳴った気がした。息を吸うのを忘れるくらい、脳が一瞬で冷えた。

 

「ウ…ウソやろ、こ…こんなことが、こ…こんなことが許されていいのか」

 

 フェルは口元をにやりと歪める。まるで人の不幸を肴にすることに何の呵責もないような笑みだった。

 

「まあ安心しなよ。君が帰還した日に取り消されたからさ」

「当たり前のことを抜かすな!!……で、そもそも誰がそんなもの出したんです?」

「あなたの元パーティです」

 

 脳が一瞬、意味を理解するのを拒んだ。  俺の口から、乾いた笑いが漏れる。

 

「ネタでしょ?」

「そう思うでしょ? でもね、死亡届の理由欄にはちゃんとこう書かれてた。"ダンジョン内にて消息不明、帰還困難と判断"……それっぽくて、けっこう説得力あるじゃないか」

 

 フェルは、まるで天気の話でもするように気楽な調子で言う。胸の内側に、じわりと熱が湧いた。怒りでも、悲しみでもない。ただ、冷たいものが、心の奥に沈んでいくような感覚だった。

 

「それで……わざわざ俺の顔を見に来たのか? お役所仕事ってやつはずいぶんヒマなんだな」

「とんでもない。ヒマじゃないから来たんだよ」

 

 フェルの笑みが消えた。目の奥にあった冷たさが、表面に滲み出てくる。

 

「君と彼女の行動について、詳しく話を聞かせてもらう必要がある。ギルドとして、正式にね」

「ダンジョン内で起こった事に説明義務は無いから……話さなきゃいけないとも思ってない」

 

 フェルは一瞬だけ黙りこくった。まるで何かを測るように、じっとこちらを見つめる。

 その沈黙が、妙に重苦しい。

 

「……それは建前としては正しい。だが、今回は少し事情が違う」

 

 低い声。どこか、切先の鈍った刃のような響き。

 

「"死亡届が提出されたにもかかわらず、本人が生きて戻ってきた"となれば、これはもう個人の問題じゃない。ギルド全体に関わる"記録の整合性"と"責任の所在"が問われる。──だからこそ、君と彼女の証言は重要なんだ」

 

 記録。整合性。責任。

 どれも胡散臭く聞こえた。だが、逆にそれが本音なのだろうとも思った。

 

「……まさか、俺たちを疑ってるって訳じゃないでしょう?」

「疑ってはいない。ただ、確かめたいだけだ。記録に記す前に、事実を正確に知っておきたい」

 

 フェルの言葉は理路整然としていた。感情の入り込む余地はない。

 だが、それが逆に不気味だった。感情のない言葉ほど、他人を殺すのに向いている。

 

「……ズヴェーリにでも聞け…鬼龍のように」

「彼女にも既に話を聞いたよ」

 

 さらりと告げるフェルの目が、わずかに細められる。

 

「だが、彼女はダンジョン生まれ。身分を証明する物がない。……身分が証明出来ないということは名前がないということ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。──勘違いはしないで欲しいが、彼女の証言に信憑性が無いと言いたい訳じゃない。ただ誰も保証出来ないだけだ」

「ッ!……だったら俺が保証してやるよっ ゴアッ」

 

 その言葉が口をついて出るまで、ほんの一瞬しかかからなかった。反射的だった。後悔があるとすれば、それを口にするまでにほんの少しでも迷わなかったことだ。

 フェルは口元を歪める。嘲笑とも、感心ともつかない表情だった。

 

「勇ましいね。騎士道精神に目覚めたか?」

「俺は姫を護る勇敢な騎士じゃねぇよ」

 

 言って、自分でもおかしくなるくらい顔が熱くなった。照れとか、怒りとか、そういうものがぐちゃぐちゃに混ざって、口の中まで苦くなった気がする。

 フェルは鼻で笑いながら、組んでいた足を組み替える。肘掛けに預けていた腕を軽く上げ、言った。

 

「まあ何にせよ、君にはダンジョン内で起こったことは全て報告してもらう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!! ()()()()()()()()()()()()()

「それはどうもです。でもいきなり押しかけてごちゃごちゃと言われてちょっと困惑してます」

 

 フェルは立ち上がると、椅子の背に軽く手をかけ、こちらに背を向ける。

 

「……じゃあ、今日はこのくらいにしておこうか。報告書を待ってるよ」

 

 その背中には、どこか芝居がかった軽薄さがあったが、振り返ることはなかった。ドアノブに手をかける直前、ふと足を止めて、言い添える。

 

「あぁそうだ。こんな辛気臭いとこ居たら精神も参るだろ?外出届けは既に貰ってあるから、行きたい所があるなら行ってみることを勧めるよ」

 

 それだけ言って、フェルは去って行った。

 ドアが閉まるまでのわずかな時間が、やけに長く感じた。足音は規則正しく、まるで無駄のない機械のように廊下に消えていく。

 残された空間には、冷たく乾いた気配だけが残っていた。まるで誰かが息をひそめているような、妙な静けさ。本来なら、ただの事務的なやり取りだったはずなのに──心のどこかに妙にざらついた引っかかりがあった。

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