マネモブだからと追放されました~俺は500億稼いで灘・真・神影流使えるけど元チーム大丈夫?今更戻ってこいと言われても遅すぎを超えた遅すぎ。いくらなんでも戻るわけねぇだろゴッゴッ 作:マネモブァ
「闘ると言ったはいいが……致命的な問題点がある」
言いながら、俺は後ずさる。床はまだ歪んでいて、視界の端が黒に塗りつぶされていく。
"それ"は確かに、目の前にいる。姿は曖昧なのに、存在感だけは圧倒的だった。まるでこの空間そのものが意志を持っているかのように、じわじわと近づいてくる。
「何が問題なの?」
隣の女の声が震えている。さっきまでの余裕は完全に消え失せ、恐怖が素で漏れていた。
俺は呻くように答える。
「出来れば美術品を傷つけたくないんです。ワシの気持ちわかってください」
「そんなのどうでもいいから!早くなんとかして!」
叫ぶ女。その声が、"それ"に届いたのか、それともただ単に俺たちを獲物として認識したのか、それは分からない。だが、"それ"は確実に、俺たちに向かって一歩ずつ近づいてくる。
「いや、そう思えないから言ってる」
俺は言いながら、"それ"の足元を見た。床が、まるで水のように波打っている。
それはまるで、水面を漂う水草のようだ。
「この絵の怪物は絵画から出てきてる。つまり、こいつに攻撃すればその"絵"も傷つくことになる」
俺はそう言って女を見るが……彼女はもうそれどころではなかったようだ。俺の言葉など耳に入っていないようで、ただ必死に逃げ道を探しているように見える。
───ほんの一瞬目を離した隙に"それ"はもう目の前に迫っていた。
黒い飛沫を上げながら、"それ"が急に足を速める。目にも止まらぬ速さで俺たちを間合いに捕らえると、大きく腕を振り上げるのが見えた。
「晦冥くんはパワーだけはあるよね パワーだけはね。しゃあけど、スピードが足らんわ」
ギリギリのタイミングで身を沈めると、"それ"の腕が俺の頭上を掠めていく。空気が裂けた音と共に、背後の石壁がぐしゃりと砕けた。
「せめて一撃で終わらせたる」
"蹴るッ"というより"斬るッ"という感覚。人間の骨なんて一太刀で切断する"バルディッシュ"の斬撃。
鈍い手応えのあと、"それ"の足がぐにゃりと折れ曲がる。けれど、血は出ない。代わりに、黒い絵の具のようなものがぶしゃりと噴き出した。
────違和感。 "それ"に触れた瞬間、何かがおかしかった。 なんだ?感触じゃない。不愉快ではあるが、これと言っておかしなものでは無かった。もっと何か……見落としてはならない何かがあった。……絵の具? いや、違う。単に色がついただけなのか?この違和感の正体はなんだ……?
くそっ、ダメだ。考えるな。どうせ意味の無いことだ。今はとにかく、目の前の敵に集中しろ。
「ぬおおおーーーっ」
俺は咆哮し、さらに"それ"の中段を蹴り上げる。黒い飛沫をまき散らしながら、大きく吹き飛ぶが……まだ動けるらしい。
「もうええから眠れや 灘神影流"上段蹴り"!」
俺が"下段"を蹴ったら相手の脚が折れる。"中段"を蹴ったらアバラが折れ、ヘタすりゃ内蔵破裂だ。"上段"を蹴ったら首の骨が折れる。 そのフルコースを味合わせたんだ。いくら怪物でも気持ちよく眠らせる自信がある。
「おいおいマジかよ またとんでもない怪物だな」
しかし、"それ"は何事もなかったかのように立ち上がっていた。ダメージどころか汚れ一つ見当たらない。
「ちがう!晦冥は単なる"怪物"じゃない!いくら攻撃しても通じることのない"絵画に残る怨念"なんだ。それだけじゃないの……晦冥は学習する。 アレは、究極の模倣品であり、究極の贋作なの」
「模倣品?」
女の言葉に思わず聞き返してしまう。けれど、今はそれどころではないと思い直し、"そいつ"をもう一度観察する。……本当にわけがわからない怪物だ。肉体どころか血の一滴も流れていないし、息遣いすら感じられないのだ。こいつに呼吸は必要が無いとでもいうのか? "怪物を超えた怪物"と言うに相応しいバケモノ。それが俺と戦えば戦うほど学習して強くなっていくというのだから厄介だ。
「ほう…"鶴王の構え"か…」
晦冥の身体が音もなく滑らかで、それでいて素早く動き、灘神影流の構えを真似る。
対する俺の選択は、極限の脱力による無構え。構えあって構えなし…無構えこそ拳の極意なり。
───一閃
晦冥の拳が俺の顔面を捉える寸前、俺の左ストレートが"それ"の腕を弾くように跳ね上がる。そのまま右拳を腹に叩き込むが……やはり手ごたえはない。まるで泥の中に手を突っ込んでいるような感触だ。
試し割りの板や瓦は固定できるが、防衛本能のある生物は"動く標的"だ。固定する事はできない。 ならばどうするか?答えは簡単。先に攻撃させ出会い頭を狙う…ボクシングでいうカウンターだ。相手の出てくる力と自分の力がぶつかり衝撃は倍増する。
ノーガード戦法…つまり脱力状態にすることで筋肉の緊張をときほぐし反射神経を高める…更に無構えによりどんな状況にも縛られることなく柔軟に対応が可能。相手が人間であったなら、先の一撃で終わっていただろう。───そう人間ならば。
けれど、晦冥は違う。"それ"は人の形をしているだけで、人ではない。攻撃の衝撃を受け流すわけでも、防御しているわけでもない。ただ、当たっているのに壊れない。もはや、これは「耐える」とも違う。物理の理から外れている。……だが、それでも俺は攻撃を続けた。無心で拳を打ち込み続ける。"一撃必殺"ならぬ"連撃必倒"。
「ハァ…ハァ…我ながら自分の打撃の威力に感嘆したが、同時に相手がタフ過ぎて、もうそのまま死んでくれって思ったね」
気づけば俺の息は上がっていた。額からは汗が噴き出し、それを袖で拭うたびにチラリと傷口から覗く腕の筋肉が脈打つのが見える。けれど……"それ"は一切怯まなかった。どれだけダメージを与えても向かってくるのだ。
───もしかしてこいつにはどんな攻撃も通じないんじゃないか?
そんな不安が脳裏に過ぎる。いや、むしろ攻撃するのに恐怖さえ感じ始めている。
とはいえ、ようやく先に感じた違和感の正体がわかってきた。おそらくこの晦冥が描かれるにあたって使用された絵の具……感触と彩度からするに2013年代頃の絵の具が使用されている。本来ならこの絵が描かれたのはそこまで古いものではないはずだ。───では何故わざわざその絵の具を使った?
そこにこそ、『晦冥』の正体を解く鍵があるのではないか。呼吸せず、血も流さず、破壊も不能。だが「描かれたもの」である以上、必ず創造主がいるはずだ。そしてその創造主の"意図"を無視して、この存在は成り立たない。
女は『晦冥』を"贋作"と言った。贋作ということは本家が存在するということ。 では何故わざわざ贋作なんて作った?有名になりたかったから?いや違う。ルピナス・キャピュレットは晦冥を描き始めた頃には既に有名だった。おそらくその理由にこそ突破口があると思われるが…だったら知ってるやつに聞くのが一番か。
「はいっ逃走確定。ぶっ逃げます」
俺はそう言って、女の腕を掴むと一目散に逃げ出した。"そいつ"が追いかけてくる様子はなかったし……それになによりも、もうこれ以上こいつの相手をするのはごめんだった。
"それ"は追ってこない。だが、それは決して見逃したわけではないだろう。俺が逃げることを予測した上で泳がせているんだ。そしてこの分だときっとまたすぐに追いつかれるだろう
「なんで逃げるのよ!?」
「まあそんなことはどうでもいいから教えてくれよ。晦冥の倒し方を」
俺の言葉に女は不服そうに頬を膨らませて抗議しているが……とりあえず無視することにした。どうせ逃げられないんだから、時間の無駄だろう。それに今は少しでも時間が惜しいのだ。一刻も早くあのバケモノの謎を解かなければ───
「教えてくれ。贋作ってどういうことだ?なぜルピナスは心身注いで贋作を作り出したんだ?」
「知ってる?ルピナス・キャピュレット……彼は画家であると同時に冒険者でもあった。そして、寒い雪の日の朝に彼は出会った───」
「寒い雪の日の朝…!?」
俺は思わず声を上げた。語り出した瞬間、女の瞳の奥に何かが灯った。まるで、ずっと胸の内に秘めていた何かをようやく語る覚悟ができたかのように。
「そう。ルピナスはその日、ある"絵"と出会ったの。……それが"本物"の『晦冥』よ。本物は“見た者の心”を写す絵だった。静かで、ただそこにあるだけの存在。だけど、ルピナスが描いた"贋作"は違う。彼の恐れと欲望、そして狂気が混ざり合って、あんな怪物になったのよ」
「なんか哀れだね」
「哀れ……かぁ…そうなのかもね。たった一枚の絵画に執着して、何もかもを投げ捨て、最後は自分の描いた
そう言って女は遠い目をする。俺は何も言えなかったが、それでもただ一つだけ……確認しなければならないことがあった。
「ルピナスは晦冥の中にいると考えていいのか教えてくれよ」
「そう考えるのが賢明ね。でもルピナスを取り出そうってなら諦めた方がいいわ。忌憚のない意見ってやつよ」
「そのエビデンスは?」
「さっきも言った通り晦冥は歪んだ執念の塊。つまりは"精神のヨロイ"なの。打撃も関節も効かない相手の精神をどうやって壊すって言うの?」
だったらここからが灘神影流の見せ場や。
打撃も関節も効かへん怪物相手に、どうやって闘うのか…?
「アハッ人生は予想外のことが起こるから面白い。君ももう少しぐらいゆっくり行動してみせろ
話の整合性は一切考えてない
それがボクです