マネモブだからと追放されました~俺は500億稼いで灘・真・神影流使えるけど元チーム大丈夫?今更戻ってこいと言われても遅すぎを超えた遅すぎ。いくらなんでも戻るわけねぇだろゴッゴッ   作:マネモブァ

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Battle.16幻魔拳

「波動系の打撃はどうやっ」

 

 灘神影流塊貫拳(なだしんかげりゅうかいかんけん)──発勁の衝撃波、その軌道を操り内部へと叩き込む。

 だが、やはり手応えはない。拳は確かに当たっているのに……まるで雲を殴っているようだ。確かに手のひらを通過しているのに、砕けない。崩れない。

 ───ならば、次は上から。

 

「灘神影流"兜浸掌(としんしょう)"」

 

 頭部へ直撃。兜越しに相手の脳を揺らし、外傷なく内部だけを壊す。戦国の修羅場で編み出された実戦殺法。その威力は、時に脳漿(のうしょう)を噴出させるとも言われる。

 だが、それでも、晦冥は倒れない。

 満遍なく打撃を入れてもダメ……殺傷力を高めてもダメ……やっぱりやるしかないのか?

 ────灘神影流秘拳『幻魔拳』……おそらく、幻魔なら、霊的存在(オカルト)であるこいつにも通用する。幻魔ならば、打撃が通じない相手でも、精神を崩壊させることが出来る……ハズだ。

 だが、それは晦冥を壊すことと同義。

 ……どっちを取るべきだ?信念か…?それとも勝利か…? 負けるのは嫌だ。俺はジャンケンで負けるだけでもブチギレる性質(タチ)だ。負けるのだけは納得できない。ましてや、全力を出し切らずに『負けました』なんて納得出来る訳がないだろう。

 そう……そもそも晦冥は贋作。だったら、たとえ壊しても、さほど罪悪感はわかないはずだ。

 

「灘神影流"幻魔拳"」

 

 本来の幻魔拳は"寸止め"により脳の視床下部に体がグロテスクに破壊されるイメージを植え付け、自立神経を乱れさせたり、幻痛といった後遺症を残す技。

 しかし、寸止めでは、視覚を利用しない晦冥には効果が薄いだろう。そこで直接打撃を与えることで、致命的なイメージを直接撃ち込む。

 

 ──頭部に被弾。イメージは具現化し、晦冥の頭部が爆ぜる。

 

 勝った。いかなる生物であろうとも、頭部が損傷すれば生きてはいられない。たとえ今すぐ死なずとも、すぐに限界が来るはずだ。そうなれば当然、闘いを続行することは出来ない。……これで終わったんだ。

 

 ──油断。全てが通じないとさえ感じ始めていた中で、初めてまともに通用した攻撃、それが判断を、思考を鈍らせた。

 故に、その瞬間──基本的なことを忘れていた。今闘っている晦冥は生物などではなく、一人の人間に作り出された絵画であるということを。

 

 それが致命的な隙となり、襲いかかってくる。

 ──しまった。油断していたと気づいた時には、既に晦冥の鉄球のような拳が、眼前に迫っていた。

 

 咄嗟に腕を挟み込み、その打撃をガードする。が、無理だ。ガードした腕ごと押し潰される。

 

「ぐぅ…」

 

 重い…ッ!それにちょっと経験したことないタイプの打撃だ……。

 まるで、巨大な岩が降ってきたかのような衝撃に脳天まで揺さぶられる感覚を覚える。そしてそのまま地面へ叩き伏せられた。

 

 ──たった一撃でノックアウトだと…この俺が…?ば…化け物め。

 くそっ、視界がボヤける。今の一撃で、軽い脳震盪が起こったか……しかも晦冥は頭部がもう再生している。

 

 追撃。今度はガードが間に合わない。

 晦冥の拳が俺の腹にめり込む。胃の中のものを吐き出しそうになるほどの衝撃に、一瞬意識を失いかけるが……何とか堪え、蹴り脚を掴む。

 そのまま、晦冥を寝技(グランド)に引きずり込んでのアンクルホールド。いくら模倣品であっても、人の形である以上は、必ず関節も存在する。

 が、相手は絵画。関節を極められても痛みなどなく、強引に起き上がろうとする晦冥に…即座にヒールホールドへ移行し対応。

 どうせこれでも痛みは無いんだろう。だったら、きっちりぶち壊して終わりにするッ。

 

 晦冥の膝関節が、ありえない方向にねじ曲がる。並の人間なら、激痛でのたうち回るか、失神するレベル。それでも、晦冥は平然としている。

 それどころか、脚関節を極められたまま、上半身が軟体動物のようにありえない方向に曲がっていく。

 "ヒールホールド"を極められたまま、晦冥は鉄拳を振り下ろす。──この位置ではモロに入る。これで終わるのか?

 いや…まだ手はある。

 下から顎を蹴り上げ、打撃の威力を半減させる。

 

「お前の動きはある程度読めるんや」

 

 足のガードを解き、蹴りを叩き込んで晦冥を弾きとばす。

 そのまま距離を取り、呼吸を整える。

 

 ──考えろ。どうして寝技が通じた?さっきは咄嗟に関節を極めたが、本来なら晦冥に関節など通じないはずだ……いや、それだけじゃない。あれだけ叩き込んでもたじろぎさえしなかった晦冥が、あんな体勢からの蹴りであんなに飛んだのもおかしい。今の攻防は何が違った?

 

 ──そうか。

 

「しっかり"幻魔"を植え付けられとるやん」

 

 頭部が直っているから、"幻魔"も抜けていると思ったが、イメージはしっかりと植え付けられていたんだ。想定とは違うが、おそらく"俺に破壊されるイメージ"が刷り込まれているのだろう。

 俺の一挙手一投足がトリガーとなり、晦冥に刷り込んだ"幻魔"が出現することで、本来なら通じない打撃や関節が効くようになったんだ。

 

 だったら勝てる。確かにパワーは驚異的だが、コイツのスピード程度なら、今の揺れる視界でも見切れる。

 

 晦冥の右ストレート。顔面目掛けて振るわれたそれを弾丸(たま)すべりを用いて、右頬で受け流し、代わりにクロスカウンター気味に左頬をぶん殴る。

 

「どうあがいても贋作では本家には勝てない。これは差別じゃない、差異だ」

 

 中国にも、"似我者生 象我者死"という言葉があるが、これは、師の教えを守りながらも創造を加えていく(似せる)者は成長し(生き)、ただ模倣する(象る)者は死んでいくという意味だ。

 どれだけ精巧に作られていようが、贋作には象ることしか出来ない。自らアレンジを加えない以上、技を知り尽くした俺に通じないのは自明の理。それが、努力や根性では埋めることの出来ない"ホンモノ"と"贋作"の差だ。

 

「これが…くるとわかってても避けられない本物の武術家の蹴撃(けり)や」

 

 虎の如き力強さと龍の如きしなやかさから生み出される神速の飛び蹴り。相手の身体を蹴り抜く威力はさることながら、圧倒的な初速から繰り出される攻撃は、通常の動きでは絶対に捉えられない。

 俺の脚が晦冥の頭部を捉え、サッカーボールの様に吹き飛ばす。だが、晦冥はそれでも立ってくる。

 いくら攻撃が通じるようになっても、やはり"幻魔"以外では効果が薄い。まあ、だったら"幻魔"を打ち込めばいいだけだ。そこまで大きな問題にはならない。

 

「灘神影流"幻魔突き"」

 

 晦冥のガードの上から"幻魔"を打ち込む。

 "幻魔突き"により突かれた部位の骨や肉が爛れるようなイメージを刷り込む。実際には大したダメージでなくとも、晦冥は腕がつぶされ、陥没したかのように感じているはずだ。その証拠に、晦冥はもがき苦しんでいる。"幻魔"を植え付けられた腕が、グロテスクに破壊されている。

 絵画とはイメージから生み出される物。故に、晦冥相手では"幻魔"の弱点とも言える、「被弾した者の脳内で起こっているから、外部からは何が起こってるのかわからない」ということもない。

 

「今からこの晦冥を殺しますッ」

 

 言うと同時に飛び上がり、中国武術特有の変則的な動きによる空中回し蹴りを放つ。

 しかし、その蹴撃は簡単に躱され、逆に中段付近への前蹴りによりカウンターが放たれた。

 いかに見えていようとも、身動きすることができない空中では回避も不可能。晦冥によって放たれた強烈すぎる蹴りが、痛めたアバラに突き刺さる。そのまま慣性に従い、俺の身体は後ろに大きく吹き飛ばされる。

 

「はうっ」

 

 勢いそのままに壁に激突。その直後に晦冥の追撃が走る。防御姿勢も取れないまま腹部に直撃。

 ──内臓破裂。口内に血の味が広がる。肋骨が肺に突き刺さっているのか……?息をするたびに全身に電撃が走るような痛みを感じる。

 

「……なんのマネだ?い…今殺さなかったら俺がお前を殺すぞ……さあ殺せ…こんなチャンス二度とないぞ」

 

 仰向けになったまま動けない俺の眼前に晦冥の拳が突き立てられている。今すぐ殺そうと思えば殺せる状態で、晦冥は微動だにせず佇んでいる。それはまるで、俺の様子を窺っているかのようでもあった。

 

「なめてんじゃねぇぞ!こら!」

 

 何とか立ち上がり、構え直す。しかし、身体は思うように動かない。呼吸をするだけで激痛が走る。視界が霞んで見え、足元もフラついてまともに歩けない状態だ。

 ──それでも立ち止まることは許されない。何故ならこのままでは俺の敗北が確定するからだ。俺が負けるということは灘神影流が敗北するということ。武術家として、純粋なタフファンとして、敗北は許されない。

 

 後ろには引かない…自ら前に出なければ"流れ"は変えられない。立ち上がった時から覚悟は決めていた。ここから先はもう二度と退くことはない。

 

「灘神影流"幻魔拳"」

 

 全身全霊を込めて放った一撃。しかし、悲しいかな──限界を迎えた肉体では魂の叫びすら届かない。威力も、速度も、精度も、全てが足りない。"幻魔拳"は晦冥の体を掠ることすら叶わず、無情にも虚空を裂く。

 すかさず放たれる晦冥の反撃──鋭く、重く、鋼のような拳が俺を貫こうとする。

 それでも、"魂"が敗北を許さない。突きの放たれた瞬間に腕を掴み、"小手返し"によって晦冥の体ごと地に打ちつける。だが晦冥もただの模倣品ではなかった。空中で捻りを加え、見事なまでの"腕十字"を極めにかかっている。

 俺もまたそれに対応して見せる。瞬時に極められた腕を曲げ、旋回して脱出。決して、晦冥に流れを譲らない。

 

 "流れ"だ。一度でも相手に渡せば、その瞬間に全てが崩れる。互いに相手を絶命させる術を持っているからこそ、"流れ"を引き入れた方が勝利する。

 だが焦るな。勝負の神は、より冷酷で、非情な者に味方する。焦りは判断を誤らせ…技のキレを鈍らせる。丹念に一つずつ…晦冥を…執念を破壊しろ。

 もはや晦冥を壊すことに、一切の迷いや躊躇はない!!

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