マネモブだからと追放されました~俺は500億稼いで灘・真・神影流使えるけど元チーム大丈夫?今更戻ってこいと言われても遅すぎを超えた遅すぎ。いくらなんでも戻るわけねぇだろゴッゴッ 作:マネモブァ
ダ
ァ
ン
ッ
轟音と共に男の身体が地に叩きつけられる。
床が大きく陥没し、粉塵が舞い上がった。
──勝敗が決したかに思われた。
だが瓦礫の中心で、男はまだ生きていた。
呻き声も、血走った形相もなく、ただ静かに……
「効いてないよ」
「なにっ」
驚愕の声が、私の喉をついて出てくる。
まさかあの状況から生き残ったというの…? 大したダメージを負うこともせず…?
いったいどうやって…!?
あの状況から生き残るだけならまだしも、ほとんどノーダメージでやり過ごすだなんて……
「
"波濤返し"!?
ふぅん、肉体を床へと叩きつけられた、まるで大波の如きその衝撃を、自らの体表を伝い受け流したというのかっ!
「ありえない…まさか、あれ程の衝撃を、全て受け流すなんて…」
「流した?返したと言うてくれや」
そう言った男の体をよく見ると、皮膚の表層が波打ち、背中なら肩、肩から腕、とじわじわ移動し、男が掴んでいる晦冥の首を通り、頭部にまで到達する。
そして、晦冥の頭部で、人体を完全に破壊して余りある程の衝撃が破裂する。
ホギャァァァァ
その時初めて、晦冥が悲鳴を上げた。
いくら殴られても、関節を極められても、"幻魔"によって精神を破壊されても、呻き声一つ上げなかった
それに伴い、男の胴を締め上げていた晦冥の力が緩む。──男は当然、そんな隙を見逃さない。
首のホールドを解き、体を回転させることで、魔合いから完全に脱出する。
「しゃあっ"
いやっ、それだけではない。
離れ際に、幻魔エネルギーを纏わせた蹴りを放つことで、晦冥に対して、更なるダメージを狙う。
これにより双方の体が弾かれ、大きく間合いが開く。
単純距離にして3m……万全であったなら、瞬きの合間に詰められる程度の距離でしかないのだが、今はどちらも満身創痍。晦冥は幻魔によって無敵性を喪失し、頭部は八割損傷、それに加え、腹部には先程の幻魔脚によって風穴が開いている。
対する男は、肋骨が幾本か折れ、内蔵の複数破裂。頭部に受けた打撃によって、頭蓋骨は一部陥没し、視界もろくに開けていないだろう……間違いなく致命傷なのだが、それでも生きている。とは言え当然、そんな状態であれば、一瞬で間合いを詰める程の高速移動は不可能。
──静寂が、場を支配する。
粉塵がゆっくりと床に降り積もる。そうして、粉塵が完全に床に落ちきった頃、呼応するかのように、2人の怪物が起き上がる。
「不思議やな……こんなに痛くて苦しくて、今すぐにでも意識を手放しそうなのにワクワクする。怖さの前に面白いと思うのは何でや」
自分が負けず嫌いなことは、理解していた。
だがきっと、この感情は、そんな安っぽい言葉では表せない。いや……どんな言葉を用いても、この感情を表すことは出来ないだろう。
身体は既に、限界を超えている。
息を吸うだけで激痛が走る。手足は震えて、力がまるで入らない。視界もブレて、二重三重に映って見える。いや、それだけじゃない。死神の顔が見えやがる……
So What?(それがどうした) たとえ万全であったとしても、
そうとも、よく考えてみれば、今までと何一つ状況は変わっていない。だったらハナから、諦める理由など無いではないか。
そう考えると、心做しか体が軽くなる。
先程まで意識を奪い取らんとしていた痛みは、今や意識を深くまで研ぎ澄ます材料と化している。
やばっ、絶好調だよ……たぶん。
「んじゃ、倒れる前に
そう呟いてから、俺は前方に駆け出す。
聞こえていたのか、いないのか……そんなことは分からないが、俺が前に出ると同時に、晦冥もまたこちらへ疾走していた。
その数瞬後、再び俺たちの間合いが交わる。
当然、奴にとっても、俺にとっても、ここで引くなんて判断はありえない!
「しゃあっ」
そのまま殴り合いに持ち込む。
ボ
ボ
ッ
ボ
ボ
ボ
ッ
クソッ、いやらしい戦い方してきやがるな。
距離が詰まった状態での
こっちはダメージで大きな動きは出来ない。必然的に、最小の動きで攻撃を躱さねばならず、集中力を消耗する……まずいな、回避に意識のリソースを注がなければ、この連撃は避けきれない。だが反撃をしなければ、このまま押し潰されるだけだ……
こうなったら、もうちょい集中力上げるしか無いよね……思い出せ、ナーガと闘った時の、あの感覚を!!自分の姿さえ、上空から俯瞰する程の超集中ッ、あれを今引き出せ!!!
神は傲慢だ……常に試練を与える。しかも欺瞞に満ちた神は乗り越えられぬ試練は与えぬという……ならば、俺もこの試練に打ち克ち、神を嘲笑してみせるっ!
そうと決まったのなら、俺のすべきことは1つ。
覚悟を決めた俺は、眼前に迫っていた晦冥の打撃を顔面で受止める。否。正確には、額で受け止める。
「あがっ」
自分で受けるタイミングを決め、最も硬い額で受け止めた……だが、それでも頭が割れそうな程の衝撃が襲ってくる。でもこれでいい。この痛みが、額に伝わった衝撃が、脳内に残っていたノイズを完全に吹き飛ばし、俺の意識をより深くまで集中させる。
ほうら。おかげで晦冥の動きがスロー・モーションに見えてきた。
(そうだよなぁ……攻撃当てたなら、その隙を逃す手は無いよな……)
集中状態の俺の瞳が捉えたのは、晦冥が追撃に繰り出して来ていた右のストレート。
ついさっきまでの俺なら、これは回避が間に合わなかったかもしれない。それでも、今の俺なら余裕を持って回避行動を取れる。
安定を取るならば、身を引いて回避するのが最善の択だろう。……でも、それじゃあつまらない。
俺は脚に力を込め、前方に飛び込む。俺が選択したのは、"回避"では無く"迎撃"。晦冥が腕を伸ばしきる前に、俺は右腕を投げ出し、晦冥の右肩を抑える。
こうなれば晦冥は、これ以上右腕を動かすことが出来ず、繰り出していた右ストレートは、俺の肉体に触れる直前で停止する。
一度攻撃を止めてしまえば、必然、連打もまた停止する。俺もまた、その隙を見逃さない。
そのまま左腕を晦冥の胸部付近まで伸ばす。
ここで半端な攻撃は、逆効果にしかならない。そう考えた俺は、そのまま超至近距離から晦冥の胸めがけて"勁"を放つ。
その衝撃は、内部深くまで浸透し、晦冥の体を後方に弾き飛ばした。
ここで追撃をしない手はない……が、両腕を使える晦冥相手に自分から近づくのは危険か。
先程のように、同時に飛び出すなら良いが、そうでないならカウンターが怖い。しかし、相手の接近を待つのも弱い。こちらから攻めなければ、攻撃の主導権を握れない。だが、こちらからむざむざ間合いに入り込むのもキツい……ならば、
「
"気"を用いた、遠距離まで届く掌底。
不意打ちにも似た、意識外の攻撃には、たとえ晦冥であろうとも反応は間に合わない。
受けも回避も出来ないままに、晦冥は俺の留波拳をもろに食らう。
それによって、晦冥の体勢を大きく崩し、接近するだけの余裕が生まれた。
このまま一気に懐に飛び込んで、
そう覚悟を決めると、俺は晦冥に向かって突進する。
なんてことはない、普通のタックル。残念ながら、俺には、構えた晦冥を押し倒す程のパワーは無い。だがそれでも、体勢を崩している状態で受けられる程非力でも無い。
そのままタックルを当て、晦冥を押し倒す。
晦冥は関節では倒せないことは既にわかっている。故にここで選ぶのは、"グラウンド"では無く"マウント"。一切の反撃を許さず、上から殴りつけるッ!
ゴッ ゴッ
何度も何度も、晦冥を殴りつける。
当然晦冥も抵抗しようとするが、そんなことは許さない。腕を伸ばそうとするならば、肩を殴り、マウントから抜け出そうとするならば、無理やり片腕で押さえつけ、空いてる腕でぶん殴る。
「なめてんじゃねぇぞ!こら!
俺から逃げ出そうだと?できるわけねぇだろうが!」
ゴッ ゴッ
俺が拳を振り下ろす度に、晦冥の体が削れていく。その度に、晦冥の抵抗する力が弱くなる。
だが、油断はしない。こいつは、"本物の怪物"だ。少しでも攻撃の手を緩めれば、その隙間に攻撃してくるかもしれない。少しでも力を緩めれば、このマウントから抜け出されるかもしれない。
だから、だから、だから、こいつが完全に動きを止めるまで、こいつが完全に壊れるまで、一切油断はしない。
思えば、こいつに追い詰められたのは、全て油断が原因だった。最初に攻撃を食らったのもそう。蹴りの時
よくわかったよ……もう絶対に油断はしない。たとえ相手が子供だったとしても、全力で闘ってみせよう。
「だからもう眠れや」
ボゴッ
振り下ろした拳が、何かを砕いた。
それが何かは分からない。けれど、直感的に、晦冥の核のようなものなのだと思った。
多分、それは正解なのだろう。その瞬間から、晦冥から感じられていた抵抗が無くなり、晦冥の全身にヒビが広がり始めていた。
「お前の負けや!」
意識が落ちそうなのを、無理矢理堪え、肉体に残っていた力を振り絞って、勝利宣言をする。
俺の勝利宣言が聞こえたのかは知らないが、その言葉の直後に、晦冥の体は霧散した。
もしかしたら、これが晦冥なりの返事だったのかもしれない……なんて、そうあって欲しいという俺の願望でしかないか。
そのまま数秒、晦冥の体が完全に消滅するのを見届けた俺は、そのまま前に倒れる。
いくらなんでも血を流しすぎたし……勃起不全。
骨は無事な方が少ないし……勃起不全。
臓器もいくつか潰れてるし……勃起不全。
「む…無理。た…助けて…し…死ぬ…」