マネモブだからと追放されました~俺は500億稼いで灘・真・神影流使えるけど元チーム大丈夫?今更戻ってこいと言われても遅すぎを超えた遅すぎ。いくらなんでも戻るわけねぇだろゴッゴッ 作:マネモブァ
「……ううん、どこだここは?」
目を覚ました俺の眼前に広がる景色は、まったく身に覚えのないものだった。ごつごつとした岩肌の壁、かすかに明滅する魔導灯、そして……鼻につく獣の臭い。
「良かった……このまま目を覚まさなかったら、置いて行こうと思ってたよ」
肩をすくめながら、フードの少女が俺を見下ろしていた。あの時、パチンコで獣人を倒した、あの小さな背中。夢じゃなかったんですか。
ごちゃごちゃとした思考が俺の脳を埋め尽くす中、目の前の少女が口を開く。
「私の名前はズヴェーリ。このダンジョンで暮らしてる……あなたは?」
ズヴェーリか……確かR国の言葉で獣を表す物だったか。それにダンジョンで暮らしていると言っている事から考えると訳ありか…?
何にせよこいつはまだ信用出来ない。ここは適当に偽名で誤魔化すか……
「我が名はスヌーカ。誇り高く勇気ある戦士と闘える事に喜びを感じる」
「ダンジョン暮しの戦士騙されない。邪悪な嘘は
ダンジョン暮し怖っ、明らかに人間技じゃないことしてるし。 誰か教えてくれ。ここで名を明かして大丈夫なのか?いきなり呪殺とかされないのか?
「あはは、ごめんなさいね。ちょっと脅かしただけよ。あなたミヤザワって名前でしょ?勝手に荷物漁らせてもらったわ」
「えっ」
慌てて荷物を探る。その結果、ギルドカードが消えているのがわかった。
「あなたが探してるのはコレでしょ?私に協力してくれるなら返してあげるわよ」
ズヴェーリは軽やかな指先で、俺のギルドカードをひらひらと掲げて見せた。その瞳は笑っていたが、そこに宿る光は冷たい。
「協力って……何をさせる気だ?」
「簡単よ。ある場所に一緒に行ってもらうだけ。それだけで、あなたのカードも命も保証してあげる」
それだけ、ねえ。絶対それだけじゃ済まない顔してるぞこの人。
「嫌だ。誰とも知らない奴に協力したくない」
「──今ここでカードを破られたら、ギルド登録も身元証明も、すべて無かったことになるわよ?」
微笑みながら、ズヴェーリはカードの端をそっと折る仕草を見せた。マジでやる気だこの女。
「ふざけんなよボケが…」
思わず声が荒くなる。だがズヴェーリはまったく動じなかった。指先はカードの端を軽くつまんだまま、目だけで俺を射抜いてくる。
「ふふ、短期は損気……冗談でも怒ると損するわよ」
まるで猫がネズミのしっぽで遊ぶような口ぶりだ。ぞくりと、背中が冷える。
「……で、そのある場所ってのはどこなんです?」
シュッシュと音を鳴らしてシャドーボクシングをしながら、目の前のズヴェーリに質問をする。
「簡単よ。私は外に出たいの……こんなしみったれたダンジョンなんかで残りの人生を無駄にするなんてまっぴら御免だわ」
「……"外"に"出る"!? あなたは"迷子"ですか?」
そう問うと、ズヴェーリは鼻で笑った。
「違うわ。生まれた時から、私はこのダンジョンの中にいたのよ。母は私を産んですぐ、深層の魔物に喰われたって話よ。父? そんなの知らないわ」
それを語る口調は淡々としていた。まるで自分の過去なんてどうでもいいと言わんばかりに。
「じゃあ、どうやって外に出るつもりなんです? ダンジョンの出口なんて、上層にしか無い。そこまで上がるにも、このダンジョンは再構築までの頻度が異様に短い」
「……もう一つだけあるのよ。ダンジョンのボス部屋を抜けた先に、ワープゾーンがあるの。私はその場所まで行きたい。でも、一人じゃ辿り着けない」
ズヴェーリの目に、一瞬だけ本気の色が宿った。その目が、俺の腹の奥に鉤爪みたいに刺さる。
「私には少しでも多くの力が必要なの。……外に出れたなら、ダンジョン制覇の功績も、ボスのドロップアイテムも全部あげる。だから協力して」
儲け話ってのはそそられるよね。特に彼女の出した条件…魅力的だ。 実際今は俺も外に出たい……それに加えて、功績まで譲って貰えるなら断る理由は無い…か。
「もちろんめちゃくちゃ協力する……ただし絶対に条件は守らなければならない」
「待って、その前にちょっとした試験よ……猫の手も借りたいけど足手まといは要らないからね」
まあそうだろうな……俺だって足手まといは要らない。だからこそクズどものパーティから出ていった訳だしな。 まあここまではどうでもいいんだよ。問題は…試験の内容だ。
ズヴェーリはすっと立ち上がると、背後の岩壁を軽く叩いた。ゴツン。と鈍い音が響いたかと思えば、壁の一部がゆっくりとスライドし、黒い空間がぽっかりと口を開ける。
「ついてきて。試験はあの中よ」
「ところでズヴェーリさん。試験内容はなんなの?」
「ミノタウロス……さっきから獣臭いと思わなかった?あいつが原因よ。そいつを殺して。そうすれば合格…晴れて私も先の階層に進めるってわけ」
ミノタウロスってのは確か…
「おもろいやん…灘神影流活殺術はたとえミサイル相手でも闘って見せる。見せたろやないか!超絶技巧の技を…」
「ならば"怪物"に挑戦してもらいましょう」
ズヴェーリが口元に笑みを浮かべたその時、試験の扉が静かに閉じられた。重い石の壁が後方を塞ぎ、もはや後戻りはできないという事実を告げる。
俺は深呼吸をひとつ。空気は湿っていて、鉄の匂いが鼻を刺す。地の底で腐った血が溜まり、凝り固まったような……そんな臭いだ。
暗闇の中、ズシリ……と地響きがした。
「来たか……」
影の中から姿を現したのは、全身を漆黒の毛皮に包まれた巨体。牛の頭部に、剣のように鋭い二本の角。二メートルを優に超える肉体に、ずっしりとした両腕、そして両手に握られた巨大な斧。
ミノタウロス。ダンジョンの深層に棲む、古き異形の獣。 その瞳が俺を捉えた。憎しみも怒りも無い、ただ「敵」として、処理すべき存在として、俺を見ている。
「昔から、デカブツの弱点は膝と相場が決まっとるんや」
俺は軽く腰を落とし、構えを取る。呼吸を深く、そして静かに。目の前の怪物は、ただの化け物じゃない。だが、こいつを乗り越えなきゃ話にならない。
「これが、肉離れ起こすようなローキック」
パ
ァ
ン
俺の足が地を蹴り、低く滑るような軌道でミノタウロスの膝に食い込む。瞬間、ぶるりと揺れた巨体は微かにバランスを崩した……が、
「……重っ! お…折れたかも…」
反動で逆に足が痺れる。こいつ、筋肉の密度が尋常じゃない。だが、それ以上に骨が硬い。まるで巨大な鉄柱を蹴っているような感覚。……だが、俺は笑っていた。
「いいねぇその強さ。よしっぶっ倒してやるぞ。───幽玄真影流"朦朧拳・霧霞"」
ミノルタウロスとて、視覚を利用している以上は、見えてもボヤけている周辺視野も存在する。 ならば、もうひとつの朦朧拳、霧霞の残像も良く見えていはずだ…
ミノタウロスの視線が、わずかに揺れた。俺が一歩踏み込むと同時に、元いた場所に残像が残る。"霧霞"の術中だ。あれはもう俺の動きの残滓じゃない。俺の動きを真似て動く、もう一つの影だ。
ミノタウロスが僅かに首を振る。斧を構え、そちらに意識を持っていく。よし、かかった。
俺はその死角から、足を引き摺りつつも踏み込む。
「狙うは…そこかっ」
地面すれすれに身体を滑らせる。"朦朧拳"最大の利点は、視線と攻撃点を分断できること。相手の注意が上に向いた瞬間、下からの打撃が入る。
今度は、拳だ。
幽玄だけじゃない…俺は、灘の
「灘・神影流"塊貫拳"」
灘神影流塊貫拳…"発勁"の衝撃波を自在に変化させる。たとえば胸を打ち…軌道を変え…脳を破壊することも可能!!
拳が炸裂し、一点から放たれた衝撃は、皮膚を破ることなく筋肉を裂き、骨を震わせ、ミノタウロスの内部を這い上がるように走る。闘いは、弱点を狙う…それがセオリー。次の標的は──脳。
ミノタウロスの赤黒い眼が、一瞬だけぶれる。
脳への“内部衝撃”が、平衡感覚と視界を狂わせる。
「効いとるやないか……!」
だが、崩れない。その巨体は、グラつきながらも、なお立っている。頭部に届いた衝撃を、全身の筋力で押し返してくるかのように。
確かにこの
ミノタウロスが咆哮する。その口から吹き出す息は、まるで火炎のごとく熱い。斧を振りかぶり、こちらに殺意を込めて襲いかかる───!
だが、その瞬間、俺は足を止めない。むしろ、踏み込む。
「これが“剛”で止まらんなら、こっちは“柔”で流す!神影流は受けでも最強だ」
ミノタウロスの斧が振り下ろされる刹那、その軌道の内側へと俺は滑り込み、全身の皮膚を伝い、スリッピングアウェイの要領で流す。
「灘神影流"弾丸すべり"ッ!!」
膝を抜く。重心を落とす。斧の軌道を感じ、ほんのわずかに肩を回し、腰を逃がす。ミノタウロスの斧は俺の鼻先を掠め、岩盤を削る音だけが耳を打った。
そして、そのままカウンターに出る。
刹那、俺の拳が唸る。
───重ねるのは、先ほどと同じ拳。ただし、今度は一度ならず。
「灘神影流塊貫拳"二度打ち"」
塊貫拳のコンビネーションがミノタウロスの鳩尾を穿つ。 一撃目で構造を揺るがせ、二撃目で崩す。内部に蓄積した衝撃が連鎖し、螺旋状に渦を巻くように骨へと、そして、脳幹へと達する。
ミノタウロスの巨体が、硬直する。
───遅れて、全身が痙攣した。
目が見開かれたまま、音もなく膝から崩れ落ちる。斧が手から滑り、地に重く転がった。
そのまま、体重に押し潰されるようにして、地響きと共に倒れ伏す。
血の匂いよりも、筋肉が焦げるような熱が立ち込める。
俺は肩で息をしながら、その姿を見下ろす。
「……見たか、これが元当主の実力だ」
重く閉ざされた扉の向こう、ズヴェーリの乾いた拍手が響いた。
「おめでとう。あなたは立派な仲間になった。ダンジョンからの脱出を目的とする私の役に立つ人間になった……」