見ていてね。作者が何をするのかを。
「ウボァー」
作者が力尽きました。
報酬が0zになりました。クエストに失敗しました
──してやられた。これ以上に今の状況を表現するのに適切な言葉は無い。
「最初はどうなるかと思ったけど、話してみたら不思議な人だったね。噂でしか聞いてなかったけど、どこか大人びてるというか……達観してるというか」
「感心してる場合じゃないわよ……でも正直、他の生徒と比べても、異質過ぎて不気味に感じたわ」
不気味か……篠坂はもはやそんな範疇に収まらない存在だ。
先程の話で、ヤツはオレ達が上級生に取引を持ち掛けた事について言及してきた。あろうことかその結果についてもだ。
実際にヤツの言う通り、オレ達と取引をすると答えた上級生は1人もいなかった。
その時点で誰かが関与してるというのは分かっていたが、その時は背後の存在を明らかにする事が出来なかった。
そして今、裏で糸を引いていた当人が俺達に取引を持ち掛けている。
……あの時から俺達は篠坂の手の上で踊らされていたという訳か。
面白いと思うと同時に、篠坂への警戒は更に高まっていく。
──ヤツはそうなのか? ヤツはオレを連れ戻すための──
「……で、貴方達はどう思う? 彼が提示した条件について」
「僕は……今回は受けるべきだと思う。確かに代償は高く付く。けど、彼が言ったことが事実なら、僕らに迷っている余裕はもうない」
「……そうね。それについては不服ではあるけど、同意せざるを得ないわ。今は1ポイントでも多くクラスポイントを得なくてはならない。他クラスとの差を埋めるという意味でもこの取引には代価を払う価値がある……幸い、彼は後払いでも良いと言っていた。これを利用しない手は無いわ」
堀北はあくまでクラスポイントを増やし、他クラスと戦う姿勢であるようだ。
「それについては平田のおかげだな。利息なんて付けられたら、オレ達は債務生活へ真っ逆さまだ」
「はは……それじゃ取引は受けるということで……クラスの皆にはどう説明しようか?」
篠坂が提示した条件の1つに取引について、他者への口外を禁じるというのがあった。
平田の憂慮通り、この件について彼らに話せば、何らかの形で他クラスへの露呈は確実だろうな。
とはいえ、彼らもいきなり自身が抑えていた範囲から、急な変化があれば不審に思うだろう。
「逐一、全てを話す必要はないわ。それに過去問だけでも勉強範囲は絞れる。後はテスト直前にコピーを渡して解かせるようにすれば問題無いわ。分かっていると思うけど、過去問であるという事は伏せておきなさい。他クラスに露呈することだけは絶対に阻止するのよ」
「そうだな……もし仮に露呈したら、Dクラスそのものを潰されかねない」
今回の取引によってDクラスから退学者が出る可能性が大きく下がった。
しかし、同時に疑問が浮かぶ。今回の取引、たとえ金銭目的だったとしても、対価として割に合ったものと思えない。
極端な話、オレ達から搾り取ろうと思えば、幾らでも価格を吊り上げる事ができる。
況してや、ヤツにとっては、オレ達が反論できる手段を全て奪っている状況。
なのにヤツが要求したのは、指定額のポイントのみだ。
より利益を得れるチャンスを自ら放棄してみせた──まるで取引による利益など、どうでもよいと言わんばかりに。
……いや、端から取引は目的ではないのかもな。そう考えれば打点がいく。
では、その目的は? 何の狙いがあって俺達の前に現れた?
もし仮にヤツがオレを彼処へ連れ戻すための刺客なら──
「もう一度確認するわよ。この取引は受ける、そして、この情報が露呈することは何としてでも阻止する。これで決まりね」
「うん。異論はないよ」
「ああ」
──いや、関係ない。篠坂が俺の障害になるのなら、どんな手段を使ってでも排除する。それだけだ。
「話が纏まったわ。今回、Dクラスは貴方の申し出を受け入れさせて貰うわわ」
「それはよかった。なら早速、件の物を君達に渡そうか。綾小路さんの端末からで良いかな?」
「ああ。構わない」
お互いの端末を取り出し、卓上へと置く。
「そんなに身構えなくていいよ。別にとって喰おうって訳じゃないんだから」
「悪いな。他クラスの生徒と連絡先を交換するのは初めてだからな。緊張していたんだ」
「奇遇だね。俺もだよ──送信したよ。確認してみてくれ」
「──ああ。確かに確認した」
綾小路さんの言葉に傍の2人も少し安堵したのか、軽い溜め息を漏らす。
「オレ達が支払うポイントについてだが、さっきの条件通り、後払いになるが大丈夫か?」
「勿論。俺が良いって言ったんだから、無理せず支払ってくれ」
「あら、随分と余裕なのね。15万というのも大金だと思うけれど?」
「別に金に困ってる訳じゃないからね。いやはや、Aクラスのクラスポイント様々だね」
クラスポイントという言葉に堀北さんが口を噤む。
成る程。彼女は俺は勿論、傍らの面々以上にAクラスへの拘りが強いらしい。
憧れと野心──確かに原動力としては強力だ。
何が彼女をそうさせるのかなんて知りもしないし、興味もないが、ただ俺でも言える事が1つある。
今の彼女がAクラスに上がることは不可能──如何なる理由があろうと、それだけは断言できよう。
「折角だ、1つアドバイスをしようか。君達に化ける素質はあるよ。下手したらAクラス以上にね」
「……意味が分からないわね。わざわざ他クラスに塩を送るつもり?」
「おや、悪い意味で捉えないで欲しいね。君達には可能性がある。それを理解しておいて欲しいのさ。それに──君達が残る方が
「……どういう意味かしら?」
「それを君に教える義理はないかな。残念だけど」
不服そうに顔をしかめる堀北さんを他所に、俺は先程から殺気を飛ばす彼へと目を向ける。
「──」
様子から察するに、同封した
「──堀北、先にデータを送っておく。そして、今すぐにでも勉強範囲を絞り込むべきだ」
「そうだね……テストまで時間があるわけじゃない。出来ることはすぐに取り組むべきだね」
「……そうね。そういう事だから、失礼するわ」
「ああ。健闘を祈ってるよ」
「堀北、オレは少し篠坂に話がある。先に行っていてくれ」
「話って……何を話すつもり?」
「堀北……男同士の間に割って入るつもりなのか?」
「貴方、何を言ってるの?」
仲が良いな……成る程、俺と坂柳さんも周りからこう見えているのかもな。
本人らにその自覚が無くても、周囲の印象だけでソレは独り歩きして真実に成り変わる──全く人間とは至極、都合の良い生き物だ。
「はは……そろそろ時間だし、皆もきっと待ってるから、僕らはもう行こう?」
「……分かったわ。用が済んだら貴方もすぐ来なさい」
「人使いが荒いな」
そう言って堀北さんは険しい顔のまま教室から出て行った。
「あはは……じゃあ、先に行ってるね。篠坂さんもありがとう」
「どういたしまして。繰り返しだけど、君達の健闘を祈ってるよ」
教室から出て行く平田さんをひらひらと手を振りながら見送る。
さて──これでようやく本題に入れるな。
「──その様子だと、俺からのメッセージはちゃんと伝わったみたいだね?」
「……そうだな。わざわざ、意味ありげな暗号でオレに残れと指示されればな」
e7 b6 be e5 b0 8f e8 b7 af e3 81 95 e3 82 93 e3 81 af e6 ae 8b e3 82 8c──綾小路さんは残れ。
これが彼に送ったメッセージ。対応した文字コードを16進数に変換しただけの簡単な代物だが、一時的な暗号としては十分だろう。
「そんなに身構えなくていいよ。別に君を捕まえようとか、ホワイトルームへ連れ戻そうというつもりは無いからね」
「……」
ホワイトルームという単語が出た途端、彼の無表情な目に明確な敵意が浮かぶ。
まあ、当然か。普通の生徒が知り得ることがない言葉が──自分の過去が追い縋って来ているのだ。
「俺はあくまで話を聞きたいのさ。ホワイトルームがどのような実験をしていたのか……それを聞くのに君以外に適任者はいないだろう?」
「……お前は何者だ」
「ただの雇われさ。君とこうやって接触したのも、雇い主からそう依頼されたからだよ」
「そういうのは守秘義務があるんじゃないのか?」
「依頼主から君の意思を尊重するよう言われてるからね……ちなみに
「……そうみたいだな」
机の下で臨戦態勢にあった拳がゆっくりと解かれていく。
これまた潔い……いや、状況的にそう判断しただけか……俺としても暴力沙汰になるのは少々困るし、手加減というのも得意な訳じゃない。
これは別に驕りでも慢心でも無い。ただの事実だ。
如何に訓練を受けた人間でも、この正面切った状況で戦闘用アンドロイドに対して勝算はない。
「依頼主はオレの意思を尊重すると言ったな。それはどの程度まで保証される?」
「基本的に全面的にかな。君が不干渉を望むのなら、これ以上聞くつもりはないよ」
「分かった……オレが知っている限りで良いなら、お前の依頼主の問いに答えよう。ただし、この時以降……オレの詮索はするな」
「約束しよう」
「ところで何故、お前の依頼主は彼処の事について知りたいんだ?」
何故、知りたいか。カタストロフについて、ジャジメントの実験について、理由は幾らでもあるが……今はこう答えるのが相応しいか。
「簡単さ。世界を救うためだよ」
「は?」
この日、初めて鉄面皮の顔に困惑の表情が浮かんだ
「参ったな……どうしたもんかな」
「……ん」
夕陽が差し込む広間の片隅、帽子を被った銀髪の少女が穏やかな寝息を立てている。
まるで坂柳さんみたい……というか坂柳さん本人である。
「坂柳さん? こんな所でどうしたのさ?」
声を掛けてみるも、当然ながら返事は無い。どうやらかなり熟睡してしまっているらしい。
周りを見ても、いつも傍にいる神室さんはおろか他の生徒、職員の姿さえない。
無論、これが普通の生徒だったら置いて行ってもかまわないのだが……
「流石に放置するのは色々とマズイか……かといって、この状態から起こすのも気が引けるよな」
あくまで俺は彼女の護衛として、この学校に在籍している。当然ながら、彼女を危険から遠ざける事は最優先されるべきだ。
それに世間一般の常識の観点からして、男性が無断に女性に触れるというのも良くない。
ただでさえ、彼女の召使なり下僕みたいな不名誉な噂が出回っているのだ。自ら火に油を注ぐ行為は避けたい。
「神室さんもこういう時にこそ、居てくると助かるんだけどな……」
今頃、彼女は坂柳さんからの一時の解放を満喫してる事だろう。
誠に羨ま──コホン、全くもって薄情である。
「坂柳さん、そろそろ起きよう。寝たいなら自分の部屋で寝てくれ」
「……慎君……置いて……いって……のですか……?」
「っ!? 起き──なんだ寝言か」
いきなり、彼女の口から俺の名前が出るものだから、少し驚いてしまったが……
寝苦しそうに顔を歪め、俺の名前を呟く彼女を見て、肩をすくめる。
寝言で俺の名前って……一体、どんな夢を見ているのやら。
まあ、この様子から察するに、彼女にとって気分の良い夢ではないのは確かだろう。
──『置いていく』か……あながち間違ってはないのかもな。
「んっ……慎君……?」
「おはよう……いや、もうこんばんはかな」
「っ! ……ごめんなさい。お見苦しい所をお見せしました」
「いや、坂柳さんの立場を考えれば疲れるのも分かるよ」
Aクラスの内戦、他クラスの諜報、これからの謀略──彼女に多くのものを押し付けてしまっている。
リーダーを務める身として仕方の無い事とはいえ、彼女も人間。休まずに活動し続けられる訳ではない。
機械が作動し続ければ壊れていくように、人間の身体もいずれ限界が訪れる。
「ふふっ……お気遣いありがとうございます。慎君はもうお話は終わったのですか?」
「おかげさまでね。無事、商談は成立したよ」
「そうですか。それは良かったですね」
……なんだろうか、坂柳さん自身も寝起きというのもあるのだろうが。
何処か、キレが無いというか、少ししおらしいというか……何か違和感を感じる。
「……綾小路さんと話したかったのなら、話せば良かったのに」
「──っ! 何故、そこで彼の名前が出るのでしょうか?」
図星か。まあ、こんな誰も寄らない場所にいる理由なんてそれくらいしか思い付かないしな。
成る程、これこそ恋煩いというやつか……全然違うか。
「綾小路さんの名前が出た時の反応を見れば察しは付くよ。神室さんがいないのもそれが理由かな?」
「いえ、私は……」
……すごいな。あの坂柳さんが皮肉すら言い返してこないって相当だぞ。
いや、感心してる場合じゃないか……しかし、どう返してやれば良いのやら。
坂柳さんにとって綾小路さんは一方的とはいえ、旧知の間柄というのは分かるが……彼女自身も呑み込みきれてないといった所か。
「……まあ、無理に今からとは言わないさ。それにこれが今生の別れって訳じゃないだろ? ゆっくりと進めていけばいい」
この学校で過ごす以上、綾小路さんも彼女の存在について認知しなくてはならない。
ある時は敵同士、別の時には協力関係として連携を取ることもあり得る。
彼女が秘めた思いを話すのも、その時になってからでも遅くはない筈だ。
「今生の別れですか……縁起が悪い事を言いますね」
「気を悪くしないでくれ。坂柳さんにはまだ時間が沢山あるんだ。なら、君が思うように使えばいい。其処に俺が介在する余地は無いからね」
「……慎君は、いてくれないのですか?」
さっきまで見てた悪夢の影響もあるのだろうか。彼女の瞳が少し揺らいでいるように見えた。
もしかしたら、明日死ぬかもしれません──なんて、そんな事を言える空気じゃないか。
しかし……今日は我ながら柄でもない事ばかりしてる気がするな、おかげでどうも調子が狂う。
「そうだね……その時まで居れたら──嬉しいかな」
「……ふふっ、そこは居ると断言する所ですよ?」
「悪かったね。生憎、こういうのは俺のキャラじゃなくてね」
「ええ。全くです。では、帰りましょうか?」
「はいはい……」
「そうそう。中間テストの後の休みに真澄さんと一緒に遊びに行こうと思っているんですよ」
「……そっか。是非とも楽しんでくれ」
「……
「分かった。楽しんでね」
「……慎君?」
「なんでしょう?」
「あまり女性の誘いを無碍にするのは感心しませんよ?」
「えぇ……今の俺が悪いの?」
どうやら遠回しに断るどころか、そもそも拒否権すらなかったようだ。
いや、遊びに来るのは構わないけど……何もない殺風景な部屋をお披露目するだけなんだが?
たとえ、ついさっきまでしおらしい雰囲気を醸し出していたとはいえ、そもそも彼女が傍若無人の女王というのは変わらない。
というか、俺の休日が潰れる事が確定したんだが……この女王様と戦える弁護士は何処か。
「はぁ……分かったよ。じゃあその日を楽しみにしてるよ」
「はい。最初のが無ければ50点でしたね」
「……さいですか」
──というか、これ神室さん知ってんの?
ふと、脳裏に浮かんだ問いは、塵となって消えていった。
いつもの雑談コーナー
星8歴戦ゴア強すぎひん? 初戦から3乙かましたんだが……
「おやおや、執筆が遅れてるのにモンハンですか……」
コラボが最早別ゲーで逆に面白くて、やり込んでしまいました。つまり、仕方なかったってやつだ。
「そのせいで、更に遅れるなんて、情けない事この上ないですね」
プロットは出来てるんですけど、執筆始めた途端、あれじゃないコレジャナイって1000文字、2000文字がオシャカになる事が日常です……
「私が言えることじゃないですけど、初志貫徹を意識したらどうです?」
……肝に銘じておきます。今回はナンバー3こと、ホンフーさんに来て貰ってます。
「どうも。ところで、初出が此処で良いんですかね?」
まあ、ホンフーさんに限らず白瀬さんもそうですし……その内出る予定ですので。万事問題なし!
「それ、ジナイダの前では言わない方がいいですよ?
レーザーで真っ二つにされたくないので、そうします……では、質問行きましょう。
『綾小路が篠坂君を警戒してる理由』
これは単純です。綾小路さんはあくまで訓練を受けた人間であるのに対して、端から兵器として人間を圧倒するように作られた篠坂君は圧倒的な驚異だからです」
「しかし、ホワイトルームのカリキュラムというのは私も興味があるところです。尤もそれを達成し得たのは彼だけのようですが……」
とはいえ、綾小路さん程ではなくても、ホワイトルーム生が常人より遥かに優れているのは魅力的ではないでしょうか。
それにサイボーグやアンドロイドの訓練にも応用は出来そうですし。
「彼らに超能力を目覚めさせるというのも、アリしれませんね。まあ、何人かは壊れてしまうかもしれませんが」
それではまた次回!