人工の羊は夢を見るか?   作:爆死san

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わァ...ぁ.……メロンパン((白目)


15:悪逆

 

 

 

 ここから逃げ出したい──刹那の欲求が脳内を過る。

 

 だが、それは出来ない……ここから逃げ出そうものなら、もっと恐ろしい事が起こる。

 

 これまでの人生の経験などではなく、人としての本能が警鐘を慣らしている。

 

「おや、そう緊張なさらなくて大丈夫ですよ。坂柳理事長」

 

 目の前のスーツの男はあっけらかんとした様子で言うが、身体の強ばりは増すばかりだ。

 

「……お久しぶりです。この度はお招き頂き誠にありがとうございます。()()()()様」

 

「畏まった敬称は要りませんよ。我々、ジャジメントも高度育成高等学校の理念に共感し、支援させて頂いている身。貴方は我々と対等な立場にいらっしゃるのです」

 

「……施設の理事を務める者として、勿体なきお言葉です」

 

 この部屋──このジャジメント日本支部の本社ビルに入って以降、彼以外の人間を見ていない。

 

 正真正銘の2人きり……だが、何故だ? 

 

 何故……()()に見られてると感じる? そして、この身の毛がよだつ寒さ……殺気だろうか。これは一体……

 

「さて、互いにお世辞を言い合うのはここまでにしましょう。僕も後の予定が控えてますので」

 

「はい……僭越ながらお聞きしますが、私が此処に招かれたのは、あなた方ジャジメントとの提携で何かあったから……でしょうか?」

 

「流石、坂柳理事長。他の面々と違って話が早くて助かりますよ。現在、我々との提携事業について、内容の変更をお願いしたいのです」

 

「変更……ですか?」

 

「近頃、何かと物騒な事件が増えてましてね。先月も我々が提携している医療施設で暴動がありまして、数多くの死者、怪我人が出てしまったのですよ」

 

 それについては私も知っている。イギリスにあるジャジメントの医療研究施設がテロがあり、死者は数十人、怪我人は何百人という大きな被害が出たと報道されている。

 

「僕も同じ轍を二度も踏みたくはなくてね。単刀直入に言いましょう。高育の警備を我々に任せては貰えないでしょうか?」

 

「それは……」

 

 ……今、思えば前述したテロも、果たして本当にテロだったのかと思えば、疑問が残る。

 

 確かにジャジメントが警備をするようになれば、未登録の超能力者やサイボーグといった危険からは守られるのだろう。

 

 だが、同時に施設職員はおろか、教員、生徒の安否さえもジャジメントが握ることになる。

 

 それだけは……この男に彼らの命を握らせる事だけは避けなくては。

 

「……誠にありがたいご提案ですが、理事長として、そのご提案を受け入れることは出来ません」

 

「おや、それは残念。その理由をお伺いしても?」

 

「警備員の一人一人が高育と契約を結んでおります。まず、それを私だけの判断で打ち切る事は出来ません。そして、現在の警備システムは本校の生徒の教育にも活用しております。それを外部に漏洩させる訳にはいかないのです」

 

 私が言ったのは私ではなく国が決めた規則。如何にジャジメント会長といえど、これをいきなり反故にする事は出来ない筈だ。

 

 目の前の男は相変わらず飄々とした様子だが、先程から感じる身を射すような威圧感が更に強くなった。

 

 やはり、そうだ……誰かに見られている。そして、今ソレに殺意を向けられている。

 

「成る程。流石、坂柳理事長。ご自身の役割に確とした責任感をお持ちのようだ。であれば、我々もそれを尊重せねばなりませんね」

 

「いえ……生徒及び職員の安全確保、施設の運営維持は私の職務ですので、特別な事ではございません」

 

 ……あっさりと引き下がった? そもそも、この要求について呑むかどうかは別にどうでも良かったのか? 

 

「お話ししたい事はもう一つあります。後日に控えている物資搬入の事です。如何せん今回は量があまりにも多いものでね。従来通りの輸送というのが難しいのですよ、その為、学内設備の使用の許可をお願いしたいのです」

 

「勿論です。こちらも実施予定の試験にご支援頂いている身。それを突き放す事は出来ません」

 

「ご理解頂き感謝しますよ。では、搬入については当初の予定通りに。さて、此方からは以上です。差し支えなければ、護衛の者にご自宅の方まで送らせますよ?」

 

 その瞬間、背後から黒いスーツを着込み、サングラスを身に付けた大男が2人現れた。

 

 ……いつから居た? 此処に来るまで誰も見なかったんだぞ。

 

 まるでその場から生えてきたかのような……そんな不気味な状況に思わず身体が強張る。

 

「いえ……この後、人に会う予定がございまして……お申し出はありがたいのですが、そのお気持ちを受け取るだけにさせて頂きます」

 

「ほう.……それは綾小路先生でしょうか?」

 

「なっ……何故それを?」

 

「ここだけの話、彼の運営してる施設から、彼の傑作がそちらに入り込んでしまったようなのですよ。全く、管理不届きも良いところでしょう?」

 

 にこやかに微笑みながらも、心底どうでも良いといった様子で男は続ける。

 

「ご心配なく。ジャジメントから、その彼に何かをするつもりはありませんので。まあ、正直なところ僕は綾小路先生がご執心の彼処(ホワイトルーム)には興味は無くてね。今後、目立った成果が無いなら取り潰そうかなと思っているんですよ」

 

「それは……何故でしょうか?」

 

「唯一無二の天才を一人作るよりも、劣っていても類似品を増やした方が効率が良いですからね。その方が替えも利きます」

 

「成る程……企業として、実に合理的な考えをなさっているのですね」

 

「僕はジャジメントの舵取りを任せられているものでね。僕の下にいる面々を路頭に迷わせる訳にはいきませんよ」

 

 確かにホワイトルームが育て上げた彼らとほぼ同等の能力を持ったアンドロイドを向こうは幾らでも量産が出来る。

 

 ……あの娘の護衛を任せた彼もこのような理由で生まれたのだろうか。

 

「そうそう、理事長の()()()も大変聡明な方だと僕は聞いているんですよ。是非とも機会があればお会いしたいですね」

 

「そうですか……ですが、如何せんあの子は世間知らずの所が強いのです。何かとご無礼を働いてしまうかと……」

 

「おや、僕は気にしませんよ。子供はやんちゃな方が見ていて楽しいですからね」

 

「……そうですか。ですが、あの子も学校生活で多忙でしょうから……」

 

「ええ、分かっています。子供にとってこの時期は自分という形を完成させる為の重要な時期ですからね。残念ですが、いつかの機会にいたしましょう」

 

「ご理解頂き感謝いたします。では、私はこれで──」

 

「──坂柳理事長。綾小路先生に会うのでしたら、一つ伝言を伝えて貰ってよろしいでしょうか?」

 

「──っ!? は、はい。何とお伝えしましょうか?」

 

 男の凍てついた声音に思わず悲鳴が漏れそうになる。

 

 先程までの飄々とした様子とは打って変わり、あらゆるモノを見下したような目をした男は、その表情を一切変えずに続ける。

 

「そこまで怖がらなくても大丈夫ですよ。ただ、こう伝えて欲しいのです……『()()()()()()()()()()()()』とね」

 

「か、かしこまりました……そのようにお伝えしておきます」

 

 まるで破裂すると錯覚する程に早鐘を打つ心臓のまま、逃げるようにその戸を開ける。

 

 背後に居た筈の大男達はいつの間にか消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エアレイド君」

 

『はい。お側に』

 

 坂柳理事長が出ていった後、側に控えていた護衛に声を掛ける。

 

「どうだい。やはり彼、僕に手出ししてこなかっただろう?」

 

『はい。ですが、ますます疑問点は増えます。何故、高育に送り込んだ工作員やドローンが悉く消されているのは……』

 

「どうやら、()()を飼ってるみたいだね。面白いじゃないか。彼、僕に隠し事をしてるんだよ?」

 

『では、見せしめに彼の娘を殺しますか?』

 

 まるでその瞬間が楽しみだと言わんばかりに意気揚々と護衛は続ける。

 

「いや、別にそこまでしなくて良いよ。聞いた話じゃ心臓の持病持ちらしいからね。わざわざ此方から始末する必要はないでしょ。でも、そうだね……教育も兼ねて少し()()()()()を用意してあげようか」

 

『サプライズ……ですか?』

 

「人間って楽な環境ばかりにいると鈍っちゃうんだよ。それに、彼の娘さんも退屈が嫌いとも聞いてるからね。是非とも忘れられない体験をさせてあげようじゃないか」

 

『かしこまりました。では、具体的にどのような事を?』

 

「搬入予定のT(ターミネイト)シリーズに5月22日の17時に起動するよう設定を追加して。任務目標は──坂柳有栖の()()

 

『かしこまりました。そのように指示を出します』

 

「そうそう、目標の周りにいる人物も始末して構わないからね。仲間外れはいけないでしょ?」

 

 にこやかな表情を崩さぬまま、男は淡々と命令を告げる。

 

『はっ。そちらも併せて命令いたします。では、潜伏部隊にも──』

 

「──いや、彼らに伝えなくて大丈夫」

 

『えっ、何故でしょうか?』

 

「さっきも言ったでしょ? 人間って鈍っちゃうものなんだよ。それに……この程度の()()に対応出来ないヤツなんて必要ないよ」

 

『かしこまりました。ジオット様のご要望通りに』

 

「うん、頼んだよ。いや~是非とも楽しんでくれると嬉しいね」

 

 彼はジャジメントグループ会長、ジオット・セヴェルス──世界大統領である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつになく教室の生徒達に落ち着きがない。

 

 先程から『勉強した』、『数学が不安』とか何処でも似たような会話が繰り広げられている。

 

「ふふっ。皆さん、流石に当日にもなれば居てもたってもられないみたいですね」

 

「まっ、そりゃそうだよな。赤点だったら退学になっちまうんだし」

 

 橋本さんの言う通り、本日は5月22日。あろうことか中間テスト当日だ。

 

「皆、気にしすぎなのよ。範囲が変わったって言っても、そこまでじゃなかったでしょ?」

 

「おや、真澄さんはかなり自信がおありなんですね。これは高得点を期待してもよろしいでしょうか?」

 

「……別に。少なくとも赤点にはならないとだけ言っておくわ」

 

 まあ、小テストで成績トップを叩き出した坂柳さんに言われたら、そんな投げやりな反応にもなるよな。

 

 誰が言ったか、1番を目指すよりNo.2──これには同意するところである。

 

「おっ、姫さんは自信満々って感じっすね」

 

「ふふ。ええ、この為に準備はしっかりとしてきましたので。そうでしょう? 慎君」

 

 そこで俺に振ってくんのかい。会話してた橋本さんじゃないんかい。

 

「勿論。赤点回避に尽力する所存だよ」

 

「まあ、誰も目指すのは其処だよな。範囲からしてそこまで難しいって訳じゃねえしな。それに……見てみろよ。戸塚のヤツ、まさに心此処に在らずって感じだぜ?」

 

 そう言われて戸塚さんの席の方を見ると、彼が言うように落ち着かないのか、机の下では激しく足踏みをしていた。

 

 まあ、彼にとって敬愛する葛城さんの期待を背負っているのだ。高揚と不安で彼自身も気が気でないといったところか。

 

 尤も、相対する相手の事を考慮すると、お気の毒にとしか言えないのだが。

 

「そうですね。彼も葛城さんのグループから独立し、自ら挑もうと勇気を振り絞ったのです。その勇気に応えて正々堂々、相対いたしましょう」

 

 勝負は勝てるという確信があってこそ、相手に挑むものだ。

 

 既に坂柳さんは勝つための工作をし、Cクラスの助力を得た葛城さんの狙いを看破している。

 

 この時点で盤面を支配しているのはどちらかと言われると、流石に前者だと挙げざるを得ない。

 

「──そういや、この前の外出禁止って、皆はどう過ごしたんだ? ケヤキモールはまだしも、学食すらいけないって相当だぜ」

 

「此処の立地上、運営の為に外部から物資搬入が必要なのは分かってはいますが、今回は確かに特殊でしたね。話では今後の試験に関わる物も搬入されている為とか」

 

「此処って確かジャジメントが色々出してるんでしょ? 家電も、スーパーもジャジメントの系列だし」

 

「でも、外出だけで処罰って相当だよな。そんなヤベエ試験が行われるのかね」

 

「それについては不明ですが、クラスポイントはおろか在籍にすら関わるとなれば従わざるを得ないでしょう」

 

 彼らの言う通り。先日、ジャジメントによる物資搬入が実施された。

 

 どうも今回は例年とは違い、かなり大規模なモノだったらしく、搬入当日の18:00以降は如何なる理由でも外出を禁じる事が生徒らに通達された。

 

 もし、仮に外出するような事があれば、厳重な処罰を下すという脅し文句も付けてだ。

 

 謂わば、高育から戒厳令を敷かれた訳だが、やはり多感な生徒らには納得のいくようなものでは無いらしい。

 

「ここだけの話、今回のやつってジャジメントに言われたからそうしたって話だ。まったく怖いねぇ……」

 

「ジャジメントに言われたからって……向こうもただの企業でしょ? そりゃとても大きい企業かもしれないけど……」

 

「現在、ジャジメントの系列でない企業を探す方が大変ですからね。実際、此処の運営にも多額の支援をしているようですし、たとえ国営の施設であっても、彼らの要望を無視するというのが難しいというのは察しがつきます」

 

「確か、一時期話題になったわよね……その頃はツナミだったけど、其処が人体実験してるとか、兵器開発してるとか……」

 

「あまりインターネットの情報は真に受けない方が良いかと。実際、その時の記事も証拠が曖昧でしたし」

 

「それはどうかな? 今、主要な検索エンジンを運営してる企業もジャジメント傘下だからね。何が正しくて何が間違ってるかなんて誰にも分からないんじゃないかな?」

 

 現代は依存とも呼べるくらいインターネットに頼った社会が形成されている。

 

 誰もがインターネットであらゆる情報をやり取りするからこそ、ジャジメントが主要な検索エンジンを押さえている事に大きな意味がある。

 

 自社に有利な情報を優先的に展開し、インターネット上でも監視プログラムや情報を削除するためのウイルスを走らせている。

 

 神室さんが話していたのも、ミーナさんらがゲリラ的に公開した情報の一環だ。

 

 だが、彼女が話していたように、話題にはなりつつも、坂柳さんのように誰も信じなかった。

 

 そして、これらのジャジメントによる支配は今も尚、続いている。

 

「まあ、俺が言えるのは、あまり、此処でもインターネット上でも、この話はしない方が良いって事だね。企業ってやつは悪評や批評というのを嫌う」

 

「慎君、よく知っていますね……」

 

 その時、始業のチャイムが流れ、直後に真嶋先生が教室へと入ってくる。

 

「おはよう諸君、先日は急な通達で大きな不便をかけてしまい、申し訳ない。諸君らの協力で搬入はこれといった問題なく完了したとのことだ。この場を借りて感謝を伝えよう」

 

 そう言って真嶋先生は軽く会釈する。

 

「さて、本日は予定通り、中間テストを実施する。試験中は卓上に問題用紙、回答用紙、筆記用具以外の物を置くことを禁じる。仮に何かを落としたのであれば、挙手して申し出るように」

 

 そして、静まり返った教室でテストについての説明が始まった。

 

 尤も、その内容は他の学校でもある、カンニング行為の禁止、開始時刻、終了時刻といったモノ。

 

 こうして、この高育において初めての試験が幕が開けたのだった。

 

 






いつもの雑談コーナー


初めてパカ攻略した時、普通にドラコに負けてメロンパンルート直行したんですよね。

「……プレイスキル無い」

いや、確かに上手いと自称するつもりはないんですけど……というか、一番難しかったのは13の桜花だと思います。

「……公式公認の魔性の女だから」

少なくとも二回失敗してますからね……千早だとあのコマンド一発だったのに。

むしろ、バケモノルート後から知りました……

「……実はバケモノルートの方が好きだったり……?」

否定はしないです。今回はブラックさんです。

「……前回、ホンフー来てた」

リセット座談会で似たような感じだったじゃないですか。

ミーナさんとジオットさんとか……殺して貰った方がまだ救いがある実例ありますし。

「……同時にミーナがヒロインになれないのが確定」

まあ、次回作がもう無いからね、仕方ないね。

じゃ、質問いきましょう。

『Tシリーズとは?』

これは本作オリジナルでございます。TXシリーズだと、如何せんデカ過ぎるので、その小型廉価バージョンと思って頂ければ。

「……イメージは某スカイネットの殺人機械」

デデンデンデデン……作者が好きなのは2です。

「……映画史上稀に見る神作」

それではまた次回!
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