人工の羊は夢を見るか?   作:爆死san

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し あ わ せ

某親切高校と高育って似てますよね。

前者の方はまだ学校の外に出れるけど……


2:任務開始

 

 高度育成高等学校──東京の埋立地にある日本政府が作り上げた、未来を支える人材を育成する全国屈指の国立の名門校である。

 

 現内閣総理大臣の鬼島による教育政策の一環として設立され、鬼島政権の目玉とも呼べる代物だ。

 

 そんな代物故か、かのジャジメントも多額の融資、業務提携を行っているようで、理事長が言っていた通り、緩やかにジャジメントへの恭順(きょうじゅん)が進められている。

 

 此所とは別で、ジャジメントが超能力の研究及びに実験を目的で運営してる高等学校があるが、その規模は此所とは比較にならないだろう。

 

「……はぁ」

 

 しかしまあ、国営施設という名目もあるんだろうけど──

 

 俺の前で談笑する男子達を凝視(ぎょうし)する無機質な眼差し。

 

 ──これで20台目。一体、幾つ監視カメラを設置してるんだか。

 

 国営施設であれば、当然ながら警備は厳重になる。

 

 しかし、校舎への道すがらだけで、これだけの数があるのはやはり異質だ。

 

 まるで、セキュリティだけでなく、生徒の一挙手一動そのものを監視しているような……そんな感じだろうか。

 

 学校というより、監獄そのものだな……生徒の面々にその自覚はないのだろうが。

 

 しかし、これだけの監視カメラの数ではあまり表立った動きは出来ないな。

 

 一応、人命に影響を及ぼさず、任務の障害になるようなら破壊してもよいとはなってるが……

 

 出る杭は打たれると言うように、出過ぎた行動はかえって自分の首を絞める行為に他ならない。

 

 そうなると、敷地の構造の把握、セキュリティの掌握(しょうあく)、外との抜け道の確保も必要になってくるな……

 

 任務の遂行の為にもやるべきことは山積みな上に、退学を防ぐ為に学業でもそれなりの結果を出し続けなくてはならない。

 

 まずは護衛対象と接触、その次は装備の回収だな……

 

 相も変わらず楽観的な前の二人と、複雑な表情を浮かべる後ろの一人。

 

 無機質な視線はただ、それを記録していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廊下を抜けたら、宙から人間が降ってくる──諸君らはそのような経験をしたことがあるだろうか? 

 

 無論、俺も今までそのような経験は1度たりとして無い。

 

 厳密に言えば、自分の上から死体が降ってくるという経験は散々あるのだが、生きた人間が降ってくるというのは初めてだ。

 

 しかも、降ってきた人間が五体満足というのも、初めての経験である。

 

「フフ……ありがとうございます。お陰で助かりました」

 

 腕に収まった小柄な体躯の女子が静かに微笑む。

 

 小柄な体躯、銀髪、そして──

 

「どういたしまして。それより、何処か痛むところとかは無いか?」

 

「お気遣いありがとうございます。特に痛むところはありません」

 

「それは良かった」

 

 ──階段の傍らに転がっている杖。間違いない、事前情報と完全に一致している。

 

「申し遅れました。私、坂柳有栖と申します。よろしければお名前を伺っても?」

 

篠坂(しのさか)(まこと)だ。よろしく頼む、坂柳さん」

 

 腕の内に収まるこの女子こそ、この任務における最重要人物こと坂柳有栖だった。

 

 ……成る程。理事長が彼女の護衛をわざわざ雇うのも納得だ。

 

 階段の傍らに転がる杖から察するに、彼女は先天的の疾患を持っているのだろう。

 

 症状は見て分かる通りの歩行困難、脈拍、心拍ともにこの年代の平均よりかなり低い。

 

 察するに先天的な心疾患による、運動機能障害を患っていると予測される。

 

「坂柳さんは上の教室に行くのか?」

 

「はい。そちらが私のクラスですので」

 

「了解した」

 

 彼女を片腕で抱えながら、空いた手で転がった杖を拾う。

 

「よし、なら最短で行こう」

 

「えっ? きゃっ……!」

 

 少しの悲鳴を漏らす彼女と、事の一部始終を見ていた野次馬を他所に、床を強く蹴る。

 

 眼前の階段を全て跳び越え、着地と同時に再び強く床を蹴る。

 

 ふわりとした浮遊感と、空気を切り裂いて進む疾走感を浴びながら、階段を跳び越えていく。

 

「到着……あっ」

 

「……」

 

 驚愕の目で此方を見る新入生達、腕の中の護衛対象は心ここに在らずといった様子だ。

 

 しまった……普通の人間は女子を持ったまま、階段を飛び越えてきたりはしない筈だ

 

「……」

 

 駄目だ、完全に意識が上の空だ。心疾患への配慮が粗暴過ぎたか……

 

 完全な失態だ。流石に謝罪をしないとあらぬ疑いをかけられかねない。

 

「えっと……すまない。階段は飛び越えるべきではなかったな。大丈夫か?」

 

「あっ……はい。大丈夫です……ご親切にありがとうございます」

 

「いや、本当に申し訳ない、以後は気を付けるようにする」

 

 俺の謝罪と同時に──その一部始終を見ていた周りの生徒達はの心は一つになった。

 

『えっ、謝る所、そこなの?』

 

 そんなことを思われている事を、当の俺は知る由もなく、ある一つの課題を自らに提示していた。

 

 ──普通の人間の特徴を学ぶこと。

 

 当然ながら此所に通っているのは人間だ。アンドロイド故の常識は此所では通用しないだろう。

 

 であれば、なおのこと普通の人間について知らなくてはならない。

 

 俺の任務の関係上、無駄な注目を浴びることは任務の支障になり得る。

 

 普通の人間を学び、彼らの中に潜伏し、任務の脅威を排除する。

 

 幸いなことに此所には多種多様な人間が在籍している、彼らとの交流は俺の課題についても有意義に働くことだろう。

 

 そうと決まれば……まずは今回の出来事について説明を出来るようにしなくてはな。

 

 ふむ、トレーニングが趣味だから……いや、流石に安直すぎるか? 

 

 スポーツをやっていた……いや、仮に経験者から言及された場合、かえって説明が難しくなる。

 

 今後について思案する俺、未だ上の空の護衛対象、困惑する野次馬。

 

 三者三葉の思惑が絡みあいながら、俺の任務は始まったのだった。




 いつもの雑談コーナー

 2話だよ、いつもの雑談コーナーだよ。じゃあ早速、質問していこう。

「えっと……此所ってこんな感じなんですか?」

 そうだよ(便乗)、じゃあ自己紹介を。

「えっと……モブです。新入生が新入生を抱えて階段を飛び越えたのを目撃した時にいました」

 えっ……名前無いの?

「あるんですけど……どうせ次出る時は変わってるんで」

 世知辛え……じゃあ、質問その1。

『何で階段飛び越えたの?』

「ああ、僕も思いました。というか、人を抱えながら、階段を飛び越える時点で人間辞めてますけど……あっ、そもそも人間じゃなかった」

 えっとね、多分、何も考えてないよ。普通に速いし、手っ取り早いと思ったからだよ。

「えぇ……」

 次、質問二つ目。

『超能力のランクは? というか超能力持ってるの?』

「パワポケだと、特AとSが出てましたっけね」

 ちなみにSは戦略級です。一応、ジャジメント製の戦闘用アンドロイドですので持っているし、ランクもそれなりに高いAだそうです。

「能力の内容については今後にご期待ということで……」

 では、最後の質問です。

『親切高校と高育。通うならどっち?」

「一応、同じ全寮制、生活も学校内で完結しますもんね」

 断然、高育ですね……平穏に過ごす分には一番最適な環境だと思います!

「貴方、怠惰ですね」

皆さんは勤勉であってください。では、また次回お会いしましょう。
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