人工の羊は夢を見るか?   作:爆死san

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とりあえずそこに跪きなさいな(by坂柳)


26:密謀

 

 

 

 ピッという電子音と共に端末に緑の光が灯る。

 

「これで更新は全部、終わりましたね」

 

「そうだね……次来るときは16時以降だね」

 

「……夜中の12時にも来て、朝の8時にも来て、今度は16時にも来るんでしょ? ホント、イヤになるわ」

 

 神室さんの愚痴には同意するところだが、スポット占有は8時間しか保たないのだから仕方がない。

 

 少なくとも、いずれ来るリーダーの交代の瞬間まではこうして定時にスポットを更新しに来なくてはならないのだ。

 

 更には、スポット占有の土台があってこそ、クラスの活動範囲を維持できるのだから尚のことである。

 

 そもそもリーダーとその補佐を一任された以上、個人的な云々で疎かにするわけにはいかないのだ。

 

「それに……うっ……ああ、やっぱり背中が痛いわ」

 

「そうですね……昨日は動き回った事もありますが、それでも熟睡という訳にはいきませんでした」

 

 少なくとも、此処にいる面々で寝袋で寝ることに慣れている者はおろか、固い地面の上で寝ることに慣れてる者なんていない。

 

「ともあれ、要件は済んだんだ……戻って少し休もう」

 

「賛成……肩も重いし、背中も痛いし……少し楽になりたいわ」

 

「おやおや、真澄さん。そんな年齢に相応しくない事を仰ってはいけませんよ?」

 

「少なくとも、ずっと篠坂の背中の上にいるアンタには言われたくないわよ」

 

「でしたら、真澄さんも乗ってみます? 慎君、揺れないように気を遣ってくださるので、とても快適ですよ」

 

「……アンタ、馬みたいね」

 

 悲報──篠坂さん、もはや人ですらなく馬扱いでした。

 

 ……アレか? ヒヒンとか言ってファンサービスした方が良いのか? 

 

 尚、背中に乗ってる彼女は、走っても人参一本すらくれない独裁者なのだが。

 

 ……労基、労基法は何処に──というか、これは適用案件なのだろうか? 

 

「ですが、慎君の身体能力のおかげで他クラスよりも圧倒的な有利な条件で試験に臨めているのは確かです。それに、私も慎君がいなければ、足手まといにしかなりません」

 

「でも、Cクラスが何かしてくるかもしれないんでしょ? 」

 

「はい。ですが、Cクラスは以前に慎君個人に干渉して、結果として何も出来ずに終わっています。その為、慎君にもある種の警戒を持つでしょう」

 

「まあ……篠坂って何か因縁付けられそうよね。現に戸塚とかもなんか篠坂の事をやたら毛嫌いしてるし」

 

「別に俺が何かしたつもりは無いんだけどな……」

 

法界悋気(ほうかいりんき)、とでも言うべきでしょうか。全く以て見苦しい事この上ありませんが、彼もまだ利用できます。対処するのはまだ先で良いでしょう」

 

 ホント、恐ろしいことを綺麗な笑顔で言うよな、この娘。

 

 というか対処って……いや、追求は止めとこう、触れぬ神に祟りなしとも言う。

 

 それにしても、ここ最近で戸塚さんは彼女の不満を買うよう何かを……うん、それなりにしてたか。

 

「まあ、それについてはお好きにどうぞ──ッ!」

 

 西の方角から枝が軋む音──いや違う、これは枝を伝って来てるのか? 

 

 枝を践むにしては大きすぎる音が、断続的にかつどんどん大きくなっていく。

 

 何かが此方へと向かってきている……それもかなりの速さで。

 

「神室さん、坂柳さんを連れて洞窟に入ってもらって良い? 此処に誰かが向かって来てる」

 

「はぁ? 向かって来てるって……猿じゃあるまいし」

 

「少なくとも、俺も人間だと思いたいかな……もう少しで来る、急いで」

 

「わ、分かったわよ……ほら、坂柳も早く掴まって!」

 

「は、はい」

 

 背中から降りた彼女は神室さんに掴まりながら、洞窟に歩を進める。

 

 聞こえてくる音からして、だいたい200メートルといったところか。

 

 横目で彼女達が洞窟に入ったのを確認しつつ、木々の彼方を睨み付ける。

 

 距離、およそ150──速いな、もう50mも詰めてきたのか。

 

 生徒……だとは思いたくないな、少なくとも俺は森の中を縦横無尽に駆け回れる高校生なんて見たことはない。

 

 距離──100m。

 

 木々の揺れを察知した野鳥が空へと飛び立っていく。

 

「フッ……ハッ……ハッ……」

 

 近付いてくる者の声──声音からして男性、トーンからして年は俺の肉体年齢と同じくらいか。

 

 距離──50m。

 

 一人ではないな。先頭の男の後続にもう一人……いや、二人か。

 

 流石に間隔が空きすぎてる気がするが……察するに先頭の者の独断専行か。

 

「──とうっ!!」

 

 そして、木々の間から1つの影が飛び出てくる。

 

 着地した男は高身長、髪は金、ジャージの上からでも分かる筋肉モリモリマッチョマンの変態だった。

 

 ……いや、変態かどうかは知らないけど。

 

「フッ……この程度、この私にとってウォーミングアップにもなり得ない……!」

 

 ──前言撤回、やっぱり変態かもしれない。

 

「おや、そこのパワプロボーイ。私に見とれてしまったのかな?」

 

「は?」

 

 ……えっ? パワプロボーイって何? というか、そこはパワポケじゃないの? 

 

 俺がそう思ったのが通じたのか、彼はいきなりポーズを取った。

 

「フッ……構わないさ。この私に見とれてしまうなんて、さも仕方がないことだからねぇ! ハッハッハッ!」

 

 訂正、全然伝わってなかった──というか、ポーズを見せられても、俺にどうしろと言うのだろう。

 

 ……笑ってやれば良いのか? だが、今の俺にそんな胆力はない。

 

 彼にとって何が誇らしいのか分からないが、ただご機嫌な様相で高笑いをしている。

 

 そもそも、こちらの話は……通じるのだろうか? それすらも怪しくなってきたんだが。

 

「ハッハッハッ! やはり大自然の中の私は美しいッ!!」

 

 ……いや、通じないなこれ。

 

 万事休す……もはや策も尽きた俺は、俺は何も言わず、静かに目を閉じ、洞窟の中にいる彼女へと想いを馳せた──

 

 ──助けて、坂柳さん。俺、この人とどう接したらいいか分かんない。

 

 少なくとも、俺と交流があった人間にコレと似通った例はないと断言できる。

 

 いや、高校生にしては異次元な身体能力もそうだが、何というか彼自身が掴み所が無いのだ。

 

 ……これが俗に言う頭が痛くなるというヤツだろうか。

 

 何をやっても無駄な、そんな虚脱感を感じる。

 

「やっと止まったか、高円寺……」

 

「おっと……」

 

 続いて出てきた彼も筋肉モリモリマッチョマンの変態──ではなく、彼とは対照的な茶髪の細身な身体。

 

 そして、その無表情ながらも、強い敵意──否、警戒を感じさせる瞳。

 

「久しぶりだね。綾小路さん」

 

「……ああ、そうだな」

 

 成る程……この未だポーズを取っている高円寺という人も彼と同じDクラスという訳か。 

 

 何と言えば良いのか、Dクラスは魔界か何かなのだろうか……? 

 

「なぁ……ところで、さっきから何故、高円寺はそんなポーズを取っているんだ?」

 

「知らんがな」

 

 唐突に投げられた問いのキャッチボールに思わずストレートに返してしまった……

 

 むしろ、さっきが初対面だった人間の行動原理を何故、俺が知っていると思ったのか。

 

「おや、綾小路ボーイもようやく来たのかい。全く待ちくたびれてしまったよ」

 

「佐倉も忘れないでやってくれ」

 

 あっ……この人、誰に対してもこうなんだな。

 

 どうやら坂柳さんとは違った意味で、彼も唯我独尊を地でいく人間らしい。

 

 ……ますます、頭が痛くなるな、こりゃ。

 

「フッ、そういえば彼女もいたね。まあ、それはさておき……フム」

 

 高円寺と呼ばれた生徒は此方へと視線を向ける。

 

 まるで何かを見定めるかのような、或いは何かと比較しているような……そんな眼差しだ。

 

「Aクラスにリトルガールのナイトがいるというのは耳にしていたが……成る程、これは驚いたねぇ」

 

 リトルガール……成る程、坂柳さんの事か。

 

 そして、何か含みを持たせた笑みを浮かべながら彼は続ける。

 

「私はかつて、君と寸分違わずに同じ顔を見たことがあるよ。その彼は表向きはプロ野球の選手だった」

 

「そう……」

 

「だが、彼は若くして亡くなった。あのオオガミの弱小チームを日本一にした彼は、これからを期待されていた選手だったものだから、多くの業界がその死を嘆いていたよ」

 

「……高円寺?」

 

「まあ、黙って聞きたまえ。綾小路ボーイ。……だが、その数年後だ。亡くなった筈の彼を見たという声が散見されるようになった。それも他人の空似などではなく、果てには機械さえも彼本人だと判別したそうだ」

 

 ──ああ、成る程。彼は知っているのか。

 

 この世界の裏の顔を──陰謀と死にまみれた世界の本性を。

 

「で、どうなんだい? 君は彼なのかい? シープボーイ」

 

「……さあ? 少なくとも俺の人生でプロ野球はおろか、野球に関わる事なんてたまにしか無かったからね」

 

「おや、では君は誰かが造った紛い物なのかい?」

 

「生憎、高円寺さんが言う人の事を知らないから。なんとも言えないかな」

 

 俺の返答に高円寺さんはその笑みを更に深くする。

 

 初対面のインパクトもあったせいか、正直侮っていた。

 

 この高円寺という男、坂柳さんはおろか、綾小路さんにも比肩する──いや、場合によっては彼らさえも上回る人間だ。

 

 そして、高円寺……そういえばジャジメント傘下の企業に高円寺グループという組織があった記憶がある。

 

 となれば、ジャジメントの裏の顔についても理解があるのは当然か。

 

 端から見れば互いに睨み合っているようなこの状況──まさに─色触発とはこの事だろうか。

 

 だが、それは遅れてきた第三者によって破られた。

 

「あ、綾小路君……」

 

 木々の間から現れるもう一人──今度は眼鏡が特徴的な女子だった。

 

 はて……この娘の名前は知らないが、何処かで見たような気がするな。

 

「佐倉か……大丈夫か? だいぶ息があがっているぞ?」

 

「だ、大丈夫……」

 

 荒い呼吸と上気した顔からして、どう見ても大丈夫に見えないが。

 

 ……ああ、思い出した。確か俺が初めてDクラスを訪れた際にいたあの気弱そうな娘か。

 

「えっと……綾小路君……あの人って……前に……」

 

「ああ、Aクラスの篠坂だ」

 

「へ、へぇ……」

 

 そう言って彼女は綾小路さんの後ろへと下がる。

 

「……別にとって食おうとかそういうつもりは無いんだけど?」

 

「ご、こめんなさい……」

 

 いや、別に謝罪を求めてる訳じゃないんだけど……

 

 どうも、あの時と変わらず、気弱な気質はそのままのようだ。

 

 そしてその直後、高円寺さんが跳び上がり、木の上へ着地した。

 

「では、小休止は止めて進むとしよう! 残念な事に此処のスポットはこのシープボーイ達によって奪われてしまったようだからね!」

 

「高円寺。先行するのは良いが、迷ったら──」

 

「心配する事はない、綾小路ボーイ。この程度の森では迷う可能性は限りなく低い! まあ、 だからこそ多少、興味はあるがね!」

 

 そして、彼は隣の枝へと跳び移ると、此方へと振り返る。

 

「それとシープボーイ。君がナイトを務めるのは勝手だが、相応の覚悟はしておくことだ。()()()は酷く負けず嫌いだからね!」

 

「……覚えておくよ」

 

 あの方──彼が指す人物は一人しかいない。

 

「では、さらばだ! ハッハッハッ!!」

 

 そう高らかに宣言した彼は、再び森の中へ飛び込んでいった。

 

「……高円寺は時速何キロで跳び移ってるんだ?」

 

「ほ、ホントにスゴいね……高円寺君……」

 

 嵐のように現れて、嵐のように消えていったな……とはいえ、侮れない圧倒的な個人でもある。

 

「二人も彼を追いかけた方が良いんじゃない? 東の方へ跳んでいったけど、あの調子だとすぐに進路を変えちゃうと思うよ」

 

「……だろうな。佐倉、俺達もすぐに追おう」

 

「う、うん……」

 

 そして、彼らも遠くからする高笑いの方へと歩を進めていく。

 

 だが、ふと一人の足が止まる──綾小路さんだ。

 

「篠坂。俺は以前にお前に聞いたな。お前は何者なのかと」

 

「聞いたね」

 

「今だからこそもう一度、お前に聞く。()()()()()なんだ?」

 

「ただの()()()さ。あの時と変わらずね」

 

 無論、綾小路さんが求めている答えではない事は分かっている。

 

 これはあくまで俺が出来るせめてもの線引き──この内側に入れば生命の保証はない。

 

 刹那の沈黙──それはすぐ先行した彼女によって破られた。

 

「あ、綾小路君? どうかしたの?」

 

「……いや、悪い。すぐに行く」

 

 そして、綾小路さんも木々の間へ駆けていく。

 

 遠くからする高笑いを追って、彼らは森の中へ消えていった。

 

「はぁ……もう出てきて大丈夫だよ」

 

「……ホント、アンタって変なヤツばっか呼び寄せるわよね」

 

「失礼だな。別に意図してやってる訳じゃないんだけど?」

 

「なおさらタチが悪いわよ」

 

 此方はこれっぽっちも悪いことをしてないのに、この言われようである……弁護士は何処か。

 

「……リトルガール。フフッ、そうですか……そうですか……」

 

 坂柳さんも彼女は彼女で、高円寺さんが言った言葉を復唱し続けていた。

 

 いつものように微笑んではいるものの、その目は笑うどころか、ピクリとも動かない。

 

 ……この状態の坂柳さんはマズい。超が付くレベルでのご立腹の時の笑みだ。

 

「……」

 

 傍らの神室さんが目配せで、どうにかしろと見てくるが、もはやどうしろと言うのだ。

 

 こうなった場合の対処法は1つ──落ち着くまで放っておくに限る。

 

 考えても見て欲しい、此処にいる面々が彼女を(なだ)める事が出来るような話術を持っていると思いだろうか? 

 

 少なくとも、俺が何か言ったら10倍返しと言わんばかりの毒舌が飛んでくる。

 

 その為、こちらから手を出さない方が、かえって安全なのである。

 

「はぁ……坂柳はとりあえず放っておくとして……で、どう? Dのリーダーはいそう?」

 

「いや、少なくともあの面々は違うね。やけに諦めが良かったのもあるし、あの面子じゃアンバランスも良いところだしね」

 

「まあ、一人が色物過ぎるしね……」

 

「それに佐倉さん……だったか。彼女以外には神室さん達が隠れてるのバレてたみたいだしね」

 

「ウソ……アタシら、一度も顔を出してないわよ?」

 

「普通に状況から察したんでしょ。探索中に一人でいるなんて普通に考えてもあり得ないんだし」

 

 それにリトルガール煽りが特効過ぎて、もう呪詛を吐きそうな勢いの人もいるのだ。

 

 無理に隠そうとしても、普通にバレただろう。

 

 ともあれ、バレてたと言っても、このままDクラスが俺、若しくはこの二人をリーダーと認識してくれるなら其で結構。

 

 リーダー当てに対するカウンターを仕込むことが出来たのだから、上々の結果だ。

 

 無論、鵜呑みにしなくても、Dクラスは交代後のリーダーを当てるのは困難であることに変わりはない。

 

 どっちに転んでも、Aクラスに被害はない──そう、クラス自体には。

 

「……フフッ」

 

 ……ところで、俺はこの今にも人を呪い殺しそうな負のオーラを纏ってる彼女を背負わなくてはならないのか? 

 

 というか、どんだけリトルガール呼びされたのが屈辱的だったんだ。

 

 俺なんか初手、パワプロボーイだぞ? そこはパワポケだろ。

 

 タバコと葉巻が違うように、パワプロとパワポケも違うものであるのは自然の摂理なのだ。

 

 そして、彼はオオガミとジャジメント──その裏の顔の存在について知っている。

 

 いや、それどころか坂柳さんがジャジメントに狙われたこと、高育にジャジメントが干渉していること気付いていると見て良い。

 

 5月のあの日から、特に目立った干渉は無かった。

 

 だが、彼はこう言っていた──()()()()()()()()()()()だと。

 

 それは彼の思い通りにならなかった事に対するのか、それとも或いは──

 

 そして、この島にあった旧ジャジメントの研究施設と時折、響き渡る謎の呻き声。

 

 特に後者については、その音が何故か頭の中にまで響いてくるような感覚に襲われる。

 

 それも聴覚というより、脳そのものに直接呼び掛けられるような……極めて不快な感覚だ。

 

「はぁ……ったく、仕方がないわね。ほら、坂柳も一旦、帰るわよ。Dクラスには今度、やり返せばいいでしょ?」

 

「……そうですね。恥ずかしながら取り乱しました、申し訳ありません」

 

 お互いに物思いに耽っていた傍ら、神室さんが坂柳さんの肩を揺らす。

 

 流石に彼女も我に返ったのか、少し驚いた表情が浮かぶ。

 

 流石、神室さん。なんだかんだで坂柳さんの取り扱い方を心得ていらっしゃる。

 

 少なくとも、神室さんのおかげで、俺が帰りに毒舌の応酬を受けずに済む。

 

「……まあ、あまりとやかくは言えないけど、成長は何であれ、個人差はあるものだからね。小さいことを悲観する事は無いんじゃないかな?」

 

「ちょっ、アンタ……!」

 

 ──故事に『蛇足』という言葉がある。

 

 本来、蛇という分類の生物に足というものは存在しない。

 

 それ故にいざ蛇を書き下ろす際に、足を書き加える行為はなど全くの無駄である。

 

 つまりは不要なものや、付け加える必要のない余計なこと、無駄な行為を意味する言葉だ。

 

「……慎君」

 

 ……あれ? おかしいな。なんで坂柳さんはこんな黒いオーラを纏ってるのかな? 

 

 そして、傍らの神室さんも最早、呆れを通り越して、諦観したような表情を浮かべていた。

 

 どうやら取り返しの付かないことを、俺はやらかしてしまったらしい。

 

 ……諸君らに問おう。この状況からでも入れる保険はあるだろうか? 

 

「──慎君。其処に座ってください」

 

「えっ? あっ……いや……でも、そろそろ戻らないと」

 

「慎君」

 

「はい、すみませんでした。座らせていただきます」

 

 その瞬間、彼は思い知った。

 

 彼女を怒らせた時の恐怖を。

 

 ……女性のコンプレックスをぶち抜いた浅はかさを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む、篠坂達もようやく戻ったか……どうした? 何かあったのか?」

 

「フフッ、特に何もありませんでしたよ。ですよね? 慎君」

 

「ハイナニモアリマセンデシタ」

 

「そ、そうか……だが、篠坂はどうしたんだ?」

 

「何もありませんでしたよ?」

 

「ハイナニモアリマセンデシタ」

 

「あっ、そうでした。スポットを更新した後、Dクラスの方と遭遇しました。彼らも近辺にまで足を伸ばしているようです」

 

「そうか……だが、拠点の近辺は既に我々が押さえている。大きな影響にはならないだろう」

 

「でしょうね。少なくとも、彼らは私達が占有したエリアに沿って迂回を強いられるでしょう」

 

「それで、彼らのリーダーらしき生徒はいたか?」

 

「いえ、スポットが既に占有されていると分かり次第、すぐに移動してしまったので、残念ながら外れでしょう」

 

「そうか」

 

 そう言った葛城さんからは、ほんの少しの落胆を感じた。

 

「さて、戻ってきたばかりで申し訳ないが、少し相談したい事がある」

 

「構いませんよ。如何されましたか?」

 

「助かる。そうならば実際に立ち会ってくれた方が早いな。付いてきてくれ」

 

 そう言って葛城さんは洞窟の中の大テントへと向かっていく。

 

 ……なんだろう。物凄く面倒な事が待ってる──そんな確信のような直感がある。

 

 そして、彼に案内されるままに、俺達もテントをくぐった。

 

 決して広くはないテントの中、一人の生徒がまるで王様のように我が物顔で座っている。

 

「よお、久しぶりだな。親衛隊さんよ」

 

 その人物こそ、自称Cクラスの王こと──龍園翔、その人だった。

 

 複雑な表情を浮かべる葛城さん、威圧的に微笑む坂柳さん──その傍らで俺は溜め息を吐く。

 

 頭痛の種が増えた……と、俺の小さな呟きに反応する者はいなかった。

 

 

 

 






いつもの雑段コーナー


「相変わらず出番がありません。ミーナです」

出たいですか? なら、海をどうにか渡ってきて下さい。

というか、原作でもそうだったけど高円寺さんの身体能力異次元過ぎて扱いに困るのなんの……

あの人、一人で猪を仕留めるくらいですからね?

「ちなみに野生の猪とか鹿とかって、必ずとも言っても良いくらいにマダニが付いてるそうですよ」

まあ、野生だし多少はね……皆さんも野生の動物には無闇に触らない事をオススメします。

それでは質問に行きましょう。

『夜のスポットはどうしてるのか?』

篠坂さん、坂柳さん、神室さんのペアで更新していってます。

特に篠坂さんの場合、夜間の移動も特に問題は無いので。

「便利ですね……サイボーグ手術ってどれくらいの改造が出来るんでしょうね?」

原作でも心臓をポンプに交換してたり、脳をコンピューターに置き換えたりとか、色々な種類がありましたね。

「ちなみに潜入型のサイボーグ1体を配置するまでのコストは諸々の経費を差し引いても4億、装甲型にいたっては製造だけで12億は掛かるとのことです」

下手したら戦車よりも高い金額の兵士がポンポン死んでいくんてすからね……経理の人は発狂も良いところです。

「これでも量産化してコストを下げたという話ですからね……」

11のあるイベントでサイボーグが大量に戦死した時、責任者が──したそうです。

そんなわけで、皆さんもお金は大切にいたしましょう。

「それではまた次回、お会いしましょう!」
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