なんか原作に存在しない組織の実験体として転生した件 作:マジカルバーバリアン
──ああ、そうか。
俺は、このまま死ぬんだな。
天井のしみを見つめながら、ぼんやりと思った。
熱に浮かされ、咳ももう出ない。
何度パワースポットと呼ばれる場所に行こうとも秘境の地に赴こうとも幻想と呼ばれるものに出会うことはなかった。
この世界には、魔法も異能もなかった。
それでも、信じたかった。
ファンタジーが現実にあるという夢を。
手を伸ばせば、届く場所に奇跡があるという希望を。
けれど──何もなかった。
目を閉じる瞬間、最後に浮かんだのは「叶わなかった」という悔しさだった。
次に目を覚ましたとき、俺は冷たいシーツの上にいた。
白い天井、蛍光灯の明かり。耳に刺さるような静けさ。
赤子の体。だけど、意識ははっきりしていた。
──まさか、転生した?
思い出す。何度も読み返した漫画達を
これは夢か、それとも──
も──
「祝福の子A-9、状態正常。魂の輝きは清く在り。さらなる試練をお与えしますように──神の意志に従い、力を引き出しましょう」
祈りのような言葉に、どこか異様な熱がこもった声が響く。
この場所は、“教団”だった。
俺の管理番号はA-9。
けれど、信者達には「祝福の子アーク」と呼ばれている。
ここは、ある操作系能力者が教祖となって築いた新興宗教の“聖域”。
救世の力よって人を導く──などと信者たちは言っていたが、
実態はただの子供兵の育成施設だった。
俺がここが「HUNTER×HUNTER」の世界だと気づいたのは最初にこの言葉を聞いた時だった。
「この子らは、やがて十老頭の陰獣をも超え、ゾルディック家すらも葬る。神の兵に相応しい力を授けよ」それを聞いた瞬間、全身に寒気が走った。
どこかで聞いたことのある名前。いや、忘れるはずがない。
陰獣、ゾルディック家──
そう、あの漫画の中で語られていた、念の使い手達だ。
ただの偶然か? そう思おうとした。
けれど、祈りに紛れた「纏」や「練」という言葉、
信者たちの歪んだオーラの扱い方。
そして、自分の中を巡る目に見えない力─
……気づけば確信に変わっていた。
ここは、間違いなくあの世界だ。
教祖は、自分の能力に酔っていた。
「人の心すら操れる俺こそが選ばれし存在」
「私はこの世界を支配する器である。」
そんな妄想を語りながら、教祖は何人かの念能力者を操作し、傀儡として従わせていた。
彼の能力は、対象の意志に介入し、記憶ごと“信仰”を植えつける異常な操作系。
自らの力に酔い、その支配の輪を広げることが、まるで“神の義務”であるかのように振る舞っていた。
支配された念能力者たちは、布教者として動かされた。市井に紛れ込み、力なき一般市民に“奇跡”を見せ、恐れと救済の皮をかぶせて信仰を植え付ける。
そして、洗脳された市民たちは、やがて“子供”を神への供物として差し出す。
「この子は選ばれた存在です」と涙ながらに笑いながら、我が子を送り出す者もいた。
それだけではない。
教祖の支配が届かぬ者に対しては、念で強制的に洗脳した上で連れ去り、育成候補として“聖域”に送り込む。
こうして、“聖域”には日々子供が送り込まれた。攫われた子、信者に“神への供物”として差し出された子。
名前も戸籍も剥がされ、「選ばれた命」として教祖のもとへ集められる。
到着した子供たちは、すぐに“聖別の儀”と呼ばれる処置を受ける。
教祖の念が直接浴びせられ、「精孔」を強引にこじ開けられる。
運が良ければ、念に目覚める。
悪ければ──そのまま命を落とす。
運よく生き延びた者だけが、訓練対象=Bシリーズとなる。
彼らは「選ばれし戦士」とされ、選別された兵士の卵だ。
一方、Aシリーズは扱いが違った。
教祖の操作下にある念能力者同士を掛け合わせて生まれた、祝福されし器──それがA。貴重な存在である彼らには、聖別のような粗暴な儀式は施されない。
教祖の発により操作され慎重に、確実に、精孔を開いて導く。操作の制御下で念に目覚めるAは、組織の“聖なる希望”として扱われる。だが、念に目覚めた時点で、全員が同じ施設の中にいた。
神の名を語る者に命を握られ、生き残るためだけに念を研ぎ澄ませていく──
それが俺たちだった。
実際に書いてみて、文字数を増やすことの難しさを初めて実感しました。
伝えたいことを膨らませるのって、想像以上に大変ですね……。