なんか原作に存在しない組織の実験体として転生した件   作:マジカルバーバリアン

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ちょっと文章が変だったらすみません。


第2話:シンコウ×ト×シンライ

訓練は、狂気じみており洗脳と何ら変わりなかった。

 

 

 

「我が内に流れる神気を意識せよ」

 

「神の御力を肌に宿す。それが“纏”」

 

「周囲に満ちる神気に心を澄ませよ。これぞ“円”の初歩」

 

 

 

訓練場には、オーラではなく“加護”という言葉が飛び交っていた。

 

“練”は「信仰心の集束」、“絶”は「不信の祓い」。

 

すべてが宗教用語にすり替えられ、技術ではなく信仰として刷り込まれていた。

 

 

 

だが、その理論は曖昧で、非効率だった。

 

職員──いや、信者たちは教本通りに唱えるだけ。

 

オーラの流れや系統の理解にはまるで届いていない。

 

 

 

効率などという概念は存在しない。

 

だが、“ゾルディック家を超える”という教祖の言葉が、それを正当化していた。

 

 

 

武器を持たされ、殴り合い、潰し合う。

 

手加減をすれば“信仰が足りない”と罵られ、意識を失えば“加護を失った”と切り捨てられる。

 

傷つき横たわっていても、誰も止めない。

 

 

 

「殺す力を持たぬ者に、救う資格はない」──それが、この教団の教えだった。

 

 

 

生き残るためには、殺すしかなかった。

 

殺すことは、“正しい行い”として教え込まれていた。

 

 

 

それでも、子供たちは熱心に祈る。

 

自分が選ばれた存在だと信じこんで、あるいはそう思いたくて。

 

 

 

俺は、違った。

 

転生者として、俺には前の世界の記憶があった。

 

 

 

“念”とは何か。

 

それがどれほど危うく、深く、美しいものか。だからこそ、怖かった。

 

この狂気の“信仰”の中で、念が歪められていくことが。

 

 

 

でも、同時に思った。

 

──この場所で力を得れば、生き延びられる。

 

そしていつか、ここから抜け出せるかもしれない。

 

 

 

────────────

 

 

 

ある日、訓練の後、俺の前に少女が現れた。

 

 

 

「ねぇ、アークって、名前……ほんとの?」

 

 

 

「さあな。A-9をもじっただけだろう。でも、“祝福された子”らしいだろ?」

 

 

 

薄汚れた金髪の彼女は微笑んだ。

 

 

 

「私はね、ノア。箱舟って意味なんだって。

 

この世界が沈んでも、誰かを運べるって。

 

……そんな風に、なれたらいいなって思って両親がつけてくれたんだ。」

 

 

 

ノア──どこかの家から攫われてきたBシリーズの一人。

 

けれど、珍しく先天的に念能力の行使ができる

 

Aシリーズと遜色ない才能の持ち主だ。

 

攫われてきたためか洗脳が浅く彼女にはまだ“自我”が残っていた。

 

 

 

俺と彼女は、数少ない“考える者”同士として、言葉を交わすようになった。

 

 

 

訓練は、相変わらず狂気じみていた。

 

 

 

「神気を集め、“纏”を固めよ。信仰を薄めるな」

 

「精神のゆらぎは“不信”の兆し。祓いを受けろ」

 

「神の御力を知覚せよ。それが“円”の第一歩」

 

 

 

意味のない祈りの言葉が、訓練場にこだまする。

 

オーラという言葉は使われず、“加護”と呼ばれていた。

 

子供たちは、信じるように強いられている。

 

 

 

信じれば力が宿る。

 

そう教えられた小さな背中たちが、真剣に祈り、汗を流していた。

 

 

 

だが――

 

“それじゃ届かない”

 

 

 

俺は知っていた。

 

正しい纏とは何か。

 

練とはどう構築されるのか。

 

念の四大行とはどういう順序で学ばれるべきか。

 

 

 

この聖域で唯一、誰より正確に“念”を理解しているのが、

 

たぶん今この瞬間──俺だ。

 

 

 

────────────

 

 

 

夜。

 

訓練の終わった後、物資倉庫の裏で俺は一人、呼吸を整える。

 

静かに目を閉じ、オーラの流れを意識する。

 

 

 

体の中心。腹の奥で渦巻く“命の熱”が、波紋のように広がっていく。

 

全身を巡り、皮膚の下に纏わりつくような、独特の圧力。

 

 

 

「……これが、“纏”。本当の」

 

 

 

教えられたままのやり方では決して辿り着けない、“本物”の念。

 

何日もかけて感覚を掴んだそれは、俺の中に確かに根付き始めていた。

 

 

 

「……アーク? 今、何してたの?」

 

 

 

気配に気づいて顔を上げると、ノアがいた。

 

夜風に揺れる薄い金髪が、月光を帯びて白く見えた。

 

 

 

「“纏”……だったよね? 今、私、何か感じた」

 

 

 

「……たぶん、偶然だよ。夢で見た気がして、やってみただけ」

 

 

 

「夢……?」

 

 

 

ノアはじっと俺を見つめる。

 

何かを見透かすような目。

 

けれど、問い詰めたりはしなかった。

 

 

 

「ねえ、もう一度やってみて。

 

さっきの、私もやってみたい」

 

 

 

その声は、どこか嬉しそうだった。

 

 

 

────────────

 

 

 

翌日から、ノアは訓練の合間によく俺に声をかけてくるようになった。

 

表向きは祈りの復唱。でも、小声で「昨日のやつ、合ってる?」と囁いてくる。

 

 

 

まるで、二人だけの秘密の呪文だ。

 

 

 

教祖に見つかれば、罰どころでは済まない。

 

……はずなのだが。

 

 

 

実のところ、教祖本人がこの施設に姿を現すことはめったにない。

 

表向きは「祈りの巡礼」などと信者には説明されているが、

 

実際は外の宗教拠点で、“神の気まぐれ”と称して遊び惚けているらしい。

 

信者の噂話でそう聞いた。

 

 

 

念にはそれなりに精通しているようだが、

 

この訓練場に現れるのは、月に一度あるかないか。

 

結局、この“聖域”も、神の気まぐれで転がされているにすぎない。

 

 

 

だから、夜の片隅で“本当の念”を練習したところで、誰にも咎められない。

 

信者たちは教本の丸暗記に夢中で、俺たちのオーラの流れなんて気にも留めていない。

 

 

 

明らかに違反行為だったが、ノアは怯えなかった。

 

むしろ、楽しんでいるようだった。

 

 

 

「なんだか、ここが“全部”じゃないって思えるの。

 

……それって、変かな?」

 

 

 

「いや。……そう思ってるの、俺もだよ」

 

 

 

互いに言葉は少なかったが、その分だけ、気持ちはよく伝わった。

 

この場所で、誰にも見せられない“何か”を共有している。

 

 

 

そんな関係が、少しずつ出来上がりつつあった。

 

 

 

夜。独りで“纏”の練習をしていたはずなのに、

 

いつの間にか隣にノアがいるのが、当たり前になっていた。

 

 

 

彼女の念は、柔らかく、澄んでいる。

 

歪な信仰に染まっていない。

 

まるで、“最初から念を知っていたかのような”感覚。

 

 

 

それが――少し羨ましいと思った。

 

 

 

そして、だからこそ守りたいと思った。

 

この子が、ちゃんと“外の空”を見られるように。

 

俺は、この力を自分のためだけに使うつもりはなかった。

 

 

 

「アーク、また夢で何か見たら、教えてね」

 

 

 

ノアのその言葉が、

 

嘘を肯定してくれたような気がした。

 

 

 

俺は黙って、小さく頷いた。




読んでくださってありがとうございます。
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