なんか原作に存在しない組織の実験体として転生した件   作:マジカルバーバリアン

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小説書くの面白いけど難しいです。


第4話:セイゾン×ノ×キボウ

「祓いの訓練、開始──」

 

白衣を纏った信者が鐘を鳴らす。

乾いた音が訓練場に響き渡ると、十数人の子供たちが、一斉に構えを取った。

 

AとBの混成グループ。

オーラを纏った拳、ナイフ、木製の短杖。

手段は問われない。ただ、倒せ。潰せ。叩き伏せろ。

 

対面に立つのは、B-22──“狂犬”と呼ばれる少年。

白目を剥き、歯をむき出して笑っている。

 

俺は深く息を吸い、“練”の構えをとった。

全身にオーラを巡らせ、必要最低限の出力で抑え込む。

 

「A-9、進行せよ!」

 

掛け声と同時に、B-22が地を蹴った。

オーラをまとった拳が、空気を裂いて迫ってくる。

 

速い。だが、読める。

 

俺は腰を落とし、踏み込みと同時に“凝”を目に集中。

 

──見える。

 

肩の動き、肘の角度、重心の軌道。

オーラの濃度が偏っている。腹を狙った直線的な突きだ。

 

間一髪で軌道を外し、右拳で脇腹を狙う。

 

ガッ──!

 

鈍い衝撃とともに、俺の拳が少年の肋骨を叩く。

吐息と涎が飛び、B-22の身体が半歩よろけた。

 

だが、それでも止まらない。

 

「アァァッ!!」

 

彼の手から、小さな刃が出る。

指の間に差し込まれた細い金属片。規格外の凶器。

 

俺はとっさに“堅”を全身に巡らせ、防御を固める。

 

ザッ!

 

刃はかすった。

上腕に浅い切り傷が走る。

 

熱い痛みとともに、血の臭いが立ち上った。

 

だが、すでにカウンターの構えはできていた。

 

「はっ!」

 

俺は膝を踏み込ませ、勢いを殺さず脇腹へ肘を叩き込む。

骨が鈍くきしむ音とともに、少年の意識が抜け落ちた。

 

その場に崩れ落ちる“狂犬”。

訓練場に、静かなざわめきが広がる。

 

「A-9、制圧完了」

 

 

 

────────────

 

 

 

「お前たちは、神の刃だ」

「今後、我らの“信仰”を拡げるためには──異端を祓う“役目”が必要となる」

 

訓練後、神殿と呼ばれる講堂での集会。

信者たちの前に立った導師が、そう告げた。

 

異端。祓い。伝導。

 

その言葉の裏にあるものは、あまりにも明白だった。

 

──殺し。

この教団に逆らう者を、処理する“実戦”の始まりだ。

 

「最初の“祓いの巡礼”に出るのは、神より選ばれし祝福の子──A-9である」

 

信者たちが、一斉に俺を見た。

 

祈りと狂気の混じった瞳。

祝福ではない。これは“呪い”だ。

 

 

 

────────────

 

 

 

 

その夜、ノアと二人、いつもの物資倉庫の裏で座り込んでいた。

月は満ちかけ。光が強く、影が濃い。

 

ノアは壁にもたれ、じっと地面を見ていた。

いつもより口数が少ない。

俺も黙っていたが、空気の重さは増していた。

 

やがて、ノアが小さく口を開く。

 

「……アーク、やっぱり行くんだね」

 

「行くしかないだろ。命令だからな」

 

「そうだけど……」

 

ノアは言葉を切った。

握った拳が、かすかに震えていた。

 

「……怖くないの?」

 

「怖いよ。そりゃ、当然だろ。

でも……怖いからって止まっても、何も変わらない」

 

「殺さなきゃいけないんだよ?」

 

「たぶん、そうだろうな。

でも、殺さなきゃ生きられないなら──俺は、生きる方を選ぶ」

 

ノアはぎゅっと膝を抱えた。

 

「……そんなの、普通じゃないよ」

 

「ここが普通じゃないんだ。

“神の加護”とか“祓いの巡礼”とか、聞こえは立派だけど──

要は、都合よく使われるだけだ」

 

「じゃあ、なんで笑ってるの。強がってるの?」

 

俺は肩をすくめて、わざと皮肉めいた笑みを返した。

 

「強がらないと、崩れるからな」

 

しばらく沈黙が落ちた。

夜風が吹き抜け、埃が舞った。

 

やがて、ノアがぽつりとつぶやく。

 

「……帰ってきてね」

 

「絶対に」

 

「ほんとに?」

 

「戻る。俺が決めた。

戻って……それで終わりにしない。

自由になるんだ。ノアと、一緒に」

 

ノアが顔を上げた。

その目は赤くなっていたが、まっすぐ俺を見ていた。

 

「……じゃあ、私もここで待ってる。

……じゃなくて、迎えにきて」

 

「当然だ。むしろ、迎えに行かなきゃ、意味がない」

 

「うん……じゃあ、信じる。信じるから」

 

ノアは、俺の袖をそっと握った。

 

「絶対に、生きて。絶対にだよ」

 

「……ああ。

生き延びて、必ずあの空の下へ連れて行く」

 

月明かりが、彼女の金髪を白く照らしていた。

その光を、俺は決して忘れない。

 

 

 

────────────

 

 

 

このままじゃ、逃げきれない。

 

この教団には、すでに実験時含め念能力者がが数十人規模で存在している。

操作・変化・放出・具現化──

中には、独自の“発”を持つ連中もいる。

 

逃げるには、対等な力が必要だ。

いや、人数の差を覆す“決定的な何か”が必要だ。

 

俺は拳を見つめた。

血が乾き、皮膚に張りついている。

 

 

 

────────────

 

 

 

「……“発”を作る」

 

静かに、そう呟いた。

 

ノアが隣で、じっと俺を見ていた。

その表情は、何も言わなかったけれど──

その目は、確かに期待していた。

 

俺は目を閉じ、前の世界の記憶を呼び起こす。

病室の中で、飽きるほど読んだ漫画。

異能力、魔術、超常現象。

非現実に、どこまでも憧れていたあの頃。

 

“数を制するには、相手以上の“数”か、“質”が必要

 

強大な力を持つ敵に、主人公が打ち勝つとき。

それは必ず、戦術的優位があった。

 

一体を倒して終わりではない。

倒した相手を「資源」として転用するような能力。

戦うたびに“自分自身が強くなる”システム。

 

──それだ。

 

この世界に、どう落とし込める?

 

念には“制約”と“誓約”がある。

自身に制限を課すことで、能力の爆発力を高められる。

だからこそ、他人の技や力を無制限に模倣することはできない。

 

けれど──

 

“殺す”という明確な制約を起点にすれば?

「自らがトドメを刺すこと」を条件とすれば?

奪うのではなく、“殺害した者の生命エネルギー”を媒体にすることで、

この世界の理に背かず“使役”できるのではないか。

 

死の間際に放出された生命エネルギーを、

念として編み上げ──

“念獣”として使役する。

 

使役者の能力の系統や個性が強いほど、

念獣としての“質”も高まる。

 

実現すれば、

敵を倒すたびに“戦力”が増していく。

しかも、念能力者である信者を相手取るなら、

一体ごとに新たな“能力”を得る可能性すらある。

 

──それなら。

 

この教団から、ノアと共に逃げ切る道が、見える。

 

「殺すこと」を代償に、

「生き延びること」と「仲間を守る力」を得る。

 

決して軽くない。

だが、この世界で生き延びるためには、背負わなきゃいけない重さだと――もう、覚悟は決めていた。

 

 

 

──────

 

 

 

俺は、前世の知識と、この世界の理を照らし合わせながら、

“力”の形を組み立てていく。

 

戦って、殺して、その生命エネルギーを“念”として取り込み、

形にする。

 

そうすれば──生き延びるたびに、俺は強くなれる。

 

俺が生み出そうとしている能力は、

“念獣操術”。

 

殺した相手の生命エネルギーを念として抽出し、

念獣として具現化し、支配下に置く。

 

その念獣は、殺した相手が強ければ強いほど、より強力になり、

念能力者を倒し具現化した念獣は発を持つ。

 

さらに──

念獣を念の塊に還元し、放出系の“念弾”として放つこともできる。

だがその場合、念獣は“弾”となって消滅する。

一撃必殺の選択肢。代償は、存在の喪失。

 

呪霊を操り、自らの兵として使役する──

『呪術廻戦』に登場した、夏油傑。あのキャラに似た力を念で再現する。

 

ただし、これは呪術じゃない。

この世界は“念”だ。呪いではなく、生命と意思のエネルギーが力になる世界。

 

だからこそ、“模倣”ではない、“落とし込み”が必要だった。

そして──

相応の力を得るには、それに見合う覚悟と、制約が必要になる。

 

──まず第一に、

俺自身がトドメを刺した生命でなければ、念獣は生まれない。

他人の戦果や偶然の死では意味がない。

命を奪う“責任”を自分で背負ったときだけ、その力を得る。

 

──第二に、

生まれた念獣は鍛えることも、成長することもできない。

固定された強さのまま、倒したときのまま、永遠に変わらない。

 

──そして最後に、

破壊された念獣は、二度と戻ってこない。

消えた命はもう帰らない。その“重み”から逃げることは許されない。

 

この能力は、

かつて憧れた“あのキャラ”のような力を、自分の手で形にした原点であり、

この歪んだ世界で生き延びるための現実的な武器であり、

そして――

奪った命に意味を与える、俺なりの祈りでもある。

 

力を振るうたび、思い出すだろう。

その命に、刃を向けた自分自身のことを。

 

だからこそ──これは、俺にしか扱えない念能力だ。




読んでいただきありがとうございます。
次の話は27日の20時30分予定です。
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