なんか原作に存在しない組織の実験体として転生した件 作:マジカルバーバリアン
温かく見守ってもらえると嬉しいです。
任務当日。
訓練場の鐘が、夜明け前の静寂を破った。
それは祈りでも、祝福でもない。
ただの“出撃命令”だ。
俺は昨日、正式に「祓いの巡礼」の任を言い渡された。
異端の村へ向かい、そこに潜伏する“信仰背反者”を粛清する──
それが、俺に与えられた初めての殺しの命令だった。
────────────
夜明け直後、村の外れにある祈祷馬車前。
俺の前には、黒衣の信者戦士が二人。
布で顔を覆い、細身の槍や短剣を持っている。
だが、その雰囲気には、どこか“素人臭さ”があった。
──才能のない大人。
彼らは俺たち“祝福の子”とは違い、大人になってから教団に救済された者たち。
強引に精孔を開けられ、最低限の念だけを身につけ、
神の刃として“選ばれた”と信じ込まされている。
その技術も経験も、正直低い。
けれど、信仰だけは本物だった。
「……おいおい、ピコ。見ろよ、これが“特質系”だとよ」
皮肉交じりに言ったのは、長身の男──ヤナ。
口元には笑みを貼りつけているが、その声には明確な棘があった。
「教祖様のお気に入りってやつか? いいなぁ、才能あるってだけで“祝福”扱いだなんてよ」
隣にいた無表情の女、ピコが淡々と返す。
「その分、責任も重いということでしょう。私たちは“導かれた者”、彼は“造られた器”。違うだけです」
ヤナが舌打ちした。
「出たよ、ピコの正論。……ちっ、でもよ、気に食わねぇもんは気に食わねぇんだよ」
「言いたいことも言えねぇってのかよ。“浄化”されんのが怖ぇっての?」
ピコは目を細め、じっと俺を見つめた。
その視線は、羨望でも恐れでもなく、ただ“値踏み”するような冷たさを帯びていた。
「……祝福の子。私たちとは、格が違うんでしょう?」
その言葉に、俺は淡々と返す。
「違うのは、祝福じゃなくて──才能と育て方だ」
沈黙が落ちた。
ヤナが鼻を鳴らし、ピコは視線を外した。
だが、それ以上の言葉はなかった。
それでいい。
どうせ、信仰の深さでは争えない。
俺はただ、生き残るためにこの“仕事”をこなすだけだ。
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祈祷馬車は森の奥を抜け、やがて止まった。
運び手の信者が口を開く。
「……ここからは徒歩です。“穢れた村”に神気を持ち込むには、直接の歩みが必要ですので」
建前はどうあれ、これは逃亡を防ぐためだ。
俺たちは静かに歩き出す。
土の匂い。風に揺れる枝の音。
施設では感じられなかった“自然の気配”が、ここにはあった。
ふと、木々の間から古びた家屋が見える。
「……あれが対象の村か」
朽ちかけた民家、荒れた畑。中央には石造りの礼拝堂のような建物。
人気はある。だが開放的ではない。
明らかに、外部を警戒している気配。
「対象は三種。教祖の首を狙うアマチュアハンター。
それをかくまっている村の信者たち。
そのことに気づかなかった者たちも同罪です。
信仰を捨てた裏切り者たちには生きている価値がありません。」
ピコが淡々と告げた。
ヤナは肩をすくめ、槍を立てる。
「ま、神の敵に慈悲は無用ってわけだ」
俺は、深く息を吐き、左手の森影から村へ踏み込む。
──命令を遂行する。それだけだ。
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戦闘は、突然始まった。
村に足を踏み入れた瞬間、子供を抱いた女が逃げ出す。
ヤナは無言で槍を振り、女の胸を貫いた。
血飛沫が、地面を赤く染める。
子供が泣き叫ぶ。
ピコは躊躇なくナイフを投げ、声を止めた。
──ただの、一般人だった。
「……っ」
俺は、手を止めてしまった。
いや、心が止まった。
だが──殺さなければ。
生き残るために。
震える手で拳を構え、祈りを捧げていた老人を──潰した。
ピコがこちらを見ていた。
その目には、驚きでも軽蔑でもない。
ただ、“観察”の色だけがあった。
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そのとき、村の裏手から気配が殺到した。
「接敵、複数……あれは──」
現れたのは、アマチュアハンターたちだった。装備は整っていて、いかにも“狩る”ための準備をしてきたとわかる。
念にはまだ目覚めていないが、動きには無駄がなく、場数を踏んだ戦闘経験がにじんでいる。
だが──俺たちの“標的”であることに、変わりはなかった。
「“浄化”開始!」
ヤナが叫び、先陣を切る。
槍を肩に担ぎながら、ヤナは笑っていた。まるで狩りに出る獣のように、その目はぎらついている。
「ピコ、お前も楽しめよ。今日の“浄化”は当たりだぜ」
「……黙って、やるだけ」
ピコが淡々と応じ、その後に続く。
俺も──拳を握った。
────戦闘開始。
殺す。
殺す。
殺す。
念を知らぬ者は、ただの的だった。
だがそのとき、空気が変わった。
一人、アマチュアたちを指揮していた男が姿を現す。
そのオーラの“質”が違った。
──これは、プロか?
「外道どもが……子供を使うとはな」
「信仰を盾にして、罪なき者を殺すか」
「“神の敵”に、情けは不要だ」ヤナが笑う。
だが、次の瞬間。
ヤナの体が吹き飛んだ。
「っ……! ヤナが──」
ピコが距離をとる。
俺は、練を高めながら男の動きを見つめた。
……速い。
一手、一手が洗練されている。
念の操作も見事だ。
技術は──俺と同格か、それ以上。
けれど、その“差”が重くのしかかる。
経験の差が、行動の精度に出ている。
反応、誘導、間合いの潰し方──
“このままじゃ負ける”
──それでも俺は踏み込んだ。
拳と拳がぶつかり合う。
肘を捌かれ、脇腹を狙われる。
反射的に“堅”を展開し、受け流す。
が、次の瞬間には背後に回られていた。
「甘い」
男の声と同時に、蹴りが背に突き刺さる。
体が跳ね、地面を転がった。
だが──まだ終わらない。
そのとき、足元に転がる死体が目に入った。
さっき、俺が殺したアマチュアハンター。
──使える。
俺は、念を練り上げ、想像する。
俺が消滅させた生命エネルギー。
それを“念”として束ねる。
具現化し、形にする。
「来い──俺の“発”」
念が、渦を巻く。
死者の気配と共鳴する。
──念獣、顕現。
そこに現れたのは、歪な形をした獣のような念体。
その形は、どこか人の面影を残しながらも、歪に捻じ曲がっていた。
肩は異様に張り出し、腕は不釣り合いに長く、足は獣のように逆関節で折れ曲がっている。
目元には何もなく、ただぽっかりと闇が空いているだけ。
「行け」
念獣が咆哮とともに、プロハンターに襲いかかる。
「三対一……だが、卑怯と言ってくれるなよ」
「クッ……!」
プロハンターは跳躍して念獣の攻撃を回避し、地面に手をつく──その瞬間、地面がうねった。
俺の足元が崩れるように歪む。
……地面操作か?
「“発”……!」
判断が一瞬遅れ、俺の左脚が地面に囚われた。
そこに、拳が振り下ろされる──
だが、ピコが割って入った。
「──っ」
短剣がプロハンターの拳を逸らす。
そのまま三人の攻防が激化する。
俺とピコ、そして念獣。
三方向からの同時攻撃。
だが、それでもプロハンターは怯まなかった。
「雑だ。型だけは見事だが、読みやすい」
プロハンターの蹴りが飛ぶ。
避けきれず、腹に鈍い衝撃が走る。
俺は反撃に出た。肘を回し、肩口を狙う。
が、彼は地面に手を突いた。
──その瞬間、足元の土が蠢き、鋭利な棘が突き上がる!
「っ──!」
跳んで避けたものの、脛をかすめる。地面が武器になる、
なかなかに厄介な発だ。
地面が波打つ。
土が波のように膨れ、衝撃波となって襲いかかる。
俺は拳を突き出し、オーラを前面に集中させて受け流す。
ピコが横合いから飛び込む。
「制約は地面に手を付けないと発動しないってとこかしら?」
ピコのナイフが男の腕をえぐる。
男は呻きながら距離を取るが、すぐさま地面に手をついた。
瞬時に、無数の棘が扇状に展開し、俺たちを囲むように隆起する。
「囲まれるぞ、左右へ!」
俺とピコは同時に身を躱す。
飛び出してきた棘が頬をかすめ、鋭い痛みが走る。
「動きが速い……!」
プロハンターは、地面を蹴りながら間合いを詰めてきた。
両手を地に添え、足元から生えた土の柱で俺を狙う。
「クッ──!」
俺は瞬時に“凝”を目に集中。
柱の動きを見極め、ステップで回避。
背後からピコが斜めに切り込む。
「今よ!」
しかし、男は地面に掌を突いたまま反転し、ピコを蹴り飛ばす
「くっ……!」
「暴れろ」
俺の声と共に、念獣が地面を蹴り、咆哮を上げた。歪だが、力強い。
その姿は、かつて殺したアマチュアハンターの執念が染みついたような──異形の兵。
鋭く尖った牙が、土の防壁を粉砕する。
「ッ……!」
地面を操作し、無数の棘を突き立てるプロハンター。
だが、念獣は構わず突っ込む。
棘が腹に刺さる──が、止まらない。
男の隙を突き、俺が横合いから飛び込む。
拳を振るう──叩き込む!
「ぐあっ……!」
男の口から血が飛び、身体が浮いた。
ピコがナイフを投げる。
右腕に命中。
「……終わりだ」
念獣が再び飛びかかる。
男の肩に噛みつき、地面に叩き伏せた。
念獣が牙を深く突き立てる。男の悲鳴が夜の森に響く。
だが、まだ終わらない。
男は地面に手をつけ、最後の力で棘を噴き上げようとする──
だが、その前に俺は拳を突き出していた。
腹部へ渾身の一撃。拳が肉と骨を押し潰し、鳩尾がへこむ。
「ッ……がっ」
男の身体が折れ、
膝が崩れ、全身の力が抜け落ちる。
命が、俺の中に流れ込む。
重い。
けれど──これが、俺の力だ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
まだまだ続きます。