なんか原作に存在しない組織の実験体として転生した件   作:マジカルバーバリアン

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現在、もっと描写を丁寧に、そして読み応えのある小説を目指して試行錯誤しています。
温かく見守ってもらえると嬉しいです。


第5話:ハジメテ×ノ×ジュンレイ

任務当日。

 

訓練場の鐘が、夜明け前の静寂を破った。

それは祈りでも、祝福でもない。

ただの“出撃命令”だ。

 

俺は昨日、正式に「祓いの巡礼」の任を言い渡された。

異端の村へ向かい、そこに潜伏する“信仰背反者”を粛清する──

 

それが、俺に与えられた初めての殺しの命令だった。

 

 

 

────────────

 

 

 

夜明け直後、村の外れにある祈祷馬車前。

 

俺の前には、黒衣の信者戦士が二人。

 

布で顔を覆い、細身の槍や短剣を持っている。

だが、その雰囲気には、どこか“素人臭さ”があった。

 

──才能のない大人。

 

彼らは俺たち“祝福の子”とは違い、大人になってから教団に救済された者たち。

強引に精孔を開けられ、最低限の念だけを身につけ、

神の刃として“選ばれた”と信じ込まされている。

 

その技術も経験も、正直低い。

けれど、信仰だけは本物だった。

 

「……おいおい、ピコ。見ろよ、これが“特質系”だとよ」

 

皮肉交じりに言ったのは、長身の男──ヤナ。

口元には笑みを貼りつけているが、その声には明確な棘があった。

 

「教祖様のお気に入りってやつか? いいなぁ、才能あるってだけで“祝福”扱いだなんてよ」

 

隣にいた無表情の女、ピコが淡々と返す。

「その分、責任も重いということでしょう。私たちは“導かれた者”、彼は“造られた器”。違うだけです」

 

ヤナが舌打ちした。

「出たよ、ピコの正論。……ちっ、でもよ、気に食わねぇもんは気に食わねぇんだよ」

 

「言いたいことも言えねぇってのかよ。“浄化”されんのが怖ぇっての?」

 

ピコは目を細め、じっと俺を見つめた。

その視線は、羨望でも恐れでもなく、ただ“値踏み”するような冷たさを帯びていた。

 

「……祝福の子。私たちとは、格が違うんでしょう?」

 

その言葉に、俺は淡々と返す。

 

「違うのは、祝福じゃなくて──才能と育て方だ」

 

沈黙が落ちた。

ヤナが鼻を鳴らし、ピコは視線を外した。

だが、それ以上の言葉はなかった。

 

それでいい。

どうせ、信仰の深さでは争えない。

俺はただ、生き残るためにこの“仕事”をこなすだけだ。

 

────────────

 

祈祷馬車は森の奥を抜け、やがて止まった。

運び手の信者が口を開く。

 

「……ここからは徒歩です。“穢れた村”に神気を持ち込むには、直接の歩みが必要ですので」

 

建前はどうあれ、これは逃亡を防ぐためだ。

 

俺たちは静かに歩き出す。

土の匂い。風に揺れる枝の音。

施設では感じられなかった“自然の気配”が、ここにはあった。

 

ふと、木々の間から古びた家屋が見える。

 

「……あれが対象の村か」

 

朽ちかけた民家、荒れた畑。中央には石造りの礼拝堂のような建物。

人気はある。だが開放的ではない。

 

明らかに、外部を警戒している気配。

 

「対象は三種。教祖の首を狙うアマチュアハンター。

それをかくまっている村の信者たち。

そのことに気づかなかった者たちも同罪です。

信仰を捨てた裏切り者たちには生きている価値がありません。」

 

ピコが淡々と告げた。

ヤナは肩をすくめ、槍を立てる。

 

「ま、神の敵に慈悲は無用ってわけだ」

 

俺は、深く息を吐き、左手の森影から村へ踏み込む。

──命令を遂行する。それだけだ。

 

 

 

────────────

 

 

 

戦闘は、突然始まった。

 

村に足を踏み入れた瞬間、子供を抱いた女が逃げ出す。

ヤナは無言で槍を振り、女の胸を貫いた。

 

血飛沫が、地面を赤く染める。

子供が泣き叫ぶ。

 

ピコは躊躇なくナイフを投げ、声を止めた。

 

──ただの、一般人だった。

 

「……っ」

 

俺は、手を止めてしまった。

いや、心が止まった。

 

だが──殺さなければ。

生き残るために。

 

震える手で拳を構え、祈りを捧げていた老人を──潰した。

 

ピコがこちらを見ていた。

その目には、驚きでも軽蔑でもない。

ただ、“観察”の色だけがあった。

 

 

 

────────────

 

 

 

そのとき、村の裏手から気配が殺到した。

 

「接敵、複数……あれは──」

 

現れたのは、アマチュアハンターたちだった。装備は整っていて、いかにも“狩る”ための準備をしてきたとわかる。

念にはまだ目覚めていないが、動きには無駄がなく、場数を踏んだ戦闘経験がにじんでいる。

だが──俺たちの“標的”であることに、変わりはなかった。

 

「“浄化”開始!」

 

ヤナが叫び、先陣を切る。

槍を肩に担ぎながら、ヤナは笑っていた。まるで狩りに出る獣のように、その目はぎらついている。

「ピコ、お前も楽しめよ。今日の“浄化”は当たりだぜ」

 

「……黙って、やるだけ」

ピコが淡々と応じ、その後に続く。

俺も──拳を握った。

 

────戦闘開始。

 

殺す。

殺す。

殺す。

 

念を知らぬ者は、ただの的だった。

 

だがそのとき、空気が変わった。

一人、アマチュアたちを指揮していた男が姿を現す。

そのオーラの“質”が違った。

 

──これは、プロか?

 

「外道どもが……子供を使うとはな」

「信仰を盾にして、罪なき者を殺すか」

 

「“神の敵”に、情けは不要だ」ヤナが笑う。

 

だが、次の瞬間。

ヤナの体が吹き飛んだ。

 

「っ……! ヤナが──」

 

ピコが距離をとる。

俺は、練を高めながら男の動きを見つめた。

 

……速い。

 

一手、一手が洗練されている。

念の操作も見事だ。

 

技術は──俺と同格か、それ以上。

 

けれど、その“差”が重くのしかかる。

経験の差が、行動の精度に出ている。

反応、誘導、間合いの潰し方──

 

“このままじゃ負ける”

 

──それでも俺は踏み込んだ。

拳と拳がぶつかり合う。

肘を捌かれ、脇腹を狙われる。

反射的に“堅”を展開し、受け流す。

が、次の瞬間には背後に回られていた。

 

「甘い」

 

男の声と同時に、蹴りが背に突き刺さる。

体が跳ね、地面を転がった。

 

だが──まだ終わらない。

 

そのとき、足元に転がる死体が目に入った。

さっき、俺が殺したアマチュアハンター。

 

──使える。

 

俺は、念を練り上げ、想像する。

 

俺が消滅させた生命エネルギー。

 

それを“念”として束ねる。

具現化し、形にする。

 

「来い──俺の“発”」

 

念が、渦を巻く。

死者の気配と共鳴する。

 

──念獣、顕現。

 

そこに現れたのは、歪な形をした獣のような念体。

その形は、どこか人の面影を残しながらも、歪に捻じ曲がっていた。

肩は異様に張り出し、腕は不釣り合いに長く、足は獣のように逆関節で折れ曲がっている。

目元には何もなく、ただぽっかりと闇が空いているだけ。

 

「行け」

 

念獣が咆哮とともに、プロハンターに襲いかかる。

 

「三対一……だが、卑怯と言ってくれるなよ」

 

「クッ……!」

 

プロハンターは跳躍して念獣の攻撃を回避し、地面に手をつく──その瞬間、地面がうねった。

 

俺の足元が崩れるように歪む。

……地面操作か?

 

「“発”……!」

 

判断が一瞬遅れ、俺の左脚が地面に囚われた。

そこに、拳が振り下ろされる──

 

だが、ピコが割って入った。

 

「──っ」

 

短剣がプロハンターの拳を逸らす。

そのまま三人の攻防が激化する。

 

俺とピコ、そして念獣。

 

三方向からの同時攻撃。

だが、それでもプロハンターは怯まなかった。

 

「雑だ。型だけは見事だが、読みやすい」

 

プロハンターの蹴りが飛ぶ。

避けきれず、腹に鈍い衝撃が走る。

 

俺は反撃に出た。肘を回し、肩口を狙う。

が、彼は地面に手を突いた。

 

──その瞬間、足元の土が蠢き、鋭利な棘が突き上がる!

 

「っ──!」

跳んで避けたものの、脛をかすめる。地面が武器になる、

なかなかに厄介な発だ。

 

 

地面が波打つ。

土が波のように膨れ、衝撃波となって襲いかかる。

俺は拳を突き出し、オーラを前面に集中させて受け流す。

ピコが横合いから飛び込む。

 

「制約は地面に手を付けないと発動しないってとこかしら?」

 

ピコのナイフが男の腕をえぐる。

 

男は呻きながら距離を取るが、すぐさま地面に手をついた。

瞬時に、無数の棘が扇状に展開し、俺たちを囲むように隆起する。

 

「囲まれるぞ、左右へ!」

 

俺とピコは同時に身を躱す。

飛び出してきた棘が頬をかすめ、鋭い痛みが走る。

 

「動きが速い……!」

 

プロハンターは、地面を蹴りながら間合いを詰めてきた。

両手を地に添え、足元から生えた土の柱で俺を狙う。

 

「クッ──!」

 

俺は瞬時に“凝”を目に集中。

柱の動きを見極め、ステップで回避。

背後からピコが斜めに切り込む。

 

「今よ!」

 

しかし、男は地面に掌を突いたまま反転し、ピコを蹴り飛ばす

 

「くっ……!」

 

「暴れろ」

 

俺の声と共に、念獣が地面を蹴り、咆哮を上げた。歪だが、力強い。

その姿は、かつて殺したアマチュアハンターの執念が染みついたような──異形の兵。

 

鋭く尖った牙が、土の防壁を粉砕する。

 

「ッ……!」

 

地面を操作し、無数の棘を突き立てるプロハンター。

だが、念獣は構わず突っ込む。

棘が腹に刺さる──が、止まらない。

 

男の隙を突き、俺が横合いから飛び込む。

拳を振るう──叩き込む!

 

「ぐあっ……!」

 

男の口から血が飛び、身体が浮いた。

 

ピコがナイフを投げる。

右腕に命中。

 

「……終わりだ」

 

念獣が再び飛びかかる。

 

男の肩に噛みつき、地面に叩き伏せた。

念獣が牙を深く突き立てる。男の悲鳴が夜の森に響く。

だが、まだ終わらない。

 

男は地面に手をつけ、最後の力で棘を噴き上げようとする──

だが、その前に俺は拳を突き出していた。

 

腹部へ渾身の一撃。拳が肉と骨を押し潰し、鳩尾がへこむ。

 

「ッ……がっ」

 

男の身体が折れ、

膝が崩れ、全身の力が抜け落ちる。

 

命が、俺の中に流れ込む。

重い。

けれど──これが、俺の力だ。




最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
まだまだ続きます。
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