なんか原作に存在しない組織の実験体として転生した件 作:マジカルバーバリアン
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村の中心部に立っていた。
殺したプロハンターの死体から、エネルギーを抽出するイメージで、
命の残滓。
それを俺のオーラに絡め取り、意志を吹き込む。
「……目覚めろ」
暗闇の中から、もう一体の念獣が生まれる。
先ほどまでの念獣とは違う、より研ぎ澄まされた獣。
黒い鎧のような外皮。鋭い四肢。重厚な殺気。
——新たな力だ。
初めての巡礼で、発を持つ念獣を手にできた──
それは、俺にとって幸運だった。
この力があれば、次に待ち受ける試練も、きっと乗り越えられる。
どのような“発”を持っているか、試してみるか──
そう思った瞬間だった。
背後から足音が近づく。
「……助かったぜ」
ヤナが、血に濡れた槍を肩に担ぎながら近づいてきた。
その顔には、悔しさを押し殺したような、奇妙な笑み。
そして俺を見る眼は、やるせない心情と気まずさを含んでいた。
俺は念獣への命令を飲み込み、意識を切り替える。
今は、検証している場合じゃない。
「ピコ、お前もなんか言ったらどうだ」
「……私ひとりじゃ、巡礼を達成することはできなかった。感謝してる」
ピコがぼそりと言う。
あの無表情女から、こんな言葉が出るとは思わなかった。
俺は軽くうなずいた。
二人から感謝される中で、胸の奥に微かな痛みが走った。
──奪った命によって得た力。
それは必要だった。生き延びるためには、選択肢はなかった。
だが、心のどこかで、拭いきれない罪悪感がくすぶっているのを、俺は確かに感じていた。
その後、祈祷馬車へと乗り込み、村を後にする。
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翌朝、教団施設。
冷たい石畳を踏みしめながら、俺たちは本堂へと向かう。
通されたのは「審問の間」。
天井が高く、壁には無数の“加護”を象った奇妙な装飾が施されている。
異様な静寂。かすかに満ちるオーラの圧力。
この空間自体が、来る者を試しているかのようだ。
本堂の巨大な扉が、重々しく開く。
そこにいたのは、教祖ではない。
数人の白衣を纏った、上位信者たち。
その中心に立つのは、銀髪の壮年の男。
教祖の側近、「視察者」と呼ばれる存在だった。
その目は、冷たく光っている。
彼らが、教祖の稚拙な支配を補い、
この巨大な教団を実質的に維持しているのだろう。
──あの教祖だけで、ここまでの犯罪組織を築けるはずがない。
「……祝福の子アーク。初めての巡礼、見事だったな」
形式的な称賛。
だが、その声色には探るような棘が含まれていた。
俺は、静かに膝をつき、頭を垂れる。
額に汗をにじませるわけにはいかない。
無垢な信者を演じろ。
純粋な信仰の徒を──
「教祖様の導きに従ったまでです」
言葉を選びながら答える。
「……巡礼中、異端と対峙したとき、何を考えた?」
視察者の問い。
その目は、一切の感情を見せなかった。
「ただ、神の意志に従い、異端を祓うことだけを考えていました」
一言一言を、慎重に選びながら答える。
嘘ではない。
だが、真実のすべてでもない。
視察者は微かに目を細めたが、続けた。
「新たな力を得たようだな。発か?」
……来た。
俺は、一拍だけ間を置き、頷く。
「はい。巡礼の中で、気づけば……教祖様の覇道を阻む異端者の命すらも、神への貢献と変えたいと祈った時、自然と力が形になりました」
思考と反射で紡いだ言葉。
本当の能力の詳細──念獣に発が宿ること、念弾に変えられること──は、絶対に隠す。
視察者はしばし俺を見据えたが、やがて小さくうなずいた。
「……未熟なうちは力に溺れるな。導きに従え」
「はっ」
ピコとヤナも控えめに膝をつく。
ピコは、ふと横目で俺を見ながら、低く言った。
「……貴方の発、実戦でも使えるわね」
ヤナは、悔しそうに舌打ちしたが、何も言わなかった。
——審問は、まだ続く。
俺は、無垢な祈りを纏いながら、次の問いを待った。
────────────
「もし──神の意志に背く命令が下されたら、どうする?」
視察者の一人が、不意に口を開いた。
鋭く、試すような声。
心臓が一瞬、跳ねた。
だが、顔には出さない。
「私は……神の真意を信じます。たとえ命令が一時的に理解できなくても、それは私たちの未熟さゆえ。従い、祈り続けるのみです」
少しの逡巡も見せず、そう答えた。
本心を偽り、信者の皮を被る。
数瞬の沈黙のあと、視察者は小さく頷いた。
「……ふむ」
視察者たちの間に、目配せが交わされた。
「では、次だ」
「お前は、他の祝福の子らと比べてどう思う?」
仲間たちをどう見るか、問われた。
俺は一呼吸置き、慎重に言葉を選ぶ。
「皆、それぞれに神から与えられた役割を持っています。ピコもヤナも、祝福の子ではありませんが、私にはない力を持っています。私は、彼らと共に祈り、支え合うことで、より強くあれると信じています」
視察者たちはまた目を細め、観察していた。
──危ない橋だった。
仲間を持ち上げ、自分を引き上げる。これ以上ないほど教団好みの模範解答。
「……よかろう」
銀髪の壮年が、ようやく口を開いた。
「巡礼を完遂した祝福の子アーク。次なる巡礼の時を待て」
「はっ」
静かに頭を下げた。
査問は、終わった。
────────────
救助車のような車輪にゆられながら、俺は祝福の子が集められる訓練施設に戻ってきた。
教域のゲートを走った瞬間、空気の変化に気づく。
俺たちの教育係である狂信者──マリナが、訓練場の前で子供たちを引き連れて待ち構えていた。
「……よく戻りましたね、アーク! 最初の巡礼を見事にこなすとは……教祖様も、きっと、きっとお喜びでしょう!」
歪んだ笑みを浮かべながら、マリナは感情的に言葉を紡ぐ。
「まもなく、他の祝福の子らも、順次巡礼へと送り出されます。」
その声には、どこか熱のこもった興奮が滲んでいた。
「……ふふ、楽しみですね。どれほど異端を祓えるのか、どれほど神に尽くせるのか……!」
マリナの目は異様に光り、手を胸の前で組み合わせ、ぶつぶつと祈るように呟き始める。
その様子に、俺は冷ややかな視線を向けながら、何も言わず頭を下げた。
──巡礼。
物心つく前から教義を刷り込まれている祝福の子たちは、巡礼を純粋に喜んでいる者がほとんどだった。
まるで遠足を待ちわびる子供たちのように、興奮し、目を輝かせていた。
生き延びた俺を見て、祝福の子たちは羨望と尊敬の入り混じった視線を向けてくる。
「すごい……!」
「僕も早く巡礼に行きたい!」
純粋な声が、次々と上がる。
無邪気な瞳。曇りなき期待。
その光景に、俺はほんのわずかに胸を痛めた。
この先、彼らのうち何人が生き延びられるのか。
そして、どれだけの“命”が、無惨に潰えていくのか。
──だがそれは、命を賭けた試練だ。
一歩間違えれば、二度と戻れない道だというのに。
俺には、その異様さが痛いほどわかる。
興奮に顔を紅潮させる子供たちの中で、ノアだけが違った。
彼女は、緊張を隠しながらも静かに身を縮め、周囲の熱に飲み込まれまいとするかのように、わずかに肩を震わせていた。
その姿は、まるで吹きすさぶ嵐の中に取り残された小さな灯火のようだった。
俺は無意識に拳を握り締めた。
ノアだけは、絶対にあの狂気に飲み込ませない──そう、心の奥で誓った。
────────────
夜。
「おかえり……」
物資倉庫の裏、いつもの場所でノアが待っていた。
「ああ。まあ、なんとかな」
その答えは、ほとんど意識的に振り絞ったものだった。
実際には、初めて戦い、手を汚した──骨まで凍りつくような痛みを心に残している。
それを見透かしたかのように、ノアはそっと笑った。
「次は、私の番だよね。」
伝えられていた通り、ノアも巡礼に向かうことを悟っていた。
「大丈夫。生き延びればいい。そしたら、またここで話せる。」
「……そう、だよね。」
微笑むノアの目を見て、その笑みの半分も本心ではないことに気づいた。
この世界で、生き延びることが、どれほど困難か──痛いほどわかる。
俺は少し考えた後、ぽつりと言った。
「なあ、ノア。この世界って、面白いんだぜ。」
「え……?」
ノアが目を丸くする。
「崖に糸で巣を張るワシとか、火を吹くトラとか、面白い動物や見たことない世界が、たくさんあるんだ。
俺たちみたいな念能力者だけが遊べるゲームだってあるんだぜ。」
言いながら、自分でもどこか夢を見ているような気分だった。
ノアは小さく首をかしげた後、ふっと顔を曇らせた。
「……でも、アークは赤ちゃんの頃からずっとここにいるのに。どうしてそんなこと知ってるの?」
声は少し怒っていた。
巡礼を前にした不安と恐怖をからかわれたと思ったのだろう。
「ゆ、夢で見たから……!」
慌ててそう言うと、ノアは目をぱちぱち瞬かせ、それから噴き出すように笑った。
「なあんだ、また夢かあ……
なんか……少しだけ、怖くなくなっちゃったよ。」
肩の力が抜けたように笑うノア。
その笑顔には、残っていた恐怖と緊張が、確かに溶けていく気配があった。
「ありがと、アーク。」
ぽつりと、そんな言葉がこぼれた。
俺も、小さく息を吐いて微笑んだ。
「だから、生き延びような。」
ノアがこちらを見つめる。
「生き延びて、冒険に行こう。」
そして、強く、静かに誓った。
──まだ俺たちが見たことない世界へ。
────────────
……しかし、俺は薄々予感していた。
今後の巡礼は、あれよりも──もっと険しく、厳しくなるだろうと。
そして。
この俺に刻まれた「力」の真価が、いよいよ試される日が近づいていることを。
まだまだ、拙いかもしれませんが皆さんに面白いと思ってもらえるよう尽力していきます。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。