なんか原作に存在しない組織の実験体として転生した件   作:マジカルバーバリアン

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7話:クンレン×ト×シレン

俺の最初の巡礼の成功を皮切りに、巡礼が次々と始まった。

 

祝福の子たちは次々に呼び出され、任務に出されていく。

 

最初は、順調だった。

どの巡礼も、訓練施設で教えられた通りにこなせる程度の難易度。

失踪者はゼロ。死亡者も、いなかった。

 

──だが、それは序盤だけだった。

 

巡礼の難易度が、少しずつ上がるにつれ、

施設に戻らない者が、ぽつぽつと現れ始めた。

死者だ。

 

帰還者たちは、何も語らない。

施設内には、徐々に言葉にしがたい重苦しい空気が漂いはじめる。

 

それでも、俺は生き延びた。

任務をこなし、異端者たちを“祓い”、命を奪い──

その命から、新たな念獣を作り上げた。

 

俺の周囲には、徐々に“力”が集まり始めていた。

 

黒い鎧をまとった獣。

獣の骨格を持つ影の兵。

歪んだ人型をした人形。

 

一体、また一体と、増えていく。

 

背負った罪もまた、増えていった。

 

そんな日々を送る中、ふと思い出す。

まだ巡礼が、今ほど絶望に満ちていなかった頃のことを。

 

 

────────────

 

 

あの頃も、巡礼はもはや日常になっていた。

ノアも例外ではなかった。

 

最初のころ、ノアが巡礼に出る前夜には、必ず俺たちは短い会話を交わした。

 

物資倉庫の裏。

夜風に吹かれながら、肩を並べて座る。

 

「無理するなよ。」

 

「わかってる。……でも、生きて帰ってこなきゃ、アークに怒られるから。」

 

そんな冗談めかした言葉を、震える声で紡ぎながら、ノアは笑った。

 

そして彼女は、緊張を押し隠すように背筋を伸ばし、巡礼へと出発していった。

 

 

────────

 

 

数日後。

 

施設の門が開く。

血と泥にまみれた服。

疲弊した顔。

 

それでも、ノアは確かに、生きて帰ってきた。

 

再会のとき、俺たちは言葉を交わさなかった。

ただ、視線だけで確かめた。

 

──生き延びた。

 

それだけで、十分だった。

 

 

────────────

 

 

──あれから、幾度もの巡礼を経た今。

ノアの最初のころの恐怖心は、次第に薄れていった。

 

いまや、ノアは巡礼のたびに、さっと身支度を整え、迷いなく出発していく。

帰還しても、以前ほどの緊張は見せない。

血の匂いにも、傷の痛みにも、慣れたのだろう。

 

荷物を背負い、淡々とゲートへ向かうその背中。

ほとんど振り返ることもなく、まるでそれが日常であるかのように。

 

そして、俺たちもまた、それを受け入れるしかなかった。

この世界では、それが生き延びるための当たり前だった。

 

けれど。

 

──それでも、変わらないものがあった。

 

ノアは、必ず俺のもとに帰ってきた。

言葉はなくても、互いに寄り添うように──生き抜いた証を確かめ合うように。

 

(……今は、まだ奇跡がある。)

 

俺は、そんなふうに思っていた。

 

ノアが、生きて帰ってくる。

それが、まだ当たり前のように続いている。

 

だから、信じたかった。

この薄暗い世界に、まだ小さな光が残っていることを。

──いつか、あの夢見た場所へ。

まだ見ぬ空の下へ。

 

 

────────────

 

 

巡礼の内容はどんどん変わっていった。

当初は、異端者とされた一般人や背信者の粛清が主な任務だった。

だが、次第に

新興マフィア。独裁国家。

 

それらに傭兵として雇われ、裏社会の抗争に加担するような任務が増えていった。

 

殺す対象も、単なる異端者ではない。

 

銃火器を手にした兵士たち。

訓練された傭兵たち。

 

──そして、プロハンター。

 

最初は稀だったプロハンターとの交戦情報も、徐々に増えていった。

 

プロハンターは、俺たちのような寄せ集めとは違う。

本物の修羅場をくぐり抜けた、熟練の戦士たちだ。

 

力の差を、痛感する場面もあった。

それでも、俺は生き延びた。

念獣たちを使役し、信者戦士を利用し、必死に生き延びた。

 

そんな中、ふと思った。

 

──本来、念は、秘匿されるべき技術だ。

 

原作の知識が、警鐘を鳴らしていた。

 

念は、限られた者たちだけが扱えるべきもの。

無闇に広めれば、必ず危険を呼び込む。

 

それを、この教団は……

信者たち、さらってきた子供たちにまで、無秩序に教え、使わせている。

 

しかも、戦場で。

 

これでは、いつか──

いや、もしかしたら、もうすでに……

 

ハンター協会に、目をつけられているかもしれない。

 

背筋に冷たいものが走った。

 

殺される?

 

──いや、違う。

 

もしかしたら、これは“チャンス”かもしれない。

 

もしハンター協会が本当に俺たちに気づいているなら。

もし、彼らがこの狂った教団を危険視し、動き出しているなら──

 

助けてもらえる可能性だって、ゼロじゃない。

 

だが、今はまだ耐えるしかない。

 

カラ元気じゃないほんのわずかな希望。

 

その時まで力を磨き続ける。

 

 

────────────

 

 

巡礼の内容が変わり、規模が拡大するに伴い──

教団も動きを変えた。

 

施設内に、微かなざわめきが広がる。

祝福の子たちが、囁き合い、互いを探るような視線を交わしていた。

期待、不安、興奮、恐怖──様々な感情がない交ぜになり、訓練場の空気はじりじりと張りつめていた。

 

やがて、マリナが現れた。

いつも以上に高揚した様子で、狂信的な笑みを浮かべながら高らかに告げる。

 

「皆さん、新たな段階へ進む時が来ました! 教祖様の御意志により、これより巡礼は“チーム制”で行われます!」

 

場がどよめく。

 

「これからは、Aの証を持つ祝福の子一名をリーダーとし、補佐にBの証を持祝福の子を三名をつける体制になります。

これでより多くの人へ祈りを伝えることができるでしょう!」

 

マリナは続けた。

その声には、いつも以上の異様な熱がこもっていた。

 

「教祖様は、常に我らを見守ってくださっています!

教祖様の偉大なるご加護こそ、我らの力の源です!

その御意志に応えるため、皆さんもより一層、心をひとつにして祈りと戦いに励みましょう!」

 

叫びながら、両手を高々と掲げるマリナ。

彼女の背後に、まるで見えない神が降臨したかのような異様な空気が立ちこめた。

 

周囲の信者や子供たちが、次々と熱に浮かされたように手を合わせ、祈りの言葉を口にし始める。

 

その声には、いつもの異様な熱がこもっていた。

 

巡礼の苛酷さが増した今、単独では生き残れない場面も増えてきた。

 

当然の流れだった。

 

俺は無表情を保ちながら、ただ頭を垂れた。

 

 

────────────

 

 

俺は、編成されたチームを告げられた。

 

リーダーは──俺、アーク。

 

そして、メンバーには──

 

ノア。

カイル。

ミナ。

 

Aシリーズである俺が、チームの中核を担う形だった。

 

カイルは、陽気な顔を装いながらも、目の奥で何かを測るように俺を見た。

赤褐色の髪は綺麗に切りそろえられ、前髪がわずかに目にかかっている。焦げ茶の瞳は鋭いツリ目で、こちらを見据えるその視線は、笑みを浮かべながらもどこか挑発的だった。

 

「頼もしいリーダー様だな。特質系のお出ましってわけか。」

 

口調とは裏腹に、尊敬と嫉妬が入り混じった、複雑な感情がにじんでいた。

 

一方、ミナは直立不動の姿勢で、まっすぐ俺に頭を下げた。

 

「アーク先輩、よろしくお願いします!」

 

明るい栗色の髪を揺らしながら、淡い金茶色の瞳をまっすぐ向けてくる。

教団の戦闘服は皺ひとつなく着こなされ、手首には布製のお守りが巻かれていた――信仰の証らしい。

その瞳は、純粋な敬意と期待に満ちていた。

 

二人の反応を受けながら、俺は静かに覚悟を固めた。

 

──もう、俺ひとりで戦うわけじゃない。

──俺の命令のもと、仲間を導かなければならない。

 

重圧は、確かにあった。

仲間の命を預かるという、冷たい重みが胸にのしかかる。

 

だがその中でも、ノアの存在が、ほんのわずかに俺を落ち着かせた。

 

近くに、ノアがいる。

それだけで、無意識に気を張ることができた。

 

──守らなきゃ。

 

ノアは、ただの祝福の子じゃない。

苦しい訓練を共に耐え抜いた、俺にとって、何よりも失いたくない存在だ。

 

俺の力があれば、守れる。

この手で、絶対に。

 

別々の任務に出されるより、こうして同じチームにいるほうがいい。

俺の念獣も、ノアを守るために使える。

隣にいる限り、最悪の事態は防げる。

 

──だから、俺は戦う。

 

「行こう。」

 

そう口にして、俺はもう一度、チームメンバーを見渡した。

 

ノアは言うまでもない。

この施設で唯一の、同志であり、強化系の念能力者。

苦しい訓練を共に乗り越えてきた、かけがえのない仲間だ。

 

 

カイルは放出系。

陽気な皮肉屋だが、状況を冷静に見極める目を持っている。

──ただ、ほんの少しだけ、俺への嫉妬も混じっていた。

祝福の子たちの中で、唯一の特質系──それが俺だったから。

 

ミナも放出系。

元気で素直な少女だが、観察力が鋭い。

命令には忠実で、俺に対しては純粋な敬意を向けている。

 

このチームで、これから生き抜かなければならない。

 

────

 

初めてのチーム訓練。

 

訓練場に集合した俺たちは、簡単な実戦演習を命じられた。

 

「ルールは簡単だ。」

「敵役の信者戦士を制圧できれば合格。」

 

信者戦士は、念の扱いこそ素人だが、基礎的な練と纏はできる。

相手にとって不足はない。

 

「行くよ、アーク!」

 

ノアが勢いよく駆け出す。

 

力任せではない。きちんとオーラを練り上げ、拳に集中させている。

 

カイルとミナも続いた。

 

カイルは距離を取りながら、タイミングを見計らう。

ミナはノアのすぐ後ろ、サポートに回る動き。

 

──悪くない。

 

俺は後方から全体を見渡し、念獣を一体召喚。

隙を突く形で敵役にプレッシャーをかける。

 

「へぇ、リーダーって感じだな……」

カイルがぼそりと皮肉めいた声を漏らしたが、すぐに真顔に戻った。

 

信者戦士がノアを狙い、大振りの拳を繰り出す。

 

「っ──!」

 

だが、ノアは怯まない。

強化系らしく、全身にオーラを纏い、真正面から拳を受け止めた。

 

一瞬の衝撃。

 

その隙に、ミナが横合いから回り込み、信者戦士の膝裏を蹴り飛ばす。

 

バランスを崩した相手に──

 

カイルの放ったオーラ弾が命中した。

 

信者戦士が崩れ落ちる。

 

「……制圧、完了。」

 

俺が静かに告げると、マリナが満足げに頷いた。

 

「素晴らしい……! 神の加護が宿っていますね……!」

 

連携はまだぎこちない。

カイルは少し距離を取りすぎ、ミナは突っ込みすぎる。

ノアは俺に合わせようと無理にタイミングを変えてしまう。

 

それでも、確かに感じた。

 

──こいつらとなら、やれるかもしれない。

 

「まだまだこれからだな。」

カイルが鼻を鳴らし、

ミナが「頑張ります!」と拳を握る。

 

ノアは、俺にだけ、小さく微笑んだ。

 

俺も、ほんの少しだけ、笑みを返した。

 

──これが、俺たちの始まりだ。

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