「異世界に?」
ルベライトの瞳を持つ白い青年が呟く。
共に隣で座る自身の主神が腕を置く机を挟んだ位置に座る、一人の神がそれに応えた。
「そう、異世界。僕の数少ない
「…」
自身の主神、神ヘスティアは何も応えない。
目を瞑り、思考している様子のヘスティアを見て、ベルは悩む。
異世界。完全なる未知。そんな世界に行き、果たして無事に帰られるのか。
親愛なる
そんなベルを、ヘスティアは横目で見て…大きく溜息を吐いた。
「行きなさい、ベル君」
「神様…」
「助けを待ってる人がいるから、君は行きたいんだろう?なら、それを応援するのが
「はいっ!」
「行ってくれるのかい?自分で言うのもなんだが、僕は結構君に酷い事してきたぜ?」
その問いに、ベルは答える。
「確かに、僕はヘルメス様に悪い事をされたかもしれません。でも、僕は貴方が悪神ではない事は知っています。オラリオ、下界の為に動いてくれた事も。そして、今回は神友の事を想って、僕に助けを求めている。なら、僕に断る理由はありません」
「…やはり、君は優しいね、ベル・クラネル。英雄と言われるだけある」
「あはは、それリド達にも最近言われますけど、気恥ずかしいんですよね」
「そうか…じゃあ、早速異世界に行く準備をしよう。まずはこれを」
「これは…紙?」
「
青を基調とした、手紙のマークが描かれたそれをベルは受け取った。
「それを持って、寝れば異世界に行ける…と神友は言っていたよ」
「寝るんですか?でも…今はまだ昼ですよ?」
「まぁぶっちゃけいつでも良いとは言っていたし、恐らくあっち側が時間に関して何かしてくれるんだと…思う。こういうのもなんだけど、彼女物凄く適当な性格だったからね。それで、寝る事に関してなら…これがある」
ヘルメスは懐から瓶を取り出す。中身は錠剤だ。
「睡眠薬だ。効き目は…そうだな、
「あのそれ本当に大丈夫なものですよね???」
あの猛者が膝を着く程の効力の薬。
実際に戦い、勝利した経験のあるベルからすればやばい劇薬にしか見えない。
しかし、飲まなければ寝れないのも事実。ベルは意を決して飲む事に。
ヘスティアとヘルメスに早速行く事を伝え、激励を貰いながら寝室に行きベッドへ転がる。
貰った錠剤の一つを飲み込む___途端に襲い掛かる酷い睡魔。
「(ここまで強…!?あッ!抗えな…)」
「zzz」
数秒もせぬ内に意識が遠のき、眠るベル。
不思議な音が聞こえてきた。
______________
がたんごとん、がたんごとん。
定期的に鳴る音と共に、自分の身体が振動で揺れる感覚を感じながら、ベルは目を覚ました。
開目一番に見える自分の装いは変わらぬまま。手を握る感覚は確かに現実味がある。
異世界に来れたのだろうか。そう思いながら顔を上げると、ベルは目を見開いた。
そこには血塗れの女性が座っていたのだ。
「(大丈夫ですか! …!? 喋れない!?)」
「あぁ、来たのですね。本当に来るとは…私の友人は、約束を守ってくれたのですね」
咳き込みながら女性は言葉を続ける。
「
女性はベルを見据えて、言葉を続ける。
「異世界の冒険者…神々が認める数多の『偉業』を幾度となく乗り越えた英雄…貴方にお願いがあります」
「私の失敗、私のミス、最悪な結末を迎えてから痛感した自らの『脆弱』。その尻拭いを、私の『責任と義務』の代わりを、あろうことか他の人に任せてしまった」
「捻れ、歪み、その先の果てにある終着点。私の脆弱さが招いた終わり」
「そんな結末を迎えさせない為に…貴方だから、英雄である貴方だからこそに、『先生』を守ってもらいたいのです」
「図々しい願いである事は分かっています。しかし、これはあくまでも『お願い』」
「貴方がこれから訪れる地で、どう生活するか、どう生きるか、その『選択肢』は貴方に委ねられています」
「…お願いします。どうか、先生を…キヴォトスを…」
「___助けてください」
正直、ベルは次々と綴られる言葉を理解する事で必死だった。
しかし、最後に万感の思いで呟かれたその言葉…ベルの返答は、一人しかない。
「任せてください」
女性は驚いた表情をした後に、涙を流して微笑む。
その光景を最後に、また、ベルの意識は暗闇へと落ちてゆく。