「先生! 大丈夫ですか!?」
「“あ、ユウカ。大丈夫だよ“」
「心配しましたよ、先生」
「無事だったから良かったものの…キチンと自分の身を案じてください」
「“ごめんね、気をつけるよ、ハスミ、チナツ”」
「無事で…本当に良かったです」
「“心配してくれてありがとう、スズミ”」
先生の周囲に駆け寄る四人の生徒。
戦闘の気配が薄まり、気が抜けたのだろう。先生は完全に油断し、四人も周囲の警戒を忘れて先生に声を掛け続けている。
しかし、不意打ちの線はない。既に周囲の敵はベルが倒している上に、進行方向以外の隠れやすそうな場所、そこに続く細い道や裏路地は付近の壁や塀を壊して塞いでいる。
遠くでレフィーヤレベルの魔法やヴェルフの魔剣レベルの攻撃が来るならば安心できないが、そんなことは絶対に起きない為ベルも安心して___しかし警戒は続けて___息を吐いた。
その姿を見て、ハスミが先生に問い掛けた。
「それで先生、彼は何者なのでしょうか」
「…絶対、キヴォトスの人間ではないですよね?」
続けてユウカが捕捉するように続ける。
とはいえ、先生に聞かれても先生も分からない存在だ。
ただ分かることは、彼は味方だということだけ。
どう伝えようか少し迷った所、ベルが口を開く。
「えっと…先生、でしたっけ。さっき時間がないと言ってませんでしたっけ?」
「“え? …あっ! 急がなきゃ!」
「えっちょっ先生!?」
「待ってください! 先生! 前に出ないでください!?」
「あぁもう、急になんなのよ!?」
「ま、待ってください!?」
ベルの問い掛けに慌てて行動に移した先生。
突然走り出した先生に吃驚しながらもついていく生徒達に続いてベルも走り出し、彼らに着いていく。
やがて辿り着いたのは、先生達が出てきたサンクトゥムタワーと謙遜の無い厳格さのある大きさのビル。
ただでさえここに来る道中の建物の大きさに内心驚いていたベルも、これにはビルを見上げて呆然とする。
そんな彼を放って先生は中に入る。生徒達は外の警備をするらしく、入り口を固めて周囲を警戒していた。
さて、自分はどうしようか。ベルはそう思考する。
彼女らにとりあえず声を掛けて見るのもいいが、彼女達は先程の出来事があってかかなり真剣に動いている。
「(恐らく、彼女達は…現状、今一番先生に近い人達だ。先生を守る上で、仲良くしておこう)」
自己紹介も済ませてないしね、と手に持つナイフをホルスターに入れて彼女らへと近づくベル。
一瞬だけ警戒する素振りを見せた四人だが、先程のベルの戦闘を思い出し、戦うよりも対話を行う方が安全だと判断し、銃を下ろした。
「貴方は…」
「こんにちは、皆さん。僕はベル・クラネル。オラリオの冒険者です」
「お、オラリオ? えっと、その…冒険者というのは?」
あっ、とベルが言葉を溢す。
よく考えなくとも分かるがここは異世界。冒険者の概念もないと思われるこの世界で冒険者を名乗れば、困惑されるのも当然だった。
となれば、ここは誤魔化す他なかった。
「ここからずっと遠い地にある、大きな都市がオラリオ。僕はそこで冒険者という職に就いていて、ある人に先生の手助けをして欲しいと頼まれたので、ここにやってきました」
「なるほど…因みに、ある人とは? 恐らくキヴォトスの人間だと思いますが」
「名前は聞いていませんでしたが…確か白い服を着ていて、長い水色の髪…あ、でも髪の内側がピンク色でした。不思議な髪色でしたね」
「えっ、それ! 貴方、どこでその人に会ったの!?」
「え? えー…すいません、分かりません。何処かで会った筈なんですけど、あまり覚えてなくて…」
「あ、そう…はぁ」
「すいません…」
「あ、ごめんなさい。貴方を責めてる訳じゃないの」
と、ここでベルはこことは違う別の場所…裏口から誰かが素早い速度で出て行くのを気配で感じた。
追いかけようとも思ったが、中で接触した筈の先生の気配は健在。先程
動く必要は無し…そう判断したベル。
「自己紹介が遅れました、私、ゲヘナ学園・風紀委員会所属、火宮チナツです。よろしくお願いしますね、ベルさん」
「よろしくお願いします。えっと…チナツがファミリーネームですか?」
「火宮がファミリーネームですね」
「ありがとうございます。火宮さん」
「…私からも自己紹介致します。トリニティ総合学園・正義実現委員会所属、羽川ハスミです」
「同じく、トリニティの自警団の守月スズミです。よろしくお願い致します」
「羽川さんに、守月さんですね。よろしくお願いします」
ここで、先生が一人の生徒…七神リンと共にビルから出てきた。
「“あ、皆んな待っててくれたんだね”」
「仕事が終わったのなら帰ってくれても良かったのですがね」
その言葉に四人はイラッとするが、堪えて先生に声を掛ける。
「先生の無事が確認できましたので、私はトリニティに帰ります。お疲れ様でした」
「私もここで失礼致します。お疲れ様でした、先生」
「あ、私も急いで帰って仕事しなきゃ…それじゃあ、私も失礼します。先生」
「…では私も失礼します。また会いましょう、先生」
「“うん、またね。皆”」
それぞれの岐路へ着く四人。先生はそれを見送り、リンも軽く会釈して見送っていた。
「さて…後は貴方ですが…質問に答えてもらいましょう。貴方は何者ですか?」
「”え? リン?“」
「先生はお静かに。今はこの正体不明の人物を見極めなければなりません」
「(さっき屋上から来た人か…かなり偉い立場の人なのかな)」
「僕はベル・クラネル。ここから遠い場所にあるオラリオの冒険者です。ある人に、そこにいる先生の手助けをして欲しいと頼まれ、ここに来ました」
「そのある人とは?」
「白い服に、長い水色の髪の人です。名前は聞いていま「っ! その人はどこに!」…すいません、場所は覚えていません」
「そうですか…しかし、連邦生徒会長が…分かりました。あの人からの助っ人であれば、問題はありませんね。これから、先生のことをよろしく頼みます」
「はい! 分かりました!」
それだけ言うと、リンは中へと戻って行く。
そして、ベルは先生に向き直る。
「これから、どうしましょうか」
「”そうだね、まずは…お互いの事をもっと知る事から始めようか。着いてきて、お話にちょうどいいところがあるから“」
とりあえず三話だけ投稿するので反応が良ければ続き書きます。
感想くだしあ