ガンダムSEED 太陽の少女 side night 作:黄金鷹
メサイアでの戦いを終えてから半年が過ぎ、戦争が終わり平和となった世の中でセナはソファに沈み込んでいた
「はぁ〜久々の実家は落ち着くわ〜」
終戦した後負傷したセナはプラントの病院に運ばれ治療を受け、完治してからもラクスの護衛としてプラントに住む事になっていた。そんなセナは滅多にない休暇を使って実家があるオーブに帰郷し束の間の平和を堪能しているところだった。
「セナ、貴女ねぇ・・・朝からだらけ過ぎじゃないかしら?」
「だって今休暇中だもん。偶には何も考えないだけの時間を過ごしたって良いでしょ〜」
カリダからの言葉にもセナはまるで気にしていなかった。と言ってもカリダも娘が心穏やかにのんびりしているのは問題無いので小言程度で済ませているのを分かったうえでセナはだらけている様だった。
「まぁあの時よりはマシだとは思うけどね、今のアンタは」
「あはは、あの時は心配かけてごめんね」
「それは良いのよ。今笑う事が出来るのならそれで・・・そんな事より今日は」
カリダの言葉を遮る様にチャイムの音が鳴り響く。セナはその音を聞いた途端に一瞬で体を起こす。
「ヤバ、マユちゃん来るのって今日だったっけ⁉︎」
「だから言ったのに・・・私が説明するからアンタは早く着替えてきなさい」
「うん、お願い」
セナは急いで着替えを始める。今日は戦後に知り合ったマユと交流を深める為に二人が休暇中のタイミングでオーブで遊びに行く予定があったのだった。
「お待たせ、待たせてごめ・・・ん」
「あ・・・どうも」
着替えて出かける準備を終えたセナは開口一番に謝罪を入れる。しかしそこに居たのはマユでは無く彼女の兄のシンだった。
「ねえ、今日遊ぶ子って女の子って言ってなかったかしら?」
「うんそのはずなんだけど・・・シン君、マユちゃんは?」
「マユはその、体調を崩してしまって・・・オレはそれを伝えに来ました」
プラントでもまだ未成人なマユは一人でオーブに帰郷する事は出来ないのでシンと共にオーブに来ていた。しかし運悪く今日体調を崩してしまったマユは泊まっているホテルで休んでおり、代わりにシンがヤマト家を訪れていた。
「連絡しようにもオレもマユも連絡先知りなくて遅れてしまいました。すいません」
「ううん気にしないで、体調不良は仕方ないよ。シン君はこの後どうするの?」
「とりあえず看病に必要なものだけ買ってきてマユのとこに戻るつもりです」
「そっか・・・それ私も着いてきても良いかな?マユちゃんに何かプレゼント買うつもりだったからそのついでに」
「そうなんですか。なら、行きますか」
「うん分かった。それじゃあ行ってくるね母さん」
「ええ、いってらっしゃい」
シンとセナが共に街に向かうのを見送るカリダ。しかし二人の背を見ているカリダの顔には不安が隠しきれていなかった。
「大丈夫かしらねあの子達?なんかどっちも緊張してる気がするけど・・・」
二人の関係性を知らないカリダから見てもセナとシンのぎこちなさは明らかだった。かつての大戦で本気で殺し合った二人は戦後に和解はしていた。だが互いに敵だった頃からの印象が強いのと相手の事情を知ってからの自分の行動に罪悪感を感じてるせいもあり微妙に埋まらない溝が残っていた。そんな今の関係を直そうとセナはシンと共に出かけるも碌な会話もできずに目的地に着いてしまった。
「・・・とりあえず何を買うの?」
「飲み物とお粥の材料を買うつもりです。とりあえずなんか食っておけば大丈夫だと思いますので・・・セナ、さんはどうするんですか?なんかプレゼントって言ってましたけど」
「化粧用品とかプレゼントしてあげようかなって。マユちゃんにはまだ早いだろうけど興味ありそうだったし、まぁ将来必要になるから良いかもって」
「化粧か・・・全然イメージできねぇっす」
「まぁそうだよね。男の子だもんね・・・」
セナは何かしら会話をしようと話しかけるも気まずい空気を変える事はできなかった。一方のシンもセナの話題に答えはするものの話しが広がらず居心地の悪さを感じていた。ここに共通の知り合いが居れば会話も弾み穏やかな空気になるのだが二人きりになってしまうと互いに距離感が掴めずギクシャクしてしまうのだった。
「・・・じゃ、じゃあ先に化粧品買いに行きますか?お粥とかはあるもんをなんか買ってけばいいんで」
「そう、だね・・・うん、これを機に簡単な知識を覚えるのもいいかもね。ほらステラとデートした時とかにおめかししたのに気づける様にさ」
「・・・ステラとはあの日以来会って無い、です」
「あ・・・そう、だっけ」
ステラの話しを出して場をなんとかしようとするセナだったがより気まずくなってしまい困り果てていた。シンもシンでどうすれば良いか分からず内心焦っていた。
(やべ、セナさんと話が続かねぇ。なんかオレ感じ悪いと思われてねーかな・・・どうすれば)
「そ、そういえばセナ、さんって化粧とか詳しいんですか?オレの周りはマユもそうだけどルナもエリスもしてるところを見た事無いんでどんな風なのかさっぱりで」
「私も普段はしてないかな・・・マリューさんとかエリカさんはしてるけどそれ以外は・・・アイシャさんもしてたわね。でもラクスもカガリもしてるところはあんまり」
「そう、なんすね・・・なんか意外ですね。アンタもアスハも・・・・・・あっ」
思わず失礼な言葉遣いになった事に気づき言葉を詰まらせてしまった。戦時中はカガリやセナを敵視しており、態度や言葉遣いなど何も気にしていなかったのだが終戦後になってからは流石に態度を改めた方が良いとシンは考え意識していたのだがつい元の言い方に戻ってしまっていた。
「ああ気にしないで良いよ。私とは敵だったんだし・・・けどカガリにまでそんな感じなのは意外かな。アスランに聞いた話しだと初対面からアスハ呼びだったらしいけど」
「・・・・・・大それた理由ではありませんよ。一言で言うとただの八つ当たりですから」
シンは自分の両親が戦争に巻き込まれて死んだ事に対し攻めてきた地球軍だけでなく守ってくれなかったオーブ軍や戦う決断をしたウズミの判断に対し憤りを感じていた。その為戦時中に目の前のカガリにその怒りをぶつけて傷つけてしまっていた。だがシンも内心ではオーブ軍もオーブの市民を守る為に全力を尽くしていた事もウズミ代表の判断が間違っていなかった事も理解しており、またカガリにこれを言ったところで何の意味も無い事も分かってはいた。戦争が無い平和な世になって過去を振り返る事が出来る様になってシンは自身の感情に整理をつける事ができた。
「アスハ・・・前代表も今の代表も必死だった。それが正解なのかは分かりませんが少なくとも最善を尽くそうとしてたのは分かっていました。オレがガキだっただけです。なのにいまだにオレはあの人に謝れてないんです。頭では分かっているのに・・・心の中でまだあの人に怒りをぶつけてしまいそうになるんです」
懺悔をする様に項垂れるシンの言葉をセナは黙って聞いていた。シンの両親が死んだあの日にオーブ陣営として戦っていたセナにとってはシンの言葉は守れなかった罪を自覚させるものだった。だからこそセナはシンの怒りを正面から受け止めた。
「・・・私もオーブ軍も必死に守ろうとはした。それでも守れなかった。それを否定する気はないわ。私も・・・カガリも。だから君が謝る必要はない」
「オレは何も守れなかった・・・ステラを助けようと、結局アンタが助けなければ死んでたかもしれない。それにハイネも、レイも、グラディス艦長も・・・デュランダル議長だってオレは守れなかった。それにエリスだって・・・そんなオレが、あの人に何か言う資格なんて」
シンの心にあるのはセナと違って守れなかった自分への劣等感だった。自分は何も守れていない、そんな自分に人を非難する資格は無いと自身を責めるだけだった。そんなシンにセナは同情しつつも敢えて突き放す様に言葉をかける。
「アンタがどう思うかは勝手よ。けど一つ勘違いしてる様だからこれだけ言っておくわ。私は自分の力で誰かを守ったり助けられたと思った事は一度も無いわ」
「えっ?」
「戦場に出てできた事なんて目の前の敵を殺しまくるだけだった。そうして戦っても私には守れたものなんてほぼ無かった。私には共に戦い支えてくれた仲間がいたから、ただ破壊するしか能のない私の力を人を助ける事に使わせてもらってるだけよ」
「でも、それだけアンタに力があるからで」
「まだ分からないの?力の有無は関係無いわ。強いかどうかなんて大した事じゃない。仲間と協力して自分の足りないところを補い合う事が大事なのよ。一人で背負ったところで責任に押し潰されて壊れちゃうだけよ」
セナは自身の経験を交えながらシンに言葉を送る。かつてセナは自身で責任を負いすぎて心を壊してしまい感情を表に出せなくなった経験があった。今でも完全に治ったわけではないが以前よりは感情が出る様になっていた。セナはそんな自分と今のシンに似た様な雰囲気を感じ自分の様にならない様に責任を負う必要は無いと語りかけた。
「ちょっと話しすぎたわね。そろそろ行きましょう」
「良いんですか?まだ何買うか決めてないんじゃ」
「・・・正直言って私マユちゃんにカッコつけようとしたけど何が何やらさっぱりなのでどれ買ったら良いか分からないの」
「・・・オレ、アンタの事勘違いしてたのかもしれません。意外と普通の人なんですね」
「そりゃそうよ。元々戦闘に巻き込まれた学生が偶々モビルスーツを見つけて乗り込んだだけよ」
「そうなんですか⁉︎」
化粧品を買うのを諦めセナは店を後にする。しかしセナとシンの二人の距離は縮める事ができた。二人はお粥の材料を買ってる間もたわいのない話しをして交流を深めていた。
「ただいまマユ」
「おかえり、お兄ちゃん」
「お邪魔するよマユちゃん」
マユのいる部屋に帰ってきたシンとセナ。シンはお粥を作りにキッチンの方に向かいセナがマユの側に移動し近くにいたあった椅子に座る。
「セナさん、今日はすいませんでした」
「ううん気にしないで。体調不良は仕方ないって」
「ありがとうございます。一日中寝たらだいぶ良くなってきたので明日なら行けそうですよ」
「そっか・・・なら服脱いでくれる?汗拭いてあげるから」
「えっ⁉︎いや、自分でやれますから」
驚くマユをよそにセナがタオルを持って迫ってくる。マユはお腹の傷が原因で自分の体を人に見られるのが苦手だったので断ろうとしていた。
「やめてやってくれセナ。マユはあんまり人に体見られたくないんだ」
「そうなのシン?ごめんねマユちゃん」
「あ、いえ。てか待って、二人共なんかおかしくない?」
「オレとセナのどこがおかしいって?」
「それだよそれ!いつの間にか呼び捨てになってるじゃん」
マユの指摘通り今までの二人は互いにどう接したら良いか分からずずっと気まずい関係だった。しかし二人で出かけて踏み入った話しをしてる間に心の壁が崩れいつの間にか互いに呼び捨てで呼べる仲になっていた。
「あ、言われたらそうかも」
「確かになんか緊張しなくなってる」
「なんでどっちも気づかないのよ・・・」
能天気な二人にマユは呆れていた。セナとシンの関係がギクシャクしている事は二人の関係者全員が知っている事だった。しかし理由が理由なだけに第三者が口出しするものじゃないと見守るしかできていなかった。それがたった数時間で気づけば良くなってるなどかつて本気で殺し合った二人を知ってる者なら驚愕することだった。
「てかお兄ちゃん、セナさんに敬語使わなくて良いの?一応軍人として上下関係とか」
「そんな細かい事は気にしなくて良いの、元々軍人じゃないんだし私。改めてよろしくねシン」
「ああ・・・よろしくなセナ」
気さくに談笑しだすセナとシン。この日二人は本当の意味で和解する事ができたとマユは苦笑しながら密かに喜んでいた。後にプラントに戻ってからも仲良くなった二人の姿を見て関係者全員が驚きだすのはまた別の話しである。
マユのいる部屋に戻るまでの間に雑談をしてる内にシンは敬語が無くなっていきました。本当はこの部分も描写するべきなのでしょうが本当にただの雑談にしかならないのでカットにしました。本質的に二人は似ている部分がある、だからこそきっかけ一つですぐに仲良くなれると思いこんな感じにしました。