ガンダムSEED 太陽の少女 side night 作:黄金鷹
アカデミーの校舎を眺める水色の髪の少女エリス
「ここがアカデミーか・・・結構大きいわね」
今日から通い出すアカデミーを前に、これからの生活に想いを馳せるエリス。エリスがザフトに入る理由は幾つかありますがあるが、その中でも特に大きいのはお世話になっているクルーゼの力になりたかったからだった。
「おい、そんなところで突っ立っているなよ。邪魔だ」
後ろから声をかけられたエリスが振り向くと白色の髪の男が睨みつけていた。その男はエリス橙色の服とは色違いの緑の制服を着ていた。
「どこのどいつだか知らんが、入るならさっさと入れよな」
「それは悪かったわね・・・貴方もここへ?」
「当たり前だ。じゃなかったらここに来るわけないだろ、馬鹿か?」
「まぁ良いわ。また会えたらその時はよろしく」
白色の髪の男の鋭い言葉を流して校舎に入って行くエリス。これがエリスと白色の髪の男、イザークとの初対面であり、後に続く因縁の始まりだとはどちらも思いもしていなかった。
教室に入り自分の席に座るエリス。すると回りからヒソヒソと話し声が聞こえてくる。
「なぁ、あれ誰だ?」
「この辺では見ない子だけど・・・誰か知らないのか?」
「知らないな。あんな綺麗な子、見かけたらすぐ分かるからな」
「あのザラ議員の息子といい、今年は美形が多く集まる年なのか?」
顔を見るなりヒソヒソと話し出す同年代の男達に、エリスは飽き飽きしていた
(くだらない、容姿を見て判断なぞ二流、いや三流ね。ここに何しに来たのよコイツらは・・・)
内心回りを囲う同期達を小馬鹿にしながら時間が経つのを待っているとやがて、担当の教官が入ってきた。
「ようこそ、軍学校アカデミーへ。これからビシバシ鍛えて一人前にしごくから、そのつもりでな」
教官の一声で教室全体の空気がピリつく。アカデミーとはいえ、ここに入ったのならいずれは軍人として戦場に出る事となる。その為の訓練の日々が始まる事を学生達は自覚させられた。
(ラウもここで訓練してザフトに・・・エリートの証である赤服での卒業は、絶対条件。やってやるわ)
クルーゼの力となる為にザフトに入るのなら、クルーゼの部隊に入れる様に優秀な成績で卒業したいとエリスは考えていた。その為にまずはここで全力を尽くす事をエリスは心の中で決意していた。
「それではナイフの訓練からだ。一対一で先にこのナイフを相手の体に当てれば勝ちだ。それでは各々始めろ」
校庭に出たエリス達は教官から偽物のナイフを渡され、対人訓練をしていた。エリスの相手は最初に校舎前で話しかけられたイザークだった。
「さっきぶりだな。まさかこんなに速く相手する事になるとはな」
「私もびっくりよ。まぁよろしく、えっと・・・」
「なんだ知らないのか?俺はイザーク・ジュールだ。覚えておけよ」
「ジュールって、あのエザリア・ジュールの⁉︎」
「マジかよ、そんな大物の子供と会えるなんて・・・」
ジュールの名前が出た事でざわめき出す学生達だが、エリスにはピンときていなかった
「そう・・・よく分かんないけど、よろしく。私はエリス・シルファよ」
「ジュールを知らないって・・・なんなんだあの子?」
「シルファ・・・聞いた事ないな。どこの子なんだ?」
「何?・・・まぁ良いさ。これから嫌でも覚える事になるだろうからな」
エリスの発言を挑発と捉えたイザークは臨戦態勢になるが、エリスもわざと知らないと言ったわけではなかった。
エリスは基本的にクルーゼに連れられる以外では今までは外に出なかったのだ。その為世間体やら世界情勢などに疎く、ご近所の人の名前すら把握しきれていない程浮世離れしていたのだった。
「それじゃあ、始めましょう」
「ああ、そうだな!」
イザークがナイフをエリスの顔に向けて振る。その一振りをスレスレで躱わすエリス。その後も何度かイザークがエリスに切り掛かるが、エリスは全て紙一重で躱していく。
「凄え!あの激しい攻撃を全て避けてる!」
「全部見えてるのか⁉︎あんな速いのに」
「凄いですねあれ・・・僕も頑張らないと」
緑の髪の男、ニコルはエリスの動きを見て感心していた。無駄のない動きで確実に攻撃を避けているその姿はとても今日が初日の素人とは思えなかった。
「クソ!なんで当たらないんだよ!ええぃ!」
苛立ちが募り出すイザークは焦りを感じながら攻撃を続けるが、エリスには一つも当たらない。逆にエリスは今までの攻撃からイザークの動きを見切っていた。
「クソ!クソ!おのれぇぇぇぇぇ‼︎」
「・・・そこだ!」
焦ったイザークが振りかぶったところで素早く懐に入ったエリスはナイフを横に振り抜き、イザークの腹部に叩きつけた
「グゥ⁉︎クソッ!」
「おお!すげぇ!」
「あのジュール家に勝ったのかあの子!」
「何者なんだ、あの子は?」
イザークに勝ったエリスに賞賛の嵐が起こる。だがエリスからすれば何故そこまで絶賛されるのか分かっていなかった。
「・・・何これ、見せ物にでもされたの、私達?まぁ放っておこ。アンタ、じゃなかった。イザーク、大丈夫?」
「うるさい!次はこんな無様は見せないからな!覚悟しておけ!」
捨て台詞を吐き捨てその場を離れるイザーク。その背中を見送ったエリスは、何故ここまで敵意をむき出しにされた意味が分からず首を傾げていた。
「・・・これがアカデミーか。思ったよりなんとかなるかもね」
それからも訓練の日々は続いていき、何度もイザークに挑まれては返り討ちにする日々を繰り返していた。そして負けて悔しがりながら怒るイザークを友人のディアッカとニコルが宥めて去っていく光景はアカデミーでも日常となっていた。
「クソォ!次は覚えてろよ!」
「これで何度目だよイザーク・・・いい加減懲りろよな」
「それでは僕達はこれで。気をつけてエリス」
「ああ、うん・・・そっちもお疲れさん」
もう何度目かも分からない同じやり取りの後、エリスは宿舎の自分の部屋に向かった
「・・・はぁ、疲れた。イザークも毎日毎日、飽きないわね」
「それはそうとしか言えないですよ。同期達の中でも貴女はトップクラスですから。ライバル視されているんですよ」
ベッドにうつ伏せに倒れ込むエリスに同室のシホが話しかける
「そんなの、アスランの方に行ってよね。トップはあっちなんだしさ」
「エリスさんもほぼ互角じゃないですか。いずれトップになれますよ」
「う〜ん、もちろんトップは狙うつもりなんだけど、なったらなったらで大変だからねぇ・・・」
イザークは何度も勝負を挑んでくるほどの負けず嫌いではあるのだが、それはアスランも同じだった。基本的にどんな事もそつなくこなしてみせる程優秀ではあるのだが、何度かエリスに成績で負けるや否や全力で特訓してエリスにリベンジを挑んでくるのだった。
「全く男って奴はどうしてこんな負けず嫌いが多いのやら・・・」
「そうかもですけど、エリスさんも人の事言えなくないですか?」
「だって、勝ったら満足してすまし顔でどっか行くのよアスランの奴。すっごいムカつくのよね・・・そっか、イザークってこんな気持ちだったのか。次はもう少し優しくしてやろう。アドバイスとかしたら良くなるかな?」
「それは・・・多分余計怒るだけですよね」
「やっぱりか・・・はぁ、疲れた」
制服のボタンを開けただけの中途半端な状態でそのまま寝ようとするエリス
「エリスさん。せめてちゃんと着替えてから寝ないと、伸びますよ制服」
「今日はもう無理。疲れた」
「いやそんな子供みたいなこと言われても・・・ほら、手伝いますから着替えましょうよ」
エリスの肩を掴んで起こし、制服を脱がして上げるシホ
「・・・シホみたいな母親いたら色々楽できそうだね。お世話してくれそうで」
「はい⁉︎な、何を急に⁉︎」
「というよりこんな風に脱がされるなんてね・・・えっち」
「いや女の子同士でしょ⁉︎変な事言わないでください!」
「シホはノーマル派か。それよりもこっちばかり脱がされるのは平等じゃないよね?」
「えっ?何を言って・・・」
「ふふ、隙あり!」
危険を感じ離れようとするシホに飛びつくエリス
「キャァ⁉︎何をするんですか!」
「ふふふ、せっかくだしシホのこと、堪能しよう。えい」
馬乗りになってシホの制服のボタンを開けてはだけさせるエリス
「おお、結構あるじゃない・・・こんなの隠してたのね」
「なんか言い方気持ち悪いですよエリスさん!」
「気持ち悪いは酷くないかしら?そんなこと言う悪い子には、お仕置き」
シホの脇腹をつっつき始めるエリス
「ヒャァ⁉︎や、やめ、ハン⁉︎」
「良い反応するじゃない?ならもっと」
「ヒャァ、も、もうやめ」
「おい、居るのかエリス?入るぞ」
「よしとけよイザーク。寝ているかもしれないだろ」
「鍵を開けたまま寝ていたら間抜けと笑うまでわやるよ・・・ん?」
エリスに借りてた本を返そうと部屋を訪ねたイザークと何故か連れられたディアッカが部屋に入ってくる。そしてイザーク達は、服がはだけた状態で密着しているエリスとシホの姿を見てしまった。
「なぁ⁉︎な、何をしているんだ貴様ら⁉︎」
「ちょ⁉︎何勝手に入ってるのよ!このバカ!」
咄嗟にイザークの顔面を殴り、部屋の外にぶっ飛ばすエリス
「グハッ⁉︎何しやがる!俺はノックをしたし、部屋に入ると一言言っただろうが!」
「だからよしとけと言ったのに・・・悪いなシホ」
「あ、いえ。わざとじゃないのなら・・・」
「ちょっと!なんで私には謝らないのよ」
「一応声かけたのに無視するからだろうが」
「気づかなかっただけでしょうが!アンタ達、次の授業では容赦しないからね!」
「望むところだ!今度のモビルスーツ戦は俺とディアッカのコンビで勝ってやるからな!」
「俺まで巻き込むなよな・・・」
「ほう、タッグ戦ね・・・なら私はニコルでも誘おうかしら。ギタギタのメタメタにしてやるから」
イザークの相手は疲れたと言いながらも、次の勝負に燃えているエリス。この時は気づいていなかったがこうして競い合い高め合える仲間と、友達と過ごしたこの日々が幸せだったと気づくのはまだ先の事だった。
エリスにもこんな風に同期達相手にくだらない事で盛り上がるという事があっても良い気がしました。何気にシホを出すのは初めてですね。今後も出番があると良いですね・・・