俺は勢いよく二年椿組の教室のドアを開く。
「よお、白鳥ぃ!元気にやってるかぁ!?」
「元気にやってるぜ、こが…み…ちゃん…?」
白鳥は俺を見て絶句する。
黒のマッシュヘアーは真っ白に染まっており
左目には紫色で山茶花の刺繍が入った眼帯をしており
右目はカラコンを入れて金色になっており
制服はダルダルに着崩しており
左腕には包帯が巻いており
鞄にはモデルガンが二丁ぶら下がっている。
俺は劇的にイメチェンを施した。
誰がどう見ても別人にしか見えないはずだ。
「…イメチェンか…?なんか…すげえな…」
「まあな。昨日のギャンブルの影響だ。」
「そ、そうだ!3000万負けたって聞いたぜ!?大丈夫か?」
大丈夫だ。残り2000万になった。ここから最低でも3億は稼ぎたい。
2000万から3億にするには4回ルーレットで勝てばいい。
確率にして1/16。これぐらい通さなきゃ妄さんには到底届かない。
というわけで青天井のルーレットに挑むことにした。
「これはこれは孤ヶ見さん…随分お変わりで…」
「マーチンゲール法で稼がせてもらったからな。今回も稼がせてもらうぜ。」
「今回で取り戻したいですねえ…いくら賭けますか?」
100万チップを20枚どんと置く。
「2000万。3億になるまで『逆マーチンゲール法』で稼がせてもらう。」
全てを賭けた連続ダブルアップチャンスだと思ってくれればいい。
外せば破滅、当て続ければ無限に利益が増えていく。
今の俺にはちょうどいい。ポチになったら妄さんに公式戦を挑める。
「プレイスユアベット。」
運命のルーレットが回り、鉄球が走る。
「黒に20枚だ。」
「…ノーモアベット。」
黒の20に入る。まず4000万。
「…お見事です。まだ続けますか?」
「3億になるまでやるっつっただろ?40枚賭ける。」
「プレイスユア」
「黒に40枚。早く回せ。」
「…ノーモアベット。」
黒の22番に入る。8000万。
「…プレイ」
「黒に80枚。時間がもったいねえ。」
「…ノーモアベット。」
黒の20に入る。1億6000万。
「プレ、おっと…これは失礼…」
ディーラーが鉄球を床に落とす。流石に動揺しているか?
「構わねえよ。負けて動揺するのは仕方がねえ。黒に160枚。」
俺は余裕の態度を崩さない。
「…一応言いますよ。プレイスユアベット。」
再びルーレットが回る。
「おっと…悪い、眼帯が落ちちまった…」
俺は眼帯を整えるフリをしてワザと眼帯を落とす。
「お気になさらず。私も商売道具を落としてしまいましたから。」
眼帯を拾うため屈んで机の下を見る。あった。
机の裏に手を伸ばし、ついでに眼帯を拾う。
「…左目はご無事なのですね。よかったです。」
「ファッションだ。『まだ』潰したくねぇんでな。」
鉄球は黒の20に入る。これで3億
「馬鹿な!?なぜ黒に入る!?」
ディーラーが突如大声を上げる。
「…なぜもなにもねえだろ?およそ1/2で入るんだからよ?
それとも…『赤に入るようにした』のに黒に入ったからか?」
「!?な、なぜそれを!?」
「三回とも20代の黒に入ったら疑うだろ、イカサマ。
『狙って入れられる』にしても100パーセントじゃないだろ?
『3億になるまでやる』って言ったら…最後で勝ちたいよなあ?
だから4回目でイカサマを決行した。」
ディーラーは顔を青くしている。
「なぜ…怪しい要素はなかったはず…」
「命がかかってる場面で、商売道具落とすやつがどこにいるんだよ?
まして鉄球を使っている、『机の裏に電磁石のスイッチがある』…
これが思いつけないようじゃ、この学校では生きて行けねえな。」
「こんな試合無効」
俺はモデルガンを突きつける。
俺が妄さんを意識したイメチェンをしたのはこのためだ。
知ってる人間からしたら実銃にしか思えないはずだ。
「このイカサマのことは黙ってやる…だから金払えよ。」
こうして俺は3億2000万円を手に入れた。
没案では蛇喰さんにディーラーをやってもらうつもりでした。
でも、さっぱり終わらせたいので止めました。