「「「孤ヶ見!美化委員会にようこそ!」」」
「はあ…生志摩委員長が認めた以上、私も歓迎しましょう。」
「こ、孤ヶ見さん!一緒に頑張りましょうね!」
「これで私にも後輩が…いや、こんな後輩…」
俺は一人を除いた美化委員会一同からの歓迎を受ける。
「妄さんも歓迎してくださいよ?というか妄さんから歓迎されたいんですよ?」
「うるせえ…黙って歓迎されてろ…」
明らかに不機嫌な妄さんはもちゃもちゃガトーショコラを食べてる。
『ようこそ孤ヶ見!』と書いてあるチョコプレートごと食べている。
「それじゃあ歓迎されますよ。妄さん、あーんしてくだ」
「ほら。食えよ。」
長めのガトーショコラを二本、口にぶち込まれる。
口いっぱいに広がるカカオの香りと濃厚な甘みが
「仕事だ。演劇部の滞納金を回収して来い。食いながら行け。頼んだぞ。」
推しからのあーんを堪能する間もなく初仕事に向かう。
「ひふれいひまーす…ゴクリ。美化委員会です。滞納金の回収に来ました。」
ガトーショコラを飲み込みながらその扉を開く。
「待っていましたよ。滞納金額は1000万でしたっけ?」
部長と思われる金髪の歌劇調の男が、うざったらしい動きでやってくる。
「おや、ニューフェイスかな?私の名前は『七子権(ナナシゴン)』…
ジョン・ドゥとでも呼んでください。早速ですがお断りしま」
「ギャンブルで決めよーぜ。」
「…それなら話は早いですね?」
くだらない駆け引きなんかどうでもいい。早く歓迎会に戻りたいんだ。
「手早くポーカーで、掛け金は互いに1000万…チップは50万チップ20枚でいいだろ。」
「いいでしょう…さあ…ギャラルホルンが響き渡る!舞台の幕開けだ!」
早速ディーラーがセカンドディールをやっていたので、手を掴んで咎める。
「下らねえイカサマすんじゃねえよ?ここで幕引きにするか?」
「これぐらいは見破ってもらわないとつまらないですからね…」
「次にイカサマしたら無条件で負けにする」
「孤ヶ見ぃ!取り立てはどうだぁ!?」
何故かご機嫌な妄さんがドアをけ破って入ってくる。
「…まだ、終わってませんよ。そうだ『妄』、ディーラーやってくれませんか?
こいつらイカサマして」
「気安く呼び捨てにすんなよ。…ディーラーはやるけどなぁ。」
拳銃を喉元に突きつけられる。やっぱり不機嫌みたいだ。
「『妄さんがディーラーをやる』…この条件は守ってもらおうか。」
「イカサマを見逃すなんて…甘いお方ですねえ?」
甘い判断なのは十も承知だ。でも、俺のスタンスは変わらない。
「妄さんの前でかっこいいところ見せたいんですよ。」
こうして取り立てのためのポーカーが始まった。
数ラウンドが終わり、俺のチップは今13枚。負けているが…そんなことどうでもいい。
疑惑を確信に変える一手が欲しい。こいつらの『イカサマ』を暴く一手が欲しい。
「すみません部長、次回の舞台の予算案」
「今、取り込み中だぁ!…後にしろ。」
妄さんが反時計回りに振り返って返答する。
「わりぃなぁ孤ヶ見、邪魔が入っ」
「いい加減にしろてめぇら!」
俺は怒りのあまり思いっきり机を蹴り上げる。テーブルはめちゃくちゃになる。
「おいおい、なんだよ急に」
「あまりにも粗雑すぎる!演劇部なら本気で演じろよ!」
目の前の女の胸ぐらをつかむ。
「…お粗末なのはお前」
「二度とその姿を見せるなよ…『偽物』があ!」
俺は目の前の女の左目につけてるいる眼帯をはぎ取る。
三白眼じゃない普通の黒目があった。
「な…!?」
「馬鹿な…!?なぜわかった…!?」
「振り返り方だよゴミども!」
大根役者の三枚目にすらならないゴミどもに説明をする。
「『本物』の妄さんは左目をつぶしている…つまり左側の視界はないんだ!
その状態で反時計回りに振り返ってみろ…『後ろなんか見えない』…!
だから『本物』の妄さんは『時計回りにしか振り返らない』んだよ!」
当然の理屈も分からないゴミどもはあっけにとられている。
「なにより…妄さんは俺に『頼んだぞ』って言ったんだ!
『どうだぁ』なんて聞きに来るわけねえんだよ!
『終わったかぁ』か、『そもそも信頼して来ない』の二択なんだよ!」
「孤ヶ見ぃ…取り立ては『終わったかぁ』…?」
今度は不機嫌そうな妄さんが扉を蹴破って入ってくる。
「…うへっ、なんか面白そうなことになってんなぁ…?」
「なにも面白くないですよ…こんな変装、幼稚園児にも笑われる…」
条件を守れなかった演劇部の敗北が決定したが…
それだけじゃ、俺の怒りは収まらない。
「妄さん。銃を貸してください。」
「あぁ?取り立てに使うのかぁ?構わねぇけどよ…ほら。」
妄さんから銃を渡される。『少し重い』。おそらく、弾が1発だけ入っている。
「妄さんになりたかったら…その左目を潰すところから始めるんだなあ!」
目の前の女に向けて引き金を引く。
左目どころか命も潰れてしまえ。
弾は出なかった。目の前の女は情けなく震えて失禁している。
「…1000万はもらっていく。カーテンコールはいらねえ。
…駄作にもならねえ舞台だったな。初出演がこれなのは…人生の汚点だ。」
初仕事を終えても、その後の歓迎会を終えても、俺は不機嫌だった。
「…孤ヶ見、仕事の褒美が欲しいか?」
そんな俺を見て、妄さんはとんでもない提案をする。
「私とギャンブルをして…『勝ったらヤらせてやるよ』。」
次回、最終回です。