今、美化委員会の部屋には俺と妄さんしかいない。
「今のお前なら…あたしを『奪ってくれる』…そうだよなぁ…」
「ええ…ですが、ただ奪ったのではつまらない…だから…」
「「『ギャンブルで決めよーぜ』。」」
互いの行く末を決めるギャンブルが始まる。
「ルールはシンプルだ。今からアタシが拳銃に何発か弾を込める。
お前はそれを見たり聞いたりすることはできない。
そして互いに向けて撃ち合う。先に弾を打たれた方が負けだ。」
なんてことはないロシアンルーレットだ。なんとも思わない。
「それではお願いします。0発なんてつまらないことはしないでくださいよ?」
俺は目と耳を塞ぐ。
ほどなくして妄さんから肩を叩かれる。終わった合図だ。
「先攻後攻はお前が決めろ。」
俺は遠慮なく銃を取る。想定通りの重さだ。
「もちろん先攻です。先攻の方が有利ですから。」
「うへっ…確率的にはどっちでも同じだけどなぁ?」
俺は妄さんに銃口を向ける。
「妄さん…俺は貴女に出会って人生が変わりました。」
「おいおい、随分過激なプロポーズじゃねぇかぁ?」
妄さんは嬉しそうに笑う。
「痛みを求めて狂っていく様…どこまでも痛みを求める狂気…
本当に俺好みの人です。貴女に痛みを与えられることを幸せに思います。」
「だったら早く撃てよぉ!昂ってしょうがねぇんだよぉ!」
妄さんは自身のこめかみに銃口を突きつける。
「まあまあ、顔や頭を撃つのは俺の好みじゃないんで。
胸にしましょう。生きるか死ぬかのギャンブルもできますから。」
俺は妄さんの胸に銃口を向ける。
「愛しています。妄さん。」
引き金を引く。部屋に銃声が響く。
「…何だよ!ブルっちまって的が外れたかぁ!?焦らすなぁおい!
今度はあたしの番だが安心しろぉ!お前に当てたりはしな…」
妄さんには銃弾は当たらなかった。その代わり…
俺の左手に焦げ付いた穴が開いていた。
「…でも、『妄さんは俺を愛していますか』?」
俺は痛みを耐えながら言葉を紡ぐ。
「俺は『妄さんだけに痛みを与えたい』んです。
でも、妄さんは…『痛みを与えてくれるなら誰でもいい』んじゃないんですか?
妄さんも…『孤ヶ見響だけ自分に痛みを与えてほしい』じゃなきゃ嫌なんです。」
「だって俺は…『生志摩妄を愛している』から。」
ああ、こいつは。
こいつは『自分のため』にも『私のため』にも動いている。
私が望めば望んだだけの痛みを与えてくれるだろう。
そして、私に手を出そうとするやつを誰だろうと排除する。
例え美化委員会のメンバーでも、果ては生徒会長すらも対象かもしれない。
いや、あたし自身を殺すかもしれない。
あァ畜生
孤ヶ見…お前は本当に
おかしい奴だよ
「先に弾を食らった以上…ギャンブルは俺の負けです。
何でも受け入れますよ。買った時の報酬は聞いていましたけど…
負けた時のことは聞いていませんでしたから。」
俺は思いを打ち明け満足していた。
「それじゃあ、あたしの言うことを一つ聞いてもらうか…
孤ヶ見…『あたしに一生痛みを与え続けろ』。
これからあたしは…『お前からの痛みしか受け付けない』。」
妄さんは優しい笑みで俺にそう告げた。
「…喜んで。」
俺は再び拳銃を妄さんの胸に向ける。
「これからよろしくお願いします。『妄』。」
再び部屋に銃声が響いた。
これにて完結です。