精霊幻想歪伝   作:四重茶

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時間かかるけど1話分、長くして見るのと、今の感じで3000字前後で小まめにしていくのはどっちか良いんでしょうかね。
ただ、小まめに刻んで展開が遅くなりすぎるとちょっと助長になっちゃうのを最近、分かったので難しいところさん。


第4話:無明の背後

際どい展開であったものの、白旗を上げることによって何とか修羅場を乗り切ったカムン。

手錠を掛けられ少女たちの居住地がある場所へと連行されることとなる。

日も落ち、真宵が支配する時間帯となっているためかぽつぽつと小さい灯火が家屋の窓から零れるのみで出歩く住民は見当たらない。

だが視線は強く感じる。

閉鎖社会特有の外からの流入者に奇異と警戒の目を向けているのだ。

カムンの居丈は190もある事ながら他の少女たちと比べても二回り以上は背が高い。

そのため余計に目立つ結果となっている。

暗闇と衆目の中、カムンと気絶している少年は牢にそれぞれ入れられることなった。

ようやく落ち着ける場所に着けたと殺風景な牢の中でカムンは深く息を吐く。

次元孔を見つけて飛び込んでから修羅場続きで中々腰を据えた考えができなかったのもある。

身体を伸ばし、気持ちをリフレッシュしながらカムンは次の手を考える。

とはいっても基本は待ちである。

あれこれを見て連れ込まれたこの地域が一体、どのような特色を持ち、どのような需要があるのかをつぶさに観察していく。

概ねは大型樹木のうろを再利用したり、ツリーハウス等の木製家屋が中心であろう。

この牢も木板によって構成されたもので、使える素材に限りがあることを伺える。

とはいえカムンという存在を閉じ込めるには些か素材の強度が足らない。

一発ほど適当にフロントキックでも打ち込んだらあっさり穴ぽこができてしまうだろう。

問題は他にもある。

カムンの手を封じている手錠なのだが。

どうやら生力(ルラーナ)、とは別のエネルギー操作を阻害するシステムが組み込まれているが、逆にカムンが垂れ流す大圧力を前に爆発寸前で逆に抑え込んで暴発しないよう気にかけている始末だ。

こればっかりはカムンの体質的な都合で致し方ない部分だが、まともに寝ることが叶わない。

適当に力を込めてしまえば簡単に引き裂けるであろうし、神経を余計に使っている。

 

「へぇい!看守さぁん!」

 

期待はしていないが取り敢えず要望を出しておくことにはする。

なんだぁ!?と不機嫌そうな声が聞こえてくる。

案外優しいなぁと思いながら手首で燃えるような熱を放出する手錠の交換を提案してみる。

 

「早速で申し訳ないんだが、この手錠が爆発しそうだからちょっと普通のに入れ替えて欲しいんだが・・・」

 

当然、訳が分からないといった表情を看守はしていた。

彼らの常識から考えれば魔力(オド)封じの枷が過負荷(オーバーロード)を起こして爆発するなど聞いたことがない。

適当にはぐらかされてスルーされたのでカムンはわざとらしく誇張しながら相手の気を引こうとする方向にチェンジする。

 

「オウワー。ヤバイヤバイ、ちょっとこの手錠熱くなってきたんですけど火傷しそう。うわ、何がガタガタしだしたぞ。ついでに柵もガタガタしだしてきたんですけどこれどうしますー!?」

 

実際、なぜか牢屋の柵も含めてガタガタ振動しはじめてしまった。

ちょっと元栓を緩めた途端これだ。

ポルターガイストもびっくりであるとカムンは遠い目をしてしまう。

改めて来た看守もホカホカと灼熱している魔力封じの枷とガタガタ建屋ごと揺らしかねない振動をしている柵を見て物凄く呆気、というか恐怖で染まった表情(かお)をしたがさすがに事態を重く見たのか上司に相談し、最初は同じく怪訝な反応を示していたが灼熱発光している手錠と自壊しかける勢いで振動する柵の様子を見た途端、普通の鉄製に替えてくれた。

不用意に触った看守が「あっぢ!」と鋭い悲鳴を上げたような気がしたが取り敢えずスルーしてあげることにする。

と、こんなひと悶着あったがようやっと本当に腰を落ち着かせることができた。

適当に個人収容空間から枕を取り出して寝っ転がりながら【外】にいるアークライトへ連絡を取ろうとしたが。

 

「?」

 

連絡用の薄い棒状のデバイスが外に居るであろうアークライトが保有する同型のものに繋がる事はなかった。

いつもなら多少ノイズが入っていても繋がることができるのだが、今回はうんともすんとも言わないで砂嵐特有の雑音だけが響く。

どういう事だと訝しげに色々調節を試しているが、すべての領域で何かが隔絶しているのか連絡を取ることができないでいる。

これが何を意味するのかというと、この世界からの脱出ができないということであった。

 

「――――冗談きついわえ・・・」

 

一瞬、絶句してすぐさま事態の把握に努めるべく思考を走らせる。

先ほどの手錠が原因か、とカムンは思慮するがすぐに違うであろうと否定した。

あの程度の自然に出している生力の奔流で発火しかねない物が外した後でも術式や能力にまで阻害し続けることは考えづらい。

もっと大きな【何か】によって妨害されていると考えるのが自然だ。

だがまだそうだと確定した訳ではない。

縋る思いで【回廊】へ脱出するための術式を作動させてみる。

看守にばれないよう、こっそり、丁寧に起動させるが。

 

「ダメか・・・」

 

術式は正常に稼働したはずなのに突入点の座標をロックどころか探すことさえできなかった。

この世界からの脱出ができないことが確定した。してしまった。

星を喰らう蛇はまんまとこの【蟻地獄】に捕まったのだ。

 

「やられたぜ・・・クソめが」

 

珍しいぐらいストレートな悪態をカムンは吐いた。

ヤバくなったら脱出という安易な逃げが封じられてしまい、仲間との音信も断絶してしまった。

これは、拙い。

非常に拙い。

とんでもなく拙い。

カムンはでかいところの代表取締役社長を務めている。

もっとも、そろそろ会長等の名誉職を作るか退職して後進に道を譲ることを考えていたが現状はまだ責任重大な役職についている。

何より。

 

「・・・【妻】に殺されかねぬわ・・・」

 

一番拙いのは妻に娶った人の不孝であろう。

頬に一撃食らうだけならまだ安いことだ。

恐らく彼女は責任感もあるから社長職を代行する可能性がある。

まあそこは副社長をしているアークライトが何とかするだろうが。

 

「――――うむ!考えてもしょうがないな!!」

 

結局、カムンはあれこれ心配することをやめた。

今は帰還することか外部に連絡を取れる手段を確立させる行動をした方がよいと判断する。

一応、資源は豊富そうな世界だ。

割かし何とかできそうと強引に楽観する。

面倒な事態が発覚した為か急に疲れを感じたので取り敢えず寝よう。

ここ最近、まともに寝た記憶がないが偶には寝て【生き心地】に浸りたいものだ。

ごろりと壁に向かって横寝して目をつぶった。

思いのほか気絶するかのようにカムンはスッと睡眠の世界へ向かっていった。

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