精霊幻想歪伝   作:四重茶

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次の話が1万字超えちゃってこっちだと分割した方がいいかなって思ってます。
もうちょっと速度重視にするか、それとも分量重視するのか見極めなければいけませんね。


第5話:歪みの始点

不貞寝を決め込んで幾分時間が過ぎ、夜も更けった頃。

何か動きを感じ取ってカムンはパっと目が覚める。

どうやら隣の独房に居た少年を巡ってひと悶着があったみたいだ。

あの場に居た少女たちと少年の連れである娘っ子、更には老嫗(ろうう)が少年の居る独房に入っていく。

彼女らの身体的特徴は大まかにはホモ・サピエンスと同じであったが、大きな外耳と長い尾という獣の器官らしき物を持っていたり、耳輪が長かったりと決定的に違っている箇所も見られ、【人間】と捉えるのには些か無理があった。

人獣(ワークリーチャー)】と呼ぶべき者だ。

耳輪が長いのはエルフ、小さい者は・・・ドワーフというべきだろうか。

何れにしろカムンの出身世界においては存在しえないホモ属の存在である。

話を移すのか、少年たちが独房から出てくる。

そこで少年は初めてカムンを認識し、思わず疑問を老嫗に投げかけた。

 

「あの方は一体―――?」

 

如何せんこの長身の男は自身が気絶した後に突如として現れた不審人物。

見覚えがないのも当然と言えよう。

 

「偶然、ホント偶々現場に居合わせたしがない商人さ」

 

肩を竦めながらカムンは皮肉たっぷりに言葉を紡いだ。

 

「ラティーファ、あの人は?」

 

と少年は連れの人獣少女―――ラティーファに問いかける。

彼女はかぶり振って知らないことを伝える。

 

「彼は貴方を捕縛したのちに転移してきたのです」

 

「転移、ですか・・・」

 

どうやらこの世界にもテレポーテーションの技術が存在していることをカムンは理解する。

彼から見ればそこまで文明レベルが高いとは思えないが法則の人為的な書き換えができる世界ならそういう歪な発展が起こっても不思議ではない。

 

「まあ、ある意味で転移してきたと言っても間違いではないでしょうな」

 

実際には侵入(イントルード)ではあるが話が拗れそうなのでカムンは黙っていることにする。

 

「やはりッ!リオ殿は違うが、こ奴めは極めて怪しいです!我ら精霊の民を略奪しに来た薄汚いコソ泥だッ」

 

と、傍に居たウズマが嫌悪と警戒を隠すことなく罵声を浴びせてくる。

そう受け止められても仕方はないがストレートな物言いに思わずカムンは苦笑いを隠せなくなった。

 

「何が可笑しいッ!?」

 

乾いた笑いを浮かべたカムンにウズマは泡を食う様に詰める。

制止を訴える老嫗の獣人の声すらも入らないレベルだ。

 

「いやー申し訳ない。別に馬鹿にした訳でもないんだがそういう焼き畑農業的な考え方は(わたし)の趣味ではなくってね」

 

枷の鎖を張り緩みさせ、じゃらじゃらと音を出しつつカムンは続ける。

 

「しかし、(キミ)の懸念もまた間違いではない。そこに需要と金があるなら欲望を貪るのが生き物というものだ」

 

肩を竦めようとしたが鎖が邪魔をしてそれは叶わなかった。

というより鎖を思い出して千切ってしまいかねないのを脳裏に浮かんだので咄嗟にやめたという方が正しい。

 

「象牙、龍垂香、毛皮のコートに絹・・・君たちを見ていればこれらと同じ・・・あるいは別の需要や意味を見出すのも無理からぬものだよ」

 

商品を見定めるような物言いにウズマは怒髪天を衝くような形相でカムンを睨んだ。

だが、これは同時に事実である。

でなければカムンに対して誘拐嫌疑をかけるような警戒はしていない。

発生しているから彼らは厳しい対応を取っているのだから。

しかし、どちらかというと褒めているといった方が正しい。

商品にする価値があるほど整っている、美しいということでもあるからだ。

おまけに能力も高く、知性もある。

分別付けれる調教(トレーニング)を施せば優秀な(ユニット)として使えるだろう。

 

「ウズマ。やめないか、話が進まぬ」

 

老嫗の狐のような器官をもつ獣人がウズマを強い口調で直々に制止を掛けた。

正直、ちょっと落としどころがまだ掴めなかったカムン的にもこれはありがたいものである。

 

「失礼した。我々の若人たちが時たま、姿を消すことが間々あって警戒をせざるを得ないのだ・・・まずはそちらの名を伺っても良いかな?」

 

「これは丁寧に・・・それと申し遅れてしまいました。私奴(わたくしめ)はカムン。カムン・テレイズと申すものでございます。しがない運送会社の代表取締役社長を務めております」

 

スッと常備している名刺入れを懐から取り出し、順序良く、かつ滑らかな動作で名刺を老嫗に渡す。

 

「むぅ・・・」

 

しかしちょっと字が小さかったのか老嫗は目を細めながらそれを確認した。

その名刺は特殊なインクを採用しており、読み込みの際に文字という認識があるならそれに合わせた言語へ自動でそう【認識】される優れものである。

当然、原価からしてちょっと高いのでそう大量に用意はできない。

 

「大まかな事は理解できた。私はアースラ。この里で獣人族長老を務めさせてもらっている」

 

おっと、中々の重鎮が出てきたとカムンは感心する。

 

「今回の件に関して、こちらの不手際があったこと、謝罪申し上げる」

 

と頭を下げられてしまった。

カムンとしては何かと文句を言われ、しばらく拘留は受けることを覚悟していただけにこの結果は本当に意外であった。

 

「いえ、こちらの不手際も相まってということですので、事前の断りなく侵入した件に関しましてはこちらの非が重いと存じております。どうぞ、頭をお上げてください」

 

ここで足元を掬う動きをするのは絶対にNGだ。

ガメツイ奴だと思われれば信頼を築くのにも支障をきたす。

故に互いの失敗を水に流し、改めて交流を図るのがマストであるとカムンは判断した。

それが功を奏したかは分からない。

この後、諸々の話をアースラと交わした結果として保釈という形で一旦は出所することができた。

現状は緊急で招集されている長老会議での判断待ちとして少年たちと共にカムンはゲストハウスで待機することとなった。

 

「やっと一息付けるわえ・・・」

 

さしもの大魔神であったとしても神経のいる判断を続けていては心労も溜まる次第である。

不貞寝をしてもそこまで長い時間を取れなかったのでむしろ逆に眠くなる始末だ。

 

「ところで、改めて君たちとは自己紹介をした方がよいかな?」

 

安心して爆睡している少女、ラティーファを見守っていた少年にカムンは声を掛ける。

ここで出会ったのも何かの縁、交流を図るのも悪くないと考えた結果だ。

 

「そう、ですね・・・オレ―――失礼、私はリオと申す者です。あなたは―――」

 

「よいよい。気負って話す必要はない。先ほど紹介したが、カムン・テレイズだ。奇縁であるが以後、お見知りおきを」

 

カムンは名乗ると共に手を差し出し、握手を求める。

リオはその手を一瞬、見て止まったがそのまま握り返す。

かくて彼らは出会った。

存在しえない莫大な力によって、運命の道模様は、この時より少しづつであるが歪み始めることとなる。

その歪みが極致に達するのは、もう少し後の話。




何故かルビ変換が機能してなかったので修正。
お目汚し失礼しました。
寝不足のまま編集するものではないな(
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