ちょっと長くなりましたが5000文字ぐらいとかで一話作った方がいいのか、4000文字以内で収めて分割するのか、ちょっと迷いますね。
「ドリュアス様、それはリオ殿の中に高位精霊様が眠っておられる可能性がある、ということでございましょうか?」
アースラがおずおずと言った感じで問いかける。
うーん、とドリュアスは上手く答えが引き出せなかったのか少し悩んだのちに口を開いた。
「かつて六大精霊と呼ばれた高位精霊たちは千年以上前に起こった神魔戦争で全員が行方不明になっているけど私も人型に至った精霊たちを全部知っている訳じゃないから・・・可能性がないって訳じゃないわ」
これまた興味深い情報が出た、とカムンは視線を光らせる。
高位精霊とはイコールで六大精霊・・・恐らくは各
それらは歴史の彼方へ消えていった神話の如き大戦で姿をくらませているという。
きな臭さを感じる、とカムンは直感した。
その精霊王が眠っている可能性がある、と聞いた精霊の民は思わず感嘆の声を上げる。
「本人を起こして話は訊けませんかね?」
とリオは提案してみたが。
「それは止めておいた方がいいわ。だいぶ消耗しているのか、深く眠りについているから無理やり起こしちゃうと却って休眠が長くなってしまうわ」
「・・・・そうですか」
ドリュアスからはリスクに見合わない結果にしかならない、と告げられるとリオは大人しく引いた。
「ま、ほっといてもそのうち目を覚ますでしょうから、気長に待ちましょう」
あっけんからんにドリュアスは締めた。
そんな適当でいいのか、とカムンは思うが無理にすることでもないのなら時間に任せるほかなしというのは妥当な判断であるとも納得している。
「それより、もし高位精霊だったならば大変なことになるわよ」
そうドリュアスがいたずらっ子のように微笑みながら語る。
リオは面食らった表情をしたがカムンはすぐに理解した。
ここの人々は精霊を深く信仰している。
準高位精霊であるドリュアスへの態度を見ていてもそれは歴然としていた。
「少なくとも、リオ殿の身体に準高位精霊様がいらっしゃり、契約を結んでいらっしゃる・・・その対応は考慮しなおさなければならぬ・・・」
「そうだな・・・【聖人】としてお迎えせねばなるまい」
また大きく出たな、と慌てふためくリオを尻目にカムンは呑気に考えていた。
信仰対象たる精霊、それも最高位に準ずるそれと契約を結んでいるのだ。
何かをなし得えそうにない、というよりもうすでになし得ているのだからその結果を踏まえた彼らの評価がそうであるだけだ。
文字通り勝手に言っているだけなのだが、同じことをドワーフの長老ドミニクにも言われたがそれでも困惑を隠しきれないリオである。
まあ彼が目立つ存在として崇められるのならば自分への注目は下がるだろう。
変に視線を集めてもやりにくいだけなので是非とも頑張ってもらいたいとカムンは思っていたがふと視線を感じ、その方向を見ると眼前にドリュアスの顔がアップで映った。
「・・・・・・なにか、御用で?」
あんまり突っついて欲しくはないのだが、とカムンは思うがドリュアスはどこか畏怖を覚えるような顔つきで見つめる。
「・・・・ねぇ、貴方は本当に【人間】?」
リオの魔力含有量を見て同じことを言ったが、そのニュアンスはまるで別のモノだと分かる。
「確か、この世界の人間じゃないって話だけど・・・」
それはそうだと、ドリュアスのつぶやきに対してカムンは思う。
最初の頃よりカムンはその手札を公開している。
もっと根源的な話なのは承知しているが、おいそれと口に出してよいことではなかったので黙ってはいた。
如何せんカムンと彼らとでは本来、生きている【階位】が全く違うのだ。
それが公として【降りて】きているというのは様々な面倒ごとが生まれるに足る理由となる。
「そうなると、【勇者】と同じ・・・?」
リオがカムンを見てまた気になる単語を口にした。
最近、似たような単語をよく聞くがその言葉は本来、勝つことを諦める差であっても挑むネジが吹っ飛んだ奴のことを指す言葉である。
「ふーむ、この世界の【勇者】とやらが果たしてどんな存在かは全く知らないな。
念のために聞くとリオは自身が知っている勇者の伝説について語った。
1000年ほど前に起きた神魔戦争にて、人類の守護聖人として賢神たちが外の世界から召喚したとされる存在が勇者だという。
この大陸―――ユーフィリアの西にあるシュトラールという地域で厚く信仰されている存在達だそうだ。
「まあ、似て非なるというべきかね。拉致された面々と違って
ただ帰れなくなったというのはまだ伝えないでいる。
自在に帰れるようになってからでも遅くはないと思ったからだ。
それにこちらが原因の可能性も否定できない。
不用意な事はしゃべらない方が良いのはどの世界でも一緒だ。
「あぁ・・・なるほど・・・」
カムンの職業を思い出してリオは合点が言ったという声色でそう呟いた。
だが肝心な答えにはなっていないことにドリュアスが気づかないわけはなかった。
「・・・それで、もう直球で訊くけど貴方は【人間】じゃないわよね?」
えっという感じでドワーフ勢は目を見張り、雰囲気を感じているハイエルフと鼻が利く獣人の面々は「あー、訊いちゃったよ」という顔をしていた。
やはり隠しきれないか、と長老たちの反応を見てカムンは己の未熟さを痛感する。
もっと上手く騙さなければならないのであろう、と反省しつつ息を吐きカムンは周りに視線を送る。
他言に無用でお願いします、という無言の乞いは静かに頷かれて了承を得た。
「まあ、幾人かはお察しの通りですが・・・
驚きの声が幾人から漏れ聞こえる。
受け答えも大半の表に出ている情報は【内外】含めてほぼ完ぺきに人間として再現されている。
だがそれでも変えることのできないのが根源足る【
こればかりは己の根源を定めるものであり、変えるということは存在そのものが大きく歪んでしまうことに繋がる。
歪んだ魂を持つ者の末路は悲惨で無様な物だ。
ああは成りたくない、とカムンをして思わせるほどには。
「
「・・・・寡聞にして存じませんな」
シルドラは頭をひねってもその単語が如何程のモノなのかを図ることができなかった。
当然であろう。
ここの世界にきたのは恐らくカムンが初めてなのだろうから縁はない、
「まあそんなもんですよ。商売の都合上、ちょっと腕が立つぐらいの認識で問題ないです」
ちょっと、ねぇとドリュアスは皮肉を零したがガンスルーすることにした。
これ以上は話過ぎると却って危険である。
打ち明けるにしてももう少し、こちら側に引き込まなければならないからだ。
そうでなければ彼ら自体が危険に晒される。
と、まあその後の話は大小さまざまな事項を話し合い、リオと言うクッションのおかげもあってか穏やかに纏めることができたのは僥倖であった。
とはいえ悶着が無かったというと嘘になる。
一つは住居の問題。
空き家は当然ながら存在していないので一から作るか、どこかで野宿をするかシェアハウスをするしかなかった。
金銭のやり取りなしで家を建築するには些か実績もないし、さすがに気が引ける。
先に渡した【排石】も要らないので溜まってはいるがあまりポンポン放出するのも彼らの生活に歪みを与えかねないことを考慮しなければならないだろう。
野宿するか、と呟いたらお客さんなのに滅相もない!と逆に窘められた始末であった。
別に雨風凌げればまあいいかなと考えていたのでちょっと意外さをカムンは感じる。
そして残ったシェアハウス案で行く他なくなった。
ではどこで転がり込むかと言うと、必然的にリオへ与えられたところに、という話で進む。
カムンとしてもいきなり里で訳の分からない大男が転がり込むと緊張も警戒も凄い物であり、最終的にリオから誘われる形で一室を借りることとなった。
監視も一括でやりたい、という意図もあるだろうが若人大多数で一人、年を食った背のデカい還暦間近に見えるおじさんが居るのはアンバランスな感じがある。
まあ若いフレッシュな人間に負けてはならない、と対抗心を燃やすことでカムンは受け入れることにした。
次に、リオの住居に世話人として交戦した少女たちが同居することになった。
まあつまるところそういう事である。
うら若い美少女が複数、同じ屋根で過ごすとはそういうのを狙っているとも考えるべきであろう。
ただ話を聞くと彼女ら自身が率先してリオの世話人に立候補したという。
彼女らは里の次世代の巫女を担う優秀な人材だ。
聖人とも言えるリオの世話人にはそれ相応の箔が必要でその意味でも彼女らが積極的に手を挙げたのは渡りに船であろう。
ただカムンにも世話人が付くと聞いて驚いた。
オーフィアたちと同様に次世代の巫女として優秀な人材として育てられたこれまたうら若い獣人の少女であった。
精霊契約までは行ってはいないが、それでも精霊術に関してはサラをも凌ぐ天性の才覚があるという。
「銀狐獣人の、クレーリア・・・で、す・・・・その、よろしゅくお願いします・・・」
ガッチガチに緊張してて最後に噛んでいるが何ともそういうところが愛い娘である。
まあこんな年を食ったおっさんのような見た目をしている訳がわからないバケモンの世話係なんて罰ゲームも良いところであろう。
「あらら、クレちゃん凄く硬くなってるわよ」
ぎこちなさ全開のクレーリアを見てさすがに粗相がないよう助け船をオーフィアが出してきた。
あまりのぎこちなさに苦笑いを浮かべてはいるが。
「まあ話は聞いていると思うが、カムン・テレイズだ。以後よろしく」
ここは気さくに気さくにと軽い調子でカムンは挨拶をかわし、握手を求めた。
「は、は、はひぃ!よろしく、お願いしましゅ!」
握手はしたが緊張を解くには至らなかったようだ。
まずはレクリエーションから入って互いが敵ではないことを理解しあう必要があるとカムンは心中、悲しみを湛えながらそう思った。