パラレル・なんかいい感じの・マスターズ 作:アマルティア・テーベ
※グロ描写多め
痛い。痛い。痛い。
焼けるように熱い。頭が、肉体が、魂が、ぎちぎち内側から軋むように痛い。
理由は分かっている。原因は分かっている。二つの命が繋ぎ合わされているからだ。異物と異物がひとまとめにされているからだ。
「痛い痛い痛いいたいいぃぃぃぃぃぃ」
ある筈の物がない。ない筈の物がある。ボクの手はこんな形をしていたっけ。私の喉はこんな音を出していたっけ。ボクの腕は何本あったっけ。私の腕はこんなところから生えていたっけ。あった筈のものがないから痛くて、なかった筈のものがあるのが痛くなくて苦しくてやっぱり痛い頭が胸が手が足が痛くて痛くて痛くて狂いそうで痛い私はボクはどっちだったっけ。
絶え間ない苦痛に組み上げられた螺旋。底へ底へ落ちて堕ちて墜ちて転がっていくだけの最悪の悪循環。足掻けど足掻けど果てはない。叫べど叫べど救いはない。
いつ現れたのか、悶え苦しむザーディクリカをドラゴン・オーブが見下ろしていた。
『炎の守護者と龍素の結晶体……混成にするには不向きだったか?』
「……ぅ、あ、ドラゴン・オーブ……さま」
恨めしい。憎らしい。大嫌い。今のザーディクリカを襲う痛みは全部こいつのせいだ。私とボクが一塊になっているのはこいつのせいだ。なのに身体は自然と服従の姿勢を取る。ディスペクターとしての機能がそうさせる。震える身体で懇願する。頭を地へ擦り付けて救いを乞い願う。
「おねがい……します。たすけて。痛いのなんとかして。そうしてくれるなら、私、ボク、なんでもしますからぁ、だから……」
『……チッ。予想以上に齟齬が激しいようだな。これでは使い物にならん。やはり人格など無い方が良いか』
「へっ、ぇえ?」
『お前はもう《ザーディア》でも《サイクリカ》でもない。傀儡に心は不要だ』
痛みを、恐怖が塗り潰す。
目の前に迫り来る『死』への恐れが苦痛を忘れさせる。肉体の死よりも恐ろしいものを本能は既に知っている。
「い……や。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だやめてっ!お願い、お願いします消さないで!私を、ボクを、心をこの世界から消さな」
『喧しい』
懇願に意味はなく。抵抗の余地はない。
ぷつん……と呆気なく。頭の中で何かが切れた。
「ぇ」「ぁ」
二つの音が同時に漏れて。
どろりと赤いものが溢れていく。目から、口から、鼻から、耳から、首筋から、五指の爪の先からぽたぽたぼたぼたびちゃびちゃどろどろごぼごぼ際限なく。
赤い紅い水溜まりの中で、心の最後の一欠片がほどけて消えていく。ほどなくして彼女はゆっくりと立ち上がる。その開かれた瞳に恐怖はない。その虚な瞳に自我はない。
『龍風混成ザーディクリカ。己の役目を果たせ』
「承知致しました」
彼女の願いは叶えられた。
もう、彼女の心は苦痛など感じない。
永遠に。