LifeBurrrrrrrrrrst!!!!! 作:ultimate!!
空は手を伸ばせば掴めそうなほど近く見えて、いくら背伸びしても届かないほどに遠い。
そうわかっていても手を伸ばしてしまうのは、この生活から抜け出すことをいつまで経っても諦められないからなのだろうか。
街の裏側、人工物で陽の光が遮られ、常にガスやらなんやらで空気が曇っている場所を進む。
「おーい、セン!そろそろ時間だぞ!」
「おーう。すぐいく。」
先を行くマスに呼ばれて少し足を早める。
このクソみたいな場所で共に過ごして16年。こんな場所でも信用できるほぼ唯一と言ってもいい親友だ。
「今日は何するんだっけ?」
「今日は…確かあいつの家の増築だったっけか。」
「よくもまぁのけものとして扱われてる家の手伝いなんてやるもんだねぇ。」
俺たちが向かっている先はこの町で一番大きい屋敷。まぁ要は領主ってやつだ。
そんなところにスラム育ちの俺たちが行ける理由といえば…
「マス!セン!こっちだ!」
「アル!今行く!」
こいつ、アル。どういうわけかあの屋敷に住んでる貴族サマなのにスラム育ちの俺たちに仕事とか色々気使って融通利かせてくれる変わり者。
そのせいなのか元からなのか、家族からはのけもののように扱われているらしいが…まぁ社会からのけものにされている俺たちからすればあまり関係はない。
家からのけものにされているせいか、アルは貴族らしい差別的な思考というかそういうのがなく、コイツの領地の奴らからは軒並み慕われている。
俺たちがコイツの紹介だったら仕事を快く受け入れてもらえることが多いのもコイツの人徳のおかげ…ってことなんだろうか。
「とりあえず、これに着替えて。」
「作業着ね。」
手渡された作業着を受け取ったらそのまま着替える。
俺たちがいつも着ている着古したボロい服なんかの百倍は着やすい。
まぁこの夏に長袖のこの服は正直めちゃくちゃ暑いが…贅沢は言ってられない。
「今日作業指示は僕がすることになってるから。」
「何。どーせ暇なんだから運搬指示でもしろって言われたか?」
「正解。そういうこと。」
「えぇ…お前も断れよ…」
そんな軽口を交わしながら進み、他の作業員と合流する。
こういう仕事を専門の仕事にしている奴とその他で半々ってところか?
いつもより少ないな。ま、関係ないか。
他の作業員と少し話したりしているうちに何か一つの端末が配られる。そしてアルから声がかかる。
「よし、みんな揃ったかな。じゃ、運搬を始めるからさっき配った端末の通りに!」
「「「はい!」」」
揃って声が出る。
使い慣れない端末のロックをなんとか開いて自分が割り当てられた場所と作業内容を確認する。
マスと同じ区域。アルが配慮してくれたのか、それともただの偶然か。
何にせよ知り合いが同じ場所というのは心強いものがある。
「うーいマス、行くぞ〜」
「セン、こんなところで体力使わないでよ…」
「大丈夫だって、俺体力だけはあるし。」
適当にそんなことを言いながら歩く。
仕事内容は…人でしか入れない場所への運搬ってところか。
「っつーか、何だってこんなあっつい時期に屋敷の改造なんてもんするんだろうな、貴族サマってのは。」
俺がマスと歩いているとふいに別の作業員から声をかけられる。
「おっと、急にごめんね。俺はジェイル。せっかく同じところで仕事するんだし軽く話しながらやろうぜ〜」
「ども。俺はセンでコイツはマスです。」
「そんな硬くならなくていいって。短い間でも仲良くやりたいんだよ、俺は。」
少し笑いながらそう言ってくれるジェイル。初対面だというのにこんなにも気安く話しかけてくれるのはどこか安心する。
「君達さ、あの貴族と仲良いの?」
「アル様ですか?」
「うん、暇だったから外見てたら随分君達とあの貴族サマが仲良さそうに喋ってるからさ。」
あー。いやまぁ見られたから何かあるという訳でもないけど、見られてたか。
そりゃまぁ、貴族と平民、ましてや俺たちみたいな平民ですらないやつが仲良くするのを好まないやつは多い。ただまぁアルは普段から平民と仲良くしてるしそこでとやかく言うようなやつはこの街にはいない。
「別にどっかにチクってやろうとは思ってないさ。ただ、俺この街来てすぐだからさ。あんな感じに貴族サマと平民が仲良さそーにしてるの初めてでね。」
「あー…あれはアルだけですよ。」
「なーるほどねー」
ジェイルはそんな感じに軽く答えていたが、薄く開いたその目は深く何かを考えているように感じた。
「うっし、じゃ、頑張ろうか。」
「おう。じゃ、またな。」
そう言って手を振りながら去っていく。
「んじゃ、俺たちもやるか!」
「そうだね。行こうか!」
そう言って俺たちも持ち場へと向かう。
「うっし、全員休憩!昼飯取ってこい!」
この区域のリーダーの男からのそんな号令で俺たちは各々持ち場を離れ、昼飯を食べに行く。
昼飯はこの屋敷の食堂にて配給されるらしい。
なんというか太っ腹に感じるが、これもアルが無理を言って通したんだろうかと考えると複雑な気持ちになる。
「どうする?アルからは昼間に会おうとは言われてたけど…」
「んー、先に飯…と言いたいところだけどどーせ混んでるし屋敷の入れる部分だけでも軽く歩いて探してみるか?」
「そうしようか。」
そのまま俺たちは食堂に歩く列をスッと離れ、屋敷の中へと入っていく。
本来持ち場を離れて屋敷の中へと行くのはダメなんだが…まぁ、多めに見てくれると信じよう。
というか無駄に人数がいるから別にバレやしないだろう。
「ちょっと手分けしない?三十分後会えても会えなくても食堂って感じで。」
「りょーかい。」
そう言ってマスと別れ、屋敷を進む。
だだっ広い廊下に、無駄に高そうな壺だの絵だの。
こんなもんに金使うくらいならもっと領民に金を使ってくれ…と言いたいとこだが、この領地は平民に対してはそこそこ優しいらしい。平民じゃないから知らんが。
だからまぁ、別にこれに文句を言うやつは少ない。
ただ平民からの評価は基本的に、【アル以外は性格が悪い】とされている。
ま、知ったことではないけども。
そう考えて歩いていると一つの部屋から少し声が聞こえた。
同じような扉が並ぶ中、一際豪華な扉。
周りに人がいないのを確認してから、そっと耳を近づける。
『…々は前から…』
『…って下さい!』
…扉が厚くて少ししか聞き取れん。
ただまぁアルの声がしたのはしたし、ちょっと待ってみるか。
角に隠れて待つこと5分。
あの扉がバァン!と爆音を鳴らしながら開かれる。
突然の爆音にビクッとなりながら恐る恐る覗くとアルが出てきた。
いつもにアルからは想像もつかないほど怒りをあらわにしている。
それを見た俺は扉が閉まったのを見計らって小声でアルをこちらに呼び出す。
それに気づいたアルがこちらに寄ってくる。
「どーした?あんな声荒げるなんてアルらしくないだろ。」
いつもならすぐに言葉を返してくるアルの言葉が詰まっているのを見て、沈黙が流れる。
「ッ…あのクソ家族、この土地を売りやがった…!」
その言葉は、この屋敷の窓の向こうに広がる青空に不自然に輝く光を一際目立たせた。